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『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』

平凡社より刊行となった『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を読んでみました。


ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』(コロナ・ブックス)
佐藤直樹(著)

2008年9月30日〜12月7日、上野・国立西洋美術館にて開催されたの展覧会「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展。

会期末頃から徐々にこの特異な絵を描く画家の魅力に取りつかれた人が続出。展覧会終了後は最も入手困難な図録として一躍有名に。

試しに、現在Amazonで探してみるとやはり、高値が付けられています。


ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 展覧会図録

事前に話題にすらならず、誰も知らない画家の展覧会に足を運ぶ人はそうそういませんでした。

自分はたまたま、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン(Royal Academy of Arts)で開催されたヴィルヘルム・ハンマースホイ「静かなる詩情」展(Vilhelm Hammershøi: The Poetry of Silence)を現地で観たこともあり、上野の展覧会を心待ちにしていたのでした。


「ハンマースホイ展」(ロンドン)

ロンドンから上野へ巡回した形となった「ハンマースホイ展」ですが、企画したのは当時、国立西洋美術館の学芸員んだった佐藤直樹氏とドイツの研究家フェリックス・クレマー氏が長い歳月をかけ作り上げた展覧会だったのです。

会場の都合でロンドンが先になりましたが、展覧会自体は東京展がオリジナルなのです。

昔語りが少々長くなった気もしますが、これが実はこの『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を紹介するには大切な部分なので珍しく丁寧に説明した次第です。

著者は当時展覧会を企画担当した佐藤直樹氏です。

佐藤直樹(さとうなおき) 
1965年千葉県生まれ。国立西洋美術館主任研究員を経て、2010年より東京藝術大学美術学部芸術学科准教授。専門はドイツ/北欧美術史。編著書に『ローマ 外国人芸術家たちの都』(竹林舎、2013年)、『芸術愛好家たちの夢 ドイツ近代におけるディレッタンティズム』(三元社、2019年)、展覧会に『ヴィルヘルム・ハンマースホイ─静かなる詩情』(国立西洋美術館、2008年)、『アルブレヒト・デューラー版画・素描展』(国立西洋美術館、2010年)、『ヘレン・シャルフベック─魂のまなざし』(東京藝術大学大学美術館、2015年)などがある。



若い女性の肖像、画家の妹アナ・ハマスホイ」1885年 
ヒアシュプロング美術館蔵(コペンハーゲン)

12年前の展覧会をご覧になり、静かな感動を胸に抱いた方、何が何だかモヤモヤとしたものが心の中に残ったままの方全ての方に「お待たせしました!」と言える一冊が出来ました。

「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展の図録は高くて手を出せなくても、もう大丈夫。

2008年の「ハンマースホイ展」の展覧会構成に、ほぼ沿ったような本の作り(目次)となっています。

【目次〕
序章 ハマスホイ コペンハーゲンのスキャンダル
1章 時代のはざまで パリとロンドンに現れたデンマークの異端児
2章 メランコリー 誰もいない風景
3章 静かな部屋 沈黙する絵画




「ハンマースホイ」から実際のデンマーク語の発音により近い「ハマスホイ」に片仮名表記が統一された関係で、この本のタイトルも「ハマスホイ」となっています。安心して下さい。同じ画家のことです。

さて、『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を強く推す理由として、ハマスホイが影響を受けた、または関連性が指摘される画家の作品が、数多く掲載されていることがあげられます。

今更ながら、ヴィルヘルム・ハマスホイほど謎めいた作品を決して長くない画家人生の中で残した者はそうそういません。

「何故?」がいつもハマスホイ作品の前に立つと頭の中を駆け巡ります。「後ろ姿ばかり描いたのは何故?」「ひとけのない風景ばかり描いたのは何故?」「死んだ魚のような目をした人物を描いたのは何故?」等々…


ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内」1898年 
スウェーデン国立美術館蔵

そんな不気味な画家ハマスホイの多くの謎を解く手がかりがこの本にはぎっしり詰まっています。ただし、全ての答えがあるわけではありません。

それは小説家の意図したところを幾ら研究しても答えが見つからないのと同じく。ハマスホイの謎が解けてしまったらそれこそ三流小説以下に成り下がってしまいますからね。謎は謎としてぼんやり残っていた方が良いのです。

【コラム】
ハマスホイとコレクター 佐藤直樹
ハマスホイが会いたがった人物 ホイッスラー 河野 碧
暗示の絵画−ハマスホイと象徴主義 喜多崎 親
ハマスホイと写真 佐藤直樹
ノルウェーの美術史家アンドレアス・オベールによるフリードリヒの再発見 杉山あかね
ドライヤーとハマスホイ 小松弘


正方形に近い形の風景画など、カメラで撮影した画像をトリミング加工したように見えることから、一貫して彼の作品と写真との関連性を知り得ておくのは大切なポイントです。


ハマスホイ「クレスチャンスボー宮殿の眺め」及びフェルナン・クノップフ「見捨てられた町」と現在のメムリンク広場の写真。

展覧会図録ではこうした比較画像や写真を同レベルで入れることは無いので、『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を読んで初めて気が付いた点が多くありました。(謎は解けませんが…)

また非常に興味深いのは、この画家は画風の変化が殆ど無いに等しいのです。↑に掲載した「若い女性の肖像、画家の妹アナ・ハンマースホイ」(1885年)は、1884年にアカデミーを卒業してすぐ描き春季展に出品した作品です。

ここで重要なのは、既にこの時期からハンマースホイ独自の特徴が色濃く作品に現れていた点です。佐藤氏曰く「最初から完成された、成熟された芸術家だった」と。

ハマスホイの師の言葉もこの本に紹介されています。「ほとんど奇妙な絵ばかり描く生徒が一人いる。私は彼のことを理解できないが、彼が重要な画家になるであるであろうことはわかっている。彼に影響を与えないよう気をつけることとしよう。


コラム欄の下地がグレーを基調としたハマスホイ・カラー!!愛が感じられますね。
なぜ私が少ない色で、しかも抑えられた色調を使うかって? それは私もわからない。この問題について何か答えるというのは、私には本当に不可能だ。それは私には全く普通のことなので、なぜか、という問いには何も言えない。しかし、私が初めて展示したとき以来、いずれにせよそうなんだ。おそらく、私の使う色は、ニュートラルとか制限された色彩とか呼ぶことができるかもしれない。私は真にそう思うのだけれど、絵というものは色が少なければ少ないほど色彩的な意味において最高の効果をもつのではないか
ハマスホイの言葉、1907年
51歳の若さでこの世を去ってしまったハマスホイに光が当たり始めたのはまだまだ最近のことです。日本語で描かれたハマスホイを知るための最良の一冊が『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』です。

ハマスホイとデンマーク絵画」展が東京都美術館で開催されています(山口県立美術館へも巡回)。展覧会を観る前に観た後に、そしてしばらく時を置いてからじっくりと読み返したい良書です。


ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』(コロナ・ブックス)
佐藤直樹(著)

日本にハマスホイの世界を紹介した第一人者の監修による、本邦初の作品集!

「北欧のフェルメール」とも謳われる、デンマークが生んだ孤高の画家ハマスホイ。その静謐な画風になぜ人は魅かれるのか?謎めいた室内画を描き続けた画家の、その隠された魅力に迫る決定版!国内未発表を含む代表作54点を収録。



ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 (ToBi selection)
萬屋健司 (著)

もう一冊展覧会に合わせて「ハマスホイとデンマーク絵画展」を企画・監修した萬屋氏も重厚な一冊を出しています。こちらも後日レビュー書きますね。

萬屋氏は12年前の「ハンマースホイ展」もお手伝いしています。


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『失われたアートの謎を解く』3つの「意外な」おすすめポイント

昨年(2019年)の9月に上梓した『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書)がおかげさまで現在でも好調な売れ行きを維持しています。


