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『水墨画入門』

岩波書店刊行の島尾新(著)『水墨画入門』を読んでみました。


『水墨画入門』 (岩波新書)
島尾新(著)

毎年新しい年を迎えると、東京国立博物館の国宝室に長谷川等伯「松林図屏風」が展示され、多くの人で賑わいをみせます。


長谷川等伯「松林図屏風」(左隻)16世紀
東京国立博物館蔵

また、「鳥獣人物戯画」(鳥獣戯画)が出品される展覧会には、ひと目見ようと長蛇の列が出来るほどです。今年の夏のトーハクも大賑わいをみせることでしょう。

特別展「国宝鳥獣戯画のすべて」
2020年7月14日〜8月30日

更に江戸時代の仙儺想陲簀魃は、脱力系のゆるさが日々の仕事や人間関係に疲れた現代人の心をがっしり鷲掴みして離しません。

かわいい禅画の二大巨匠! 白隠と仙僂凌誉犬鯆匹

日本美術ブームと呼ばれて久しく経ちますが、等伯や仙僂修靴董崢蚕探魂茵廚凌裕い録蠅┐襪海箸鮹里蠅泙擦鵝今後益々注目されることでしょう。

米津玄師が作詞・作曲した<NHK>2020応援ソング「パプリカ」にも 国宝『鳥獣戯画』バージョンが存在するほどです。


<NHK>2020応援ソング「パプリカ」 国宝『鳥獣戯画』バージョン

さて、ここにあげた作品にはある共通点があります。それはズバリ全て墨で描かれている作品という点です。そうつまり「水墨画」なのです。

水墨画と聞くと、何やら古臭くお爺ちゃんの趣味的なイメージを抱いていませんか。「老後の楽しみの一つとして水墨画教室に通う」なんて。

ところが、雪舟、雪村、若冲、玉堂など日本美術を鑑賞する上で必ず目にするのが水墨画なのです。


雪舟等楊「秋冬山水図」(冬景図)15世紀
東京国立博物館蔵

これだけ、身近で展覧会の常連である水墨画について、実はきちんと体系的に学んだことがありませんでした。

それには理由があり著者の島尾先生もこの本の中で、「水墨画の入門書は存外にない。」とし、新書だと1969年に同じく岩波新書より出たこの一冊しかないそうです。


『水墨画』 (岩波新書 青版)
矢代 幸雄 (著)

また、水墨画とはなんぞやと定義することも難しく辞書的な意味では、説明できないほど広がりのある言葉なのです。

法隆寺金堂天井板の落書も水墨画と言えてしまいます。そこで『水墨画入門』では、水墨画の歴史と代表的な作品を織り交ぜながら、その魅力について解説が進められます。

【目次】
はじめに
第一章 水墨画とはなにか?
第二章 水墨の発見
第三章 水墨画の存在様式
第四章 イリュージョニズムの山水画
第五章 水墨画がやってくる
第六章 詩書画の世界
第七章 「胸中の丘壑」から「胸中が丘壑」へ――水墨表現のさまざま
おわりに
参考文献抄



牧谿「観音猿鶴図」13世紀
大徳寺蔵

中国(東洋)の水墨画とヨーロッパ(西洋)の油彩画と対立構造で今の我々は捉えがちですが、そもそもは水墨画は1300年前に当時主流だった着色画の顔料である岩絵具では表現できないものを描くために用いられたものだったそうです。

墨は五彩を兼ねるが如し

岩絵具では表現できない微妙な明るさやトーンを水墨は表現可能です。グラデーションにより対象の質感と立体感も表現出来てしまいます。

風なども描けてしまいます。「松林図屏風」を思い浮かべてみて下さい。墨絵だからこそ可能なものがそこにわんさかあります。


水墨画入門』より。

また、島尾氏は水墨画特有の「身体性」についても言及しています。これは是非読んで頂きたい核となる一説です。

学習院大学で教鞭を執られているだけあり、読者を飽きさません。「潑墨」(はつぼく)という一種のアクションペインティングの解説で、ジャクソン・ポロックまで登場します。

