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「ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン」

パナソニック汐留美術館で開催中の
「ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン」に行って来ました。


https://panasonic.co.jp/ls/museum/

日本でも人気の高い、ラウル・デュフィ(1877-1953)の5年ぶりの展覧会は、絵画だけでなく、彼が数多く手掛けたテキスタイル・デザインも多く紹介されています。

ラウル・デュフィ作品の魅力としてその明るさがまずあげられます。多くの画家たちが抽象絵画がへの道を進む中デュフィはそれに追従せず、海や音楽といったモチーフを鮮明な色調で描き続けました。


ラウル・デュフィ「黄色いコンソール」1949年頃
油彩/キャンバス
大谷コレクション

晩年に至ってもまだ尚これだけ明るい多幸感あふれる作品が描けたデュフィ。多くの人から愛され高い人気を誇るわけもよく分かります。

今回の展覧会ではデュフィが学生時代に描いた珍しい初期作品も出ており、数こそ多くないものの初期から晩年までの彼の作品を一望できます。


左)ラウル・デュフィ「グラン・ブルヴァールのカーニヴァル」1903年
株式会社リソー教育(TOMAS)蔵
右)ラウル・デュフィ「モーツァルトに捧ぐ」1915年
大谷コレクション

美術学校時代の「グラン・ブルヴァールのカーニヴァル」は印象派への憧れが、「モーツァルトに捧ぐ」にはセザンヌへの傾倒がはっきりと見てとれます。

後のキュビズムやフォービスムといった時代の激しい潮流の中にあり、自己を持ち続けた結果として唯一無二の画風を作り上げて行ったのがデュフィなのです。


ラウル・デュフィ「ニースの窓辺」1928年
油彩/キャンバス
島根県立美術館蔵

それにしても、日本国内には佳いデュフィ作品がこんなにもあるのですね。上野の国立西洋美術館の常設展でも「モーツァルト」が観られます。

その昔(1965年)国立西洋美術館は、ラウル・デュフィの贋作「アンジュ湾」をフェルナン・ルグロから購入してしまった痛い経験もしています。

この話は過去に多くの著書で紹介されている有名な話です。

閑話休題。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:絵画 生きる喜びー陽光、海、そして音楽
2:モードとの出会い
・『動物詩集またはオルフェウスの刊行』と木版画からの展開
・ポール・ポワレ、ビアンキーニ=フェリエ社とのコラボレーション
3:花々と昆虫
・薔薇
・様々な花
・花と葉
・昆虫
4:モダニティ
・モダン・ライフ
・幾何学的模様
特別展示:マイ・フェア・レディ


第1章で絵画をまとめて展示し、第2章以降は彼が手掛けたバリエーション豊かなテキスタイル・デザインを実際のドレス(洋服)などと共に見せています。



ビアンキーニ=フェリエ社のために手がけた布地のデザイン原画や下絵、当時のオリジナルの絹織物、版木や見本帳など116点が並びます。

展示数的にはテキスタイル・デザインの方がぐんと比率が高い展覧会となっています。

デュフィと言えども、流石に同じようなデザインが多いのでは…と思っていたのですが、予想に反し、実にバリエーション豊富!!

絵画ではできなかった新たなチャレンジをテキスタイル・デザインでは思う存分好きなように行えたのではないでしょうか。


貝殻と海の馬》1922−24年頃
金銀糸の入った錦
デュフィ・ビアンキーニ蔵


ヴァイオリン》1989年(デザイン1914−20年頃)
毛織物
デュフィ・ビアンキーニ蔵


幾何学模様の構図〔デザイン原画〕》1919−28年頃
グワッシュ/紙
デュフィ・ビアンキーニ蔵

「貝殻と海の馬」は、ファッション・デザイナーのポール・ポワレの衣装にも使用された生地です。ポワレとデュフィがこんなにも親密な関係にあったとは知りませんでした。

こうした、デュフィによる鮮やかな色彩と大胆なモチーフの布地は、上流階級の女性たちを魅了し大評判となったそうです。



Marimekko(マリメッコ)のデザイン??と思わせるとてもモダンなテキスタイルです。この柄は「うろこ」。よく見ると円形ではなく涙型の模様が重なり合っています。

