青い日記帳 

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映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」の試写会にご招待します。

2020年2月28日公開の、映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」の特別試写会に青い日記帳をご覧の皆さまを抽選でご招待致します。


https://lastdeal-movie.com/

<STORY>
年老いた美術商のオラヴィは、なによりも仕事を優先してきた。家族も例外ではなかったが、長年音信不通だった娘に頼まれ問題児の孫息子・オット―を職業体験のため数日預かることに。

その矢先、オークションハウスである一枚の肖像画に目を奪われる。ひと目で価値ある作品だと確信したが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。



「あと一度だけでいい、幻の名画にかかわりたい」―オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から、近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。

画家の命である署名がないことだけが気がかりだったが、オークションへ向け資金繰りに奔走するオラヴィ。そんな折、娘親子が自分の知らないところで大きな苦労をしていたことを知るが…。生涯を美術品に捧げた男がたどり着いた、真に値打ちある人生とは―


「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」予告編 2/28(金)公開

先日、事前にこの映画観て来ました。絵画関係の映画だとどうしてもドキュメンタリー映画が多いのですが、「ラスト・ディール」はしっかりと「人間」が描かれている物語性の高い作品でとても惹きつけられました。

人間ドラマが核を占めるので、アートに関心の薄い方にも観やすくなっている作品です。

この映画をきっかけに絵画やオーククション、そして画家レーピンに興味持たれる方も多いはずです。



絵画の本質を見抜くにはどれだけ多くの作品と真摯に向かい合ったか否かをこの映画は静かに教えてくれます。

そして美術ファンであれば、老画商が目を付けた一枚の肖像画が果たして本物かどうか分かるはずです。

さて、映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」試写会に青い日記帳をご覧の皆さまを抽選でご招待致します。



【試写会スケジュール】

日時:2020年2月20日(木)
開場・18:00 開映・18:30
場所:渋谷 ユーロライブ
(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)


応募方法は以下の通りです。

住所、氏名、年齢、お持ちであればブログ名、note(URL)、Twitter、Instagramアカウントを明記の上、下記のアドレスまでメールでお申込み下さい。メールタイトルは「青い日記帳試写会」として下さい。

info@lastdeal-movie.com

応募締め切りは、2月11日まで。12日以降当選者の方に試写状を発送、1週間前には当選者さまのお手元に届く予定です。どうぞ奮ってご応募下さい。



映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」
https://lastdeal-movie.com/

アテネウム美術館(フィンランドのヘルシンキにあるフィンランド国立美術館)、現地ギャラリー全面協力の元制作された映画です。

【キャスト】
ヘイッキ・ノウシアイネン、ピルヨ・ロンカ、アモス・ブロテルス、ステファン・サウク
【スタッフ】
監督:クラウス・ハロ『こころに剣士を』『ヤコブへの手紙』  
脚本:アナ・ヘイナマー


2018年製作/95分/フィンランド
原題:Tumma Kristus
配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス

映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」は、2020年2月28日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開です。
https://lastdeal-movie.com/

(C)Mamocita 2018


『レーピンとロシア近代絵画の煌めき』


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1000体のお雛さまが「百段階段」に集結!

日本美のミュージアムホテル、ホテル雅叙園東京にて、毎年恒例となった「百段雛まつり」が始まりました。


https://www.hotelgajoen-tokyo.com/

今年は開催11回目で初の地域となる鳥取・島根・山口の3県より、神話や幕末の偉人など、歴史が息づく町々のお雛さまたちが「百段階段」に集いました。「百段雛まつり2020 出雲・因幡・萩ひな紀行」

約700体の雛人形で情景を表現する圧巻の「座敷雛」展示に加え、令和第一回の開催を記念し、江戸・明治・大正・昭和・平成・令和の各時代を象徴する「時代雛」も展示。



座敷雛

都内最大級の雛人形展だけあり、毎年圧倒されてしまいます。始まった当初はかなりおとなしい感じの展覧会でしたが、次第にヒートアップ!悪くありません。

さらに現代のインテリアにマッチする桃の節句のテーブルコーディネートをご提案する「雛のしつらい」を同時開催。


雛のしつらい

普段は現地でしか出会うことのできない総数1000体にもおよぶ珠玉のお雛さまと展示会場である絢爛豪華な文化財とのコラボレーションが今回実現しています。


有職雛/鳥取・米子市立山陰歴史館

【「百段階段」各部屋の展示】
十畝の間(じっぽ):
時を旅するお雛さま、島根のお雛さま(島根・出雲 / 島根・松江)

