青い日記帳 

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東京国立博物館「博物館に初もうで 子・鼠・ねずみ」

今年(2019年)も残すところあと3週間となりました。



そろそろ、今年の展覧会ベスト10も決めないといけません。慌ただしくあっと言う間にクリスマス、大晦日、そして新しい年を迎えることになりそうです。

毎年お正月恒例となりました、東京国立博物館の「博物館へ初もうで」今年も2020年も1月2日より開催となります。


長谷川等伯 国宝「松林図屏風」安土桃山時代・16世紀

2020年1月2日(木)〜1月13日(月・祝) 本館2室(国宝室)で来年のお正月も、日本の水墨画がたどり着いたひとつの到達点である 国宝「松林図屏風」が公開されます。

混雑している中で、少し後方から鑑賞者を「松」に見立てて見るのもをかし。

来年の干支は「子(ねずみ)」。十二支最初の干支です。特集展示室にはネズミをモチーフにした多くの作品で賑わいをみせます。

特集「博物館に初もうで 子・鼠・ねずみ」
1月2日(木)〜26日(日) 本館特別1室・特別2室


鼠蒔絵印籠 紐通し朱漆銘「塩見政誠」/明治時代・19世紀/クインシー・A.ショー氏寄贈


鈴木春信「鼠、猫と遊ぶ子供

どこかユニークで愛らしいネズミモチーフ作品、まだまだ名品&珍品がきっと公開となるはずです。

さて、「博物館に初もうで 子・鼠・ねずみ」のお楽しみは作品鑑賞だけではありません。トークイベントほか、いつも目からおめでたい気分にさせてくれる生け花なども。

いけばな 1月2日(木)〜1月13日(月・祝)
正門、本館玄関、本館大階段 真生流 山根 由美氏


そして一番人気なのが和太鼓や獅子舞など日本の伝統芸能が見られる点です。お天気良くなるようにお願いしておきましょう。


和太鼓(2019年の様子)

1月2日(木)
11:00/13:15 和太鼓 湯島天神白梅太鼓 東洋館前
11:45/14:00 獅子舞 葛西囃子中村社中 東洋館前

1月3日(金)
11:00/13:15 和太鼓 湯島天神白梅太鼓 東洋館前
11:45/14:00 獅子舞 葛西囃子中村社中 東洋館前
12:30/14:45 クラリネット・コンサート(ジュリアンズ) 平成館ラウンジ
※雨天時は場所を変更、または中止になることがあります。



染付大根鼠図大皿 伊万里/江戸時代・19世紀/平野耕輔氏寄贈

十二支の子、大黒天の使いとしての鼠、子孫繁栄の象徴である鼠など、かつて鼠には様々な顔があったのです。

現代社会の中にも、ミッキーマウスやピカチュウなどなど、しっかりと棲息箇所を確保したネズミたちがいます。


袱紗 紺繻子地鼠大根米俵模様/江戸時代・18〜19世紀/アンリー夫人寄贈

さて、期間中は館内のショップやレストラン、TNM&TOPPANミュージアムシアターでは「お年玉」を用意して待っているとのこと。カレンダー付きワークシートも毎日3000部限定配布です。

他の美術館や博物館も同じようなお正月企画を取り入れていますが、やはり新年は元祖「博物館に初もうで」である東京国立博物館に伺いたいですね。

1月2日、館内で見かけたら声かけて下さいませ〜(青い日記帳特製スタンプ持ち歩いています!)

東京国立博物館、恒例の正月企画「博物館に初もうで」は、2020年1月2日(木)〜26日(日)に開催です!


「博物館に初もうで」

開館時間:9時30分〜17時
※金曜、土曜は21時まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、12月26日(木)〜2020年1月1日(水・祝)
※1月13日(月・祝)は開館、14日(火)は休館
https://www.tnm.jp/

こちらも要チェックです!