『失われたアートの謎を解く』 (ちくま新書)
青い日記帳(監修)

既に読んで下さったとは思いますが、あらためて『失われたアートの謎を解く』の「意外な」おすすめポイントを3点紹介させて頂きます。



【その1】
読者に何かを伝授するといった上から目線ではなく、これまでアートに対して人間が犯してきた愚かな行為を名画・名品をキーワードにして、俎上に載せました。

読まれた方がそれぞれ考え、時に批評の対象とできるよう、書き手の思いはなるべく排除して書いてあります。

読んだ時点でどの章のどの話が心に刺さったかを知れば、今の自分のアートに対する立ち位置も分かるはずです。



【その2】
各章それぞれ膨大な量の資料(海外の文献等も含む)を元に、執筆者たちが書き上げました。

特別寄稿の池上英洋先生の文章は除き、それぞれどの章を誰が担当したのか、探りながら読み進めてみて下さい。

ブログやコラムをよく読んでいる方ならすぐに分かるかも!主な執筆者は以下の3名です。

「壺屋の店先」 主宰:壺屋めり氏
「はろるど」 主宰:はろるど氏
「あいむあらいぶ」 主宰:かるび氏



【その3】
「失われたアート」と銘打っているので、戦争や自然災害または盗難などで今となっては観ることのできない作品ばかりを紹介している、ちょっと鬱々とした内容だと勘違いされている方も多いかと思います。

でもご安心を未来志向の話もちゃんと盛り込んでおりバランスのとれた一冊となっています。

修復や復元それに美術品の保存など普段はちょっと見過ごしがちな側面も扱っています。



日本国内での売れ行きが好調とあって、海外から翻訳本にしないかとのオファーも来ています。

執筆者の皆さんや編集者さんの努力の結晶でもある『失われたアートの謎を解く』が、海外の書店に並ぶ日もそう遠くないかもしれません。

失われたアートの謎を解く』目次

第1章 美術品盗難事件簿
01 被害総額は史上最高 イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館盗難事件
02 イタリアに返還!? ルーヴル美術館から消えた《モナ・リザ》
[特別寄稿] 甦る! 《サモトラケのニケ》 池上英洋
03 肖像画《デヴォンシャー公爵夫人》に恋した19世紀の大怪盗
04 「手薄な警備に感謝する」 ムンク《叫び》は2度盗まれる

第2章 戦争で消された名画
05 ヒトラーの美術品犯罪 略奪された400万点
06 連合軍が救った名品コレクション アルト・アウスゼー岩塩坑に隠された1万点
07 フリードリヒスハイン高射砲塔に隠された美術品の行方
08 今も美術館を悩ます ナチス御用画商の隠し絵画
09 「文明の十字路」ゆえの悲劇 破壊され続けるバーミヤの仏教遺跡の文化財保護
10 空襲で焼失! かつて日本に存在したもうひとつのゴッホ《ひまわり》
11 8万8000個の破片を再構成! オヴェターリ礼拝堂フレスコ画



第3章 捨てられて上書きされて
12 シャガール《夢の花束》に隠された ルヌヴーのパリ・オペラ座天井画
13 失われたレオナルド・ダ・ヴィンチ 最大の壁画《アンギアーリの戦い》の謎
14 リアルな自分を見たくない!? チャーチルの肖像画、処分の理由
15 レーニンを描いたから破壊された ロックフェラー・センターの壁画
16 何が気に入らなかった!? ドガ《マネとマネ夫人像》切り裂き事件

第4章 失われた人類の遺産、再生の物語
17 保存失敗で色を失いつつあった 高松塚古墳壁画《飛鳥美人》の再生
18 2万年前の洞窟壁画を守り、そして見せる ラスコー洞窟の精密レプリカ展示へ
19 ルドンの模写で甦るドラクロワの《ライオン狩り》
20 地震で崩落したアッシジ サン・フランチェスコ聖堂の修復


『失われたアートの謎を解く』 (ちくま新書)
青い日記帳(監修)