水墨画の歴史、技法、作品解説に加え、墨と紙そして水についても触れています。ここはまさに驚きでした。


水墨画入門』より。

水と紙によって滲み方に違いが生じるそうです。「中国は硬水で日本は軟水だから、それに合わせて墨にも違いがある」

とにかく情報量盛りだくさんで、飽きることなく読み進められます。特に「第三章 水墨画の存在様式」、「第四章 イリュージョニズムの山水画」は必読です。

「第五章 水墨画がやってくる」で、日本で水墨画の「線のよろこび」が見出せるのは、「仮名」の存在が大きいと言及されている点も慧眼です。

フランス料理のコートレット(côtelette)と、トンカツ、カツ丼の例は分かりやすかったな〜実に。


仙儺想陝犬図」19世紀
福岡市美術館蔵

日本美術鑑賞の楽しみ方を大きくジャンプアップさせてくれる一冊です。勿論その元となった中国絵画も!この内容が新書で読めるとは良い時代です。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で美術館・博物館が閉館を余儀なくされ、展覧会に足を運べない日々がまだまだ続きそうです。

座して落ち着いて本をとり、知識に磨きをかけながら美術館で展覧会を再び観られる日を気長に待ちましょう。ジタバタしても仕方ありません。こんな時こそ読書です。


『水墨画入門』 (岩波新書)
島尾新(著)

墨と、筆と、紙―この、シンプルな素材から生みだされてきた「モノクロームの世界」は、果てしなく豊かで、奥深く、そして愉しい。東アジア独自の筆墨文化に広く目くばりしながら、水墨画の歴史と思想、作品と技法を縦横無尽に読み解く。矢代幸雄の名著『水墨画』から半世紀、水墨画へのあらたな道案内。

【関連書籍】

『雪舟決定版: 生誕六〇〇年』 (278) (別冊太陽 日本のこころ 278)
島尾 新 (監修), 山下 裕二 (監修)


『もっと知りたい雪舟 ―生涯と作品』 (アート・ビギナーズ・コレクション)
島尾 新 (著)


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『モネのキッチン 印象派のレシピ』

秋田書店刊行のにしうら染著『モネのキッチン 1―印象派のレシピ』を読んでみました。


『モネのキッチン 1―印象派のレシピ』 (ボニータコミックス)
にしうら染 (著)

まだまだ画家として駆け出しの頃のクロード・モネ(31歳)と、妻・カミーユ、息子・ジャンと貧しくも幸せな家庭の様子を主軸に、彼の作品を料理と共に紹介するアットホームな雰囲気に包まれた漫画です。

2019年1月にgooいまトピの「アノ天才が主役!?今すぐ読みたいアート漫画10選」でも紹介しました。


クロード・モネ「」1872年
ウォルターズ美術館蔵

第2話(この漫画では「2皿目」)に登場するカミーユをモデルとしたこの作品。

絵画は時に想像力を大きく掻き立てるものでもあります。一体この絵が描かれた経緯はどうだったのか、少し考えると様々な「物語」が頭に浮かんでくるはずです。

モネのキッチン』で、にしうら染氏がイメージした「物語」はどれを読んでも幸せな雰囲気に包まれています。


「2皿目:フレンチトーストとスクランブルエッグ」より。

「画家・モネが生涯で最も情熱をかけた光の表現。彼の若い頃の作品でその一端が現れているのがこの作品である。」と、話の最後にちょっとした解説も付いているのもとてもいい感じです。

【目次】
1皿目:若鶏の狩人風
2皿目:フレンチトーストとスクランブルエッグ
3皿目:カモのパイ
4皿目:はちみつクッキー
5皿目:ソーセージガレット



「1皿目:若鶏の狩人風」より。

貧乏だったモネが、ルノワールと共に食材を購入し腕によりをかけてこしらえた豪華な料理。では、この食材を買うお金は果たしてどこから手に入れたのでしょう?

