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「日本絵画の隠し玉」

大倉集古館で開催中の
「日本絵画の隠し玉〜大倉コレクションの意外な一面〜」展に行って来ました。


https://www.shukokan.org/

歴史ある大倉集古館の展覧会にこれまでほとんど出なかった(中には一度も出品されなかった)稀品をまとめて紹介する展覧会です。

狩野派や近世近代絵画の優品を多く所蔵する大倉集古館では極めて珍しい企画展。大倉集古館学芸部顧問(館長代行)として安村敏信先生が着任したからこそ実現しました。


二代葛飾戴斗「鐘馗図」1830年

安村敏信先生といえば先日まで江戸東京博物館で開催されていた「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」も担当されていました。

7月7日から山口県立美術館で、9月12日からはあべのハルカス美術館で開催されます。
https://kisai2020.jp/


「日本絵画の隠し玉展」展示風景

現在、大倉集古館で拝見できる「日本絵画の隠し玉〜大倉コレクションの意外な一面〜」にも、ユニークな作品が数多く出ています。

何故、今まで「お蔵入り」し陽の目を見なかったのか、考えれば考えるほど実に勿体ない作品ばかり。


虫太平記絵巻」江戸時代 18世紀

画像は小さくて分かりにくいのですが、太平記の登場人物が虫として描かれている絵巻です。非常にお金がかけられた美しい作品で、それ相応の身分の方が手元で広げ楽しんだものでしょう。

楠木正成は立派な?カマキリの姿をしています。現在の「昆虫」という枠には入らない蛇なども虫として登場。人物を具に特定していくと当時の人々のイメージも分かるかもしれません。

擬人化された虫ばかりに目が行きがちですが、風雨の様子など風景もとても丁寧に描かれています。これ本にしたら売れるんじゃないですかね。


「日本絵画の隠し玉展」展示風景

個人的に惹かれたのは、山口雪渓「十六羅漢図」。16幅すべて展示されいたのも迫力ありますし、1点1点それぞれ筆が走っていて見応え十分。

羅漢の顔もエグイし、一緒に描かれている動物たちも長谷川派から学んだとは思えない特有の表現をみせます。


山口雪渓「十六羅漢図」江戸時代 17〜18世紀

隠し玉展で本当に隠し玉に出会えると嬉しくなります。尤も、このエグミが際立ち過ぎているがゆえに、これまでの大倉集古館での展示にはまずだされなかったのでしょう。16幅全て展示したのも今回が初めてなのかしら。

この他にも、左右で大きさや絵が違う「扇面散らし屏風」や、絶対周文ではない伝周文の「寒山拾得図」(おかしなポーズ取っています)などなど。

大倉集古館の蔵の奥の奥から引っ張り出してきたような、珍品=名品がずらり。


扇面散らし屏風」江戸時代 17世紀

ただし、面白い作品が多いだけではないのがこの展覧会の魅力でもあります。

幕末から明治にかけ活躍し当時は大変名の知れた絵師だった塩川文麟など、現在ではすっかり忘れ去られてしまった絵師たちの作品を観ることが出来ます。

フリーア美術館やボストン美術館には沢山所蔵されている塩川文麟ですが、日本国内の展覧会ではあまりお目にかかる機会がありません。

そうした意味での稀品、珍品、名品を一挙公開している蔵出し展。安村先生自ら記したキャプションも読みごたえあります。

「日本絵画の隠し玉展」は7月26日までです。コロナの影響でこれまた会期が短くなってしまっています。すぐにでも観に出かけましょう。


「日本絵画の隠し玉〜大倉コレクションの意外な一面〜」

会期:2020年6月2日(火)〜7月26日(日)
2020年6月27日(土)〜7月26日(日)
開館時間:10:30〜16:30(入館は16:00まで)
休館日:毎週月曜日:6/29(月)、7/6(月)、7/13(月)、7/20(月)
会場:大倉集古館
https://www.shukokan.org/
主催:公益財団法人 大倉文化財団・大倉集古館

次回は大倉集古館の王道を行く展覧会です。こちらはこちらで楽しみですね。

企画展「近代日本画の華〜ローマ開催日本美術展覧会を中心に〜」
会期:2020年8月1日(土)〜9月27日(日)



『江戸絵画の非常識―近世絵画の定説をくつがえす』 (日本文化 私の最新講義)
安村敏信(著)

