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「見えてくる光景 コレクションの現在地」

アーティゾン美術館で開催中の
開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」に行って来ました。


https://www.artizon.museum/

2015年5月から新築工事のため休館していたブリヂストン美術館が、名称を慣れ親しまれた「ブリヂストン美術館」から「アーティゾン美術館」に改め、2020年1月18日に開館しました。

アーティゾン美術館内外装完成施設内見会レポ(作品が一枚もない展示室やLEDピクトグラム等)

5年かけ23階建ての「ミュージアムタワー京橋」を新たに建て、その低層階(1階〜6階)をアーティゾン美術館が占めています。展示スペースは旧美術館の倍の広さとなりました。



休館している間にも積極的に作品収集に取り組み、コレクションの幅を広げた中から、今回は、モリゾ、カサット、ボッチョーニ、カンディンスキー、ジャコメッティ、松本竣介など31点が初公開されています。

旧ブリヂストン美術館時代は暇さえあれば、良質なコレクションを観に行き、ここの美術館で西洋絵画や洋画のイロハを学んだと言っても過言ではありません。

今では当たり前となっている美術館での講座も、ここの「土曜講座」はパイオニア的な存在でした。アーティゾン美術館と生まれ変わってからも引き続き「土曜講座」を開催する初心を忘れていない点も素晴らしい点です。


メアリー・カサット「日光浴(浴後)」 1901年
石橋財団アーティゾン美術館蔵(新収蔵品)

5年も休館し、歴史ある美術館の名称まで大胆に変更となると、慣れ親しんだ美術館ではなくなってしまうような寂しい気持ちになったことは事実です。それだけ愛着があったのです。

開館記念展に出向く足取りも少し複雑な思いがありました。

しかし、そんなメランコリックな感情を一瞬で吹き飛ばすかのように、これまでにも増して素晴らしい美術館に生まれ変わっていました。

それは、「見えてくる光景 コレクションの現在地」展へ一歩足を踏み入れればすぐに実感できるはずです。同様な不安をお持ちの方でも。


ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」1904〜06年頃
青木繁「海の幸」1904年
石橋財団アーティゾン美術館蔵

この神展示は美術館スタッフもいつかはやりたいと虎視眈々と狙っていたのでしょう。同時期の世界に誇る優品同士の今しか観られない絶品コラボです。

この年になると流石に泣くことなどなくなるものですが、この展示を前に涙腺崩壊しました。やっぱり名前は変わっても美術に対する想いはこれまで通り、否それ以上です。ここの美術館。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1部「アートをひろげる」
第2部「アートをさぐる」
01 装飾
02 古典
03 原始
04 異界
05 聖俗
06 記録
07 幸福


開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」では、西洋絵画と日本絵画(洋画)それに彫刻作品などを混在させて見せています。しかも稼働展示壁を少々凝った配置にしていることで「ひろがり」が増しています。



第2部「アートをさぐる」では、7つのテーマを設定しよりごちゃ混ぜ感を出しています。素直にコレクションを並べるだけでは芸がありません。よく練られています。

そうそう、アーティゾン美術館では、館内のWi―Fi化を実現し情報をリアルタイムで鑑賞者のiPhone、スマホに送るというサービスを無料で行っています。

アーティゾン美術館のアプリ(無料)をダウンロードすれば、鑑賞者のスマートフォンで音声ガイドや作品解説を楽しめるのです。

アーティゾン美術館公式アプリ


松本竣介「運河風景」1943年
石橋財団アーティゾン美術館蔵(新収蔵品)

こちらの新収蔵品も無料アプリで解説が聴けます。その場で聴けるだけでなく、いつでもどこでも繰り返し聴けるのがミソです。例えば帰りの電車内でも自宅でも。テキスト表示もされるので、美術書としても有用です。

館内のスマホ利用は当然ながらOK!そして写真撮影も原則可能となりました。より一層開かれた美術館へと成長した感があります。

国内の公立館もアーティゾン美術館をお手本として、そろそろ重い腰をあげないといつまでたっても…です。(12年前に「美連協ニュース」に寄稿した時から大きな変化がないように感じます。)


洛中洛外図屏風」17世紀 江戸時代
石橋財団アーティゾン美術館蔵

新たにコレクションに加わった六曲一双の「洛中洛外図屏風」は、存在は薄っすら知っていましたが、まさかアーティゾン美術館が手に入れていたとは!