特別公開「高御座と御帳台」
会期:2019年12月22日(日)〜2020年1月19日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別4室・特別5室
開館時間:9:30〜17:00 (入館は閉館の30分前まで)
(ただし、会期中の金曜・土曜は21:00まで開館)
休館日 月曜日、12月26日(木)〜令和2年1月1日(水・祝)、1月14日(火)
(ただし、12月23日(月)は「高御座と御帳台」会場のみ開館、1月13日(月・祝)は開館)
観覧料金:無料公開


【2020年お祝いビール】お正月干支デザイン缶 子歳 [ 350ml×24本 ]

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「子どもへのまなざし」

東京都美術館で開催中の
上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」展に行って来ました。


https://www.tobikan.jp/

東京都美術館で開催されている展覧会は海外の名作が並ぶ特別展だけではありません。トビカンは書道に彫刻といった公募展の会場としても大きな役割を担っています。

全ての展示室を合わせるとどれだけ多彩な作品がこの一館に展示されているのか容易に想像がつくはずです。まさに美術のヴンダーカンマーです。


私の都美ものがたり

2017年からは上野アーティストプロジェクトとして、テーマを設け公募団体に所属する作家の紹介行う企画展を独自に開催しています。

3回目となる今回のテーマは「子ども」。

フィリップ・アリエスによる、子供という存在(認識)は近代になってからのものであり、かつて子供は〈小さな大人〉として認知され、家族をこえて濃密な共同の場に属していたとの捉え方は非常に大事な視点です。


〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活
フィリップ・アリエス (著), 杉山 光信 (翻訳), 杉山 恵美子 (翻訳)

そうしたことを踏まえ、子供のようであり、大人のようでもあり、そしてまた何物でもない中庸的な雰囲気を醸し出している新生加奈「少女と宇宙」を展覧会ポスター・チラシに使ったのはお見事!

内容的にもとても見応えがあり、よく考えられた展覧会に仕上がっています。大きな企画展の近くで見逃しがちですが、これは観ておいた方が良いかと。


新生加奈「もうひとつの歌」2016年

出品作家は以下の6名。

大久保綾子(一陽会)
木原正徳(二紀会)
志田翼(独立美術協会)
新生加奈(日本美術院)
豊澤めぐみ(新制作協会)
山本靖久(主体美術協会)


20代の若手からベテランまでどんな基準でセレクトしたかは分かりませんが、とてもバランスが取れた人選です。それは会場で作品を実際に見ればすぐに分かります。


大久保綾子「生命を紡ぐ」2014年

若手作家の今の世相や子どもの心の内を上手く表現した作品に交じり、1945年生まれの大久保の作品は母性愛を前面に打ち出したあたたかさを感じる力作です。

極端にデフォルメされている子どもを抱える母親の手足ですが、決しておかしく感じません。逆に母親の大きな愛情を違和感なく表現しています。

イタリア絵画から影響を受けた方なのでしょうか。どことなくそんなテイストが感じ取れました。


新生加奈「月と日に」2017年

新生加奈と大久保綾子が描いた、母親と子どもの情愛に満ちた美しくあたたかな作品とはテイストの全く違う「子ども」も若手女性作家たちにより表現されています。


志田翼「きょうだい」2010年

無邪気に遊ぶ二人の兄弟。プラレールで遊んでいるのかと思いきや置かれているのはレールではなく、銃です。

手にしている黄色い物体は紛れもなく薬莢です。子どもは無邪気な存在でもあり、恐ろしい存在でもあります。そんな内包している二面性をさり気なく表現している力作。


志田翼「籠る」「絡まる」2009年

個人的には、現代の子どもたちが抱える不安定な心の一端を視覚化したこの2点に惹かれました。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 愛される存在
第2章 成長と葛藤
第3章 生命のつながり


6人の中で最年少の豊澤めぐみの作品が、最も現代の子どもたちの姿や心をストレートに表現しています。


豊澤めぐみ「The Birthday」2015年

描かれている人物は全て作家自身だそうです。十字架の上に葬られたかのように眠る女子高生を描いた作品に付けられたタイトルは誕生日。

おじさんやおばさんになると誕生日って嬉しくなくなるのが常ですが、今の学生さんたちも実は誕生日をさほど喜ばしいイベントだとは思っていないようです。

それは歳を重ねることへの不満などではなく、煩わしい人間関係が具現化されるイベントだからでしょう。人付き合いに毎日ヘトヘトなのですから、きっと。


豊澤めぐみ「空虚」2019年

イタリア・ルネサンス期に多く描かれた円形のトンド(tondo)。そのほとんどが聖母子など親子の情愛を描いたものですが、現代版トンドは「空虚」「隔絶」「無価値」とそれぞれタイトルが付けられています。

絶対的な孤独を現すには四角いキャンバスよりも円形の方がより深度がより増し、限界を感じなくさせます。


豊澤めぐみ

6人中、4人も強く惹かれる作品を描いた作家さんに出会えたなんてとてもラッキーでした。と言うか、この展覧会は観る人を選びません。誰が見てもいいな〜と思える作品・作家が必ず見つかります。

上野で開催されている大掛かりな特別展だけでなく、「子どもへのまなざし展」のような企画力で勝負する展覧会にも是非足を運んでみて下さい。

「子どもへのまなざし」は2020年1月5日までです。是非是非〜(写真撮影可能です!)