マネから差し入れしてもらった?いやいや、ここは漫画ならではの面白く素敵なエピソードにまとめ上げられています。

さて、この絵にはどんな「物語」そして料理が用意されていることでしょう。是非読んでみて下さい。これまたいい話です。


クロード・モネ「木馬に乗るジャン・モネ」1872年
メトロポリタン美術館蔵

「モネはジャンを描いたこの作品を一度も競売には出さず、家族の思い出として自身が亡くなるまで手元に置き続けた。」

同時代の画家も勿論登場します。マネ、ルノワール、シスレー、戦死してしまうバジール、それにベルト・モリゾ。

モリゾが出てくるのは第5話(5皿目)です。


「5皿目:ソーセージガレット」より。

絵もすっと入ってくる優しいタッチで、読んでいて絵的にも内容的にも幸せな気分になります。

それにしてもアートと食と漫画。この3点セットで攻められたら、向かうところ敵なしです。全2巻すでに完結していますが、続編を是非描いてもらいたいものです。


ベルト・モリゾ「ロリアンの港」1869年
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵

マンガだからこそ表現可能な要素がこの作品の随所に見られます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で美術館・博物館が閉館を余儀なくされ、展覧会に足を運べない日々がまだまだ続きそうです。

座して落ち着いて本をとり、知識に磨きをかけながら美術館で展覧会を再び観られる日を気長に待ちましょう。ジタバタしても仕方ありません。こんな時こそ読書です。


『モネのキッチン 1―印象派のレシピ』 (ボニータコミックス)
にしうら染 (著)

クロード・モネ(31)は若き貧乏画家。愛する妻・カミーユ&息子ジャンと幸せに暮らしているけれど、主食は豆…。お腹をすかせたモネは親友のルノワールと一緒に…!?
マネ、シスレー、モリゾなども登場!! フランス印象派画家たちのリアルグルメ!!



モネのキッチン 印象派のレシピ(2) 』(ボニータ・コミックス)
にしうら染 (著)

にしうら染氏は、以前紹介したこちらの本で漫画(イラスト)を担当されています。


『マンガで教養 はじめての西洋絵画』
川瀬 佑介 (監修), にしうら染 (イラスト)

『マンガで教養 はじめての西洋絵画』レビュー

【関連書籍】

『5分でわかれ!印象派』
須谷明 (著)、青い日記帳(監修)


宮廷画家のうるさい余白 1』 (花とゆめCOMICS)
久世番子 (著)

バロック期、スペイン王宮…宮廷画家に登用されようと、王宮を訪れた青年、シルバ・ベラスケス。そこで彼が出会ったのは、自らを描いた肖像画を切り裂く少女、イサベル姫。どんな画家が描いた肖像画も気に入らないという彼女の心中は…? 久世番子が鮮やかに描き出す、スペイン王宮絵画物語、開幕!


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『最期の絵 絶筆をめぐる旅』

芸術新聞社刊行の窪島誠一郎著『最期の絵 絶筆をめぐる旅』を読んでみました。


最期の絵 絶筆をめぐる旅
窪島誠一郎 (著)

画家の回顧展でキャプションに「絶筆」と記されていると、ついつい他の絵よりも時間をかけ観てしまい、そしてまたその作品に画家の想いを推察し抒情的な何かを探りたくなるものです。

最期の絵 絶筆をめぐる旅』では、日本の近代作家20人の絶筆を通してその画家の人生を綴る上質な読み物です。


鴨居玲「自画像」1985年
笠間日動美術館蔵

まずは巻頭の絶筆美術館(カラー図版)で20人の画家の絶筆を観てから本編へ。本はたとえ小説であっても自分の好きな場所から読んでよいものです。

絶筆美術館(カラー図版)で「これは!」と心に響いた作品があったら優先的にその作家から読んでいきましょう。

「人生最後の作品をめぐる画家20人の物語」の始まりです。


青木繁「朝日」1910年
小城高校同窓会黄城会(佐賀県立美術館寄託)

