青い日記帳 

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「肉筆浮世絵のすべて展」(後期)

出光美術館で開催中の
「肉筆浮世絵のすべて−その誕生から歌麿・北斎・広重まで」展(後期)に
行って来ました。【前期の感想はこちら



9作品を除いて前後期で全て展示替えが行われています。
一体どれだけ持っているんだ!出光!!

この展覧会が終了すると二ヶ月間館内リニューアルの為
お休みするとあって最後の大盤振る舞いの様相。

展覧会の監修者、内藤正人氏の講演も拝聴できたおかげで
前期とは作品だけではなく、見方もかなり変り新たな発見も。

そんな中、後期展示のある種一番の目玉作品がこちら。

遊女と禿図」(ゆうじょとかむろず)

この絵の作者が意外な人でビックリ。
キャプションを見るまで絶対に分りません。絶対に。
そして見た後でも「嘘〜」とガラス越しに呟くこと必至。

果たして誰の手による作品だと思われます?
天明7年(1787)に描かれた作品だそうです。

出光美術館から送られてきたメルマガにはこんな解説が。

茶屋の前の遊女と禿を描くが、遊女は高名な五明楼扇屋の花扇その人で、図上に自ら讃文を寄せている。その狂詩自体の文案は、これも当時の高名な戯作者、大田南畝が練ったものであり、さながら当時の花柳界における大御所の揃い踏みとなっている。おそらくそれが実現したのは、本図が武家の貴人によって制作された特別な作品だったからであろう。

「武家の貴人」と書かれています。
はて?浮世絵師で「武家の貴人」とは??

私も「あの人」がまさか描いたとはつゆ知らず、
いい意味で鷹揚な、悪い意味で緩々な「遊女と禿図」だな〜と。

江戸後期に大ブレイクした歌川派のコーナーに
歌川豊春や豊国、豊広など並べて展示してあったので
てっきり歌川派の誰かの作品かと思って観ていました。

ところがキャプションにはあろうことか
酒井抱一」の名が記されているではないですか!
これを驚くことなくして何を驚かんやです。

姫路藩主酒井雅楽頭家の次男、忠因(後の抱一)27歳の時の作品だそうです。
繊細で日本人の心を捉えて話さない花鳥画を数多く残した抱一のイメージからは随分とかけ離れた、というか結びつかないこの浮世絵。

こうした思わぬ出会いがある故、展覧会へ行くことやめられません。

内藤正人氏の講演でもこの抱一の浮世絵について触れられていらっしゃいました。
どうやら若い時分、歌川豊春に師事していたそうです。
こうした豊春風の浮世絵は現在8点ほど存在が確認されているとか。
それらを一同に会して、「抱一と豊川派浮世絵展」なんて開催したら
絶対うけそう。

別名「お坊ちゃまの浮世絵展」でもいいなか。


都市のなかの絵―酒井抱一の絵事とその遺響
玉蟲 敏子
大都市・江戸で、絵はいかに描かれ、受容されたのか?二つの「曲輪/廓」のあわいを生き、画俳に長じた雅人、酒井抱一の「絵の営み」を活写する渾身の力作。

さて、さて、内藤先生の講演会を拝聴し見る目が一番大きく変ったのが懐月堂派の浮世絵。懐月堂の長、懐月堂安度を中心に肉筆画浮世絵を量産し江戸中で大流行したにも関わらず、その華々しい時期はたった10年しかないそうです。

大奥と女中と歌舞伎役者の有名なスキャンダル江島生島事件に連座し、懐月堂安度が島流しになってしまい、懐月堂は瓦解してしまったそうです。

参考:懐月堂安度「遊女と禿図」(東京国立博物館)

吉原に程近い、浅草寺に店を構え人気を博した懐月堂。
その輪郭線の太い画風は一種独特の趣きがあります。

これは元々懐月堂は浅草寺に奉納する絵馬屋だったからではないか?
という鋭いご指摘が内藤先生からなされました。
なるほど、絵馬に描く絵に見えなくもありません。

出光美術館のロビーにはルオーの作品が展示されています。
講演を拝聴したのがそのルオーの作品が見える位置。
そういえばルオーのあの太い独特の輪郭線も
彼が元々ステンドグラス職人だったことに由来するもの。

期せずして、懐月堂とルオーが同じカテゴリーに入った瞬間でした。

浮世絵再発見―大名たちが愛でた逸品・絶品
浮世絵再発見―大名たちが愛でた逸品・絶品
内藤 正人



葛飾北斎の「鍾馗騎獅図
1844年の北斎の作品。北斎、80歳ゆうに過ぎていた頃です。
それでこの迫力。獅子が描かれているので魔除けの意味があるのでしょう。
「鍾馗」もWikiによれば魔よけの効験があるとされたそうです。
道教の神というのも北斎を理解する上での重要なポイント。

以前書いた記事にその辺りは↓こちらの本参考に書きました。(記事
北斎の謎を解く―生活・芸術・信仰
北斎の謎を解く―生活・芸術・信仰
諏訪 春雄

あぁ〜もうこんな時間だ…それでは、「今日の一枚

歌川国芳「役者夏之絵図



「男女10人夏物語」すると真ん中は明石家さんまさん?!