非常に状態の良い金地の屏風です。ドイツのGlasbau Hahn(グラスバウハーン)社による特注品15mの巨大な一枚ガラスに護られ新たに設けられた日本美術展示コーナーに鎮座しています。



6階から4階まで3フロアに渡り、新収蔵品を含めたコレクションが贅沢に展開されています。一度で観るのは不可能です。携帯の充電も出来る休憩スペースも設けられているので休み休み味わいましょう。

各展示室内に設置されている椅子もそれぞれデザイン性に富んだものが採用されています。何種類もあるので全部座りたくなります。


4階展示室

最後の展示室は、旧ブリヂストン美術館時代の展示室を模して作られています。この天井高の低さが懐かしいですね!古くからのファンへの心使いが感じ取れます。

新しい取り組みと、これまで培ってきた良さを非常にいい塩梅に調合し、非の打ち所がない極上の美術館となっています。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」1876年
油彩・カンヴァス 97.8×70.8cm
石橋財団アーティゾン美術館蔵

これから先何十年もまたここで学び、美術の世界に羽ばたいていく人材や、多くの美術ファンを育てあげていくことでしょう。自館の責任をこれほど理解し、実現している(具現化可能な)美術館は日本でここだけです。

アーティゾン美術館。これからも良い作品を沢山私たちに見せて下さい。開館おめでとうございます。

「見えてくる光景 コレクションの現在地」展は3月31日までです。大学生を含む学生は無料です。何度でも足を運んでその目で本物を味わいましょう。


開館記念展
「見えてくる光景 コレクションの現在地」


会期:2020年1月18日(土) 〜 3月31日(火)
開館時間:10:00〜18:00
(毎週金曜日は20:00まで / 但し3月20日を除く)
*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 (2月24日は開館)、2月25日(火)
会場:アーティゾン美術館
https://www.artizon.museum/
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館


『芸術新潮 2020年 01月号 東京のミュージアム100』


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「ハマスホイとデンマーク絵画」

東京都美術館で開催中の
「ハマスホイとデンマーク絵画」展に行って来ました。


https://artexhibition.jp/denmark2020/

キャッチコピーは“静かなる衝撃、再び。”とはいえ、前回の「ハンマースホイ展」をご存知の方もそう多くはないはず。

「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展が、国立西洋美術館で開催されたのが今から12年前の2008(平成20)年のこと。

12年前に名前も聞いたことのない謎めいた画家の展覧会に足を運ぶ人なんてそうそういませんでした。美術関係者の中にも展覧会見逃したなんて方も意外といたりします。


ヴィルヘルム・ハマスホイ《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》1910年 
国立西洋美術館蔵 〔東京展のみ出品〕

この作品も12年前の「ハンマースホイ展」終了後に西美が購入し、常設展示室の静かな人気者となっている作品です。

その不思議な響きの名前と人気がとにかくひとり歩きしてしまった感のあるハンマースホイを、冷静な目であらためて検証せんとする展覧会が「ハマスホイとデンマーク絵画」展です。


ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内》1898年 
スウェーデン国立美術館蔵

「ハンマースホイ」からよりデンマーク語の発音に近い「ハマスホイ」に変えてまで開催するだけあって相当気合が入っています。 Vilhelm Hammershøi

ただし、主役のハマスホイはもとより、他のデンマーク絵画も彼ほどではないにせよとても穏やかな雰囲気の作品ばかりですのでイタリア絵画のように強烈な印象を受けることはありません。

心のどこか隠れた部分が、ぞわぞわと終始微かに震えるはずです。


ピーザ・スィヴェリーン・クロイア《スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガとマリーイ・クロイア》1893年
ヒアシュプロング・コレクション蔵 © The Hirschsprung Collection

展覧会の構成は以下の通りです。

1:日常礼賛─デンマーク絵画の黄金期
2:スケーイン派と北欧の光
3:19世紀末のデンマーク絵画─国際化と室内画の隆盛
4:ヴィルヘルム・ハマスホイ─首都の静寂の中で



