青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< August 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「山種コレクション名品選展」 | main | 「アートで候。」山口晃ギャラリートーク >>

水曜講演会「浮世絵の美と芸術−出光コレクションの名品から」

出光美術館水曜講演会
「浮世絵の美と芸術−出光コレクションの名品から」に参加して来ました。

講師は現在、慶應義塾大学文学部准教授でいらっしゃる内藤正人氏。
内藤氏は昨年まで出光美術館の主任学芸員を務めていらっしゃった方です。


「肉筆浮世絵のすべて−その誕生から歌麿・北斎・広重まで」展
前期の感想
後期:5月30日(水)〜7月1日(日)

以下は、講演会の資料として配布されたレジュメ。

出光コレクションの肉筆浮世絵一豊穣なる浮世絵の絵画作品一        ※浮世絵誕生の諾要素とは何か
1、近世初期風俗画・又兵衛派・寛文美人画からの流れ
2、狩野派・土佐派・長谷川派からの流れ
3、奈良絵本等の物語絵本からの流れ
4、(版本・木版両という点から)木版による文学書の挿図・版画類からの流れ


以下、講演会の概要です。

浮世絵というとどうしでも版画というイメージが強く、まず版画が前提としてあり「肉筆浮世絵」(そもそも名前が悪い)は版画の下絵、デッサンと思われがちで非常に誤解が多い。

菱川師宣は寛永年間にはじめて名前を入れた(落款を記した)風俗画、所謂浮世絵を世に出した。意外かもしれないが師宣の版画作品の半分以上は「春画」であった。しかし教科書にも載っている代表作「見返り美人図」に代表されるような美人画も多く描いた。版画に肉筆画に万能の仕事ぶりを発揮した。



また菱川師宣は「仕込み絵」と呼ばれる所謂レディ・メイドの絵を制作。それはオーダーメイド(受注制作)ではなく、安価で大量に作り売りさばいた絵画作品。古来絵を飾ることの好きだった日本人には多くの需要があった。(それは丁度、フェルメールが活躍した時代のオランダによく似ていたのかもしれません。拝聴しつつ17世紀オランダ風俗が頭に浮かびました)
フェルメールの世界―17世紀オランダ風俗画家の軌跡
フェルメールの世界―17世紀オランダ風俗画家の軌跡
小林 頼子

現在後期で展示されている中では師宣の「遊里風俗図」などがそれに該当するとか。また落款はありませんが「立姿美人図」など同様に事前に販売目的で描かれていた作品。これが後の懐月堂一派などに継承されてゆきます。

逆に師宣でも「江戸風俗図巻」などは注文制作にあたるものです。

江戸時代前半の浮世絵はこうした肉筆画絵画も、版画のように大量に描かれた。

そして、約一世紀後(浮世絵後期)に錦絵所謂版画が登場。
ここで「江戸の版画史からとらえた浮世絵の歴史」をレジュメで紹介。



浮世絵後期に入り版画が多く出回るようになると、肉筆絵画制作にも変化の兆しが見られるようになります。それは大きく以下の2点。

1.注文による絵画(肉筆浮世絵)制作の増加
2.画工(版画)から本絵師(肉筆画)へ脱却


1により、作品のレベルが上昇
2により、身分及び画料が上昇

ここで↑で示した「江戸の版画史からとらえた浮世絵の歴史」を
「江戸の絵画史からとらえた浮世絵の歴史」として見ると様相は一変。

浮世絵の元祖、菱川師宣は版画も絵画(肉筆画)も手がけましたが、その次に続く懐月堂安度の名前が入ってきます。懐月堂は版画を全く手がけませんでした。そして次に川又常正、歌川豊春と肉筆画家を輩出します。(逆に写楽などは版画しか手がけなかったので上記の表からは名前が消えてしまいます)幕末にかけ北斎、北斎一門、歌川国芳、歌川広重、歌川一門と続いていきます。

簡単に言ってしまえば、今回の展覧会で名前の知らない絵師は「絵画史」から見ると大変メジャーな絵師と言うこともできると思います。

講演会はこの後、今回展示されている作品を紹介して終了。
浮世絵がちょいと苦手な私でも全く眠くなることなく
集中して拝聴することができた90分でした。
内藤氏の授業が聴ける慶應の学生さんは幸せです。

こちらの本、内藤氏が上梓されたもの。
ミュージアムショップでは売り切れていました。
浮世絵再発見―大名たちが愛でた逸品・絶品
「浮世絵再発見―大名たちが愛でた逸品・絶品」 内藤 正人
浮世絵のイメージは、江戸庶民のもの、庶民文化の所産というものです。では、浮世絵は本当に庶民や、ほんのひとにぎりの好事家たちだけのものだったのでしょうか。庶民ではない人々、つまり京の都に暮らす天皇や公家、江戸の将軍や大名は、生涯無縁であり続けたのでしょうか。答えは、否です。江戸期の貴人たちが浮世絵を楽しみ、収集していた事実を、直接あるいは間接的に証明できる史料や作品が、近年の研究によって明らかになってきました。どこにも書かれていない角度、視点から、その実像を検証し、まさに浮世絵への先入観、常識を覆して再発見する本です。重要文化財や御物などの逸品・絶品をカラー図版で提示し、立体的に浮き彫りにしています。