2011年にブリヂストン美術館で開催された「青木繁展」でにひと際目を惹いていた作品がこの「朝日」でした。

愛する人たちを東京に残し、ひとり九州を放浪し1911年に福岡市内の病院で息を引き取った青木。

しかし絶筆が彼の作品の中で最も輝く「朝日」だったということは……「青木繁展」で最も長く絵の前に滞在したのがこの作品であったこと言うまでもありません。
繁が「朝日」を描いた頃は、すでに結核が身体を深く静かに触んでいた。五十号大の画布を絵具で埋めるだけでもかなり難行だったはずだ。じつはこの絵に取り組む前に、繁は「夕焼けの海」という小品を描いていた。もちろんそれは、日々実際にみている唐津の海ではなく、つねに繁の脳裡にあった懐しい房総海岸の海で、そこには何隻かの帆前船、小舟にのる人 影が描かれていた。が、「朝日」には海と太陽以外何も描かなかつた。いや、描こうとしても描けなかつたのかもしれない。
展覧会の図録やましてやwebなどには載っていない、画家および絶筆の細かな情報まで書かれており、全く飽きることなく一気に読めてしまいます。


古賀春江「サーカスの景」1933年
神奈川県立近代美術館蔵

とりわけ、古賀春江に関しては初めて知ることばかり、驚きと発見の連続でした。「古賀春江展」行ったのにな……

1932年頃から精神を病み、極度の「厭人症」に陥った古賀は、人には会わず、犬や小鳥を偏愛し、奇行が目立つようになったそうです。

入院を進められても頑なに拒んでいましたが、川端康成の説得でようやくこの年(1933年)に入院。その直前に描いた作品がこの「サーカスの景」でした。

川端康成の随筆『末期の眼』にはこの作品についての感想と、当時の春江についてが記されています。


神田日勝「馬(絶筆・未完)」1970年
神田日勝記念美術館蔵

NHK連続テレビ小説「なつぞら」に登場した山田天陽(吉沢亮)のモデルとなった画家・神田日勝の有名過ぎる絶筆。

最期の絵 絶筆をめぐる旅』が出た2016年と朝ドラ放映後の今では神田日勝とこの未完の「馬」の知名度はまさに天と地ほどの違いがあります。

2020年4月18日から東京ステーションギャラリーで始まる回顧展「神田日勝 大地への筆触」で実際にこの絵を観る前に、是非読んでおきましょう。


「神田日勝 大地への筆触」
会期:2020年4月18日(土)〜6月28日(日)
https://kandanissho2020.jp/

【目次】
宮芳平「黒い太陽」
古賀春江「サーカスの景」
神田日勝「馬」
小出楢重「枯木のある風景」
青木繁「朝日」
岸田劉生「徳山風景」
横山操「無題(木立ち)」
梅原龍三郎「浅間」
西郷孤月「台湾風景図」
野田英夫「野尻と花」
松本竣介「彫刻と女」
鴨居玲「自画像」
香月泰男「渚(ナホトカ)」
靉光「(梢のある)自画像」
伊澤洋「風景(道)」
佐藤哲三「帰路」
高間筆子「自画像」
渡辺學「川口」
鶴岡政男「夜あけ」
長谷川利行「質屋の子守」
ひとくちに「絶筆」といっても、その誕生の事情はさまざまなのだ。 けっきょく、「絶筆」はある意味で、そうした画家の人生、運命をも照射する作品でもあるのだろう。そこには作品の出来不出来や、芸術的にどれほど完成度があるか とかいったこととはべつの、画家の生涯において「絵とは何だったか」という問いに答える、貴重な手がかりがあるようにも思われる。絵好きな人間だったら、「絶筆」を見のがすテはないのだ。(「はじめに」より。)

鶴岡政男「夜あけ」1976年
広島県立美術館蔵

絶筆を紹介する本だからと言って決して暗い話ばかりではありません。鶴岡政男などここまで書いてよいのかと思うほど、女性関係に至るまで赤裸々に作家について綴られています。

一見、面白可笑しく読めてしまいますが、実はそれらのエピソードも全てこの絶筆に通じているのです。しかも鶴岡に関しては著者の窪島誠一郎氏が描いてくれるよう懇願した作品だそうです。