漁樵の間(ぎょしょう):
百段雛まつりメモリアル「飯塚 座敷雛」(福岡・飯塚)


草丘の間(そうきゅう):
「雛のしつらい」テーブルコーディネート / ひな茶房(期間限定)

静水の間(せいすい):
米子市立山陰歴史館 素(そ)鳳(ほう)コレクション(鳥取・米子)


星光の間(せいこう):
幕末ゆかりの地 城下町・萩の雛まつり(山口・萩)

清方の間(きよかた):
石谷家 林業王伝来の雛(鳥取・智頭)


頂上の間(ちょうじょう):
郷土玩具の世界 (鳥取・北栄、境港/特別協力 イラストレーター 佐々木一澄)

嬉しいことに、今回から、約700体の座敷雛をはじめ、江戸・明治・大正・昭和・平成・令和の各時代を象徴する時代雛など、すべての部屋を撮影可能になりました。

お雛様と百段階段の取り合わせの妙、目で楽しんだ後はカメラ、スマホでパチリ。


時を旅するお雛さま(昭和戦前の京雛) /十畝の間

「百段雛まつり2020 出雲・因幡・萩ひな紀行」始まったばかりです。混雑しないうちにお早めに〜

「百段雛まつり2020 出雲・因幡・萩ひな紀行 同時開催 〜雛のしつらい〜」

開催期間:2020年1月24日(金)〜3月15日(日) ※会期中無休
開催時間:10:00〜17:00(最終入館16:30)
※撮影可能 (三脚・フラッシュの使用及び、商業目的の撮影はご遠慮ください。一部撮影不可)
※展示品保護のため会場内の暖房を控えております
会場:ホテル雅叙園東京
https://www.hotelgajoen-tokyo.com/event/hinamatsuri2019
後援:外務省、観光庁、鳥取県、島根県、山口県、目黒区、一般社団法人めぐろ観光まちづくり協会
主催:「百段雛まつり展」実行委員会(ホテル雅叙園東京、萩市、一般財団法人因幡街道ふるさと振興財団、一般財団法人米子市文化財団、北栄町、人形の東玉(とうぎょく)
企画協力:一般社団法人九州観光推進機構、九州のひなまつり広域振興協議会
協力:二木屋、五色株式会社(原孝洲)
協賛:岩塚製菓株式会社


『ひなにんぎょうができるまで』


東京都指定有形文化財 「百段階段」


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「見えてくる光景 コレクションの現在地」

アーティゾン美術館で開催中の
開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」に行って来ました。


https://www.artizon.museum/

2015年5月から新築工事のため休館していたブリヂストン美術館が、名称を慣れ親しまれた「ブリヂストン美術館」から「アーティゾン美術館」に改め、2020年1月18日に開館しました。

アーティゾン美術館内外装完成施設内見会レポ(作品が一枚もない展示室やLEDピクトグラム等)

5年かけ23階建ての「ミュージアムタワー京橋」を新たに建て、その低層階(1階〜6階)をアーティゾン美術館が占めています。展示スペースは旧美術館の倍の広さとなりました。



休館している間にも積極的に作品収集に取り組み、コレクションの幅を広げた中から、今回は、モリゾ、カサット、ボッチョーニ、カンディンスキー、ジャコメッティ、松本竣介など31点が初公開されています。

旧ブリヂストン美術館時代は暇さえあれば、良質なコレクションを観に行き、ここの美術館で西洋絵画や洋画のイロハを学んだと言っても過言ではありません。

今では当たり前となっている美術館での講座も、ここの「土曜講座」はパイオニア的な存在でした。アーティゾン美術館と生まれ変わってからも引き続き「土曜講座」を開催する初心を忘れていない点も素晴らしい点です。


メアリー・カサット「日光浴(浴後)」 1901年
石橋財団アーティゾン美術館蔵(新収蔵品)

5年も休館し、歴史ある美術館の名称まで大胆に変更となると、慣れ親しんだ美術館ではなくなってしまうような寂しい気持ちになったことは事実です。それだけ愛着があったのです。