初期浮世絵に比べると、背景もしっかり描かれているし
なんと人物の影まで(月明かりと一致しませんが)描かれています。
江戸後期になるとここまで進化したのか〜と孫を見る
おじいちゃんのように目を細めて観てきましたとさ。

水曜講演会「浮世絵の美と芸術−出光コレクションの名品から」

浮世絵の歴史
浮世絵の歴史
小林 忠,富田 智子,内田 欽三,内藤 正人,菅原 真弓,山本 ゆかり,田沢 裕賀,田辺 昌子,神谷 浩


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1050
浮世絵は、江戸前期に誕生し、幕末明治期までおよそ二百年以上栄えた、世界の美術史上にも稀な日本独特の風俗画です。遊廓と芝居小屋に取材し、遊女と役者を描くことを使命としたこれら浮世絵では、一般には版画作品がよく知られていますが、他方そこには数多くの絵画作品=肉筆画が存在しています。浮世絵師たちは、版画や版本のための版下絵を描く一方で、そのほとんどが例外なく一点制作の肉筆画にも筆を染めており、当世美人の艶やかな絵姿などが、鮮烈な肉筆画として数多く描き残されています。
出光美術館の浮世絵コレクションは、そのすべてが肉筆画であり、本展覧会では初めて当館の肉筆浮世絵コレクションの全貌に光をあてます。前・後期の二部構成によって、約百三十件の作品を公開いたしますが、そのどちらをご覧いただいても、江戸前期の寛文美人、菱川派の作品から、幕末を席巻した歌川派に至るまでのおよそ二世紀にわたる浮世絵全史を通覧できるような構成となっています。会場には、歌麿・北斎・広重といった今日なおその名を知られる代表的な浮世絵師たちが彩管を揮った絵画の傑作も一堂に並び、特に北斎の出品作には出光コレクションとしては初公開となる作品二件(「亀と蟹図」、「樵夫図」全期間展示)が含まれます。まさに出光美術館の肉筆浮世絵コレクションを総覧していただく絶好の機会といえるでしょう。
肉筆浮世絵は、それを描いた絵師の直筆による線や色が、作品から確かめられるところに鑑賞の醍醐味があります。肉筆画のもつ生き生きとした描線の冴え、施彩の鮮やかさは、当時の高度な版刻技術の成果である木版画とはまったく別の感興を観るものに与えてくれるはずです。錦絵版画とはひと味異なる肉筆浮世絵の濃密な世界が、ひとときでも古き良き江戸の時空へといざなう一助となれば幸いです。


展覧会 | permalink | comments(14) | trackbacks(5)

この記事に対するコメント

こんばんは。
わたしも江戸琳派の浮世絵には驚きました。
特に、同じ日に回った出光と太田の両方で酒井抱一の浮世絵にお目にかかったので仰天でした。そのことは↓に書きました。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA072.htm#ide2

太田のV&A展には、酒井抱一のほかに、鈴木其一、渡辺崋山も出ていました。すべて団扇絵ですが、もしまだでしたら6月26日までですので・・・。この記事は↓です。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA072.htm#070601a
とら | 2007/06/21 10:33 PM
@とらさん
こんばんは。

太田記念美術館の展覧会にも
抱一出ているのですか!
しかも鈴木其一、渡辺崋山まで。
これは行かねばなりません。
少し控えて(というか忙しくて)
いたのですが、万難排してでも
原宿まで出かけないといけませんね。

情 報ありがとうございました。
あやうく見逃すところでした。
Tak管理人 | 2007/06/21 11:18 PM
こんばんは。
抱一は驚きでした。
勉強熱心な人だったんでしょうね。

安度も10年、清長も10年。10年って考えてみればけっこう長いですよね。それを短いと感じるのは、200年経った今から見返しているからと思うと、江戸絵画の根強い人気を感じます。
mizdesign | 2007/06/22 1:41 AM
@mizdesignさん
こんばんは。

抱一のことなら、はろるど先生に
今度聞いてみましょう。酔う前に。

そうか〜10年を短いと考えるのは
現代の感覚ですよね。確かに。
江戸時代の10年って今の倍くらいかな。
そうか、そうか。。。
Tak管理人 | 2007/06/23 12:26 AM
懐月堂を好きと云って賛同してくれる人が少ないのです。
http://yaplog.jp/suisyou-an/archive/341


今、日本画に興味があるのは酒井抱一と懐月堂を追いかけてなのですが、
『俗』其の物な懐月堂には江戸の活気が感じられ、ワクワクします。
『浅草寺の絵馬屋』説はとても興味深いです。
るる | 2007/06/23 6:53 PM
@るるさん
こんにちは。