近しい間柄だからこそ、知り得るネタと作家への愛情。流石、無言館館長。

窪島誠一郎(くぼしま せいいちろう)
1941(昭和16)年東京生まれ。信濃デッサン館・無言館館主、作家。印刷工、酒場経営などを経て、1964(同39)年、東京世田谷区に小劇場運動の草分けとなる「キッド・アイラック・アート・ホール」を設立。1979(同54)年、長野県上田市に夭折画家のデッサンを展示する「信濃デッサン館」を、1997(平成9)年、同館隣接地に戦没画学生慰霊美術館「無言館」を設立。『父への手紙』『「明大前」物語』(筑摩書房)、『信濃デッサン館日記』『無言館の坂道』『雁と雁の子』(平凡社)、『無言館ノオト』『石榴と銃』『鬼火の里』(集英社)、『無言館への旅』『高間筆子幻景』(白水社)、『粗餐礼讃』(芸術新聞社)など著書多数。第46回産経児童出版文化賞、第14回地方出版文化功労賞、第7回信毎賞、第13回NHK地域放送文化賞を受賞。2005(平成17)年、「無言館」の活動で第53回菊池寛賞受賞。


無言館
http://mugonkan.jp/

最期に、20人の画家が何歳で亡くなったのかを調べておきました。読まれる際に参考になさって下さい。

宮芳平 77歳
古賀春江 38歳
神田日勝 32歳
小出楢重 43歳
青木繁 28歳
岸田劉生 38歳
横山操 53歳
梅原龍三郎 97歳
西郷孤月 39歳
野田秀夫 31歳
松本俊介 36歳
鴨井玲 57歳
香月泰男 62歳
靉光 38歳
伊澤洋 26歳
佐藤哲三 44歳
高間筆子 21歳
渡辺學 84歳
鶴岡政男 72歳
長谷川利行 49歳

座して落ち着いて本をとり、知識に磨きをかけながら美術館で展覧会を再び観られる日を気長に待ちましょう。ジタバタしても仕方ありません。こんな時こそ読書です。


最期の絵 絶筆をめぐる旅
窪島誠一郎 (著)

画家が死んでから、のこされた絵たちの呼吸がはじまる。

日本の近現代を代表する画家20人の「絶筆」にスポットを当て、その背景にある人間ドラマを紹介する美術読み物。
本文中で取り上げた絶筆作品20点をカラー掲載した「絶筆美術館」も収録。


【関連書籍】

『「絶筆」で人間を読む 画家は最後に何を描いたか』 (NHK出版新書)
中野京子(著)

あの有名な画家――その最後の作品を知っていますか?

ルネサンス、バロック、印象派……もう、そんな西洋絵画の解説は聞き飽きた。知りたいのは「画家は、何を描いてきたか」、そして「最後に何を描いたか」。彼らにとって、絵を描くことは目的だったのか、それとも手段だったのか―。ボッティチェリからゴヤ、ゴッホまで、15人の画家の「絶筆」の謎に迫る。



『無言館 戦没画学生たちの青春』 (河出文庫)
窪島 誠一郎 (著)


『傷ついた画布(カンバス)の物語―戦没画学生20の肖像』
窪島 誠一郎 (著)


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『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック』

朝日新聞出版刊行の『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック』を読んでみました。


『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック』
(AERAムック)

朝日新聞出版 (編集)

新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、2020年2月29日(土)から3月16日(月)まで臨時休館となってしまった国立西洋美術館。

本来なら、3月3日から「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が華々しくスタートするはずでした。
https://artexhibition.jp/london2020/

海外のメジャーな美術館の名を冠した展覧会は毎年どこかで必ず開催されています。「ボストン美術館展」なんてもう何回開いたのか分かりません。


ロンドン・ナショナル・ギャラリー内観
https://www.nationalgallery.org.uk/

ところが、ロンドン・ナショナル・ギャラリーはこれまで約200年の歴史の中で、国内はもとより海外の美術館へ作品の大規模な貸し出しを行ってきませんでした。

そんな頑固な英国を代表する美術館が、はじめて館外へ61点もの作品を貸し出すのですから、注目しないわけにはいきません。

勿論、61作品すべてが日本初公開となります。レンブラント《34歳の自画像》、アングル《アンジェリカを救うルッジェーロ》、スルバラン 《アンティオキアの聖マルガリータ》、セザンヌ《ロザリオを持つ老女》等々。


ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック』より。

先方から「はい、ではこの61作品ね」とパッケージされた作品群ではなく、日本の学芸員と先方とで協議を重ねて選んだ日本人向けのまさにオリジナルの構成となっているのが、ウリでもあります。

毎年数多くの展覧会を観ていますが、正直こんな経験は初めてです。となるところだったのに、新型コロナの影響で会期延期に…楽しみにし過ぎていたのが災いしたのでしょうか……

ロンドン・ナショナル・ギャラリーへは、都合これまで4回は足を運んでいます。トラファルガー広場に面し多くの人で賑わいをみせており(鳩も多かった記憶があります)、まさに英国の顔たる堂々たる構えで迎えてくれます。


ロンドン・ナショナル・ギャラリー外観
https://www.nationalgallery.org.uk/

毎回、現地(アウェー)では作品に圧倒されてしまい、心落ち着けて観られたためしが一度もありません。今回日本しかも慣れ親しんだ国立西洋美術館(まさにホーム!)で対面出来るとあって本当に本当に楽しみにしているのです。

しかし、地団駄踏んでいても門は開きません。ここはひとまず、予習に徹しましょう。

これだけ大きな展覧会となると各出版社もほおってはおきません。数社から「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に関する本が出ています。(『芸術新潮』も来月号で特集を組んでいます)



何冊か出ている展覧会ガイドブックの中から一冊選ぶとすると『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック』でしょう。

朝日新聞出版AERAムックのこの類の本は、外れがまずありません。61作品全てカラー図版で紹介し解説されているのは当たり前。

ただ、それだけだと図録と変わり映えしなくなります。そこで、ゴッホとフェルメールにページを割きそれぞれ「総力特集」として、丁寧すぎるほど突っ込んだ解説を展開しています。


ひまわりの履歴書、ファン・ゴッホ家から購入したロンドン版《ひまわり》

ゴッホの描いた7点のひまわりの来歴を一覧表にまとめています。いつ誰の手に渡り、そして現在の美術館に所蔵されるに至った経緯など見開きで紹介しています。

こうしたアプローチって今までありましたでしょうか。「調べれば分かること」かもしれませんが、日本語で丁寧に観やすくこうしてまとめてくれるのは誰にも出来ることではありません。

【目次】
来日する61作品はこれだ!
・ゼッタイに見たい名画セレクション1〜6解説
・ゴッホ総力特集:《ひまわり》が傑作な理由/モネが描いたひまわりと比較研究/《ひまわり》を原寸大に拡大すると!/ゴッホの《ひまわり》は7枚ある/まるかわりゴッホの37年の生涯/ゴッホとゴーガン62日間の真相/ゴッホは本当に自殺したのか/他にあるぞゴッホの名作/日本でもゴッホに会える美術館
・フェルメール総力特集:《ヴァージナル〜》が傑作な理由/楽器を弾く絵との比較研究/《ヴァージナル〜》を原寸大にすると!/ヴァージナルってどんな楽器/まるわかりフェルメール43年の生涯/絵の中にある「小物」に込められた愛/フェルメールが小さい絵を描いた理由/フェルメール作品の来日歴/フェルメールの故郷を歩く
・まだまだあるぞ名画解説(国立西洋美術館•川瀬佑介)
・西洋美術はこのように変化した!
・カリスマ予備校講師の独占授業「イギリスの歴史」
・ロンドン•ナショナル•ギャラリーの歴史
・ロンドン•ナショナル•ギャラリー所蔵の来日しなかった名画たち
・展覧会図録紹介
・展覧会グッズ紹介



ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》1670-72年頃

日本にやって来る24作目のフェルメール作品。ロンドン・ナショナル・ギャラリーには同時期に描かれた「ヴァージナルの前に立つ女性」もあります。今回やって来るのは「座る」方です。

どちらもフェルメールが亡くなる数年前に描き上げた作品とされ、全盛期のそれと比べると光の表現や細部の描写にやや衰えが見えます。

ところが、最近では新しい画風にチャレンジした結果このような作品となったのでは。との説も出てきています。いずれにせよ、国内でフェルメールを間近で観られる好機であることに間違いはありません。


