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「子どもへのまなざし」

東京都美術館で開催中の
上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」展に行って来ました。


https://www.tobikan.jp/

東京都美術館で開催されている展覧会は海外の名作が並ぶ特別展だけではありません。トビカンは書道に彫刻といった公募展の会場としても大きな役割を担っています。

全ての展示室を合わせるとどれだけ多彩な作品がこの一館に展示されているのか容易に想像がつくはずです。まさに美術のヴンダーカンマーです。


私の都美ものがたり

2017年からは上野アーティストプロジェクトとして、テーマを設け公募団体に所属する作家の紹介行う企画展を独自に開催しています。

3回目となる今回のテーマは「子ども」。

フィリップ・アリエスによる、子供という存在(認識)は近代になってからのものであり、かつて子供は〈小さな大人〉として認知され、家族をこえて濃密な共同の場に属していたとの捉え方は非常に大事な視点です。


〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活
フィリップ・アリエス (著), 杉山 光信 (翻訳), 杉山 恵美子 (翻訳)

そうしたことを踏まえ、子供のようであり、大人のようでもあり、そしてまた何物でもない中庸的な雰囲気を醸し出している新生加奈「少女と宇宙」を展覧会ポスター・チラシに使ったのはお見事!

内容的にもとても見応えがあり、よく考えられた展覧会に仕上がっています。大きな企画展の近くで見逃しがちですが、これは観ておいた方が良いかと。


新生加奈「もうひとつの歌」2016年

出品作家は以下の6名。

大久保綾子(一陽会)
木原正徳(二紀会)
志田翼(独立美術協会)
新生加奈(日本美術院)
豊澤めぐみ(新制作協会)
山本靖久(主体美術協会)


20代の若手からベテランまでどんな基準でセレクトしたかは分かりませんが、とてもバランスが取れた人選です。それは会場で作品を実際に見ればすぐに分かります。


大久保綾子「生命を紡ぐ」2014年

若手作家の今の世相や子どもの心の内を上手く表現した作品に交じり、1945年生まれの大久保の作品は母性愛を前面に打ち出したあたたかさを感じる力作です。

極端にデフォルメされている子どもを抱える母親の手足ですが、決しておかしく感じません。逆に母親の大きな愛情を違和感なく表現しています。

イタリア絵画から影響を受けた方なのでしょうか。どことなくそんなテイストが感じ取れました。


新生加奈「月と日に」2017年

新生加奈と大久保綾子が描いた、母親と子どもの情愛に満ちた美しくあたたかな作品とはテイストの全く違う「子ども」も若手女性作家たちにより表現されています。


志田翼「きょうだい」2010年

無邪気に遊ぶ二人の兄弟。プラレールで遊んでいるのかと思いきや置かれているのはレールではなく、銃です。

手にしている黄色い物体は紛れもなく薬莢です。子どもは無邪気な存在でもあり、恐ろしい存在でもあります。そんな内包している二面性をさり気なく表現している力作。


志田翼「籠る」「絡まる」2009年

個人的には、現代の子どもたちが抱える不安定な心の一端を視覚化したこの2点に惹かれました。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 愛される存在
第2章 成長と葛藤
第3章 生命のつながり


6人の中で最年少の豊澤めぐみの作品が、最も現代の子どもたちの姿や心をストレートに表現しています。


豊澤めぐみ「The Birthday」2015年

描かれている人物は全て作家自身だそうです。十字架の上に葬られたかのように眠る女子高生を描いた作品に付けられたタイトルは誕生日。

おじさんやおばさんになると誕生日って嬉しくなくなるのが常ですが、今の学生さんたちも実は誕生日をさほど喜ばしいイベントだとは思っていないようです。

それは歳を重ねることへの不満などではなく、煩わしい人間関係が具現化されるイベントだからでしょう。人付き合いに毎日ヘトヘトなのですから、きっと。


豊澤めぐみ「空虚」2019年

イタリア・ルネサンス期に多く描かれた円形のトンド(tondo)。そのほとんどが聖母子など親子の情愛を描いたものですが、現代版トンドは「空虚」「隔絶」「無価値」とそれぞれタイトルが付けられています。