くどいようですが、これもラウル・デュフィが手掛けたものです。

この展覧会にはデザイナーとしてのラウル・デュフィを存分に味わえる、新鮮な出会いに満ち溢れています。

「ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン」は12月15日までです。大規模展とは違った秋のひと時を過ごすのにもってこいの展覧会です。


「ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン」

会期:2019年10月5日(土)〜12月15日(日)
休館日:水曜日
開館時間:午前10時〜午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
※11月1日(金)、12月6日(金)は夜間開館 午後8時まで(入館は午後7時30分)
会場:パナソニック汐留美術館
(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F)
https://panasonic.co.jp/ls/museum/
主催:パナソニック汐留美術館、産経新聞社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、港区教育委員会
企画協力:株式会社テモアン

嬉しいことに、青幻舎さんよりとてもスタイリッシュな装幀で展覧会図録を兼ねた本が出ます。


ラウル・デュフィ 絵画とテキスタイル
パナソニック汐留美術館 (監修), 松本市美術館 (監修)

「色彩の巨人」デュフィ、ここに極まる。

音楽や社交をテーマとした油彩画など、生きる喜びに満ちた作品を描いたデュフィは、リヨンの絹織物製造業ビアンキーニ=フェリエ社のために、1912年からの16年間、テキスタイルのデザインも提供していた。鮮やかな色彩と大胆なモチーフの布地は、上流階級の女性たちを虜にし、瞬く間に大評判となった——

絵画作品に加えて、デザイン原画や下絵、オリジナルテキスタイル、復刻生産されたテキスタイルによる華麗なドレスなど、絵画とテキスタイル作品約150点を収録。


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「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展」

練馬区立美術館で開催中の
「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展」に行って来ました。


https://www.neribun.or.jp/museum.html

2016年4月から伊丹市立美術館を皮切りに日本全国8か所を巡回している「エドワード・ゴーリー展」がいよいよ23区内の美術館へやってきました。

アメリカの絵本作家として世界中に多くのファンを抱えるエドワード・ゴーリー(Edward Gorey, 1925年〜 2000年)。

その独特の画風やストーリーから奇才と呼ぶに最もふさわしい作家のひとりと言えます。


エドワード・ゴーリー「ギャシュリークラムのちびっ子たち」1963年

お気に入りのペンで描かれた細い線で表現された原画が数多く出ています。一般的な絵本の原画展だと思っていたより作品数が少なかったりするものです。

いちばん問題となるのは原画のサイズです。宗教画ほど巨大でなないにせよ、まぁそれなりの大きさがあるため、美術館に展示出来る枚数もおのずとその数が決まってしまいます。

翻ってゴーリーはどうでしょう?彼は実際に本に掲載される際のサイズで描くことを心掛けました。つまりとても小さいのです。本の1ページ分あればまだ大きい方です。

イメージ的にはポストカードサイズだと思って下さい。それゆえ、原画だけでも約160点も展示されているのです。因みに生涯に上梓した自著は100冊以上!


エドワード・ゴーリー「うろんな客」1957年


うろんな客

うろん【胡乱】
1 正体の怪しく疑わしいこと。また、そのさま。「胡乱な者がうろついている」
2 確かでないこと。真実かどうか疑わしいこと。また、そのさま。
3 乱雑であること。また、そのさま。


多くのゴーリーの原画を一度にたくさん見られるのはファンのみならず、とても喜ばしいことなのですが、小さいので最前列でないと細かな線まで見えません。

それと描き込まれている情報量が一見シンプルなようで、実は含みや遊びが散りばめられているので、滞留時間が長くなり「渋滞」が発生します。

単眼鏡無くしてこの展覧会は乗り切れません!