「2:スケーイン派と北欧の光」展示風景

最後の最後にお目当てのハマスホイが登場する構成となっています。ただし1〜3章までのデンマーク絵画が粒ぞろいの優品揃いで結構観るのに時間かかります。

また、それらをしっかりと観ておくことでハマスホイの特異性や関連性なども見えてくるので、逸る気持ちを抑えつつ3章までの作品をとにかく丁寧に観ることをお勧めします。

半島北端の漁師町スケーインで作品制作をした画家の中には、戸外(主に海岸)で働く逞しい男たちを描いたミケール・アンガと、家事に勤しむ女性を描いたアナ・アンガのような夫婦もいました。

アナ・アンガ「戸口で縫物をする少女」は、オランダ黄金時代に描かれた風俗画に通ずる美しさがあります。


ピーダ・イルステズ《ピアノに向かう少女》1897年 
アロス・オーフース美術館蔵
ARoS Aarhus Kunstmuseum / © Photo: Ole Hein Pedersen

「3:19世紀末のデンマーク絵画─国際化と室内画の隆盛」に入るとその傾向は更に顕著なものとなります。そしてそれらの中にハマスホイがどのように組み込まれていくか見どころであります。

とりわけ、ピーダ・イルステズ「アンズダケの下拵えをする若い女性」やカール・ホルスーウ「読書する女性のいる室内」また肖像画ではユーリウス・ポウルスン「カーアン・ブラムスンの肖像」は、ハマスホイと時を同じくして描かれた作品であり、かなり密接な関連性があることがうかがえます。


「4:ヴィルヘルム・ハマスホイ─首都の静寂の中で」展示風景

展示方法として3章と4章つまりハマスホイと同時代のデンマーク絵画を並べ比べながら見せるといった方法もきっと考えられたことでしょう。

結果として今回は峻別し、ハマスホイを最後単独で見せています。日本ではまだ二度目ですし、ある意味で実質初めての「ハマスホイ展」なのでこれで良かったと思います。


ヴィルヘルム・ハマスホイ《農場の家屋、レスネス》1900年 
デーヴィズ・コレクション蔵 
The David Collection, Copenhagen

ハマスホイ作品約40点が集結している様は少々「不気味な」雰囲気を漂わせます。極力登場人物は少なくし、描いても背中姿であったり、視線を合わせない人たちだったりとそこに「生」を感じさせません。

この展覧会で真のハマスホイが分かると思ったら大間違い、果てしなく深淵なハマスホイの沼から脱出できなくなります。

人物が登場する作品よりも、「ロンドン、モンタギュー・ストリート」や「クレスチャンスボー宮廷礼拝堂」のような風景画に今回かなり惹かれました。

当然そこには人っ子ひとりとして描かれていません。しかも建物以外の余計なものは全て消し去り描いています。画像処理ソフトで人物を消した風景よりも更に得体の知れない風景となっています。


ヴィルヘルム・ハマスホイ《廊下に面した室内、ストランゲーゼ30番地》1903年

私はかねてより、古い部屋には、たとえそこに誰もいなかったとしても、独特の美しさがあると思っています。あるいは、まさに誰もいない時にこそ、それは美しいものかもしれません。
1907年、ヴェルヘルム・ハマスホイ

ハマスホイが残したこの言葉に象徴されるように、彼の美意識が「誰もいない時」にあったのですから、人や物を描かないのも当然といえます。

水墨画の絵師に何故、余白を埋めないのか?と問い詰めないのと同じように、ハマスホイの絵画に多くのものを求めてはなりませんし、理由を考えてもいけません。


ヴィルヘルム・ハマスホイ《カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレズゲーゼ25番地》1910-11年 
マルムー美術館蔵
Malmö Art Museum, Sweden

他にもハマスホイ作品を観る上で抑えておきたいポイントはいくつかあります。

その中でも古典絵画との関連性はかなり重要です。「アキレウスに懇願するプリアモス」(トーヴァルスンによるレリーフの模写)や「ルーヴル美術館の古代ギリシャのレリーフ」といった作品も今回出ています。

また、ホイッスラー、ルドン、エリンガ、ホーホストラーテン、カラヴァジョ、そしてフェルメールなど。これについては佐藤直樹氏の著書『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』が何よりも参考となります。