絶対的な孤独を現すには四角いキャンバスよりも円形の方がより深度がより増し、限界を感じなくさせます。


豊澤めぐみ

6人中、4人も強く惹かれる作品を描いた作家さんに出会えたなんてとてもラッキーでした。と言うか、この展覧会は観る人を選びません。誰が見てもいいな〜と思える作品・作家が必ず見つかります。

上野で開催されている大掛かりな特別展だけでなく、「子どもへのまなざし展」のような企画力で勝負する展覧会にも是非足を運んでみて下さい。

「子どもへのまなざし」は2020年1月5日までです。是非是非〜(写真撮影可能です!)


上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」

会期:2019年11月16日(土)〜2020年1月5日(日)
休館日:11月18日(月)、12月2日(月)、16日(月)、26日(木)〜2020年1月3日(金)
開室時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開館:金曜日、11月30日(土)、12月7日(土)は9:30〜20:00(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館ギャラリーA・C
https://www.tobikan.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館

「子どもへのまなざし展」連動企画


松本力「記しを憶う」−東京都写真美術館コレクションを中心に
会期:2019年11月16日(土)〜2020年1月5日(日)


展覧会プロデューサーのお仕事
西澤 寛 (著)

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「小林ドンゲ展」

佐倉市立美術館で開催中の
「小林ドンゲ展−ファム・ファタル(妖婦)」に行って来ました。


http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/

まずは、作者・小林ドンゲについて。

1926(大正15)年、現在の東京都江東区亀戸に生まれ、1986(昭和61)年以降は千葉県印西市を拠点に活動した銅版画家です。当初、画家を目指していた小林は1949(昭和24)年に女子美術大学洋画科を中退後、関野凖一郎(版画家|1914-88)と駒井哲郎(銅版画家|1920-76)に銅版画を教わります。ドンゲという名は1954(昭和29)年 、弟の囲碁仲間であった僧から贈られたもので、優曇華(うどんげ)という三千年に一度咲くという伝説の花に由来しています。

文学や能への関心が高かった小林は堀口大學(詩人、仏文学者|1892-1981)と木村荘八(画家、随筆家|1893-1958)に師事。1956(昭和31)年には「第24回日本版画協会展」において「第1回恩地孝四郎賞」を受賞するなど、その仕事は早くから高い評価を受け、翌年には堀口から詩集『夕の虹』の挿画(銅版画)を任されています。



小林ドンゲ《散る花》1985年

戦後日本を代表する女流銅版画家・小林ドンゲ初の大規模個展が佐倉市立美術館で開催中です。

日本画家・小林古径の線に憧れ、美しく繊細な線で表現された女性たち。銅版画の中でも最も古典的な技法の一つであり、大変難易度の高いエングレーヴィングを駆使した線は確かに日本画の剃刀のようなそれに通じるものがあります。

版画の脇に、実際に使用した原版も所々に展示されており、それを見ると一体どうやってこんな線を彫ったのか集中力の無い自分にはまるで理解できません。

日本画もそうですが、エングレーヴィングも少しでもミスしたら一巻の終わりです。



初期作品はやはり日本画の影響が強く、「悪の華」や「枯れゆく花」、「雨月物語 淫火」など速水御舟が好んで描いた蛾が多く登場します。そして炎もまた。

作品は初期から現在に至るまで一貫して具象を守り通しています。時代的に抽象的な作品が貴ばれても決してその流れには乗らず、あくまでも女性像を中心とした具象を貫きます。

しかし、「昨日まで林檎を描いていた仲間が、いとも安易に抽象に転向して、造形性の追求などと唱えはじめた」そのような仲間から「軽蔑の目で見られるような絵を描き続ける自分は間違っているのかもしれないと思うようになり、自信を喪失」してしまいます。