上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」

会期:2019年11月16日(土)〜2020年1月5日(日)
休館日:11月18日(月)、12月2日(月)、16日(月)、26日(木)〜2020年1月3日(金)
開室時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開館:金曜日、11月30日(土)、12月7日(土)は9:30〜20:00(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館ギャラリーA・C
https://www.tobikan.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館

「子どもへのまなざし展」連動企画


松本力「記しを憶う」−東京都写真美術館コレクションを中心に
会期:2019年11月16日(土)〜2020年1月5日(日)


展覧会プロデューサーのお仕事
西澤 寛 (著)

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「小林ドンゲ展」

佐倉市立美術館で開催中の
「小林ドンゲ展−ファム・ファタル(妖婦)」に行って来ました。


http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/

まずは、作者・小林ドンゲについて。

1926(大正15)年、現在の東京都江東区亀戸に生まれ、1986(昭和61)年以降は千葉県印西市を拠点に活動した銅版画家です。当初、画家を目指していた小林は1949(昭和24)年に女子美術大学洋画科を中退後、関野凖一郎(版画家|1914-88)と駒井哲郎(銅版画家|1920-76)に銅版画を教わります。ドンゲという名は1954(昭和29)年 、弟の囲碁仲間であった僧から贈られたもので、優曇華(うどんげ)という三千年に一度咲くという伝説の花に由来しています。

文学や能への関心が高かった小林は堀口大學(詩人、仏文学者|1892-1981)と木村荘八(画家、随筆家|1893-1958)に師事。1956(昭和31)年には「第24回日本版画協会展」において「第1回恩地孝四郎賞」を受賞するなど、その仕事は早くから高い評価を受け、翌年には堀口から詩集『夕の虹』の挿画(銅版画)を任されています。



小林ドンゲ《散る花》1985年

戦後日本を代表する女流銅版画家・小林ドンゲ初の大規模個展が佐倉市立美術館で開催中です。

日本画家・小林古径の線に憧れ、美しく繊細な線で表現された女性たち。銅版画の中でも最も古典的な技法の一つであり、大変難易度の高いエングレーヴィングを駆使した線は確かに日本画の剃刀のようなそれに通じるものがあります。

版画の脇に、実際に使用した原版も所々に展示されており、それを見ると一体どうやってこんな線を彫ったのか集中力の無い自分にはまるで理解できません。

日本画もそうですが、エングレーヴィングも少しでもミスしたら一巻の終わりです。



初期作品はやはり日本画の影響が強く、「悪の華」や「枯れゆく花」、「雨月物語 淫火」など速水御舟が好んで描いた蛾が多く登場します。そして炎もまた。

作品は初期から現在に至るまで一貫して具象を守り通しています。時代的に抽象的な作品が貴ばれても決してその流れには乗らず、あくまでも女性像を中心とした具象を貫きます。

しかし、「昨日まで林檎を描いていた仲間が、いとも安易に抽象に転向して、造形性の追求などと唱えはじめた」そのような仲間から「軽蔑の目で見られるような絵を描き続ける自分は間違っているのかもしれないと思うようになり、自信を喪失」してしまいます。


小林ドンゲ《女と猫》1975年

落ち込むドンゲに、堀口大學と小林の両親は、それならば思い切って海外へ行ってみたらと勧めます。パリでの滞在中は長谷川潔が身元引受人となってくれたそうです。

渡欧してからのドンゲ作品は「広がり」が見られるようになります。それはルーヴル美術館をはじめとし数多くの西洋絵画を浴びるように目にすることにより起こった自然な変革です。