エドワード・ゴーリー「不幸な子供」1960年


不幸な子供

この『不幸な子供』など、少女が登場する絵には全てどこかに「怪物」がこっそりと描き込まれていたりします。ベットの下や階段の途中はたまた…

「いつかは幸せになれるはず」という読者の願いをその「怪物」たちことごとく食い散らかし、そして運命の結末へ誘います。。。

マックス・エルンストや、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンが彼の愛読者だったのも納得です。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 主著:ゴーリーによるゴーリーの世界
第2章 イギリスのナンセンス詩や文学とゴーリーの挿絵 
第3章 ゴーリーの多様な創作と舞台美術 


ゴーリーは、幼い頃から芸術に親しみ、ハーバード大学ではフランス文学を専攻。アメリカ、ヨーロッパの舞台芸術にとどまらず、日本の歌舞伎にも興味関心を寄せた、芸術に対して貪欲な人物でした。

だからこそ、オノマトペだけで台詞のない絵本や不気味でありながらユーモアも兼ね備えた、彼独特の世界観を作り出すことに成功したのでしょう。


エドワード・ゴーリー「輝ける鼻のどんぐり」1969年

イギリスの児童文学作家、エドワード・リア(1812-1888)をリスペクトし描いた作品など、イギリス文学との関わりを示したセクションもあります。

挿絵や装丁の仕事に加え、ゴーリーは舞台のセットや衣装デザインも数多く手掛けています。25年間ほぼ全ての作品を観たとニューヨーク・シティ・バレエも様々な形で貢献しました。


エドワード・ゴーリー「キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科」1982年


キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科

トマス・スターンズ・エリオット(1888-1965)による「キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科」は、ミュージカル『キャッツ』の原作となったお話です。

この表紙や挿絵もゴーリーが手掛けています。暗くシニカルな作品が多い印象のゴーリーですが、表の顔は無類の猫好きオジサンでした。これは喜んで引き受けた仕事に間違いありません。


エドワード・ゴーリー「空飛ぶ猫のいる自画像


エドワード・ゴーリーの優雅な秘密: 展覧会公式図録

。とても見応えのある展覧会でした。最後に絵本が読めるコーナーも設けられています。まずは絵画作品として一枚一枚じっくりと目を凝らして観て下さい。

不気味さナンセンスと優雅さユーモアを兼ね備えた唯一無二の世界観。中毒性高し。

そうそう、作品解説の文中に黒字で強調されている文字が数か所あります。それを第一展示室から拾い上げていくと…ある言葉になります。中々心憎い仕掛けです。

「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展は11月24日までです。なるべく空いている曜日や時間帯を狙って行きましょう。


「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」 

会期:2019年9月29日(日)〜11月24日(日)
休館日:月曜日
※ただし、10月14日(月・祝)・11月4日(月・休)は開館、10月15日(火)・11月5日(火)は休館
開館時間:午前10時〜午後6時 
※入館は午後5時30分まで
会場:練馬区立美術館
https://www.neribun.or.jp/museum.html
主催:練馬区立美術館(公益財団法人練馬区文化振興協会)
協力:Edward Gorey Charitable Trust、Brandywine River Museum、株式会社 河出書房新社
後援:一般社団法人日本国際児童図書評議会(JBBY)
企画協力:株式会社イデッフ


エドワード・ゴーリー(Edward Gorey, 1925年〜 2000年)


『MOE特別編集 エドワード・ゴーリーの優雅な秘密』 (白泉社ムック)

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「ミュシャと日本、日本とオルリク」

千葉市美術館で開催中の
「ミュシャと日本、日本とオルリク」展に行って来ました。


http://www.ccma-net.jp/

来年(2020年)に、日本とチェコスロバキア共和国が外交関係を開設してから100周年を迎えます。これまでまとめて紹介されることのなかったチェコのアート・デザイン面でも様々な展覧会が企画されています。

千葉市美術館では日本での知名度抜群のアルフォンス・ミュシャ(1860–1939)と、逆にほとんど日本では無名のエミール・オルリク(1870 –1932)というチェコ出身のふたりのアーティストを中心に、日本との関連を主眼に置いた展覧会が開かれています。


アルフォンス・ミュシャ ポスター「ムーズ・ビール」
1897年 リトグラフ、紙
三浦コレクション、川崎市市民ミュージアム蔵

ミュシャが日本のみならず後進のクリエイターたちに多大な影響を与えたことはよく知られていますが、これだけの多岐に渡り丁寧に紹介している展覧会はこれが初めてです。

Bunkamuraの「みんなのミュシャ展」でも、ミシャが後世のクリエーターたちに与えた影響を主眼に展示されていましたが、千葉市美は質・量ともそれに勝ります。

しかも、ミュシャたちにそもそも日本の琳派の絵師たちの作品が影響を与えていたことを示すため、芸艸堂から木版本『光琳画譜』『古う里むもやう』などが、まず最初の部屋に展示されています。