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3冊の「ソール・ライター写真集」

フェルメールやラ・トゥールそれに伊藤若冲など、美術史の世界では「再発見」される画家が何人もいます。

生前はメジャーな存在であっても、その後自然とまたは故意に歴史の中で忘れ去られてしまった画家たちが、新たな価値観を見いだされ現代に華々しく蘇ることがしばしば見受けられます。

そうした「再発見」が写真の世界でも起こることあります。中でもここ数年俄然注目を集めているのが、ソール・ライター(Saul Leiter、1923年12月3日 - 2013年11月26日)です。



ソール・ライターの「再発見」が特殊なのは、1950年代からファッション写真の第一線で活躍しながら、1980年代に商業写真から自ら「引退」を表明し、忘れ去られたこと。

更に、驚くことは83歳になってから再び脚光が当たり、今の大ブームへと結びついているところにあります。

きっかけは、この一冊の写真集でした。


『Early Color』
Saul Leiter (著), Martin Harrison (著)

2006年、ドイツの出版社シュタイデルから出版された『Early Color』は異例の大ヒットとなります。

一躍彼は「カラー写真のパイオニア」として、世界の注目を浴びることになり、見事「復活」を遂げるのです。

面白いのは、NYの街や人を生涯撮り続けたソール・ライターが、アメリカではなくヨーロッパで「発見」された点です。


ソール・ライター 《バス》 2004年頃、発色現像方式印画
ⒸSaul Leiter Foundation

ソール・ライターが、他のアーティストとは距離を置き独り黙々と坦々と日々身の回りの写真を撮り続けてたことは、よくよく考えると奇蹟的なことなのかもしれません。

なにしろ、当時のNYはウォーホルやバスキアといった新進気鋭のアーティストたちが跋扈し、常に変革と新しいものを求めていた時代です。


ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳、発色現像方式印画
ⒸSaul Leiter Foundation

アメリカ的な押しの強さが全く感じられない写真は、確かにヨーロッパの人々の心に強く響くのも納得です。

また、彼が愛したボナールも多大な影響を受けた浮世絵、とりわけ歌川広重「名所江戸百景」に共通する視点があるため、自然と我々日本人のDNAにも刺さるのです。


『All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて』
青幻舎

2017年に同じBunkamura ザ・ミュージアムで開催された「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」は日本で初めて彼の写真を紹介した展覧会でした。

青幻舎から出された写真集(彼の言葉も満載!)は、売れに売れて2019年10月現在、13刷目という日本の写真集業界では異例のベストセラーとなっています。


『All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて』より。

「人生で大切なことは、何を手に入れるかじゃない。何を捨てるかということだ」
初期のストリートフォトから広告写真、プライベートヌード、ペインディングなど約200点とともに、アトリエ写真、愛用品などの資料も収録。ソール・ライター財団全面協力により結実した、完全オリジナル作品集。

我々日本人を引きつけてやまない、人生観、情緒的表現、浮世絵の影響を感じさせる構図、色彩など、その深遠なる魅力の謎に迫る。

ソール・ライター 《高速道路から》 1950年代、発色現像方式印画
ⒸSaul Leiter Foundation

翌年2018年に2冊目となる写真集が発売となりました。


『ソール・ライター写真集 WOMEN』
スペースシャワーネットワーク

若い時に第一線で腕を奮っていた、ファッション誌の商業用の写真は型通り過ぎて、嫌気がさしてしまったのでしょう。

「引退」した後は、身の回りの女性たちの親密で、ラフな写真を数多く撮り続けました。



生前、ヌード写真集の企画が持ち上がったこともあったそうですが、生涯そのプロジェクトは実現せずに終わってしまいました。

NYのイーストヴィレッジにある彼のアパート兼アトリエで撮影された気取らない女性たちの日常がここにはあります。


ソール・ライター 《デボラ》 撮影年不詳、ゼラチン・シルバー・プリント
ⒸSaul Leiter Foundation

若くしてこの世を去ってしまった妹のデボラや、パートナーであったソームズたちとの思い出を、今の我々が垣間見ているかのような気にさせる素敵な写真集です。

これまで、この2冊が日本語で出されたソール・ライターの写真集でしたが、新たに2020年にもう一冊が加わりました。

それが現在Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の展覧会に合わせて出された『永遠のソール・ライター』です。