圧倒的な質量の西洋絵画に囲まれ、「私の志向する絵が間違っていたわけではない。」と失いかけた自信を取り戻すことに成功するのです。

1964年からの1年半のヨーロッパ滞在は、「小林ドンゲ展」を鑑賞する上でも、大きなターニングポイントになります。


レオナルド・ダ・ヴィンチ「白貂を抱く貴婦人」1490年頃
チャルトリスキ美術館所蔵

「女と猫」はレオナルド作品に感化されたものでしょうか。その他にもルドン、クリムト、モローらの影響がはっきりと見て取れる作品が、渡欧以降出てきます。

そうそう、元々ドンゲの作品に描かれる女性がマリー・ローランサンのそれと被るので、そんな見方をしても楽しいかもしれません。

それにしても、好きなものはとことん描き込む版画家です。蝶(蛾)、猫、薔薇そして網タイツ。


小林ドンゲ《薔薇薄暮》1990年

都内から千葉に越してきたのも、薔薇の栽培をしたいからとのこと。京成バラ園などありますしね〜お住いのある印西はホームセンターも沢山あるし。

自分のやりたいことをやり通す!このシンプルながら中々実行出来ないことを版画でも私生活でも、やり通せたからこそキラリと光るものが作品から感じられるのでしょう。

小林ドンゲ初期から近作までの銅版画とその下絵、原版等158点が一堂に会しています。作家が人生をとおして追求してきた銅版画表現の魅力をとくとご覧あれ。

会場では無料で大型ルーペを貸してくれます。でもiPhoneでメモしていると今時注意されるのでご注意。

「小林ドンゲ展」は12月22日までです。


「小林ドンゲ展−ファム・ファタル(妖婦)」

会期:2019年11月2日(土)〜12月22日(日)
休館日:月曜日
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
会場:佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210番地)
http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/
主催:佐倉市立美術館
協力:学校法人矍軍惘 創形美術学校
協賛:株式会社エッシェンバッハ光学ジャパン


『キリスト教 と 聖書 でたどる 世界の名画 〜愛、信仰、友情の物語 〜』 (時空旅人別冊)

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『もっと知りたい浮世絵』

東京美術より刊行となった『もっと知りたい浮世絵』を読んでみました。


もっと知りたい浮世絵
田辺昌子 (著)

これまで、浮世絵について書かれた本を一冊だけオススメするとしたら?と問われると、大久保先生の『カラー版 浮世絵』 (岩波新書)とお応えしてきました。


『カラー版 浮世絵』 (岩波新書)
大久保純一(著)

『カラー版 浮世絵』を紹介したブログ記事で「内容、価格等あらゆる面でこれ以上優れた浮世絵関連の本、もうこれから先出ることないはずです。」と断言までしています。

しかし、岩波新書の浮世絵本が出たのが2008年のこと。10年以上が経過し元号も令和となりました。その間、浮世絵の研究も進み新たな知見も得られています。


浮世絵の技法と版元

そんなタイミングで発売となった『もっと知りたい浮世絵』は浮世絵についてのイロハからちょっと踏み込んだ知識まで得られる新しいテキストと言えます。

小説などでもそうですが、作家論や作品論どちらか一方に偏り過ぎるとテキストとして通用しません。

その辺りの匙加減が非常によいバランスで編集されているのが『もっと知りたい浮世絵』です。


日常を描く

【目次】
はじめにー浮世絵という江戸の幸福
まずは知っておきたい!江戸時代の主な浮世絵史関連年表

第1部 浮世絵のはじまりと流れ
1 浮世絵の誕生
歌舞伎絵・役者絵/美人画/江戸名所の誕生/見立絵・やつし絵/筆彩色/版彩色のはじまり/肉筆画
2 錦絵の誕生
3 スター絵師対決
歌麿 vs. 栄之/写楽 vs. 豊国/北斎 vs. 広重/国貞 vs. 英泉 vs. 国芳

第2部 浮世絵を彩る絵師たち
菱川師宣/鳥居派/奥村政信/鈴木春信/磯田湖龍斎と北尾派/鳥居清長/喜多川歌麿/鳥文斎栄之/勝川春章/東洲斎写楽/歌川豊国/葛飾北斎/歌川広重/歌川国貞と渓斎英泉/歌川国芳

【特集】芸者の時代/吉原の粋/歌麿と寛政の改革/團十郎贔屓/死絵─スターを偲ぶ/上方浮世絵/日常を描く/ジャポニスムと浮世絵/江戸から明治へ
〈コラム〉浮世絵の技法と版元/錦絵の大衆化と紙/ベロ藍/摺物─粋人たちの遊び/幕末の超絶技巧