『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』(平凡社)レビュー


ヴィルヘルム・ハマスホイ《画家と妻の肖像、パリ》1892年 
デーヴィズ・コレクション蔵
The David Collection, Copenhagen

生前は国立美術館にも買い上げられ評価の高かったヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)も、50代の若さで死去した後は急速に忘れ去られてしまいます。

時代が求める絵画とは真逆であり、彼の画風は時流にそぐわなかったのでしょう。ブラムスン国立美術館に寄託していたハマスホイ作品が「展示スペースの不足」を理由に全て売却されたのが1931年。満州事変が始まった年です。

再び脚光を浴びたのが1983年のアメリカでの「ハマスホイ展」以降。2008年に「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展を、国立西洋美術館が開催したのは世界的に見てもとても先見性があったのです。


ヴィルヘルム・ハマスホイ《背を向けた若い女性のいる室内》1903-04年
ラナス美術館蔵
© Photo: Randers Kunstmuseum

陽光を拒否するかのようなハマスホイ作品のように、美術史の表舞台にあげられるのを望んでいないかもしれません。

大行列を成すような展覧会は彼の意図に反するようにさえ思えます。

それでも、12年間待った人たちできっと賑わうことでしょう。かく言う自分もあらためて足を運びたいと思っています。この展覧会に際し刊行となった2冊の関連書籍をしっかりと読んで。

「ハマスホイとデンマーク絵画」展は3月26日までです。是非!


「ハマスホイとデンマーク絵画」

会期:2020年1月21日(火)〜3月26日(木)
休館日:月曜日、2月25日(火)
※ただし、2月24日(月・休)、3月23日(月)は開室
開館時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開館:金曜日、2月19日(水)、3月18日(水)は9:30〜20:00(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館
https://www.tobikan.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、読売新聞社
後援:デンマーク大使館
協賛:大日本印刷
協力:イープラス、ルフトハンザカーゴAG、J-WAVE
公式サイト:https://artexhibition.jp/denmark2020/


ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人
萬屋健司 (著)


ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画
佐藤直樹(著)
『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』(平凡社)レビュー


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「〈対〉で見る絵画」

根津美術館で開催中の
「〈対〉で見る絵画」展に行って来ました。


http://www.nezu-muse.or.jp/

展覧会タイトル「(対)(つい)で見る絵画」とあったので、2幅対(ふくつい)の作品をまとめて見せているのかな〜と勝手に思い込んでいました。

そんないい加減な企画展を根津美術館がやるはずはありません。実際に足を運んでみると、三幅対どころか、四幅対、五幅対の作品までずらり。


楊月「太公望・花鳥図」日本・室町時代 15世紀

アイドルでも3人組が多かったりします。絵画も3幅対あたりが丁度いい塩梅に感じます。中央に主役を描いて左右を脇役がしっかりと固める。盤石の布陣です。

そうかと思うと、3枚とも対等に扱われている三幅対作品もあったりします。代表的なのが「三夕図」。そう、三夕の歌を絵画化したものです。

土佐光起と春木南冥がそれぞれ描いた「三夕図」が、今回2セット出ていますが、個人的に好きなのはこちら。


春木南冥「三夕図」日本・江戸時代 18〜19世紀

向かって左から西行、寂蓮、藤原定家の順になっています。土佐光起の作品ではこれが西行、藤原定家、寂蓮の並びとなっていて、中央の定家がいかにも主役のような趣があります。

しかも土佐光起作には人物と詠まれた風景が描かれていますが、春木南冥作には人物の姿はありません。風景の繋がり、3幅のバランスを考慮した並びとしたことでセンターから定家が外れています。

時代と共に価値観や人気は変化してゆくもの。山夕の歌もアイドルが唄う曲も同じこと。


土佐光起「三夕図」日本・江戸時代 17世紀
東京国立博物館蔵

参考までに三夕の歌(さんせきのうた)を

心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ(西行法師)
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ(藤原定家)
寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ(寂蓮法師)