『永遠のソール・ライター』
小学館

2017年と今年では出版社が違うので、本のサイズやテイストも変わってしまうのではないかと危惧していたのですが、全くの杞憂でした。

逆に、前回の本と同じデザイナー(おおうちおさむ氏)を起用し第1巻、第2巻のような連続性のある仕立てとなっています。


本の帯まで揃えてあります。世界初公開となる豊富なスナップ写真群と、セルフポートレート、最愛の妹や女性のポートレートを収録。ライターが暮らしたニューヨークの街並みへの優しい視線、身近な人に向ける親密なまなざしを、作品を通して感じることができる写真集です。
一枚も同じ写真が掲載されていません!


『永遠のソール・ライター』より。

まだまだこれから更に注目され、知る人ぞ知る写真家から、誰しもが知る写真家と大きな変貌を遂げるはずです。

既にInstagramなどにはソール・ライターのような写真がちらほらと。



日本語で出ているこの3冊の写真集。展覧会に行った人も、遠方でちょっと無理だという方も、これさえあればソール・ライターの魅力が必ずや分かるはずです。


「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」

開催期間:2020年1月9日(木)〜3月8日(日)
*1/21(火)・2/18(火)のみ休館
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、読売新聞社
協賛・協力等:
[協力]ソール・ライター財団、NTT東日本
[後援]J-WAVE
[企画協力]コンタクト


Bunkamuraザ・ミュージアム「永遠のソール・ライター」展開催記念特別上映
写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと
Bunkamura ル・シネマ


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『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情』

岩波書店より刊行となった『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情 』(岩波新書)を読んでみました。


『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情』 (岩波新書)
井田太郎(著)

昨年(2019年)9月の新刊として出た本のレビューをようやく書ける段階まで読みこめました。

と、同時に今日(1月4日)が酒井抱一の192回目の命日にあたることもあり、抱一ファン待望の『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情 』を取り上げることにしました。

酒井抱一(さかい ほういつ、 宝暦11年7月1日(1761年8月1日) - 文政11年11月29日(1829年1月4日))


酒井抱一「夏秋草図屏風」(重文)
東京国立博物館

琳派の代表格のひとりとして展覧会も開催されるなど高い人気と知名度を誇る抱一。

宗達や光琳よりも、抱一が好きだと感じる人の方が多いのが現状で関連書籍も何冊か出ています。

玉蟲敏子先生による『もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品』 が出たのが2008年前のこと。

その後、求龍堂から抱一生誕250年を記念し『酒井抱一と江戸琳派の全貌』が同タイトルの展覧会図録を兼ね2011年に出ています。

仲町啓子先生監修の『酒井抱一』 (別冊太陽)も同じ時期に発売となりました。


酒井抱一「柿図屏風
メトロポリタン美術館

では、今回岩波から刊行となった『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情 』は、先行する抱一本とは何がどう違うのでしょう。

これまでの抱一関連本は『酒井抱一と江戸琳派の全貌』が展覧会図録を兼ねていることからも分かるように、絵画中心に紹介されたものが殆どでした。

ところが、抱一のことを少しだけ知るようになってくると、彼が「藩主の家に生まれ、遊興し、出家した、奔放な貴公子」絵師という側面に加え、俳諧の道でもその多彩な表現活動を行っていたマルチな才能の持ち主であることが見えてきます。


酒井抱一「書画扇面散図」谷文晁、春木南湖、亀田鵬斎、菊池五山との寄合書
ブルックリン美術館所蔵

同じ時代にこれまた多才な文化人であった、大田南畝(蜀山人)が抱一の知人として近しい関係にあったことも、単なる絵師に留まらせなかった要因でしょう。

→太田記念美術館「蜀山人 大田南畝−大江戸マルチ文化人交遊録−」(2008年)