ミュシャと日本 日本とオルリク展 : 芸艸堂 店主の日記

となると、展示構成が気になりますよね。

序章 ジャポニスム―光琳、型紙、そして浮世絵
第1章 チェコのジャポニスム
第2章 ミュシャと日本
第3章 日本とオルリク
第4章 オルリク─日本の思い出/後継者たち


この序章がとても効いています。浮世絵の影響はよく知られていることですが、琳派作品も同様に彼らのインスピレーションの源となっているのです。

そして1章では主にミュシャ作品をずらりと並べ、どの部分にどんな形で日本文化が関連しているのかを観ていきます。

ただ美しく、デザインセンス抜群のミュシャ作品もこれまでとは違った視点で向き合えるのです。これはありそうでなかったことではないでしょうか。


ヴォイチェフ・プライシク「ナイチンゲール
1900年 カラーアクアチント・エッチング、紙
パトリック・シモン・コレクション、プラハ

展覧会名からだとその全貌の一部しか分からいことよくあります。「ミュシャと日本、日本とオルリク」はその最たるものでしょう。

看板画家のミュシャとオルリクの他にもごまんとチェコ出身の作家の作品が並びます。軽く流しても1時間半、じっくり観たら3時間コースです。


エミール・オルリク「ウィーン分離派第14回展カタログ
1902 冊子
和歌山県立近代美術館

また無名のオルリクですが、実は日本に2度も来日し浮世絵の木版画を学び、その技術をウィーン分離派の画家たちやドイツ語圏のアーティストに伝えるという大きな文化の橋渡しを果たした重要なアーティストです。

彼の作品や影響の足跡を初めて紹介する展覧会でもあります。ミュシャ、オルリクどちらか一方だけでも展覧会として十分な内容をまとめてもの凄い物量で紹介しています。


エミール・オルリク(装幀) 『KOKORO(こころ)』(ラフカディオ・ハーン著)
1905 書籍
和歌山県立近代美術館

夏目漱石『こころ』の装幀も手掛けていたオルリク

ここでは、ほんの展覧会の一部しか紹介出来ていません。そうそうひとつ大事なことを最後に。ミュシャから影響を受けた日本人たちの作品も数多く出ています。

それは、「みんなのミュシャ展」に数点でていただけの明治、大正そして昭和期の作家たちのものです。

浅井忠、青木繁、藤島武二、長原孝太郎、中澤弘光、杉浦非水、佐藤生巣、中村不折、橋口五葉などなど。それも1,2点でなくそれぞれ相当数が出ています。逃げ場を与えないほどのこれでもか〜と提示されています。


ミュシャと日本、日本とオルリク

有難いことに図録は一般書籍としても販売されています。

千葉まで出かけるだけの価値が十分過ぎるほどあります。「ミュシャと日本、日本とオルリク」展は10月20日までです。是非是非〜


「ミュシャと日本、日本とオルリク」

会期:2019年 9月7日(土)〜 10月20日(日)
開館時間:10:00〜18:00
金、土曜日は20:00まで
※入場受付は閉館の30分前まで
休館日:9月30日(月)、10月7日(月)
会場:千葉市美術館
http://www.ccma-net.jp/
主催:千葉市美術館/読売新聞社/美術館連絡協議会  
後援:駐日チェコ共和国大使館/チェコセンター東京
協賛:ライオン/大日本印刷/損保ジャパン日本興亜/日本テレビ放送網
協力:ルフトハンザカーゴ AG/イデッフ/一般財団法人高久国際奨学財団
特別協力:チェコ国立プラハ工芸美術館/ダッハウ絵画館


ヴォイチェフ・プレイシグ「少女の思い、〈カラー・エッチング〉集、図1
1906年 カラーエッチング、紙
チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