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5909

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「画家が見たこども展」

三菱一号館美術館で開催中の
「開館10周年記念 画家が見たこども展―ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン」に行って来ました。


https://mimt.jp/kodomo/

西洋絵画の世界では幼子イエスやキューピットがしばしば描かれていたので、子どもが絵画に登場するのは特段珍しいことのように感じないかもしれません。

ただそれは神話やキリスト教の世界のこと。日常生活を営むフツーの子どもが登場するようになったのは17世紀、風俗画が多く描かれるようになってからのことです。


ウジェーヌ・カリエール「病める子ども」1885年
パリ、オルセー美術館蔵

そもそも「子ども」という概念が生まれたのもまだそれほど昔のことではありません。

子供は長い歴史の流れのなかで、独自のモラル・固有の感情をもつ実在として見られたことはなかった。〈子供〉の発見は近代の出来事であり、新しい家族の感情は、そこから芽生えた。

フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活



今回の展覧会では、中世から近代への移行期における「子ども」の存在に関しては触れずに、近代化を成し遂げた19世紀末パリで主に描かれた子どもの作品が主体となっています。

主に、ボナール、ヴァロットン、ドニ、ヴュイヤールらナビ派の画家たちが描いた子ども像は、今の我々がイメージするものとほぼ同じ。難しいことは抜きにして鑑賞できます。

ただし、子どもはいつの時代でも「恐ろしい」ものです。その視点を忘れずに「子ども展」を観て行くのが大切です。


『恐るべき子供たち』

「画家が見たこども展」展覧会の構成は以下の通りです。

プロローグ:「子ども」の誕生
1:路上の光景、散策する人々
2:都市の公園と家族の庭
3:家族の情景
4:挿画と物語、写真
エピローグ:永遠の子ども時代



ピエール・ボナール「乳母たちの散歩、辻馬車の列」1897年
ボナール美術館蔵

コロナ禍前に訪れたので、時間をかけ会場をゆっくりと3周しました。

興味深いことに、それぞれで気になる作品が変わってくるのです。また感じ方にも変化がみられました。通常の展覧会ではあまりこうしたことは起こりません。

同じ人間が同じ日に観て違いが生じるのですから、他の人と比べれば猶更です。作品リストにどの作品に惹かれたかチェック入れながら鑑賞し、カフェでお茶しながら語り合うにうってつけの展覧会です。


モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル「ブレのベルナールとロジェ」1883年
オルセー美術館蔵

第1章にあるこのとてもインパクトのある作品。どことなく変であるゆえに気になり、ついつい見入ってしまいます。

直立不動でまるで仁王像のように立つ兄弟。折角描くのですからもう少し洒落たポーズでも取らせるのが普通ですよね。これだとなにも野外にいる必要はありません。

と思い、背後や足元に描かれている風景に目をやると結構丁寧に表現されていることが分かります。それにしても地平線が高いですね。

そして右の子が手に持つ植物(一本の枝)が全体のバランスを図るのか崩すのかどちらとも受け取れる微妙な役割をになっています。


モーリス・ドニ「子ども部屋(二つの揺りかご )」1899年
個人蔵(モーリス・ドニ遺族)

モンヴェル作品とは場所が離れていますが、このドニの作品も二人の子どもが横並びに描かれ、縦横のラインが画面上に活かされています。

一見何の関連性もないような作品も観る視点やキーワードを持ちながら鑑賞していると、見えなかった糸が急に繋がり、電気が走るような感動を受けます。

3周目に「2人の子ども」というテーマを勝手に設定し、「子ども展」を拝見すると新たな発見の連続でとても刺激的でした。皆さんもどうぞお試しあれ!


ピエール・ボナール「歌う子どもたち(シャルルとジャン・テラス)」1900年
ボナール美術館寄託D


エドゥアール・ヴュイヤール「乗り合い馬車」1895年頃
ハマー美術館蔵

世界巡回展としてこの後、ボナール美術館(南仏・ル・カネ)へ巡回する予定だった「画家が見た子ども展」ですが、再来年以降に展覧会を延期となったため、東京での展示期間が当初より大幅に延びました。

6月7日終了予定でしたが、何と9月22日(火・祝)まで開催されることに!

コロナ禍にあって色々と大変ですが、大幅会期延長は非常に嬉しいことです。違う感動を得るためにまたあらためて観に行きたいと思います。


あやちょと巡る。画家が見たこども展
https://radiotalk.jp/program/37484

和田彩花さんに話しかけられながら美術館巡りができる「あやちょと巡る。画家が見たこども展」。コロナ禍前までは、三菱一号館美術館 館内限定で聴けるコンテンツでしたが、どこでも聴けるように設定変更となっています。

勿論無料です。パソコンやスマホで聴けるので予習にピッタリです!