ピアノのようでも全く音色の違うヴァージナル

國學院大學教授の小池寿子先生や国立西洋美術館の主任研究員でありこの展覧会の担当者でもある川瀬佑介氏による充実したテキストは、この手の本にしてはかなり贅沢な読み物です。

また、皆さんよくご存じの人たちも執筆者に名を連ねています。壺屋めり (@cari_meli)、はろるど (@harold_1234) 、かるび(主夫アートライター) (@karub_imalive)そして、江六前一郎:ichiro erokumae: (@icro_erkme)


依頼主の変化が西洋絵画を変えた

本を読むことは心を落ち着ける作用があります。また活字と向き合うことは想像力をかき立てます。

座して落ち着いて本をとり、知識に磨きをかけながら美術館で展覧会を再び観られる日を気長に待ちましょう。ジタバタしても仕方ありません。こんな時こそ読書です。


『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 完全ガイドブック』
(AERAムック)

朝日新聞出版 (編集)

200年の歴史の中で、館外への大規模な貸し出しをしてこなかったロンドン・ナショナル・ギャラリーが、ついに美術展の開催を決断した。出品される61作品すべてが初来日。フェルメールの《ヴァージナルの前に座る若い女性》もやってくる。そのほか、ルネサンス期の巨匠・ティツィアーノ、オランダが生んだヒーロー・レンブラント、印象派のビッグスター・モネやルノワールなど、まさしく「西洋絵画の教科書」が勢揃い。オリンピックイヤーの今年、東京と大阪で、いまだかつてない感動が湧きあがる。約8カ月におよぶロングラン。これを見逃せば、次はいつ見られるか分からない!



『Oggi (オッジ) 』2020年 4月号

小学館の『Oggi』で「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」について書いています。読んで下さいませ!

【関連書籍】

『ロンドン・ナショナル・ギャラリー: 名画でひもとく西洋美術史』 (別冊太陽)
小池 寿子 (監修), 高橋 明也 (監修)


『カラー版 教養としてのロンドン・ナショナル・ギャラリー』 (宝島社新書)
木村 泰司 (著)

【映画】

『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』(字幕版)

ダ・ヴィンチ、ゴッホ、レンブラントなど巨匠たちの西洋絵画の傑作がずらりと揃う「名画の宝庫」ロンドンの中心、トラファルガー広場にあり、年間500万人以上が訪れる世界トップクラスの美術館ナショナル・ギャラリー。巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、30年の構想を経て、英国の〈小さな美術館〉が〈世界最高峰〉と讃えられ、190年もの長い間、人々に愛され続ける―その秘密に迫る!(c)2014


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『池永康晟作品集 少女百遍の鬱憂』

玄光社刊行の『池永康晟作品集 少女百遍の鬱憂』を読んでみました。


池永康晟作品集 少女百遍の鬱憂
池永康晟 (著)

2年前(2018年)にちくま新書より上梓した『いちばんやさしい美術鑑賞』では、国内で観られる15の作品を取り上げました。

モネ、セザンヌ、ピカソ、雪舟、伊藤若冲、上村松園ら誰しもが知るメジャーな作家で一旦は構成が整ったのですが、どうしても現役で活躍している画家もひとり取り入れたいと思い、最終章に加えたのが池永康晟さんでした。

何故、池永さんを選んだのか。それは「好きなものを好きなように描いている作家」だからです。長い長い美術の歴史の中で、好きなものを好きなように絵としている画家は、ほとんどいません。


池永康晟「素顔・莉亜」(部分)2018年

もう一点、好きな女性を好きなように描いた美人画を池永さんは惜しみもなくwebで公開しています。サイトで惜しげもなく自作を公開しています。

Twitterでもばんばん画像付きのツイートをしています。池永康晟(@ikenagayasunari)はもちろんのこと、池永康晟_美人画bot(@ikenaga_bijinga)でも『池永康晟画集 君想ふ百夜の幸福』(芸術新聞社)の担当編集者が1時間ごとに次々と池永作品の画像をTwitterにあげているのです。