開館記念展に出向く足取りも少し複雑な思いがありました。

しかし、そんなメランコリックな感情を一瞬で吹き飛ばすかのように、これまでにも増して素晴らしい美術館に生まれ変わっていました。

それは、「見えてくる光景 コレクションの現在地」展へ一歩足を踏み入れればすぐに実感できるはずです。同様な不安をお持ちの方でも。


ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」1904〜06年頃
青木繁「海の幸」1904年
石橋財団アーティゾン美術館蔵

この神展示は美術館スタッフもいつかはやりたいと虎視眈々と狙っていたのでしょう。同時期の世界に誇る優品同士の今しか観られない絶品コラボです。

この年になると流石に泣くことなどなくなるものですが、この展示を前に涙腺崩壊しました。やっぱり名前は変わっても美術に対する想いはこれまで通り、否それ以上です。ここの美術館。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1部「アートをひろげる」
第2部「アートをさぐる」
01 装飾
02 古典
03 原始
04 異界
05 聖俗
06 記録
07 幸福


開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」では、西洋絵画と日本絵画(洋画)それに彫刻作品などを混在させて見せています。しかも稼働展示壁を少々凝った配置にしていることで「ひろがり」が増しています。



第2部「アートをさぐる」では、7つのテーマを設定しよりごちゃ混ぜ感を出しています。素直にコレクションを並べるだけでは芸がありません。よく練られています。

そうそう、アーティゾン美術館では、館内のWi―Fi化を実現し情報をリアルタイムで鑑賞者のiPhone、スマホに送るというサービスを無料で行っています。

アーティゾン美術館のアプリ(無料)をダウンロードすれば、鑑賞者のスマートフォンで音声ガイドや作品解説を楽しめるのです。

アーティゾン美術館公式アプリ


松本竣介「運河風景」1943年
石橋財団アーティゾン美術館蔵(新収蔵品)

こちらの新収蔵品も無料アプリで解説が聴けます。その場で聴けるだけでなく、いつでもどこでも繰り返し聴けるのがミソです。例えば帰りの電車内でも自宅でも。テキスト表示もされるので、美術書としても有用です。

館内のスマホ利用は当然ながらOK!そして写真撮影も原則可能となりました。より一層開かれた美術館へと成長した感があります。

国内の公立館もアーティゾン美術館をお手本として、そろそろ重い腰をあげないといつまでたっても…です。(12年前に「美連協ニュース」に寄稿した時から大きな変化がないように感じます。)


洛中洛外図屏風」17世紀 江戸時代
石橋財団アーティゾン美術館蔵

新たにコレクションに加わった六曲一双の「洛中洛外図屏風」は、存在は薄っすら知っていましたが、まさかアーティゾン美術館が手に入れていたとは!

非常に状態の良い金地の屏風です。ドイツのGlasbau Hahn(グラスバウハーン)社による特注品15mの巨大な一枚ガラスに護られ新たに設けられた日本美術展示コーナーに鎮座しています。



6階から4階まで3フロアに渡り、新収蔵品を含めたコレクションが贅沢に展開されています。一度で観るのは不可能です。携帯の充電も出来る休憩スペースも設けられているので休み休み味わいましょう。

各展示室内に設置されている椅子もそれぞれデザイン性に富んだものが採用されています。何種類もあるので全部座りたくなります。


4階展示室

最後の展示室は、旧ブリヂストン美術館時代の展示室を模して作られています。この天井高の低さが懐かしいですね!古くからのファンへの心使いが感じ取れます。

新しい取り組みと、これまで培ってきた良さを非常にいい塩梅に調合し、非の打ち所がない極上の美術館となっています。


ピエール=オーギュスト・ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」1876年
油彩・カンヴァス 97.8×70.8cm
石橋財団アーティゾン美術館蔵

これから先何十年もまたここで学び、美術の世界に羽ばたいていく人材や、多くの美術ファンを育てあげていくことでしょう。自館の責任をこれほど理解し、実現している(具現化可能な)美術館は日本でここだけです。