展覧会の構成は以下の通りです。

1.二幅対
2.一双の屏風
3.工芸における〈対〉
4.三幅対
5.四幅対・五幅対…
6.分割と再生




絵画だけでなく対で作られた工芸品も含まれており、展示にメリハリを利かせています。

掛け軸だけでは確かに少々飽きてしまいますからね、こうした配慮がなされるのが流石、根津美術館だな〜と思います。

また掛け軸が続く続くかと思いきや中間地点手前でいきなりド派手な屏風を展開してきます。チラシに使われている「吉野龍田図屏風」6曲1双はいつ拝見しても迫力満点です。

今回あらためてじっくりと拝見したところ、状態がとても良い屏風なのに驚きました。桜の花は胡粉を盛り上げ表現されていますが、欠損は見られませんし、色も鮮明です。

左右季節は違いますが、下を流れる「川」で連結、時間が継続していること示しています。


尾形光琳「夏草図屏風」2曲1双 日本・江戸時代 18世紀

さて、軸や屏風は左右を入れ替えたり、2幅のものを単独で楽しんだりと、如何様にも使えます。ただ中には頑としてそれを拒む作品もあります。

尾形光琳「夏草図屏風」がまさにそれです。

俵屋宗達「蔦の細道図屏風」や尾形光琳「燕子花図屏風」のように、琳派の屏風は左右隻を入れ替えても鑑賞可能である、永続性を持たせたものが多くあります。

また酒井抱一「夏秋草図屏風」や宗達「風神雷神図屏風」のようにどちらか一方だけでも鑑賞に堪え得る作品も存在します。

しかし、光琳の「夏草図屏風」は固い絆で結ばれた二人のように、この「かたち」でないと成立しない構図となっています。

そうした対作品も存在することを念頭に置くと「6.分割と再生」が俄然生き生きとしてきます。「6.分割と再生」があってこそ初めて完成している展覧会と言っても過言ではありません。



呂文英「売貨郎図」 2幅 中国・明時代 16世紀

2幅対作品となっていますが、元々は4幅セットでした。残りの2幅が藝大美術館に所蔵されているそうです。つまりいつの時代にか半分に分かれ分かれとなってしまった作品なのです。

このように様々な理由で「分割・再生」された作品を最後に持ってくることで、「対」の非永続性をさり気なく示すことに成功しています。

どんなに硬い絆で結ばれている二人でも決してそれが未来永劫永遠に続くことなどあり得ないのですから。



この可愛らしい子もそんな数奇な運命を辿った作品の一部です。展覧会会場で探してみて下さい!

「〈対〉で見る絵画」思った以上に見応えあり、考えさせられるものがあります。

2階の展示室5には伝狩野山楽「百椿図」と子年にちなんだ作品が出ています。「百椿図」にもネズミが描かれているってご存知でした?

「〈対〉で見る絵画」展は2月11日までです。


「〈対〉で見る絵画」

会期:2020年1月9日(木)〜2月11日(火・祝)
休館日:毎週月曜日 ただし1月13日(月・祝)は開館し、翌14日休館
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:根津美術館 展示室1・2
http://www.nezu-muse.or.jp/




『日本美術のことばと絵』 (角川選書)
玉蟲 敏子 (著)


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ヤコポ バボーニ スキリンジ展 「Bodyscore-the soul signature」

シャネル・ネクサス・ホール(CHANEL NEXUS HALL)で開催中の
ヤコポ バボーニ スキリンジ展 「Bodyscore-the soul signature」に行って来ました。


https://chanelnexushall.jp/

8歳から作曲を始め、ポンピドゥ・センターの音響音楽研究員などのキャリアを持つ現代音楽家、ヤコポ・バボーニ・スキリンジによる展覧会が銀座シャネル・ネクサス・ホールで開催されています。


Elsa Revcolevschi-lying body(N.5)

オーケストラやアンサンブル、そしてソロのための作曲だけでなく、インスタレーションや映像作品のための音楽も制作してきた、イタリア生まれパリ在住のバボーニ・スキリンジ。

2007年から実験的に人体に楽譜を書きはじめ、これが次第に彼の新しい作曲法へと変わっていきました。



今回展示されている約30点の作品は、人体に直接楽譜を書きながら作曲をする手法で作りを続けて、その人体を写真に収めたものです。

【作家略歴】
ヤコポ バボーニ スキリンジ Jacopo Baboni Schilingi 1971年生まれ、パリ在住の現代音楽作曲家。作曲とパフォーマンスのインタラクティブ性を重要視する。ソリストやアンサンブル、オーケストラ、インスタレーションや映画の音楽を作曲するとともに、 世界各地で開催される国際フェスティバルに参加している。また、分野を越えた新しいアプローチのアート表現にも積極的に挑戦している。 2019年11月にシャネル・ネクサス・ホールでスペシャルコンサートを開催。


