青い日記帳 

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「肉筆浮世絵のすべて展」

出光美術館で開催中の
「肉筆浮世絵のすべて−その誕生から歌麿・北斎・広重まで」展に
行って来ました。


前期:4月28日(土)〜5月27日(日)
後期:5月30日(水)〜7月1日(日) 

4月28日から始まったこの展覧会。
今日の記事、前期展示の感想です。(遅っ!)

桃山時代の風俗画から江戸時代の浮世絵へ(寛永年間1624-44)
それまでの大画面の屏風絵から小型の掛物絵へ。
また遊楽する人物群像図から一人立ちの美人画へ。

約2世紀に渡る肉筆浮世絵を以下の構成で展示してありました。

1.寛文美人と菱川派
2.鳥居派と懐月堂派
3.奥村・川又・西川の各派
4.宮川派と北尾派
5.勝川派と歌麿・栄之
6.北斎一派と歌川派


ブランドショップが一つ屋根の下に軒を連ねているかのような展示。
それぞれの特徴が素人目にもよく分るように工夫されています。

ただ1〜4までのセクションは、浮世絵元祖・菱川師宣と
肉筆美人画専門集団懐月堂派を除くとあまり自分には馴染みの薄い作品ばかり。

「肉筆浮世絵」という言葉が発する高揚感も少々からぶり気味。
それを分ってか出光さん所々に赤楽茶碗「銘:酒呑童子」や
黒楽茶碗「銘:此花」などをさり気なく配置してくれています。
(第二展示室)

そうそう、野々村仁清の「色絵鳳凰文共蓋壺」も展示されていました。
「出光美術館名品展 II」で見たばかりですが、インパクトあります)


因みにこれら「焼き物」は前期、後期関係なく通期で展示されているそうなので
今行かれてもきっとご覧になれるはずです。赤楽、黒楽だけでも元取れそう。

そんな第一、第二展示室を後にして第三展示室へ。
5と6のセクションがここにあります。そしてこの部屋が圧巻。


勝川春章「美人鑑賞図
奥の座敷から庭にかけてぎこちないパースペクティブが用いられているのに対し、手前の座敷ののびのびしたこの明るく賑やかな空間の対比が何とも言えません。

いくらなんでも「美人」7人もここに描かなくてもいいとは思うのですが…ただ破綻を来たしていないのはお見事。7人の居場所がとてもリズミカルで五線譜に音符のようにさえ見えてきます。

色とりどりの着物を身に纏い、その間に鶴、牡丹、竹、猫そして仙人が散りばめられています。「俺って何でも描けるんだぜ!」と自慢げな声が聞こえてきそう。
(この作品は後期でも展示されています)


鳥文斎栄之「蚊帳美人図
「待ち人の来るかこぬかとかんさしのからみし蚊帳を畳みうちかた」という歌が添えられています(朱楽菅江の賛)。このポーズをとれちゃうのが「美人」の証。左腕のラインと蚊帳が綺麗な関数曲線を作り出しています。するとy軸は後方の衝立かな。薄いピンクと蚊帳の透き通るグリーンも絶妙な色合いです。


喜多川歌麿「美人遊戯図
鳥文斎栄之のライバル歌麿も負けてはいません。美しい指のラインを描きたいが為に鞠を持たせたのではないかと勘繰ってしまいます。足元に仔犬でもいるのかと思えば子どもがその鞠を所望しているようです。後ろ姿しか描かれていませんが、きっと顔は衝立に描かれた布袋様のような柔和な顔の子どもなのでしょう。

身に纏った着物のグラデーションの美しさには言葉を失います。

さて、さてここから先、北斎がいよいよ登場するのですが、2世紀に渡る浮世絵の流れを一通り観て来て感じるのは、いかに北斎がある種「突然変異」的な才能を有していたかということです。例えばこれ。

葛飾北斎「月下歩行美人図
この作品を出光さんで拝見したのは今回が初めてではないのですが、美人画の流れの中で今回改めて観て、これはある種異常だと気付かされました。構図が大胆すぎます。動きがあり、あと一歩で画面から飛び出してしまいそうです。不思議なことにしばらくこの絵の中央に立ち描かれた美人を眺めていると歩く方向(向かって右側)に別の空間が継ぎ足され現出してくるように見えます。

北斎は描かずしてあるはずの空間をそこに表してしまうのです。

この他にも前期、後期共に公開されている「春秋美人図」の着物の柄の精緻さや、初公開の「樵夫図」の仰天させられる構図、また「亀と蟹図」など北斎にやられっぱなしです。そうそう勇ましい「鍾馗騎獅図」今回も展示されています。

後期は7月1日まで。早いうちに出かけて今度は早めに記事アップします!?

大人のための美しいぬり絵―浮世絵編
大人のための美しいぬり絵―浮世絵編

それでは、「今日の一枚

磯田湖龍斎(1735-?)の「石橋図



舞踊「石橋」を描いた作品は数多くありますが、これほど躍動感溢れる作品も珍しいのではないでしょうか。作品の前で同じポーズとって訝しげな視線を浴びていたのは私です。。。右奥のてっぺんに咲いている牡丹の花も一緒になって、見得を切っているかのようです。


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http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1036
浮世絵は、江戸前期に誕生し、幕末明治期までおよそ二百年以上栄えた、世界の美術史上にも稀な日本独特の風俗画です。遊廓と芝居小屋に取材し、遊女と役者を描くことを使命としたこれら浮世絵では、一般には版画作品がよく知られていますが、他方そこには数多くの絵画作品=肉筆画が存在しています。浮世絵師たちは、版画や版本のための版下絵を描く一方で、そのほとんどが例外なく一点制作の肉筆画にも筆を染めており、当世美人の艶やかな絵姿などが、鮮烈な肉筆画として数多く描き残されています。
出光美術館の浮世絵コレクションは、そのすべてが肉筆画であり、本展覧会では初めて当館の肉筆浮世絵コレクションの全貌に光をあてます。前・後期の二部構成によって、約百三十件の作品を公開いたしますが、そのどちらをご覧いただいても、江戸前期の寛文美人、菱川派の作品から、幕末を席巻した歌川派に至るまでのおよそ二世紀にわたる浮世絵全史を通覧できるような構成となっています。会場には、歌麿・北斎・広重といった今日なおその名を知られる代表的な浮世絵師たちが彩管を揮った絵画の傑作も一堂に並び、特に北斎の出品作には出光コレクションとしては初公開となる作品二件(「亀と蟹図」、「樵夫図」全期間展示)が含まれます。まさに出光美術館の肉筆浮世絵コレクションを総覧していただく絶好の機会といえるでしょう。
肉筆浮世絵は、それを描いた絵師の直筆による線や色が、作品から確かめられるところに鑑賞の醍醐味があります。肉筆画のもつ生き生きとした描線の冴え、施彩の鮮やかさは、当時の高度な版刻技術の成果である木版画とはまったく別の感興を観るものに与えてくれるはずです。錦絵版画とはひと味異なる肉筆浮世絵の濃密な世界が、ひとときでも古き良き江戸の時空へといざなう一助となれば幸いです。
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[7/17に書いてます] 残念ながら、展示は終わってしまいましたが、書きたいものを書けないままどっさり溜まっていて気持ち悪いのでさくさくと感想を。 ■「肉筆浮世絵のすべて その誕生から歌麿・北斎・広重まで」展出光
「肉筆浮世絵のすべて その誕生から歌麿・北斎・広重まで」展 | ライトオタクなOL奥様の節約入門日記 | 2007/07/18 12:02 AM