展覧会は後期展示7月1日まで開催しています。
その後リニューアル作業に入る為、約二ヶ月ほど美術館閉めるそうです。
あのまったり出来る現在のロビーや陶片資料室も見納めとなります。

そうそう後期展示作品の中に酒井抱一が描いた浮世絵も出ています。
見ものですよ〜

江戸名所図屏風―大江戸劇場の幕が開く
「江戸名所図屏風―大江戸劇場の幕が開く」 内藤 正人

- 弐代目・青い日記帳 | 出光美術館フリーパス
- 弐代目・青い日記帳 | 「出光美術館名品展 II」(後期)
- 弐代目・青い日記帳 | 「出光美術館名品展 機
- 弐代目・青い日記帳 | 「出光美術館名品展 II」
- 弐代目・青い日記帳 | 「国宝 風神雷神図屏風展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「ルオー展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「青磁の美展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「国宝 伴大納言絵巻展」

あわせて読みたい

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1043
浮世絵は、江戸前期に誕生し、幕末明治期までおよそ二百年以上栄えた、世界の美術史上にも稀な日本独特の風俗画です。遊廓と芝居小屋に取材し、遊女と役者を描くことを使命としたこれら浮世絵では、一般には版画作品がよく知られていますが、他方そこには数多くの絵画作品=肉筆画が存在しています。浮世絵師たちは、版画や版本のための版下絵を描く一方で、そのほとんどが例外なく一点制作の肉筆画にも筆を染めており、当世美人の艶やかな絵姿などが、鮮烈な肉筆画として数多く描き残されています。
出光美術館の浮世絵コレクションは、そのすべてが肉筆画であり、本展覧会では初めて当館の肉筆浮世絵コレクションの全貌に光をあてます。前・後期の二部構成によって、約百三十件の作品を公開いたしますが、そのどちらをご覧いただいても、江戸前期の寛文美人、菱川派の作品から、幕末を席巻した歌川派に至るまでのおよそ二世紀にわたる浮世絵全史を通覧できるような構成となっています。会場には、歌麿・北斎・広重といった今日なおその名を知られる代表的な浮世絵師たちが彩管を揮った絵画の傑作も一堂に並び、特に北斎の出品作には出光コレクションとしては初公開となる作品二件(「亀と蟹図」、「樵夫図」全期間展示)が含まれます。まさに出光美術館の肉筆浮世絵コレクションを総覧していただく絶好の機会といえるでしょう。
肉筆浮世絵は、それを描いた絵師の直筆による線や色が、作品から確かめられるところに鑑賞の醍醐味があります。肉筆画のもつ生き生きとした描線の冴え、施彩の鮮やかさは、当時の高度な版刻技術の成果である木版画とはまったく別の感興を観るものに与えてくれるはずです。錦絵版画とはひと味異なる肉筆浮世絵の濃密な世界が、ひとときでも古き良き江戸の時空へといざなう一助となれば幸いです。

講演会 | permalink | comments(8) | trackbacks(2)

この記事に対するコメント

こんにちは TBありがとうございます。
内藤先生は出光のとき、わかりやすくて・興味深いお話を、楽しく続けてくださいましたね。
土曜の解説のときも・・・

肉筆画の大きな展覧会を最初に見たのは'93の東博でした。
それ以前は鳥居派の絵看板や国芳の奉納絵馬くらいでしたから、軸物は保存の問題もあって、あまり展覧会が開かれなかったように思います。
東京でしたら出光とニューオータニとたばこと塩のコレクションが有名ですね。
版画ですと摺り師の技能が大きく左右しますが、肉筆は絵師の腕一本勝負になる・・・
そこがまた当時の魅力だったのでしょうね。
遊行七恵 | 2007/06/14 10:06 AM
こんにちは。
丁度今、その内藤先生の「浮世絵再発見」を読んでいるところでしたので、ナイスタイミング!です。
水曜日の講義に参加できる時間が欲しいです!!