小林ドンゲ《女と猫》1975年

落ち込むドンゲに、堀口大學と小林の両親は、それならば思い切って海外へ行ってみたらと勧めます。パリでの滞在中は長谷川潔が身元引受人となってくれたそうです。

渡欧してからのドンゲ作品は「広がり」が見られるようになります。それはルーヴル美術館をはじめとし数多くの西洋絵画を浴びるように目にすることにより起こった自然な変革です。

圧倒的な質量の西洋絵画に囲まれ、「私の志向する絵が間違っていたわけではない。」と失いかけた自信を取り戻すことに成功するのです。

1964年からの1年半のヨーロッパ滞在は、「小林ドンゲ展」を鑑賞する上でも、大きなターニングポイントになります。


レオナルド・ダ・ヴィンチ「白貂を抱く貴婦人」1490年頃
チャルトリスキ美術館所蔵

「女と猫」はレオナルド作品に感化されたものでしょうか。その他にもルドン、クリムト、モローらの影響がはっきりと見て取れる作品が、渡欧以降出てきます。

そうそう、元々ドンゲの作品に描かれる女性がマリー・ローランサンのそれと被るので、そんな見方をしても楽しいかもしれません。

それにしても、好きなものはとことん描き込む版画家です。蝶(蛾)、猫、薔薇そして網タイツ。


小林ドンゲ《薔薇薄暮》1990年

都内から千葉に越してきたのも、薔薇の栽培をしたいからとのこと。京成バラ園などありますしね〜お住いのある印西はホームセンターも沢山あるし。

自分のやりたいことをやり通す!このシンプルながら中々実行出来ないことを版画でも私生活でも、やり通せたからこそキラリと光るものが作品から感じられるのでしょう。

小林ドンゲ初期から近作までの銅版画とその下絵、原版等158点が一堂に会しています。作家が人生をとおして追求してきた銅版画表現の魅力をとくとご覧あれ。

会場では無料で大型ルーペを貸してくれます。でもiPhoneでメモしていると今時注意されるのでご注意。

「小林ドンゲ展」は12月22日までです。


「小林ドンゲ展−ファム・ファタル(妖婦)」

会期:2019年11月2日(土)〜12月22日(日)
休館日:月曜日
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
会場:佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210番地)
http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/museum/
主催:佐倉市立美術館
協力:学校法人矍軍惘 創形美術学校
協賛:株式会社エッシェンバッハ光学ジャパン


『キリスト教 と 聖書 でたどる 世界の名画 〜愛、信仰、友情の物語 〜』 (時空旅人別冊)

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「リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の
「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」に行って来ました。


https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_liechtenstein/

2012年に国立新美術館他で華々しく開かれた「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展の座組を変えた第2弾が、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中です。

スイスとオーストリアに囲まれた、小さな永世中立国リヒテンシュタイン公国には実に、3万点にも及び美術工芸品を有しています。


ウィーンの都市宮殿内部
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

家訓が「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」(カール・オイゼビウス侯 1611-1684)だけあり、3万点のコレクションはとても全てを把握できません。

前回の「リヒテンシュタイン展」では比較的大ぶりの作品が多く出ていました。今回は逆にコンパクトなものが中心となっています。

とはいえ、レベルはまさに侯爵系の至宝の名に違わぬ充実したものとなっています。


ルーカス・クラーナハ(父)《聖バルバラ》1520年以降、油彩・板 
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

16世紀の板絵(キャンバスが普及する前のパネル絵)が驚くべきことに10点以上も展示されています。

気圧の変化、温湿度の変化を受ける飛行機での長時間の移動は板絵にとっては大きなダメージを被りかねない為、中々日本での展覧会で観ることは叶いません。

所蔵する海外の美術館ももしものことを考え、貸し渋るのは当然のことです。クラーナハやルーベンス、ケーニヒ、グイド・レーニなど名だたる画家の板絵を観られるだけでもこの展覧会に足を運ぶ価値があります。


フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー《イシュル近くのヒュッテンエック高原からのハルシュタット湖の眺望》1840年、油彩・板
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

ウィーンを中心に活動し、ベートーヴェンの肖像画として有名なヴァルトミュラーの描いた風景画も小振りながらも実に見どころの多い作品です。

展覧会の中心は宗教画や歴史画ですが、後半にある風景画のセクションもかなり充実しています。17世紀のヤン・ブリューゲル(父)によるそれよりも、今回はヴァルトミュラーに強く惹かれました。

ひと言でその魅力を表現するなら「モダンな風景画」となるでしょうか。


ビンビ(本名バルトロメオ・デル・ビンボ)《花と果物の静物とカケス》制作年不詳、油彩・キャンヴァス

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活
第2章:宗教画
第3章:神話画・歴史画
第4章:磁器ー西洋と東洋の出会い
第5章:ウィーンの磁器製作所
第6章:風景画
第7章:花の静物画



マルコ・バザイーティ《聖母子》1500年頃、油彩・板
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

「第2章:宗教画」「第3章:神話画・歴史画」の両セクションは長い歳月と「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」との家訓を護るべくコレクションされた優品が並びます。

地理的に北方芸術が多いように思えますが、しっかりとイタリア・ルネサンスやバロックの作品も揃えておりバランスのよい教科書のような展示です。

西洋絵画のエッセンスが集約されていると言っても過言ではありません。とても勉強になるとともに贅沢な気分を味わえます。


有田窯《青磁色絵鳳凰文金具付蓋物
金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト 
磁器:上絵付1690-1710年、金属装飾:鍍金されたブロンズ
1775/1785年、人物像:後補
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

さて今回の「リヒテンシュタイン展」には、景徳鎮や有田焼などの東洋の陶磁器コレクションも出ています。が、しかしどうも様子が変です。

これは、日本や中国からはるばる海を渡りヨーロッパにたどり着いた焼物に、現地で金具を取り付けるなど、ヨーロッパ人の趣味に合わせて作り替えられた、珍しい作品です。


景徳鎮窯《染付花鳥文金具付壺
金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト
磁器:青の下絵付、順治〜康煕年間(1644−1723)、金具:鍍金されたブロンズ 1775/1785年
所蔵:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン
© LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz−Vienna

魔改造された景徳鎮や有田焼の陶磁器をとくとお楽しみあれ!

鍍金したブロンズの装飾金具を取り付けてしまう感性は、ナカムラクニオ氏の「金継ぎ」とはまるで発想が異なりますね。


フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー《磁器の花瓶の花、燭台、銀器》 1839年、油彩・板 
所蔵:リヒテンシュタイン 侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン

最終章に「第7章:花の静物画」をまとめて展示してあるのは中々のアイディア。展覧会の最後に難しいことは考えずに美しい花々に囲まれ多幸感を存分に味わえるのですから。

この展示空間は写真撮影が可能です。

接写するとその緻密さもよく分かります。


磁器の花瓶の花、燭台、銀器》(部分)

幾多の苦難を乗り越えてきたリヒテンシュタイン侯爵家の美術コレクションについてはこちらのコラムで。

ヨーロッパの宝石箱が渋谷にやってきた!!

「リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」は12月26日までです。今日から師走でますます慌ただしくなりますが、渋谷へ小さな国の宝石箱を開けに行きましょう〜


「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」

会期:2019年10月12日(土)〜2019年12月26日(木) ※ 好評につき、会期延長が決定いたしました!
休館日:10/15(火)、11/12(火)、12/3(火)
時間:10:00〜18:00(最終入館時間 17:30)
毎週金・土曜日は21:00まで (最終入館時間 20:30)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F
https://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、日本経済新聞社、テレビ東京
後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム、在日スイス大使館
協賛:ライブアートブックス
協力:YKK AP、日本ヒルティ、日本通運、全日本空輸
企画協力:TNCプロジェクト
作品画像提供:リヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ファドゥーツ/ウィーン