アーティゾン美術館。これからも良い作品を沢山私たちに見せて下さい。開館おめでとうございます。

「見えてくる光景 コレクションの現在地」展は3月31日までです。大学生を含む学生は無料です。何度でも足を運んでその目で本物を味わいましょう。


開館記念展
「見えてくる光景 コレクションの現在地」


会期:2020年1月18日(土) 〜 3月31日(火)
開館時間:10:00〜18:00
(毎週金曜日は20:00まで / 但し3月20日を除く)
*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 (2月24日は開館)、2月25日(火)
会場:アーティゾン美術館
https://www.artizon.museum/
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館


『芸術新潮 2020年 01月号 東京のミュージアム100』


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『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』

平凡社より刊行となった『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を読んでみました。


ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』(コロナ・ブックス)
佐藤直樹(著)

2008年9月30日〜12月7日、上野・国立西洋美術館にて開催されたの展覧会「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展。

会期末頃から徐々にこの特異な絵を描く画家の魅力に取りつかれた人が続出。展覧会終了後は最も入手困難な図録として一躍有名に。

試しに、現在Amazonで探してみるとやはり、高値が付けられています。


ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 展覧会図録

事前に話題にすらならず、誰も知らない画家の展覧会に足を運ぶ人はそうそういませんでした。

自分はたまたま、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン(Royal Academy of Arts)で開催されたヴィルヘルム・ハンマースホイ「静かなる詩情」展(Vilhelm Hammershøi: The Poetry of Silence)を現地で観たこともあり、上野の展覧会を心待ちにしていたのでした。


「ハンマースホイ展」(ロンドン)

ロンドンから上野へ巡回した形となった「ハンマースホイ展」ですが、企画したのは当時、国立西洋美術館の学芸員んだった佐藤直樹氏とドイツの研究家フェリックス・クレマー氏が長い歳月をかけ作り上げた展覧会だったのです。

会場の都合でロンドンが先になりましたが、展覧会自体は東京展がオリジナルなのです。

昔語りが少々長くなった気もしますが、これが実はこの『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を紹介するには大切な部分なので珍しく丁寧に説明した次第です。

著者は当時展覧会を企画担当した佐藤直樹氏です。

佐藤直樹(さとうなおき) 
1965年千葉県生まれ。国立西洋美術館主任研究員を経て、2010年より東京藝術大学美術学部芸術学科准教授。専門はドイツ/北欧美術史。編著書に『ローマ 外国人芸術家たちの都』(竹林舎、2013年)、『芸術愛好家たちの夢 ドイツ近代におけるディレッタンティズム』(三元社、2019年)、展覧会に『ヴィルヘルム・ハンマースホイ─静かなる詩情』(国立西洋美術館、2008年)、『アルブレヒト・デューラー版画・素描展』(国立西洋美術館、2010年)、『ヘレン・シャルフベック─魂のまなざし』(東京藝術大学大学美術館、2015年)などがある。



若い女性の肖像、画家の妹アナ・ハマスホイ」1885年 
ヒアシュプロング美術館蔵(コペンハーゲン)

12年前の展覧会をご覧になり、静かな感動を胸に抱いた方、何が何だかモヤモヤとしたものが心の中に残ったままの方全ての方に「お待たせしました!」と言える一冊が出来ました。

「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展の図録は高くて手を出せなくても、もう大丈夫。

2008年の「ハンマースホイ展」の展覧会構成に、ほぼ沿ったような本の作り(目次)となっています。

【目次〕
序章 ハマスホイ コペンハーゲンのスキャンダル
1章 時代のはざまで パリとロンドンに現れたデンマークの異端児
2章 メランコリー 誰もいない風景
3章 静かな部屋 沈黙する絵画




「ハンマースホイ」から実際のデンマーク語の発音により近い「ハマスホイ」に片仮名表記が統一された関係で、この本のタイトルも「ハマスホイ」となっています。安心して下さい。同じ画家のことです。

さて、『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を強く推す理由として、ハマスホイが影響を受けた、または関連性が指摘される画家の作品が、数多く掲載されていることがあげられます。

今更ながら、ヴィルヘルム・ハマスホイほど謎めいた作品を決して長くない画家人生の中で残した者はそうそういません。

「何故?」がいつもハマスホイ作品の前に立つと頭の中を駆け巡ります。「後ろ姿ばかり描いたのは何故?」「ひとけのない風景ばかり描いたのは何故?」「死んだ魚のような目をした人物を描いたのは何故?」等々…


ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内」1898年 
スウェーデン国立美術館蔵

そんな不気味な画家ハマスホイの多くの謎を解く手がかりがこの本にはぎっしり詰まっています。ただし、全ての答えがあるわけではありません。

それは小説家の意図したところを幾ら研究しても答えが見つからないのと同じく。ハマスホイの謎が解けてしまったらそれこそ三流小説以下に成り下がってしまいますからね。謎は謎としてぼんやり残っていた方が良いのです。

【コラム】
ハマスホイとコレクター 佐藤直樹
ハマスホイが会いたがった人物 ホイッスラー 河野 碧
暗示の絵画−ハマスホイと象徴主義 喜多崎 親
ハマスホイと写真 佐藤直樹
ノルウェーの美術史家アンドレアス・オベールによるフリードリヒの再発見 杉山あかね
ドライヤーとハマスホイ 小松弘


正方形に近い形の風景画など、カメラで撮影した画像をトリミング加工したように見えることから、一貫して彼の作品と写真との関連性を知り得ておくのは大切なポイントです。


ハマスホイ「クレスチャンスボー宮殿の眺め」及びフェルナン・クノップフ「見捨てられた町」と現在のメムリンク広場の写真。

展覧会図録ではこうした比較画像や写真を同レベルで入れることは無いので、『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』を読んで初めて気が付いた点が多くありました。(謎は解けませんが…)

また非常に興味深いのは、この画家は画風の変化が殆ど無いに等しいのです。↑に掲載した「若い女性の肖像、画家の妹アナ・ハンマースホイ」(1885年)は、1884年にアカデミーを卒業してすぐ描き春季展に出品した作品です。

ここで重要なのは、既にこの時期からハンマースホイ独自の特徴が色濃く作品に現れていた点です。佐藤氏曰く「最初から完成された、成熟された芸術家だった」と。

ハマスホイの師の言葉もこの本に紹介されています。「ほとんど奇妙な絵ばかり描く生徒が一人いる。私は彼のことを理解できないが、彼が重要な画家になるであるであろうことはわかっている。彼に影響を与えないよう気をつけることとしよう。


コラム欄の下地がグレーを基調としたハマスホイ・カラー!!愛が感じられますね。
なぜ私が少ない色で、しかも抑えられた色調を使うかって? それは私もわからない。この問題について何か答えるというのは、私には本当に不可能だ。それは私には全く普通のことなので、なぜか、という問いには何も言えない。しかし、私が初めて展示したとき以来、いずれにせよそうなんだ。おそらく、私の使う色は、ニュートラルとか制限された色彩とか呼ぶことができるかもしれない。私は真にそう思うのだけれど、絵というものは色が少なければ少ないほど色彩的な意味において最高の効果をもつのではないか
ハマスホイの言葉、1907年
51歳の若さでこの世を去ってしまったハマスホイに光が当たり始めたのはまだまだ最近のことです。日本語で描かれたハマスホイを知るための最良の一冊が『ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』です。

ハマスホイとデンマーク絵画」展が東京都美術館で開催されています(山口県立美術館へも巡回)。展覧会を観る前に観た後に、そしてしばらく時を置いてからじっくりと読み返したい良書です。


ヴィルヘルム・ハマスホイ 沈黙の絵画』(コロナ・ブックス)
佐藤直樹(著)

日本にハマスホイの世界を紹介した第一人者の監修による、本邦初の作品集!

「北欧のフェルメール」とも謳われる、デンマークが生んだ孤高の画家ハマスホイ。その静謐な画風になぜ人は魅かれるのか?謎めいた室内画を描き続けた画家の、その隠された魅力に迫る決定版!国内未発表を含む代表作54点を収録。



ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 (ToBi selection)
萬屋健司 (著)

もう一冊展覧会に合わせて「ハマスホイとデンマーク絵画展」を企画・監修した萬屋氏も重厚な一冊を出しています。こちらも後日レビュー書きますね。

萬屋氏は12年前の「ハンマースホイ展」もお手伝いしています。


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特殊切手「美術の世界シリーズ」発行

魅力ある名作絵画などの美術品を題材とした特殊切手「美術の世界シリーズ」が新たに発行されます。第1集は「青の世界」がテーマです。

84年切手シートと63円切手シートが同時に発売になります。それぞれ青が印象的な作品10点が切手の絵柄となっています。

ただし、両者とも全てが同じ作品というわけではありません。全部で13点の国内にある美術作品が用いられています。


横山大観「雲中富士
東京国立博物館蔵
https://www.tnm.jp/

東京国立博物館所蔵の以下の4点と、すみだ北斎美術館の葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州石班沢」、ポーラ美術館のマリー・ローランサン「ヴァランティーヌ・テシエの肖像」の計6点はどちらにも採用されています。