「画家が見た子ども展」は会期延長となり9月22日までです。是非是非〜〜


「開館10周年記念 画家が見たこども展―ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン」

会期:2020年9月22日(火・祝)まで
※当初の会期:2月15日〜6月7日
※延長分の会期:6月9日〜6月21日(日)→9月22日
開館時間:10:00〜18:00 
※会期延長内での夜間開館は全て中止させて頂きます。
休館日:月曜日(但し、祝日・振替休日、6/29、7/27、8/31は開館)
※会期延長内での「トークフリーデー」は設けないことにさせて頂きます。
会場:三菱一号館美術館
https://mimt.jp/
主催:三菱一号館美術館、ボナール美術館、日本経済新聞社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛:大日本印刷
協力:日本航空、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン株式会社


ミュージアムショップ「Store1894」内に大人も子どもも楽しめるガチャガチャが設置されています。

おススメは、こども展サコッシュとこども展ピンズです!!


『かわいいナビ派』
高橋 明也 (著), 杉山 菜穂子 (著)

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5907

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「古典×現代2020」

国立新美術館で開催中の
「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」展に行って来ました。


https://kotengendai.exhibit.jp/

3月11日(水)開幕予定が遅れに遅れようやく始まりました。会期も延長され8月24日までに。

展覧会タイトル「古典×現代2020」から漠然と展覧会の概要はつかめるものの、イマイチ「行ってみたい!」と思わせるものが不足していました。

しかし、ステイホーム期間中公式サイトなどにアクセスし「是非観たい!!」と気持ちに変化がみられた方が多かったように思えます。

そう展示の中身さえ知ってもらえればこれだけ贅沢な展示も滅多にないことが容易に分かってもらえます。


伊藤若冲「鳥禽図」江戸時代 18世紀
滋賀県立琵琶湖文化館 ※現在展示されていません
×
川内倫子

会場でも無料配布されていますが、行かれる前に是非こちらは一読しておくのがよろしいかと。→アートのとびら×作品リスト

「江戸時代以前の絵画や仏像、陶芸や刀剣の名品を、現代を生きる8人の作家の作品と対になるよう組み合わせ、一組ずつ8つの展示室で構成します。」とあるように、8つ用意された各部屋で、日本の古美術と現代作家の共演が展開されています。

実は、主催者に國華社と文化庁が名を連ねていることに、会場に行ってから気が付きました。出ている日本の古美術が一級品揃いなのもこれで納得です。


円空「善財童子立像(自刻像)江戸時代 17世紀
岐阜・明神神社
×
棚田康司

展覧会の構成は以下の通りです。

1:仙僉濘木志雄
2:花鳥画×川内倫子
3:円空×棚田康司
4:刀剣×鴻池朋子
5:仏像×田根剛
6:北斎×しりあがり寿
7:乾山×皆川明
8:蕭白×横尾忠則


見どころはやはり先達たちの作品を8人の現代作家が、それぞれどう捉えているかでしょう。

正直なところ、これほどメジャーな作品と自分の作品を対峙させるのは、畏れ多いことす。そのお役がまわってきても恐れがましくて引き受けたくないと思う作家も多いはずです(まぁ、普通はそうですよね)。

リスペクトし仰ぎみていれがいるほど、身震いしてしまい何も制作できなそうです。


横尾忠則「寒山拾得2020」2019年
作家蔵

ところがところが、「古典×現代2020」に出ている8人の現代作家は、それぞれの接し方で日本古美術の大先輩たちと見事なコラボレーションをみせています。

8人のコラボが須らく功を奏しているのかどうかは観る人次第。そう我々も「参加者」なのですこの展覧会の。

個人的には、鴻池朋子さん、田根剛さん、しりあがり寿さん、皆川明さんの空間が見事でした。それぞれアプローチの仕方は違えども。


刀剣×鴻池朋子 展示風景


仏像×田根剛 展示風景

滋賀・西明寺所蔵の鎌倉時代(13世紀)に彫られた「日光菩薩立像」と「月光菩薩立像」を「光りと祈り」のインスタレーションを用い新たな「場」を設けた田根剛氏。

今の混乱を予想して作ったわけではありませんが、奇しくも現状下において最も人々の心を惹きつける展示となっています。これは絶対に必見です。


乾山×皆川明 展示風景

いつの時代にも、伝統と革新は寄り添いながら互いの光を融和させ、新たな道筋を照らしている。

それは過去への敬愛と未来への期待、そしてこの瞬間の気付きから生まれる。

それらは人々の暮らしの中で、新たな思想、美意識へと育っていく。
」皆川明


乾山×皆川明 展示風景 

昨年(2019年)に開催された展覧会の中でも屈指の内容だった、東京都現代美術館「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」で学んだ皆川さんの哲学が、見事なまでに今回も活かされています。