【巡回先】
宇都宮美術館  2020年1月12日(日)〜2月24日(月・振休)
大分県立美術館 2020年3月6日(金)〜4月19日(日)
東京富士美術館 2020年5月2日(土)〜7月5日(日)
宮城県美術館  2020年7月14日(火)〜9月6日(日)
広島県立美術館 2020年9月18日(火)〜11月29日(日)


『日経おとなのOFF 2020年 絶対に見逃せない美術展』(日経トレンディ2020年1月号増刊)

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「小さなデザイン 駒形克己展」

板橋区立美術館で開催中の
「小さなデザイン 駒形克己展」に行って来ました。


http://www.itabashiartmuseum.jp/

今から15年以上も前のことです。とあるギャラリーで正方形の「ペンギン」に一目惚れし即購入しました。絵画ではなく、何層か紙を重ね色や形を表現している作品です。

とても気に入り、リビングに飾ったり、時には玄関の一番目に付く場所に置いたりと今でも我が家でその「ペンギン」は愛され続けています。



駒形克己氏とは「ペンギン」を介して初めて出会い、そして名を知ることになりました。

一時重い病を患られ「ペンギン」共々とても心配しましたが、今ではワークショップやトークショーを開催するなど精力的に活動なされています。


The Animals in the Forest」(未刊絵本)試作 2012-13年頃

今年(2019年)6月29日に、約1年間にわたる改修工事のための休館を経て、リニューアルオープンした板橋区立美術館で、造本作家/デザイナーとして現在でも精力的な活動をしている駒形克己氏(1953年〜)の展覧会が開催されています。

ニューヨーク近代美術館 MoMAミュージアムショップでも販売されている、デザインセンス満載の絵本を手がける人というイメージが、強い駒形氏ですが、元々はバリバリのデザイナーです。

しかも、早々に日本を飛び出し、単独アメリカでデザインの仕事を叩き込んできたツワモノでもあります。(1977年渡米。ニューヨークCBS本社、シェクターグループなどでCIデザイン、グラフィックデザインを手掛け、1983年帰国。)


「ズッカ ロゴ」1988年頃

「小さなデザイン 駒形克己展」では、アメリカ時代に手掛けたデザインの仕事をまず紹介。タバコのパッケージやNY市のゴミ袋のデザインなど、現地でも第一線で活躍していたことを示す資料が展示されています。

シンプルな直線や色を上手く重ね生かした駒形氏のデザインがこの頃から見て取れます。(NBA オールスターゲーム案内状など)

因みに、この板橋区立美術館のシンボルマークも駒形氏が手掛けたものです。


板橋区立美術館 創立30周年シンボル デザイン及びグラフィック 2009

駒形克己氏が代表を務める出版・デザイン会社「ワンストローク | ONE STROKE

日本に帰国後は、「オフコース」「安全地帯」などのアルバムジャケット、コムデギャルソンなどのファッションブランドの招待状やタグなどのデザインを自らアポを取り次々と制作して行きます。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:ロス・NY
2:グラフィックデザインの仕事
3:絵本の仕事
4:ワークショップ




駒形氏の仕事に転機が訪れたのは1989年にお嬢さんが誕生したことがきっかけです。子ども向けの絵本を制作するようになったのです。

とても素敵なことに、子どもさんの成長に合わせ絵本を制作していきます。小さな存在である駒形親子の為に作られた絵本は、日本国内のみならず世界中で人気を博すことになるのです。


ごぶごぶ ごぼごぼ (0.1.2.えほん)


What color?(このいろなあに)―Learning for children (Little eyes (6))