染付兎水葵図大皿」(伊万里焼)
酒井抱一「四季花鳥図巻
黒田清輝「湖畔
横山大観「雲中富士
東京国立博物館蔵
https://www.tnm.jp/

また、同じ作品を用いていてもトリミングや切手の形状を変化させるなどして違いを持たせているあたり、とてもよく考えられています。

それでは主な作品を紹介して参りましょう。まずは84円切手シートから4点。


84円郵便切手(シール式)


酒井抱一「四季花鳥図巻」江戸時代 19世紀
東京国立博物館蔵
https://www.tnm.jp/


並河靖之「紫陽花図花瓶」(七宝)
清水三年坂美術館蔵
http://www.sannenzaka-museum.co.jp/


黒田清輝「湖畔」1897年
東京国立博物館蔵
https://www.tnm.jp/


オディロン・ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」1901年
三菱一号館美術館蔵
https://mimt.jp/




続いて63円切手シートから4点。足立美術館の「待月」(たいげつ)は是非一度実物をこの目で観たい作品のひとつです。


63円郵便切手(シール式)


染付兎水葵図大皿」(伊万里焼)
東京国立博物館蔵
https://www.tnm.jp/


上村松園「待月」1944年
足立美術館蔵
https://www.adachi-museum.or.jp/


オディロン・ルドン「ペガサス、岩上の馬」1907-10年頃
ひろしま美術館蔵
https://www.hiroshima-museum.jp/


マリー・ローランサン「ヴァランティーヌ・テシエの肖像」1933年
ポーラ美術館蔵
https://www.polamuseum.or.jp/

さてさて、重複していない作品をピックアップしてみましょう。

84円切手:「アレ夕立に」竹内栖鳳、「グラン・ブーケ(大きな花束)」オディロン・ルドン
63円切手:「待月」上村松園、「ペガサス、岩上の馬」オディロン・ルドン


冒頭で「13」点あると書きました。でもこれだと「12」しかありません。おや?何か見落としてはいませんか。

実は、双方に使われているモネ「睡蓮」は同じ作品ではないのです!

84円切手シートは国立西洋美術館の「睡蓮」、63円切手シートの「睡蓮」はアサヒビール大山崎山荘美術館所蔵のモネなのでした。


クロード・モネ「睡蓮
国立西洋美術館蔵
https://www.nmwa.go.jp/


クロード・モネ「睡蓮
アサヒビール大山崎山荘美術館蔵
https://www.asahibeer-oyamazaki.com/

助言・監修 盍澣院陛豕大学大学院人文社会系研究科 准教授)、切手デザイン 楠田 祐士(切手デザイナー)、特殊切手「美術の世界シリーズ」第2集以降も楽しませてもらいます。

特殊切手「美術の世界シリーズ」第1集は、2020年3月19日(木)発行です。発売楽しみですね!


『ジュニア版もっと知りたい世界の美術 1 北斎と広重』
美術の世界シリーズの第一弾は、「青の世界」です。洋の東西を問わず、美術のなかで青は高貴な色とされ、青色の顔料として用いられたラピスラズリは、高価な素材でした。近代のヨーロッパで青色の絵の具が化学的に調合できるようになると、世界中に広がりをみせ、葛飾北斎の浮世絵など庶民向けの絵画にも用いられるようになりました。空や水景だけでなく、遠望した山岳など青のイメージは風景の中に欠かせないものといえます。

今回は19〜20世紀の、日本絵画と工芸、ヨーロッパ絵画の中から、青が特徴的な作例を選びました。同じ青でも、濃淡の変化や他の色彩との対比によって、まったく異なる表情を漂わせます。季節や時間によって変化する水面や空気の表情を、東西の芸術家たちはそれぞれの感覚でとらえ、表現しています。


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