「ミナ ペルホネン」と尾形乾山。完品だけでなく、乾山のうつわや陶片に、皆川のテキスタイル、洋服、ハギレを組み合わた展示も最高でした。


葛飾北斎「冨嶽三十六景 東海道江尻田子の浦略図
しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 ロボットの腕回収

しりあがり寿さんの北斎作品のパロディ。それぞれ思考を凝らしていて単に笑いに堕してないのがこれまた素敵でした。流石だな〜

このように、先達に寄り添う作家、超越せんとする作家、再構築を試みようとする作家、意味合い自体を変換させようるする作家。リスペクトの仕方はまさに千差万別。

コラボ相手に選ばれた先達たちが、どう思うかと考えを巡らしながら観るのも楽しいです。

極上の日本古美術と意気盛んな現代アーティストのコラボ展。タイトルはちと謎でもどうぞお見逃しなきように!

「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」は8月24日までです。是非〜


「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」

会期:2020年3月11日(水)〜6月1日(月)
※会期変更 2020年6月24日(水)〜8月24日(月)
休館日:火曜日
開館時間:10:00〜18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで 当面の間、夜間開館は行いません。
※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 企画展示室2E
https://www.nact.jp/
主催:国立新美術館、國華社、朝日新聞社、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
協賛:大日本印刷、UACJ
展覧会公式サイト:
https://kotengendai.exhibit.jp/


生きる はたらく つくる
皆川 明 (著), 松家 仁之 (編集)

魚市場でアルバイトをしながら、たったひとりで始めたブランド「ミナ ペルホネン」。創業25周年を迎えて初めて明かす、これまでの人生と、はたらくことの哲学。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5903

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「柚木沙弥郎『絵本の仕事』展」

市川市芳澤ガーデンギャラリーで開催中の
「柚木沙弥郎『絵本の仕事』展」に行って来ました。


https://www.tekona.net/yoshizawa/

型染めの第一人者である柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)氏。97歳を迎えた今でも精力的に制作活動を行っている作家です。

過去に世田谷美術館や日本民藝館、神奈川県立近代美術館で個展を開催されたので、ご覧になられた方もいらっしゃるはずです。

「柚木沙弥郎のいま」と題する展覧会を現在、松本市美術館でも開催しています。(7月12日まで)

柚木沙弥郎公式サイト


「柚木沙弥郎『絵本の仕事』展」展示風景

市川市芳澤ガーデンギャラリーでの展覧会は、72歳になってから新たに取り組み始めた絵本の世界を紹介する展覧会です。

1994年、72歳で絵本デビューを果たした柚木沙弥郎氏の処女作『魔法のことば』他10数点の絵本原画や習作が所せましと展示されています。


柚木沙弥郎『魔法のことば』1994年(72歳)

何か事を成すのに年連は関係ないと言いますが、70歳を過ぎてから新たなことにチャレンジする、その意欲、前向きさに我々も見習うべき点は山ほどあります。

それにしても、この原動力の秘密はどこにあるのでしょうか。

「いつか『ジャリおじさん』みたいな絵本を作ってみたいね。」と制作意欲満々です。


柚木沙弥郎『せんねん まんねん』2008年(86歳)

本を作ることにはずっと興味があったそうで、柚木氏はこんなことを語っています。

「十代のころフランスの『ヴェルヴ』という雑誌を知ったんだ。絵と写真で構成された雑誌なんだけど、ジョルジョ・ブラックとか超一流の画家とか、とにかくかっこいい。こういうのをやりたいと思った。」

実際に、芳澤ガーデンギャラリーに展示してある絵本や原画は色彩豊かで子どもや動物たちが多く登場するほんわかとした雰囲気の作品ばかりです。


柚木沙弥郎『そしたら そしたら』2000年(78歳)