村上春樹の小説以上に彼の絵本は普遍性を持っています。それはシンプルに色や数字、形だけで構成されているからです。ちょっとした発見や驚きもスパイスして。

もしかしたら、ご自宅に駒形氏の手掛けた絵本あるのではないでしょうか。少なくともどこかで必ず一度は目にしているはずです。


駒形克己絵本インスタレーション

作家自らが展示した本を用いたインスタレーション。愛する娘の為に作ってきた「小さな絵本」たちが展示室全体を覆う「大きな作品」として展示されています。

本を展示棚に固定せずに、立ててあるだけの自然さもまた素敵です。

デザイナーの展覧会というとどこかかしこまった、ちょっとすかした感じを受けたりしますが、「駒形克己展」では逆に優しい雰囲気に包まれます。


ワークショップでの駒形氏(中央)

こんな生き方(仕事を含めて)をしたいな〜と誰しもが憧れる「形」がそこにはあります。

新しくなった板橋区立美術館の見学も兼ねて、「小さなデザイン 駒形克己展」是非行ってみて下さい。「駒形克己展」は2020年1月13日までです。


「小さなデザイン 駒形克己展」

会期:2019年11月23日(土・祝)〜2020年1月13日(月・祝)
開館時間:9時30分〜17時
(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(1月13日は祝日のため開館)、12月29日〜1月3日
会場:板橋区立美術館
http://www.itabashiartmuseum.jp/
主催:板橋区立美術館
特別協力:ワンストローク
企画協力:ブルーシープ

展覧会図録は一般書籍として販売されています。

『小さなデザイン 駒形克己展』
板橋区立美術館・ブルーシープ (著)

“コムデギャルソン、ZUCCa、絵本『Little Tree』。デザインにおける「小さくあること」を追い求めて”2019年11月から板橋区立美術館で開催(以降、全国巡回)する、駒形克己展の図録です。『Little Eyes』『Little Tree』などの絵本で国際的に注目を集める造本作家/デザイナーの駒形克己。40年を超える活動から、版画、グラフィックデザイン、絵本、国内外でのワークショップ、試作やアイディアスケッチを約300点紹介します。招待状や絵本など手の中に収まる「小さなデザイン」から、作り手・クライアント・受け手との、小さく緊密な関係性が生み出す作品まで、「小さくあること」の大切さにも思いをはせる内容です。

乃木坂のBooks and Modern + Blue Sheepでは「小さな 小さな デザイン 駒形克己のMini Book」も開催中です。


小さな 小さな デザイン
駒形克己のMini Book


会期:2019年11月29日(金)−12月21日(土)12:00−19:00
※日曜・月曜日はお休み
会場:Books and Modern + Blue Sheep
住所:107-0052 東京都港区赤坂
9−5−26パレ乃木坂201
営業時間:火曜 − 土曜日 12:00 − 19:00
https://booksandmodern.com/

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「ミイラ展」

国立科学博物館で開催中の
特別展「ミイラ」 〜「永遠の命」を求めてに行って来ました。


https://www.tbs.co.jp/miira2019/

南米、エジプト、ヨーロッパ、オセアニア、日本のミイラ、総数43体からなる特別展「ミイラ」。

見世物小屋的な要素は一切なく、最新の調査と研究手法を駆使して判明した研究成果を踏まえた展示は圧巻の一言に尽きます。

それは、いつも賑やかな声やカメラのシャッター音が響く科博の特別展示室とは思えないほど静けさに包まれています。大勢の人が固唾をのんで目の前にあるミイラを興味深く観察しています。


(イメージ図)