索引/浮世絵をもっと知るためのブックガイド



江戸東京博物館「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」では、今人気の5人の浮世絵師にポイントを絞っての展覧会となっていましたが、『もっと知りたい浮世絵』では菱川師宣や鈴木春信らもしっかりとフォロー。

当然といえば当然なのですが、菱川師宣と歌川広重、国芳では100年以上も活躍した時代に開きがあり「浮世絵」と十把一絡げに捉えられないものが本来あるはずなのです。

江戸時代という泰平の世に生まれ人気を博した浮世絵の真実を、丁寧に絵師と共に紹介してくれます。


鈴木春信

因みに、東京美術の人気シリーズ「もっと知りたい」は、今回の浮世絵で83作目となります。累計で100万部を超えているとのことです。

北斎、広重、国芳など単刊は既に出ていますが、「浮世絵」という大きな括りでは初めての一冊となります。ありそうでなかったのですね〜(まぁ、それだけまとめるのに苦労する証でもありますが)


ジャポニスムと浮世絵

本編はもとよりコラム、特集も充実しています。「團十郎贔屓」や「浮世絵の技法と版元」「錦絵の大衆化と紙」などはとても興味深く勉強になります。

そうそう、太田記念美術館の「ラスト・ウキヨエ展」ではないですが、明治期に入る何故急速に浮世絵が衰退してしまったのかも「江戸から明治へ」で納得のいく解説がなされています。

浮世絵について海外の方に説明をする機会もこれから増えることでしょう。最低限知っておきたい知識と、ちょっと誰かに話したくなる「なるほど〜」と唸らせる見聞までこの一冊で事足ります!


もっと知りたい浮世絵
田辺昌子 (著)

人気の「もっと知りたいシリーズ」の1冊として、浮世絵についてのベーシックな知識と主要作品を網羅した入門書の決定版。浮世絵が成立した頃の初期の作例から絢爛豪華な錦絵の誕生を経て、世界中から注目される北斎や国芳の超絶技巧にいたるまでの流れを多くの作品と共にわかりやすく解説します。

田辺昌子(たなべ・まさこ)
東京都生まれ。学習院大学人文科学研究科博士前期課程修了。永青文庫学芸員を経て千葉市美術館の開設に準備室段階から関わり、現在千葉市美術館学芸課長、副館長兼務。鈴木春信を中心に浮世絵の研究に携わる。2008年『鳥居清長』展図録で第一回國華賞展覧会図録賞(共同受賞)、2018年第三十回國華賞受賞。主な著書に『週刊アーティストジャパン43 鈴木春信』(同朋舎、1992年)、『浮世絵の歴史』(共著、美術出版社、1998年)、『浮世絵のことば案内』(小学館、2005年)、『すぐわかる楽しい江戸の浮世絵(『こんなに楽しい江戸の浮世絵』1999年版改訂)』(共著、2008年)『鈴木春信』(2017年、共に東京美術)など。


『川瀬巴水作品集 増補改訂版』
清水 久男 (著)

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「リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の
「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」に行って来ました。


https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_liechtenstein/

2012年に国立新美術館他で華々しく開かれた「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展の座組を変えた第2弾が、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中です。

スイスとオーストリアに囲まれた、小さな永世中立国リヒテンシュタイン公国には実に、3万点にも及び美術工芸品を有しています。


ウィーンの都市宮殿内部
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

家訓が「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」(カール・オイゼビウス侯 1611-1684)だけあり、3万点のコレクションはとても全てを把握できません。

前回の「リヒテンシュタイン展」では比較的大ぶりの作品が多く出ていました。今回は逆にコンパクトなものが中心となっています。

とはいえ、レベルはまさに侯爵系の至宝の名に違わぬ充実したものとなっています。


ルーカス・クラーナハ(父)《聖バルバラ》1520年以降、油彩・板 
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

16世紀の板絵(キャンバスが普及する前のパネル絵)が驚くべきことに10点以上も展示されています。

気圧の変化、温湿度の変化を受ける飛行機での長時間の移動は板絵にとっては大きなダメージを被りかねない為、中々日本での展覧会で観ることは叶いません。

所蔵する海外の美術館ももしものことを考え、貸し渋るのは当然のことです。クラーナハやルーベンス、ケーニヒ、グイド・レーニなど名だたる画家の板絵を観られるだけでもこの展覧会に足を運ぶ価値があります。


フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー《イシュル近くのヒュッテンエック高原からのハルシュタット湖の眺望》1840年、油彩・板
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

ウィーンを中心に活動し、ベートーヴェンの肖像画として有名なヴァルトミュラーの描いた風景画も小振りながらも実に見どころの多い作品です。

展覧会の中心は宗教画や歴史画ですが、後半にある風景画のセクションもかなり充実しています。17世紀のヤン・ブリューゲル(父)によるそれよりも、今回はヴァルトミュラーに強く惹かれました。

ひと言でその魅力を表現するなら「モダンな風景画」となるでしょうか。


ビンビ(本名バルトロメオ・デル・ビンボ)《花と果物の静物とカケス》制作年不詳、油彩・キャンヴァス

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活
第2章:宗教画
第3章:神話画・歴史画
第4章:磁器ー西洋と東洋の出会い
第5章:ウィーンの磁器製作所
第6章:風景画
第7章:花の静物画



マルコ・バザイーティ《聖母子》1500年頃、油彩・板
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

「第2章:宗教画」「第3章:神話画・歴史画」の両セクションは長い歳月と「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」との家訓を護るべくコレクションされた優品が並びます。

地理的に北方芸術が多いように思えますが、しっかりとイタリア・ルネサンスやバロックの作品も揃えておりバランスのよい教科書のような展示です。

西洋絵画のエッセンスが集約されていると言っても過言ではありません。とても勉強になるとともに贅沢な気分を味わえます。


有田窯《青磁色絵鳳凰文金具付蓋物
金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト 
磁器:上絵付1690-1710年、金属装飾:鍍金されたブロンズ
1775/1785年、人物像:後補
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

さて今回の「リヒテンシュタイン展」には、景徳鎮や有田焼などの東洋の陶磁器コレクションも出ています。が、しかしどうも様子が変です。

これは、日本や中国からはるばる海を渡りヨーロッパにたどり着いた焼物に、現地で金具を取り付けるなど、ヨーロッパ人の趣味に合わせて作り替えられた、珍しい作品です。


景徳鎮窯《染付花鳥文金具付壺
金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト
磁器:青の下絵付、順治〜康煕年間(1644−1723)、金具:鍍金されたブロンズ 1775/1785年
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

魔改造された景徳鎮や有田焼の陶磁器をとくとお楽しみあれ!

鍍金したブロンズの装飾金具を取り付けてしまう感性は、ナカムラクニオ氏の「金継ぎ」とはまるで発想が異なりますね。


フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー《磁器の花瓶の花、燭台、銀器》 1839年、油彩・板 
所蔵:リヒテンシュタイン 侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン

最終章に「第7章:花の静物画」をまとめて展示してあるのは中々のアイディア。展覧会の最後に難しいことは考えずに美しい花々に囲まれ多幸感を存分に味わえるのですから。

この展示空間は写真撮影が可能です。

接写するとその緻密さもよく分かります。


磁器の花瓶の花、燭台、銀器》(部分)

幾多の苦難を乗り越えてきたリヒテンシュタイン侯爵家の美術コレクションについてはこちらのコラムで。

ヨーロッパの宝石箱が渋谷にやってきた!!

「リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」は12月26日までです。今日から師走でますます慌ただしくなりますが、渋谷へ小さな国の宝石箱を開けに行きましょう〜


「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」

会期:2019年10月12日(土)〜2019年12月26日(木) ※ 好評につき、会期延長が決定いたしました!
休館日:10/15(火)、11/12(火)、12/3(火)
時間:10:00〜18:00(最終入館時間 17:30)
毎週金・土曜日は21:00まで (最終入館時間 20:30)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F
https://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、日本経済新聞社、テレビ東京
後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム、在日スイス大使館
協賛:ライブアートブックス
協力:YKK AP、日本ヒルティ、日本通運、全日本空輸
企画協力:TNCプロジェクト
作品画像提供:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン

【巡回先】
宇都宮美術館  2020年1月12日(日)〜2月24日(月・振休)
大分県立美術館 2020年3月6日(金)〜4月19日(日)
東京富士美術館 2020年5月2日(土)〜7月5日(日)
宮城県美術館  2020年7月14日(火)〜9月6日(日)
広島県立美術館 2020年9月18日(火)〜11月29日(日)


『日経おとなのOFF 2020年 絶対に見逃せない美術展』(日経トレンディ2020年1月号増刊)

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