ところが、これがめちゃめちゃかっこいいのです!人間年齢を重ねないと出せない味があります。それは観る人の心のひだに触れる何かを生み出す妙味です。

染織家として名声を極めた後にたどり着いた絵本の世界。羨ましいほどの福禄が画面から溢れ出ています。

そしてそれが観る者までも幸せオーラに包んでくれるのです。


柚木沙弥郎『トコ』『グーグー』『キキ』2004年
立体 神奈川県立近代美術館蔵 

絵本の世界から飛び出した立体作品も特別展示されています。

東大で美術史を学んだ後、女子美術大学教授から最終的には学長の座に就き、後進の指導にあたってきた「教育者」としての側面も持ち合わせる柚木氏。

何度も訪れているパリで撮影した写真も展示されています。狭い画角の中に多くの「情報」が写り込んでいます。道端を何気なく掃除している人の写真良かったな〜



もう一か所の展示室には絵本の仕事以外(ガラス絵、板絵、水彩、それに蒐集品など)が紹介されています。

こんな風に歳をとれたらどれだけ幸せなことでしょう。多幸感に満ち満ちた展覧会です。

個人的に一番ぐっと来たのが宮沢賢治『雨ニモマケズ』の絵です。コロナ禍の今、これほど響く作品はありません。まるで未来を見通して描いたようにさえ思えてきます。


柚木沙弥郎『雨ニモマケズ』2016年(94歳)

丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル

どんな暗闇の中にもきっと澄んだ明るさはある。それが賢治さんの住む四次元の世界なんだ。そのことに気がついたとたん進め進めという励ましの声が聞こえてきたので私は楽しくこの絵本を描くことができたのです。」柚木沙弥郎

新型コロナウイルスの影響で会期変更となりしたが、無事に開けて本当に良かったです。「柚木沙弥郎『絵本の仕事』展」は8月16日までです。電話事前予約が必要です。


「柚木沙弥郎『絵本の仕事』展」

会期:2020年6月23日(火)〜8月16日(日)
休館日:月曜日(ただし、8月10日(月・祝)は開館、8月11日(火)は休館) 
開館時間:予約制※各回入替制 10時〜 11時〜 12時〜 13時〜 14時〜 
※鑑賞時間各回40分 
※要事前電話申込
047-374-7687
・予約受付時間(電話申込)10:00〜16:00 
会場:芳澤ガーデンギャラリー
https://www.tekona.net/yoshizawa/
主催:芳澤ガーデンギャラリー


芳澤ガーデンギャラリーにお越しの際は、駅からの美術館までの間にクッキーとホームメイドの焼菓子の「hana」という可愛らしいお店があります。
http://www.hanahomemade.com/hana/

ここのお店を切り盛りしているのは、なんと柚木氏のお孫さんです。サイトやショップカード、ギフトボックスなどに溢れているほっとさせられるイラストは、全て柚木氏がお店の為に描いたものです。展覧会にも「hana」関連の作品が出ています。


せんねんまんねん』 (まど・みちおの絵本)
柚木 沙弥郎 (イラスト), まど みちお


夜の絵 (単行本)
夜の絵』 (単行本)
柚木 沙弥郎 (イラスト), 村山 亜土 (著)

自らの命と、とうてい描ききれないと思える絵を描くことを引き換えにしたある画家の「幸福」な人生―。村山亜土の純粋な言葉の世界を表わすのに柚木沙弥郎が選択したのは、型染めでも絵でもなく、布コラージュだった。それも愛蔵の端切れを用いて。柚木作品の中で最も重要な作品でありながら私家本として刊行されたため、幻の名作となっていた本書を、限定復刊。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5902

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内藤コレクション展供崔羸いらルネサンスの写本 祈りと絵」

国立西洋美術館で開催中の
内藤コレクション展供崔羸いらルネサンスの写本 祈りと絵」に行って来ました。


https://www.nmwa.go.jp/

目の寄る所へ玉も寄るではないですが、良い作品を所蔵する美術館には自然と優れたモノが集まってくるものです。

内藤裕史氏(筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授)が長年にわたって蒐集された、写本リーフのコレクション約150点を、2016年にまとめて国立西洋美術館に寄贈されました。