Maya Maximovitch-shadowing(M-Ritmo)

バボーニ・スキリンジの写真作品からは、作曲家が創作という形で感情を具体的に表現してゆく姿が感じられます。

会場では、鑑賞者が写真の前に立つと、実際にその音楽が流れるインタラクティブなシリーズを含む、30点の写真作品を通じて、視覚と聴覚を横断するバボーニ・スキリンジの世界を体感できます。



音楽とアート(絵画・写真)はもとより親和性の高いメディアです。

しかし文章の中で成立していても、それが具現化されている空間には中々お目にかかれません。いつもシャネルビル4階は特別な雰囲気が漂う場所ですが、今回は殊更。



画家が彫刻や版画に手を出して駄作を作るパターンは多くありますが、バボーニ・スキリンジはそれにはどうやら該当しないようです。

2019年11月にシャネル・ネクサス・ホールで音楽家としての才能を披露した彼が、数か月後に今度は写真家の才腕をふるうことになるとは誰が予想したでしょう。

しかしそれが見事なまでに実現しています。


Maarjan Pärn – caucasian face (N.5)

写真のキャプションは「モデル名」「タイトル」「楽曲名」の順に記されています。こちらもチェックです。

身体に直接文字を書くというと、「耳なし芳一」を想起します。芳一の場合は平家の亡霊から身を護るためにお経を身体に書いてもらいました。

そういえば芳一も琵琶の弾き手(びわ法師)でしたので音楽と関係があります。

決まりのないシンコペーションとフュージョンを見出すことを目指した「ヤコポ バボーニ スキリンジ展」の会場でもしかして、時折琵琶の音も聴こえてくるかもしれません。



現代音楽家ヤコポ・バボーニ・スキリンジによる音楽と写真の融合を試みた新しいアプローチの展覧会「Bodyscore-the soul signature」これは必見です!

ヤコポ バボーニ スキリンジ展 「Bodyscore-the soul signature」は2月16日までです。会期中無休。入場無料。写真撮影可能です!是非是非〜


ヤコポ バボーニ スキリンジ展
「Bodyscore-the soul signature」


会期:2020年1月15日(水)〜2月16日(日)
開館時間:12:00〜19:30
会期中無休
入場無料

会場:シャネル・ネクサス・ホール(CHANEL NEXUS HALL)
中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
https://chanelnexushall.jp/
主催:シャネル合同会社


2019年11月にシャネル・ネクサス・ホールで開催されたスペシャルコンサートでは、シャネルの創始者ガブリエル・シャネルの精神に敬意を表し、インスピレーションを受けて作曲された弦楽四重奏曲がワールドプレミアとして披露されました。ヴァイオリン、ヴィオラとチェロの音色がリアルタイムで電子音と合成され、新しいサウンドを演出しました。


Disparition- Jacopo Baboni Schilingi


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「白髪一雄展」

東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の
「白髪一雄展」に行って来ました。


https://www.operacity.jp/ag/

吉原治良を中心に1954年に兵庫県芦屋市で結成。それから約20年に渡り前衛的な作品を世に送り出してきたアーティスト集団「具体」。

具体美術協会

時代は平成から令和へと変わり、2020年再び東京でオリンピックが開催される年に、前回1964年東京オリンピックの頃に制作された抽象絵画が、ここ数年で熱い視線を集めているのをご存知でしょうか。

とりわけ海外(アメリカ)での評価は目覚ましく、2013年に「GUTAI」展が、NYのグッゲンハイム美術館にて開催されるなど我々日本人が知らないところで、昭和時代の作品に注目が注がれているのです。


Gutai: Splendid Playground

グッゲンハイム美術館「GUTAI」展紹介動画。

「具体」が海外で高い評価を受けている理由は幾つかあります。戦後登場したポップアートや前衛芸術はアメリカ中心でしたが、およそ半世紀が経過しようやくアジア(日本)の前衛芸術にも目が向けられるようになりました。