そう、『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情 』はそのサブタイトルが示す通り、抱一のもう一つの大事な側面である俳諧の専門家が執筆にあたっていることが、これまでとは大きく違う点です。



『もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品』 の前書きに記された玉蟲敏子先生の想いが10年の時を経て、ようやく現実となったのです。
近年では、俵屋宗達・尾形光琳に続く琳派の第三の巨匠に祀り上げられ、甚だ高い評価も聞かれるようになっている。ところが、もう一方の表現領域の俳諧においては、近世文学の研究者が注目するようになってきたのがごく最近のことでもあり、僭越ではあるけれども研究がかなり立ち遅れているのが現状である。(中略)将来、専門家諸氏によって、抱一の文事の公平で総括的な文学史的位置づけがなされることに大いに期待したいろころである。
酒井抱一という人物を絵画的な側面だけでなく、もう一方の大きな才力である俳諧も同等に扱い読み解いていくのが『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情』なのです。

酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情 』目次

序章 画俳二つの世界
第一章 「抱一」になるまで ―― 誕生前から出家前
 一 酒井家という沃土 ―― 宝暦から安永期
 二 尻焼猿人と美人画 ―― 天明期
 三 春来への私淑 ―― 寛政前期
 四 模索と学習 ―― 寛政中期
第二章 市井のなかへ ―― 出家から其角百回忌
 一 隠者としての出家 ―― 寛政後期
 二 文人性と琳派 ―― 享和年間
 三 百花園という結節点 ―― 文化初年
 四 其角百回忌 ―― 文化三年
第三章 花開く文雅 ―― 文化四年から文化末年
 一 花開く季節へ ―― 文化初年から文化一二年
 二 光琳百回忌 ―― 文化一二年
 三 開花のとき ―― 文化末年
第四章 太平の「もののあはれ」 ―― 文政初年から臨終
 一 錦の裏と表 ―― 文政二年まで
 二 「夏秋草図屛風」の生成した場
 三 豊饒の神々
 四 「夏秋草図屛風」の両義性
 五 追憶と回顧 ―― 最晩年




抱一が記した句日記『軽挙館句藻』(静嘉堂文庫蔵)は、10代のころから亡くなるまで俳諧を詠み綴った直筆の句稿です。これが残されていることで、彼がどのような生涯を送ったのかが、今の我々にも詳らかに分かるのです。

絵画の紹介も『軽挙館句藻』に残された俳諧を読み解きながら進めていく点がとにかく面白く、これまで以上に深く抱一の姿を知る術となります。

抱一が旅好きで江戸近郊をよく旅し、江の島がお気に入りの場所であったことなど、初めてこの本で知りました。静嘉堂文庫美術館に「江ノ島図」という作品もあるそうです。



「絵画の世界」だけでなく「俳諧の世界」からのアプローチを行うことにより、これまでに無かった包括的な酒井抱一の姿が非常に丁寧に綴られている一冊です。

勿論、絵画図版を多く用いて、同時代の絵師たちや、若冲からの影響などについても言及されています。

失われたアートの謎を解く』のように、寝ながら気楽に愉しめるエンタメ本とは違い、がっつりと活字を読ませるハードな一冊でもあります。

俳諧や狂歌の解説において、自分の知識不足で少々理解に窮する点もありましたが、確実に言えることは昨年読んだ多くの本の中でピカイチの内容だったということです。

このような本を世に送り出してくれた著者の井田太郎氏に直接お会いして感謝の念を伝えるのを今年の目標の一つとします。
井田太郎Twitter


『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情』 (岩波新書)
井田太郎(著)

名門大名家に生まれながら、市井で生涯を終えた、酒井抱一。「琳派」誕生を決定づけたこの才能は、多彩な交友から、宝井其角・尾形光琳への敬慕に至り、畢生の名作「夏秋草図屏風」をうみだした。江戸というマルチレイヤー社会を自在に往還したその軌跡を、俳諧と絵画の両面から丁寧に読み解く評伝。