ところで、ミイラと聞いてまず真っ先にどこの国や地域を思い浮かべるでしょう。多くは古代エジプトや古代インカ帝国のもの、それとも日本の即身仏でしょうか。

「ミイラ展」の章立てもその地域ごとに構成されています。

ここが最大のポイントで、一言で「ミイラ」といっても自然にミイラ化したものと、人工的にミイラにしたものに大別できます。


エジプトで古代の棺30個を発見…完全な保存状態のミイラも公開」より。

人工的に作られたミイラで、最も有名であり数も多いのが古代エジプト。ツタンカーメンの黄金のマスクなど日本でも公開されましたね。

南米アメリカのミイラも人工的に作られましたが、エジプトとは環境や信仰が違う為、ミイラ自体の「形」も自ずと変わってきます。


チャチャポヤ族のミイラたち。「インカ帝国展」(2012年)より。

ところが、エジプトや南米といったメジャーな「ミイラ産地」とは別に、ヨーロッパでもミイラは発見されているのです。

そしてそのほとんどが自然にミイラ化したものであり、人工ミイラとは全く次元が異なる似て非なるものとなっています。

「ミイラ展」ポスター・チラシのシルエット画像はオランダの湿地帯で1904年発見された「ウェーリンゲメン」です。


(イメージ図)Netherlands Landscape

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:南北アメリカのミイラ
南北アメリカにおけるミイラの歴史は古く、「世界最古の自然ミイラ」も「世界最古の人工ミイラ」もここで発見されている。インカ帝国時代では、歴代皇帝がミイラとなったことから、ミイラは社会的に重要な意味をもっていた。ペルー北部の高地に位置するチャチャポヤス地方で発見されたミイラは、インカのミイラ文化を知る貴重な資料となっている。

第2章:古代エジプトのミイラ
古代エジプト人は動物のミイラもつくっていた。動物ミイラは、家族として一緒に埋葬されたり、神々への捧げものであったり、人間のミイラの食べ物とされたり、さまざまな意図でつくられていた。

第3章:ヨーロッパのミイラ
ヨーロッパ各地でも多数のミイラが発見されているが、そのなかでも湿地遺体(ボッグマン)とよばれるミイラは驚くべき保存状態で発見されている。

第4章:オセアニアと東アジアのミイラ
オセアニアには複数のミイラ文化が存在していたが、20世紀になるとミイラづくりが行なわれなくなり、また現存するミイラも少ないため、その実状はよくわかっていない。日本には仏教思想に基づき即身成仏を切望した行者(ぎょうじゃ)または僧侶のミイラのことを「即身仏」として崇拝の対象とする考えがあり、現在でも大切に保存されている。



怖いもの見たさ、興味本位で気楽な気分で出かけたとしても、2,3体のミイラを目にし解説(映像解説も多数あり)を見聞きすると、高い精神性を感じずにはいられなくなります。

間違ってもiPhoneで写真を撮ろうなどとは微塵も思いません。目の前にある長い歳月を経て今の我々に寡黙に語り掛けてくれる「仏さま」たちに対して。

日本国内からは、即身仏「弘智法印 宥貞(こうちほういん ゆうてい)」が科博まで遠路はるばるやってきてくれています。


中尊寺金色堂(金色堂の須弥壇内には、藤原清衡、基衡、秀衡のミイラ化した遺体と泰衡の首級が納められている。)

「中尊寺金色堂」と平泉の世界遺産をめぐる旅

上野で開催されている展覧会の中で、ダークホース的な存在の「ミイラ展」。これは当たりです。行って損なし。というか色々と考えさせられるものがあります。

特別展「ミイラ」は2020年2月24日までです。是非!


特別展ミイラ 〜「永遠の命」を求めて

会期:2019年11月2日(土)〜2020年2月24日(月・休)
開館時間:午前9時〜午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)
11月3日(日・祝)は午後8時まで、11月4日(月・休)は午後6時まで
※入場は各開館時刻の30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)および12月28日(土)〜1月1日(水・祝)
※ただし2月17日(月)は開館
会場:国立科学博物館 地球館 特別展示室
https://www.kahaku.go.jp/
主催:国立科学博物館、TBS、日本経済新聞社
共催:BS-TBS、凸版印刷、ローソンエンタテインメント
後援::TBSラジオ
協力:ルフトハンザ カーゴ AG
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/miira2019/


『カラー版 世界のミイラ』 (宝島社新書)

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