懐月堂、講演会を聞いて一気に
見方が変りました。
好きに転じました。
以前、東博で一同に会した時に
この見方ができていればよかったのになー

懐月堂の先輩としてよろしくご指導下さい!!
Tak管理人 | 2007/06/24 3:22 PM
Takさん、こんばんは
出光は一体どれだけのコレクションを持っているのでしょう?凄いですね。
今回の展示では懐月堂の流れを組む絵師の作品が良かったです。全くのノーチェックでしたが、こういう出会いがあるから展覧会通いはやめられませんね。
アイレ | 2007/06/24 11:44 PM
こんばんは。

>さながら当時の花柳界における大御所の揃い踏みとなっている。

この辺はさすが殿様ですよね…。

それにしても見事な展覧会でした。改装後の好調出光を象徴するような内容でしたよね。
少し浮世絵の面白さに少し目覚めたような気さえしました。

出光、太田、泉屋で少しの抱一を楽しみました。
さて次はどこでしょう…。
はろるど | 2007/06/25 1:08 AM
おはようございます。昨日、出光にもう一度行ってきました。そして酒井抱一の絵はがきを買ってきました。
とら | 2007/06/25 8:33 AM
@アイレさん
こんばんは。

持っていますよねーー
焼き物とかも。
懐月堂派、講演会聞いて一気に
見え方変りました。
流れるような太いラインたまりません。

@はろるどさん
こんばんは。

これから展示室やロビーも改装するそうです。
(その間、二ヶ月間お休み)

何度かこの展覧会足を運び
少しだけ見られるようになったかも。

酒井抱一展やったらきっと受けると
思うのですが…東博さん如何?

@とらさん
こんばんは。

抱一の絵、一生懸命さが
伝わってきます。
上手くはありませんが。
お坊ちゃまですね。
Tak管理人 | 2007/06/25 8:03 PM
Takさん、こんばんは!

展覧会期も終わった今頃、観覧レポを書いています^^;
Takさんを初めとして素晴らしいレポが出揃っている今、私は
少し違う自分の偏った興味の視点から纏めてみようかと…

つきましては、正統派美術ブロガーとして、Takさんと遊行七恵さんを
拙ブログでご紹介し、出光の「肉筆浮世絵」前・後期のレポにリンク貼り
させて戴きました。 こちらからの訪問者の方々もどうぞ宜しくお願い致します。
山桜 | 2007/07/04 7:39 PM
@山桜さん
こんばんは。

>正統派美術ブロガー
って、、、、遊行さんはそうですが
私は違いますって、適当美術ブロガーかな。
リンク恐縮です。有り難うございます。

ブログ早速拝見しました。
圧倒的な迫力ですね!!
これは凄い。
人気投票とかついついやりたくなります。
目の付け所が違いますね。
Tak管理人 | 2007/07/04 10:39 PM
遅くに失礼します。
何分日本画は最近興味を持ち始めたので、「酒井抱一」⇒驚きという反応までは出来なかったのですが、この展覧会でまた色々な発見がありました。とにかくすごい作品数でしたね。

懐月堂が江島生島事件に連座してたとは・・・バラバラに興味があって知っていた知識がまとまってゆくのが楽しいです。

ルオー、先日松下電工ミュージアムで見たときに、直感的に「これってステンドグラスそっくりだ!!」と思ったら、そのでルオーのビデオを流していてまさにその通りだったことを知り、直感が当たっていた(確かに、わかりやすいですけども今まであんまり考えてなかったので・・・)嬉しくなったのですが、さらにこれが懐月堂とつながるというのはまたワクワクします。

しのぶん | 2007/07/18 12:00 AM
@しのぶんさん
こんばんは。
TBありがとうございました。

>日本画は最近興味を持ち始めたので
良い傾向です。
ただし嵌まると大変です。
私もう抜け出せません。

懐月堂はお話伺うまで正直
いいとは思っていなかったのですが
点と点が繋がった瞬間に
価値観もがらりと変りました。
気持ちいいくらいに。

ルオーとステンドグラスを直感で
見抜かれたなんて素晴らしい!!
真実を見抜く目をお持ちかと。
いいなーー
Tak管理人 | 2007/07/18 10:09 PM
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最初の部屋で何故か話しかけてくるオバサマに捕まりました。 しかも、私が好きな懐月堂安度の絵を前に 「この絵キライなのよ、顔の描き方がぁ〜」 とかのたまわる 「そうですか?!私は好きですが!!」 とか答えてしまいました。 友達なら良いけど、偶々居合わせ
肉筆浮世絵のすべて@出光(後期) | 翠松庵no散歩道 | 2007/06/23 6:37 PM
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「肉筆浮世絵のすべて(後期展示)」 出光美術館 | はろるど・わーど | 2007/06/25 12:53 AM
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[7/17に書いてます] 残念ながら、展示は終わってしまいましたが、書きたいものを書けないままどっさり溜まっていて気持ち悪いのでさくさくと感想を。 ■「肉筆浮世絵のすべて その誕生から歌麿・北斎・広重まで」展出光
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