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「バスキア展」

森アーツセンターギャラリーで開催中の
「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」に行って来ました。


https://www.basquiat.tokyo/

アメリカ、ニューヨークで生まれ綺羅星の如く一世を風靡し、NYのアートシーンを大きく突き動かした画家・ジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat、1960年12月22日 - 1988年8月12日)

バスキアがもしまだ存命だったら還暦をそろそろ迎える歳となりますが、僅か27歳の若さでこの世を去ってしまい、今では文字通り伝説のアーティストとなっています。


Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

会場入口で出迎える、伏目がちでどこか物憂げな表情のバスキアの写真を目にするとどうしても感傷的になってしまいます。

「もう少し長生きして多くの作品を描いて欲しかった」「親交の深かったウォーホルともっとハチャメチャな活動をして欲しかった」など、夭折したことをインプットされているが故に、否が応にもそう思うはずです。

しかし、そんなセンチメンタルな気分になっている暇はそこから先の展示空間には全く存在しません。あるのは圧倒的な熱量を帯びた初めて目にする作品群です。


「バスキア展」展示風景
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

何年も前から「バスキア展」開催に向け作品交渉にあたり、当初は80点ほどの作品で構成される予定でしたが、開幕してみると180点ものバスキア作品で埋め尽くされることに。

展示作品が諸事情により減ってしまうことはよく耳にしますが、1.5倍にまで当初予定より増加する展覧会は、これまで聞いたことがありません。

鑑賞者の我々にとってはとても嬉しいことです。(保険料その他どれだけ高額になるのか心配しつつ…)


ジャン=ミシェル・バスキア「オニオンガム」1983年
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

この作品中に「Made in Japan」という文字がはっきりと書かれています。お見逃しなきように!

さてさて、自分の記憶が定かなら、バスキア作品を目にしたのはBunkamuraで開催された「ベラルド・コレクション展」(2004年)が最後です。

しかもどの作品を観たのか今となってははっきりと覚えていません。ただバスキアという画家の存在はこれ以前からもちらほらと目にはしていました。

昨年、映画で当時のNYの様子やバスキアについて予習し、「バスキア展」に備え『Pen』も読み込んで出かけたおかげで、今回、知識はそれなりに頭の中にありました。


ジャン=ミシェル・バスキア「フーイー」1982年
高知県立美術館蔵
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

ただ、そうした知識は実際にバスキアの作品と向き合うと、ほとんど必要ありません。それよりも鑑賞に堪え得る体力の方がよほど必須となります。

その理由は単純明快で、彼の作品それぞれが圧倒的なパワーを有しているからです。

残念なことに画集やwebの画像ではそれが微塵も伝わりません。落書きのように思えてしまう方もいるのではないでしょうか。

そんな人にこそ「バスキア展」はおススメです。とにかく実物が発する「作品力」は、身震いを覚え下手をすると自然に涙が流れてくるほど心を奥底から揺さぶります。


ジャン=ミシェル・バスキア「炭素/酸素」1984年
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

一見するととてもラフに描きなぐった作品のように見えるかもしれません。でもバスキアは一枚の作品を完成させるのに何度も何度も修正を加えているのです。

満足して筆を起き、朝目覚めはやりここが違うと感じればまた筆を入れる作業を繰り返しました。

画商が完成するのを待てずに、バスキアに無断でアトリエから持ち帰ってしまったというエピソードも残されているほどです。


ジャン=ミシェル・バスキア「温度」1982年
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

「無邪気な子どものような絵」という喩えもバスキア作品を前にすると、的を射ていない浅薄なものであるとすぐに理解できます。

逆に、考えに考え抜きそこに魂を込め描かないと、それこそ子どもの絵と同じになってしまいます。バスキアを「黒いピカソ」と讃える宮下規久朗先生の意見はなるほど尤もです。


ジャン=ミシェル・バスキア「無題」1985年
世田谷美術館蔵
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

冷蔵の扉やこうしたスツールなどありとあらゆる身の回りにあるものをキャンバスとしたバスキア。珍しい立体作品として展示されています。

それにしても世田谷美術館がこんな作品を持っていたとは!世田谷美術館、この他にもバスキア作品出展しています。是非、常設展で見せて欲しいものです。

因みに画像右奥に写っている作品(「大寺院」)には京都を訪れた際に目にした五重塔が描かれています。きっと東寺の五重塔でしょう。


ジャン=ミシェル・バスキア「プラスティックのサックス」1984年
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