著者:井田太郎(いだ たろう)
1973年生まれ.早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業.早稲田大学大学院文学研究科博士課程(日本文学専攻)単位取得退学.博士(文学).国文学研究資料館助手,助教(いずれも任期付き)を経て,
現在─近畿大学文芸学部教授
専攻─日本文学
著書─「富士筑波という型の成立と展開」(『國華』1315)「新出の酒井抱一画・加藤千蔭書「桐図屛風」と永田コレクション」(『MUSEUM』601)「幻住庵記考――『猿蓑』巻六という場所」(『国語と国文学』88-5)『原本『古画備考』のネットワーク』(共編,思文閣出版)『近代学問の起源と編成』(共編,勉誠出版)


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『キリスト教と聖書でたどる世界の名画』

三栄出版より刊行となった時空旅人別冊『キリスト教と聖書でたどる 世界の名画』を読んでみました。


『キリスト教と聖書でたどる 世界の名画 〜愛、信仰、友情の物語〜』 (時空旅人別冊)

雑な言い方をすれば西洋絵画の存在意義は『聖書』を視覚化することにありました。

文字が読めない人々に神の威厳や奇跡を示すためには絵画で表現するのが一番手っ取り早かったのです。



海外の美術館に行くと、これでもか〜と無数の宗教画が目の前に洪水のように押し寄せ、食欲を一気に失うものです。

出来ることなら、家でゆっくりのんびり寛ぎながら『聖書』の流れを追っていきたいもの。

ところが、視覚的に伝えられてきたはずの聖書ですが、それを今の時代においても無数の絵画を紹介しながら読み進められる本が残念なことに存在しませんでした。『キリスト教と聖書でたどる 世界の名画』が出るまでは。



まさに、待望の一冊なのです。しかもムック本なので1000円以下という超破格値!

でも、こんなに多くのカラー図版を用いると掲載するのにかなり費用がかさみ、本体価格が跳ね上がってしまうのが世の常です。

キリスト教と聖書でたどる 世界の名画』は、ある手を使ってそこをクリアし、超お安く仕上げています。

種明かしをすると、大塚国際美術館の作品を撮影し図版として使用しているのです!なるほどその手がありましたね。慧眼です!

君は「行ってよかった美術館ランキング」1位の大塚国際美術館を知っているか。



【目次】
キリスト教 がわかると 西洋美術 が面白い!

天地創造 から イスラエル の興亡を描く
旧約聖書 の 名画

イエス とその弟子たちの生涯を描く
新約聖書 の名画

なぜ人はその絵に魅了されるのか
ファン・ゴッホ とキリスト教

[ 徳島県 ・ 鳴門市 ]
大塚国際美術館 の 陶板名画 で見る!




大塚国際美術館の展示作品を図版と使用することは、価格を抑える効果だけでなく、それぞれの作品がどのような額縁に収められているのかも分かるという大きな利点も同時にあります。

美術書の図版だと基本的に絵画作品だけで、額縁はどのようなものか現地の美術館・博物館または教会へ行かない限り知る術がありません。

キリスト教と聖書でたどる 世界の名画』は聖書を読み解くだけでなく、美術ファンにとっても嬉しい一冊なのです。

執筆は江六前一郎氏が担当。(古川萌さんもライターとして名を連ねています)

ヴァーチャルミュージアム大塚国際美術館
江六前一郎:note

こちらも是非チェックして下さい。連日読ませる文章をアップしています。



東京造形大学教授の池上英洋先生の特別寄稿もあり、読み応え、見ごたえ十分な一冊となっています。本当にこれで1000円以下で良いのでしょうか…

まぁ、素敵なクリスマスプレゼントということにしましょう。

年末年始、この本さえあれば時間を無駄なく過ごせるはずです。


『キリスト教と聖書でたどる 世界の名画 〜愛、信仰、友情の物語〜』 (時空旅人別冊)

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