でも、こうして、Takさんが公開して下さるので、
嬉しく参考にさせて頂きます。
内藤氏の本は、堅苦しくなく、エピソードも満載で、浮世絵を寵愛した貴人達の紹介によって、ますます浮世絵の世界が広がりました。

天下絵巻がたばこ塩にも出ていて、その題材を国芳が描いていたことがわかったり、
勝川春章の美しい絵をお大名達が贔屓にしたことなど、
フムフム納得のお話でした。

なにげに買って置いた本の著者が、出光の主任学芸員だった人とは知らず、ラッキーな出会いの本でした。
あべまつ | 2007/06/14 2:49 PM
TBありがとうございます。
浮世絵は色々な形態、題材があるので
ただ“好き”とばかりの発言も難しいと思う様になってきた所で
凄く勉強になりました。

内藤氏の講義聞いてみたいです。
取り敢えずは書籍を探す所からでしょうか…

後期は明日見に行く予定です。
酒井の浮世絵楽しみです。
るる | 2007/06/14 9:20 PM
こんばんは。

Takさんも行かれたのですか。
私も行きましたが盛況でしたね。
展示室で熱心に大学ノートにメモされていた方が
いらっしゃいましたが、あの方がTakさん?

抱一の浮世絵は本当に見ものでした。
豊春に出入りして少なくとも8枚は書いたと
お聞きして驚きました。

masa | 2007/06/14 9:48 PM
TBありがとうございました。
私の今年のテーマは浮世絵を知るということで、
あちこちの展覧会に出かけるようになりました。
おかげで、Takさんのこのレポートを拝読しても
なるほど〜そうなんですねと言えるだけの知識が
ついてきたことが嬉しいです。レジュメの絵師の絵も
たいてい思い浮かぶようになりましたし。
師宣の半分以上は「春画」なのですかぁ。
このまま、浮世絵ファンを続けて、春画にのめりこんで
しまったらどうしようという「恐れ」もあります。
一村雨 | 2007/06/15 6:07 AM
@遊行七恵さん
こんにちは。

内藤先生、慶應へ行かれたとは存知あげて
おりませんでしたので、肩書き見てまずビックリ。

そしてお話の内容を聴くにつれ
肉筆画浮世絵と所謂版画浮世絵の違いが
鮮明になってきてそれにもまたビックリ。

肉筆画しか描かなかった絵師の「思い」まで
伝わってくるような語りでした。
仕事帰りで疲れていたのですが眠ることもなく
90分あっという間に過ぎ去りました。

@あべまつさん
こんにちは。

出光美術館上司の方が「浮世絵再発見」を
紹介されていました。
まだ手にしたことないので本屋で見つけて
是非読んでみたいと思っています。

あべまつさん既にお持ちなのですね!
早い!お眼が高い!

講演会の内容からしてもきっと
充実の一冊だと思われます。
同じような内容のお話も
作品解説の際にちらっと出てきました。

民衆の様子を浮世絵を通して知り
そして暴れん坊将軍が…ってなことないですよね。
(^^ゞ

@るるさん
こんにちは。

浮世絵はどうやって観たらよいのか
よく分らずに、結局いつも漫然と見てしまっています。

今回のお話を伺って少しはこれから
体系的に見られるようになったかな〜と思っています。

抱一の描いた浮世絵、どうしても抱一のイメージが
頭から離れずに素直に見られませんでした。
そこがまた面白かった点でもあります。

@masaさん
こんにちは。

私はかなり後方でこっそりと拝聴しながら
ノートとっていました。所々。
この日はグレーのスーツ着ていたかな。

抱一の残りの浮世絵作品も見てみたいですよね。
こっそり秋草とか描き添えていたりして。
新鮮な驚きが沢山あった講演会でした。

@一村雨さん
こんにちは。

勉強熱心な一村雨さんであれば
夏終わる頃には「浮世絵」がきっと
頭の中にしっかりとおさまるのでは?

>師宣の半分以上は「春画」なのですかぁ。
師宣だけではないようですよ。
美術館ではさすがに展示できませんが
本などでは随分と出ています。
今も昔もこのジャンルは健在です。
コンビニへ行ってもそちら系必ずありますからね。
尤も「春画」ほど芸術性はないかもしれませんが。
Tak管理人 | 2007/06/15 10:03 AM
TBありがとうございます。
内藤さんは、現在、内藤准教授でいらっしゃるのですね。
ak96 | 2007/06/17 12:10 PM
@ak96さん
こんばんは。

内藤氏、出身校にお戻りになられたようです。
昨日MOTでも講演会されていました。
時間が合わず聴くことできず残念でした。
Tak管理人 | 2007/06/17 11:04 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
この記事に対するトラックバック
前期を大いに楽しんだので、後期も期待して出かけた。 出光の『肉筆浮世絵のすべて』後期。割引券で見ましたよ。 前期はぐるパスで。 例によって延々と書いているので、読まれる方、がんばってください。 前期内容はこ
出光の『肉筆浮世絵』後期を楽しむ | 遊行七恵の日々是遊行 | 2007/06/14 10:07 AM
今回は、母が来ていたので、一緒に浮世絵を楽しみに出光まで出かけてきた。 母も美術館が大好きなので、母娘で楽しい時間が持てた。ここのところ、出光の展覧会には、とても良い空気を頂いているようだ。
肉筆浮世絵のすべて ・出光美術館 | あべまつ行脚 | 2007/06/14 2:53 PM