バスキアはその短い人生の中で3回も日本を訪れています。某カフェの壁に直接描いたなど逸話も多く残されています。

そして彼ほど日本を愛した現代アーティストも珍しいのではないでしょうか。「プラスティックのサックス」にも日本語(日本の折り紙のパッケージなど)が描かれています。


プラスティックのサックス」(部分)
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

正直なところ、「バスキア展」開催を心待ちにしていましたが、実際に作品を観てブログが書けるほどの感想を得られるか不安でした。上手く言語化できないのではと。

バスキア作品のどこがどう良いのかを言葉で説明するのは至難の業です。言語化した瞬間にチープなものとなり下がってしまうからです。

ところが、どうでしょう。こうしてスラスラと勢いよくブログに駄文を綴っています。そうさせたのは、取りも直さずバスキア作品の圧倒的な力です。


「バスキア展」展示風景。前澤友作さん所蔵の「無題」も出ています。
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

繰り返しになりますが、会場で実際にバスキア作品と向かい合わないと言わんとしていることは伝わりません。

ここ数年で最も心を揺さぶられた展覧会であることは確かです。勿論今年のベスト10入り確定です。

四の五の言わずに、今すぐにでも六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーへ行きましょう。これだけの規模の「バスキア展」が観られるのはこれが正真正銘最後です。


Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

貴重なスケッチ、ドローイングもまとめて観られる好機です。

それにしても、展示作品多かったな〜

正直この半分、いや50点だけでも同じくらいの満足度を得られたはず。まだまだ感動の余韻当分冷めそうにありません。

※朗報です!「バスキア展」展覧会図録、一般書籍としても販売されます。Amazonでは9月30日出版予定となっています。


バスキア展 メイド・イン・ジャパン
ディーター・ブッフハート (編集), グルーヴィジョンズ (その他)
バスキア研究の世界的権威ディーター・ブッフハート氏が、バスキアと日本との多方面にわたる絆、日本の豊かな歴史や文化がその創作に及ぼした知られざる影響を明らかにする。世界各地から集めた約130点の絵画やオブジェ、ドローイングの図版のほか、ブッフハート氏、美術史家の宮下規久朗氏のエッセーやポートレート、年表などを収録した決定版。
「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」は11月17日までです。とにかく観に行きましょう!そして実物でしか味わえない大きな感動を得ましょう!!


「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」
Jean-Michel Basquiat Made in Japan


会期:2019年9月21日(土)〜 11月17日(日)
※休館日9月24日(火)
開館時間:10:00〜20:00(最終入館 19:30)
※ただし9月25日(水)、9月26日(木)、10月21日(月)は17:00まで(最終入館 16:30)
会場:森アーツセンターギャラリー
(六本木ヒルズ森タワー52階)
https://macg.roppongihills.com/jp/
主催:フジテレビジョン、森アーツセンター
特別協賛:株式会社ZOZO
協賛:損保ジャパン日本興亜
後援:アメリカ大使館、ニューヨーク市観光局、WOWOW、J-WAVE
キュレーター:ディーター・ブッフハート
アソシエイト・キュレーター:アナ・カリーナ・ホフバウアー、小野田 裕子
日本側監修:宮下 規久朗(神戸大学教授/美術史家)
Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York


宮下規久朗氏(「バスキア展」日本側監修、神戸大学教授/美術史家)

ウォーホルの本を書いたことがあり、バスキアをアカデミックに紹介をする機会ということで日本側監修のご指名を受けました。本物の作品の前に立つと凹凸がはっきりしていて、鮮烈な色が印象的です。アフリカの歴史や黒人の歴史も詰まっています。それ以前に作品の持っている力が圧倒的なので、ぜひ会場で本物を見ていただきたいです。


Pen(ペン) 2019年10/1号 [ニューヨークを揺さぶった天才画家 バスキアを見たか。]

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「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」

日本橋眦膕S.C. 本館8階ホールで開催中の
「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展に行って来ました。


https://www.takashimaya.co.jp/store/special/shiseido/

以前、拙ブログでも紹介した資生堂×眦膕 初の展覧会「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展が日本橋高島屋で始まっています。