これが奏功し国内だけでなく、海外にも多くのファンを獲得し、オファーも絶えません。

池永康晟(いけなが・やすなり)

1965年大分県生まれ。大分県立芸術短期大学付属緑丘高等学校卒業。自身で染め上げた麻布に岩絵具で描く美人画が、独特な質感と芳香を放つ。文房具や本の装丁など海外からのオファーも多い。
2014年に刊行された画集「君想ふ百夜の幸福」はロングセラーを続けている。AKBとのコラボレーション、版画やぬりえ、カレンダーの発売の他に美人画集の監修を行うなど活躍の場を広げている。

http://ikenaga-yasunari.com/


池永康晟「雹・らな」2018年

昨年(2019年)に刊行となった『池永康晟作品集 少女百遍の鬱憂』は、そんな池永さんの2冊目の作品集となります。

初期作から2013年頃までに描かれた作品を網羅した『池永康晟画集 君想ふ百夜の幸福』から5年。さて新しい作品集ではどんな変化を見せてくれるのでしょう。

新しい作品集には、11人の少女たちを描いた作品が掲載されています。

ユニークなのは、ひとりひとりとの出会いを画家自身が記している点でしょうか。彼女たちと出会った際の印象から、制作途中での気付き、そして別れ。

このテキストだけを読むと一体何の本なのか皆目見当が付かないでしょう。というよりも、これが美術コーナーにある本だとはゆめゆめ思わないはずです。


池永康晟「真珠貝・らな」2018年

「男の一生と云ふものはつまらないものだ、持って生まれた魂の種火を、老いた消炭になるまで絶やさぬよう臆病に生きるのだ。
しかし、少女の焔は不思議である、嗚といふ間に煌めいて燃やし尽くしてしまう。」


タイトルの「少女百遍の鬱憂」とはどんな意味があるのか読んでみるまでは皆目見当も付きませんでした。「二年に及ぶ憂鬱の始まりであったのだった。」と前書きにあります。これがヒントです。

池永さんの「変態」ぶりが存分に感じられる一冊であり、同時代を生きる作家の苦悩と栄華を存分に味わえる濃厚な一冊です。アイドルの写真集では味わうことのできない滋味がここにはあります。



最後に、「絵画制作過程」とし、池永さんがどのようにして美人画を描くのかが克明に写真付きで説明されています。これには驚きました。秘密をここまで暴露してしまって良いものかと少々不安に。

しかし、ではすぐに真似が出来るかと言えば、それは不可能です。因みに、池永作品に描かれている女性の肌色に注目してください。

こんな肌の人、身の回りに居ませんよね。それもそのはず、この肌色は10年もの長きにわたり岩絵具で肌色を調合し研究を重ねようやく生み出した納得の独自色なのです。そんな「池永色」が出来たのは、彼が三十代後半の頃です。

支持体も自身で染め上げた麻布を用いています。


池永康晟「羽馴・悠」2019年

11人の少女たちのうち、4人は現在女優やアイドルとして活躍しているそうです。

映画「恋するふたり」のヒロイン、サチコを演じる芋生悠もその一人です。
http://love2.united-ent.com/ja/

強烈な個性を放つ池永さんの新作は、これまで以上に性的倒錯を感じさせる実に刺激的な作品ばかりです。クローズアップした画像も幾つも掲載されているのも彼の画風を知る上でプラスでした。

座して落ち着いて本をとり、知識に磨きをかけながら美術館で展覧会を再び観られる日を気長に待ちましょう。ジタバタしても仕方ありません。こんな時こそ読書です。


池永康晟作品集 少女百遍の鬱憂
池永康晟 (著)

少女であることと偶像であることの狭間を彷徨う娘達と、それに惑する画描きの。これは葛藤と鬱憂の記録である。天才画家、池永康晟が数年にわたって描きあげた少女美人画の決定版。

【関連書籍】

池永康晟画集 君想ふ百夜の幸福
池永康晟 (著)


芸術新潮 2020年03月号


美人画づくし
池永康晟 (監修)


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