また、アートマーケットで取り扱う作品が「品不足」となり、新たに埋もれていた「具体」作品に白羽の矢がたち、評価がぐんと上がった点も見落とせません。


白髪一雄「うすさま」1999年
個人蔵

関心度の高い「具体」の中でも、白髪一雄(1924年〜2008年)の人気はずば抜けたものがあります。ジャクソン・ポロックやイブ・クラインを髣髴とさせるアクションペインティングは、言葉の壁を易々と飛び越え世界へ大きく羽ばたいています。

横須賀美術館で2009年に開催された「白髪一雄展」格闘から生まれた絵画の時と今では白髪に対する評価は、大幅に変化しています。


白髪一雄「長義」1961年
東京オペラシティ アートギャラリー蔵

それにしても、意外だったのは今回が東京の美術館では初めて開催される「白髪一雄展」だったことです。もっと多く目にしているようでしたが、全くの気のせいでした。

そんな風に感じるのは、常設展や展覧会で一枚だけでも白髪作品を観ただけで、その迫力に圧倒され、何十枚も観たような満足感に浸されるからかもしれません。

今回の「白髪一雄展」には、初期から晩年の作品まで約60点を始め、貴重な資料など総数約110点が並びます。油彩画60点と少ないように感じるかもしれません。

しかし彼の油彩画は一枚一枚がとてつもない「気」を発しているので、それで十分どころか、この数でも食中りしてしまいそうです。


白髪一雄「遊墨 壱」1989年
東京オペラシティ アートギャラリー蔵

展覧会の構成は以下の通りです。

1. 知られざる初期作品
2.「具体」前夜
3.「具体」への参加
4.「水滸伝シリーズ」の誕生
5.「具体」の解散と密教への接近
6. フット・ペインティングへの回帰と晩年の活動


「水滸伝シリーズ」や日本の歴史に由来したタイトルなど、この手の抽象絵画にしては珍しく個々にはっきりとした作品名が付けられています。

作品タイトル「無題」では海外に何点も送った際に見分けがつかなくなるという、幾分後ろ向きな理由からタイトルが与えられた「水滸伝シリーズ」

その後、延暦寺で修行を積み、1971(昭和46年)に得度し法名を「素道」を得た後は、タイトルに必然性が伴うようになり、後付けだったものから逆転。ある意味ここからが白髪の真骨頂なのかもしれません。


白髪一雄「酔獅子」1999年
個人蔵

写真撮影が可能な作品があったので、数点アップしましたが、どれも画像で見る限り確かに同じように見えるかもしれません。

ところが、ぐっと近寄ると個々の作品の強烈な個性が目に飛び込んできます。



白髪一雄「酔獅子」(部分)

ゴッホもたじたじの厚塗りです。白髪の代名詞でもある、床に広げた支持体に足で直接描く「フット・ペインティング」の荒々しい痕跡。観ている者に迫りくる大波のようです。

抽象絵画は何を描いているのか分からないので敬遠されがちです。でも白髪作品からは、形と色で表現された生命の躍動を誰しもが強く感じられるはずです。

それは、小学生の頃、だんじり祭りで目にした山車に乗った人の鮮血が、イメージソースとなっている白髪の赤に大きな要因があります。

だからこそ、支持体にべっとりと塗りつけられた鮮烈な赤色に鑑賞者はやられてしまうのです。

こうした高い普遍性を内包している点が、白髪一雄が世界で通用する一番の理由かもしれません。時に鬼気迫り、時に優しく包み込まれるような赤色。


白髪一雄「うすさま」(部分)

作品に記されたサインにも注目です!

少し気が落ち込んでいる時や仕事の疲れが溜まっている時にこそ観に行きたい展覧会です。会場内に生命力が溢れかえっています。「圧倒的」や「迫力」という言葉ついつい口に出してしまいますよ。

「白髪一雄展」は3月22日までです。これは観に行って損なし。是非是非〜


「白髪一雄展」

会期:2020年1月11日(土)〜3月22日(日)
開館時間:11:00〜19:00
(金・土は11:00〜20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、2月9日[日](全館休館日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー[3Fギャラリー1, 2]
https://www.operacity.jp/ag/
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
協賛:日本生命保険相互会社
特別協力:尼崎市、公益財団法人 尼崎市文化振興財団
協力:ヤマトグローバルロジスティクスジャパン株式会社、株式会社ログ キャビン


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