会期が短く今月の29日までですので、迷わず明日にでも日本橋まで観に行って下さい。いつもの日本橋高島屋の展示室とはまるで違う、巧みに作り込まれた空間にただただ感動するはずです。

容易に感動するなんて表現は用いたくありませんが、それ以外の言葉が中々見つかりませんでした。




一部を除き写真撮影も可能です。

名画に囲まれた美術館に何時間でもいられるように、「美と、美と、美。」展の会場も出来ればずーと居たいと思わせる素敵な空間となっています。

資生堂の歴代の商品や専門誌『花椿』やポスターなどを紹介する展覧会ですので、初めて目にするものは決して多くなく、かつて銀座にあった資生堂の施設で何度となく拝見したものも多くありました。

にも関わらず、「美と、美と、美。」展がスゴイ!と思ってしまうのは、やはりその見せ方にあると思います。


『花椿』


香水

このような赤を基調とした(展示室の壁の色が赤というのもとても新鮮です)空間が延々と続くわけではありません。セクションごとに「部屋」のような造りになっているのです。

例えば『花椿』の展示空間の入口はこんな感じです。



9つから成る章を小部屋もしくは、個人の邸宅のように見立て、それぞれ「外」からお邪魔する感覚で各セクションに入って行きます。

ともすれば全体的に平板な空間となりがちなところを、こうすることにより、ドラマチックなものに見事に昇華させています。


各章の入口には資生堂の花「椿」がさり気なく、茶室の花のように飾られているのも見逃せません。瓶もそれぞれ違ったりします。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:赤の魔法 オイルデルミン
2:「花椿」
3:「美」が現る
4:「美」を創る
5:資生堂の「美」の歴史
6:「美」を描く 山名文夫の世界
7:セルジュ・ルタンス
8:「美」が香る
9:「美」の未来


空間だけを褒めているようですが、個々の展示品も資生堂の歴史の重みを感じるものばかりです。


メトロポリタン美術館「ダンス展」記念フレグランス
資生堂 エンチャンティングダンス パルファム 1986年

ちょっと変わったものだとこんなものも。

ソーダファウンテン(縮小複製)

1902年(明治35年)に、銀座の資生堂薬局内にソーダファウンテンが開かれました。現在の資生堂パーラーです!

日本初のソーダ水やアイスクリームの製造販売を行ったそうです。



また、個々人で懐かしい〜と感じる展示品にも数多く出会えます。親子で行かれたりすると更に楽しいかもしれません。

化粧品だけでなく、「資生堂スタイル」と呼ばれる優雅な女性像をイラストで表現した山名文夫のデザインや原画も観られます。


山名文夫

一部しかご紹介していませんが、どうです?!観に行かねばならないでしょう。日本橋高島屋での展示後各地を巡回することになっています。

【巡回会場】
・大阪  2020年3月25日(水)〜4月6日(月) 大阪眦膕 7階グランドホール
・名古屋 2020年4月15日(水)〜27日(月) ジェイアール名古屋タカシマヤ 11階特設会場
・京都  2020年7月22日(水)〜8月10日(月) 京都眦膕 7階グランドホール
・横浜  2020年9月2日(水)〜21日(月) 横浜眦膕 ギャラリー<8階>


「美」の未来

最後の章では、ロボットが女性の顔や椿の花を自動で描く様子が間近で観られます。絵筆の代わりに赤い口紅で自動で描いていく不思議な空間が最後に待っています。

2019年4月に新たに企業使命を「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」と定めた資生堂。

約500点で構成される「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展にかける意気込みただならぬものがあります。必見です!


「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展

会期:2019年9月18日(水)〜9月29日(日)
開館時間:10時30分〜20時
※最終日は18:00閉場(入場は閉場の30分前まで)
会場:日本橋眦膕S.C. 本館8階ホール(東京都中央区日本橋2‐4‐1)
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/shiseido/
主催:「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」展 実行委員会
特別協力:株式会社 資生堂・資生堂企業資料館
企画制作:ブルーシープ
http://bluesheep.jp/


資生堂 オイデルミンG オイデルミン

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