内藤コレクションとして、初お披露目となったされたのが昨年秋。今回はそれに続く第二弾となります。


内藤コレクション展「ゴシック写本の小宇宙――文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵」
会期:2019年10月19日(土)〜2020年1月26日(日)

webやファクシミリ版では目にしたことがあっても、こうして本物を観る機会は日本ではまずありません。


一点モノの美しい写本がずらり。目の保養に、中世の美!眼福也。

それが、上野で観られるのですから、こんな福運はありません。現在国立西洋美術館では「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を開催しています。

「ロンドン展」は混雑緩和の観点から事前予約制(日時指定チケット)を導入していますが、常設展示室で開催されている「内藤コレクション展」は予約無しで僅か500円で観られます。


時祷書より:精霊降臨」1460-70年頃
南ネーデルラント

日本でまとめて観ることが出来ない中世ヨーロッパで書かれた(描かれた)時祷書や聖書。

人々は神のことばや偉業を手で書き写していました。グーテンベルクにより活版印刷技術が発明される(諸説あり)まで、本は人の手で書き写すものでした。

容易に大量印刷できる今、紙の本は特段貴重なものでも何でもありませんが、中世においては神の言葉を伝える貴重な存在であったのと同時にそれ自体が「神」だったのです。


時禱書より:イニシアルOの内部に『祈る聖母マリア』」1470年頃
フランス、パリ

英語で「the book」「Book」が『聖書』の意味を持つのもそうしたことが所以なのでしょう。

日本でも写経という文化があります。同じ祈りの対象ではありますが、西洋の時祷書には多彩な装飾性が観られるのが大きな特徴です。


ゲッティ美術館10番写本の画家に帰属「時祷書より:パトモス島の福音書記者 聖ヨハネ」1475-80年頃
フランス、リヨン

ポール・ゲッティ美術館コレクション

参考→「ベリー公のいとも豪華なる時祷書

またテキストの頭文字や余白にアクセントを加え独自の美意識をそこに表現しています。


詩篇集より:シャンピ・イニシアルD」1400-25年
イングランド

86(はちろく)もびっくりのDへの固執。もっともっと近寄って是非会場でご覧になって下さい。

そうそう、これらの時祷書類は獣皮紙(羊皮紙)にインクや金などで書かれています。獣皮紙特有の「肌感」も直に見られる機会でもあるのです。


時祷書より:鳥と猿のいるパネル枠装飾」1500-10年頃
フランス、ブルージュまたはパリ(?)

印象派の絵画は日本国内どこでも観られますが、中世の時祷書はそうはいきません。大英博物館やゲッティ美術館に所蔵され日本にやって来ることはまずありません。

パリで羊皮紙に手書きされた14世紀の時祷書と偶然出会い、一目惚れし手に入れてから約半世紀。内藤氏が私財をはたいて購入した一大コレクション。

海外のオークションに出し換金することも考えたそうですが、最終的には日本人の多くの方に観てもらえるよう西洋美術館に一括して寄贈することに決めたとのこと。

松方コレクションを前身とする西洋美術館は現在も内藤氏のような篤志家により、所蔵品を増やして行っているのです。


時祷書より:花と小動物によるトロンプ・ルイユ風の枠装飾」15世紀末
南ネーデルラント、おそらくブリュッヘ

「写本ページの小さな平面は、より大きな画面を備えた壁画や板絵になんら劣ることのない、中世の絵画芸術のまぎれもなく最重要な舞台でした。」

美術的な側面もさることながら、今のこの状況下で観にいくと何百年も前の人々の祈りが直に伝わってくるように感じます。

21世紀をむかえ暮らし向きは大きき変わりましたが、人の心は中世も今も同じであることにあらためて気付かされるはずです。

心にじわりとくるものがあります。内藤コレクション展供崔羸いらルネサンスの写本 祈りと絵」は会期変更となり8月23日までです。是非是非〜


内藤コレクション展供崔羸いらルネサンスの写本 祈りと絵」

会期:2020年6月18日(木)〜8月23日(日)
2020年3月3日(火)〜 6月14日(日)
※会期変更
開館時間:9:30〜17:30
毎週金・土曜日:9:30〜21:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし7月13日(月)、7月27日(月)、8月10日(月・祝)は開館)
会場:国立西洋美術館 版画素描展示室
https://www.nmwa.go.jp/
主催:国立西洋美術館
協力:西洋美術振興財団

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」も開催中です。


世界で最も美しい12の写本 ―『ケルズの書』から『カルミナ・ブラーナ」まで』
クリストファー・デ・ハーメル (著), 加藤磨珠枝 (翻訳), 松田和也 (翻訳)

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