青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< August 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 越前谷嘉高展へのお誘い | main | 「MAMプロジェクト006: 西野達」 >>

「美術の遊びとこころ『旅』展」

三井記念美術館で開催中の
「美術の遊びとこころ『旅』 国宝『一遍聖絵』から参詣図・名所絵、西行・芭蕉の旅まで」展に行って来ました。



雑駁な知識からの所感ですが、世界広しといえども日本人ほど旅好きな民族も珍しいのではないでしょうか。新聞に旅行会社の広告目にしない日はありません。ここ何十年のスパンではなく、はるか何百年も昔から老いも若きも、貴賎を問わず旅に対する想いはかなり強いものがあったのではないでしょうか。

その「旅好き日本人」の様々な証拠物件が展示されている展覧会。
タイトルはとても地味ですが、内容的には超お勧めの展覧会です。

そんな「超お勧め」なんて……騙されたと思い日本橋まで。
江戸時代以来「旅」の基点は日本橋と相場が決まっています。
ここでやることが展覧会の大きな付加価値になっています。

構成は以下の通り。
・小さな旅
・霊場と名所への旅
・イメージへの旅−詩歌と文芸−
・鳥の目の旅−上空からの視点−
・大日本五道中図から海外へ


メインは「霊場と名所への旅」ですが、その他のセクションもそれぞれ
違った面白さがあり、最初から最後まで飽きることなく鑑賞できました。

三井記念美術館はまず最初の展示室の雰囲気が
外の喧騒を忘れさせ心落ち着かせてくれます。
1929年竣工の三井本館に相応しい佇まい。
元々ここの部屋は三井財閥重役の食堂だったそうです。

今回は三井家ご自慢の茶器ではなく印籠がお出迎えしてくれます。
日本図蒔絵印籠
印籠の両面に日本地図が施されています。
趣は異なりますがGPS付きの携帯を想起。
大きな拡大鏡も設置されているので細かな部分まで見入ることが可能。
ウサギの根付もとても愛らしい一品でした。
(拡大鏡を下から覗くと根付がアップで見られます)

旅の携行品、印籠・根付のお次は「提重
そのまた次の展示ケースには「印籠・根付」
そのまた次の展示ケースには「提重」とテンポ良く
二つがリズミカルに展示されていてとても心地好し。

印籠と根付
印籠と根付

更に奥には「茶箱」が待ち構えています。
旅先でもマイ茶碗とお気に入りのお茶を楽しむための携行用お茶セット。

唐物小茶籠
何とも粋じゃないですか。
「天気もいいしこの辺で一休みでもして一服。」
なんて時もとっさにこれを取り出して即席で野点が。

三井高棟氏が愛用した「一閑張皆具茶箱」など明治43年から日本を離れ満州、ロシア、ヨーロッパ、アメリカへと旅のお供として携行されたそうです。

「ロシアで野点」したのかな〜(←それは無いって)

「小さな旅」というセクション名の第一展示室。このセクション名深いです。
旅好きの日本人の側面と同時に「小さい物好きの日本人」の面も窺い知る事出来ます。それは一千年も前、平安の時代から『枕草子』の作者によっても表されている日本人の価値観のひとつです。

所謂「うつくしきもの」です。
現代でも小っさいもの大好きですよね、日本人。

さて、さてやっとメインの展示ブースへ。
「霊場と名所への旅」

霊場といえば、富士山。霊峰富士。

伝狩野元信「富士曼荼羅図」室町時代(重要文化財)
その色で富士山を塗るか!とツッコミ入れる間もなく
よく観ると富士山に登山者の列が!!
もしかして麓(手前)の曼荼羅で表された街々からの行列?!
雲まで富士山に対し列をなしているようです。

国宝「熊野御幸記」藤原定家筆 鎌倉時代(1201)
定家の残した記録文章を見るたびに、よくまぁこんな高温多湿の国において
800年もの永い時を持ちこたえて目の前に存在しているな〜とそれだけで
拝みたくなるような気持ちにさせられます。(筆はイマイチだけど)

国宝「熊野御幸記」は「建仁元年(1201)10月、後鳥羽上皇(1180-1239)の熊野三山への参詣に随行した藤原定家(1161-1241)が記した23日間の記録
定家にとっては初めての熊野詣。でも内容はとってもユニークというかフツー.

曰く「感激した」「不平不満」「疲労した」などなどボヤキも含め人間性豊か。
また10/10の日記には「夜、暑く蝿も多く夏のようである」とあったと思えば
10/13の日記では「耐え難い寒風」とあります、そして結局風邪をひいちゃう。
折角熊野に着いてもあまり楽しめなかった様子。定家ったら。。。

「熊野御幸記」は全期間、全部公開しています。しかも分りやすい読み方も添えられています。さらに京から熊野までの現在の様子を写真パネルで平行して展示。まさに至れり尽くせり。

これだけではありません。感髪入れずにまたもや国宝登場。
国宝「一遍聖絵」第二巻 鎌倉時代(1299)

私が観に行った時はこちらの「菅生の岩屋」が展示されていました。
手前に描かれている白い点は人です。そこの位置から右の山の頂にある
朱塗りの社殿まで梯子がかかっているの分るでしょうか?
有り得ない場面でありながら嘘っぽさは感じられない摩訶不思議な作品でした。
こういった絵巻ものを見ながら上人の足跡を追体験したのでしょう。

この作品は、頻繁に場面替えを行うそうです(全部で六場面)

一遍聖絵 (岩波文庫)
「一遍聖絵」 大橋 俊雄

この他にも英一蝶の「大井川渡し図」や土佐光起の「筏下り図」など旅と川という密接な繋がりのある主題の異なった視点からの作品や「天橋立・富士三保松原図屏風」「松島図屏風」など現在でも旅の名所として名高い場所の作品など鑑賞者を飽きさせることなく展示されていました。

英一蝶「大井川渡し図
〜箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川〜

そうそう、伊藤若冲の「乗興舟」も一部分ですが展示されていました。三井文庫本館所蔵となっています。何でも持っていますね〜
因みにまだ記事書いていませんが大倉集古館で今月27日まで開催されている「館蔵品展 江戸の粋」では「乗興舟」全て観ることできます!

若冲のすぐちかくに歌川広重の「東海道五十三次細見図会」という浮世絵が展示されていました。日本橋の様子を描いたものですが「東海道五十三次」とはまるで趣が異なり、田舎から江戸見物にやってきたおのぼりさんの団体が描かれていました。とっても愉快で滑稽な作品です。でも描かれているおのぼりさんが自分のようで憎めず愛着湧いてきました。

最後のセクション「大日本五道中図から海外へ」は圧巻です。
小さきものからスタートした展覧会が巨大な屏風絵で幕を閉じます。


大日本五道中図屏風」19世紀

解説サイトからコピペします。これで全てこと足りるかと。
八曲二双と六曲一双の金屏風で、江戸から長崎までの陸路と航路を示し、東海道・東山道・山陽道・南海道・西海道の五道にわたる江戸時代最大の交通路が全長約26mにわたって鳥瞰図的に描かれています。

26mの屏風絵です。壁一面では収まらないので二面使いL字形に展示されています。感動するもしないも迫力負けしてしまいます。最後の最後の隠し玉。

南蛮屏風」同じ部屋にさえなければこれはこれで凄いはずなのに力負けしています。ちょっとかわいそう。

それにしても「大日本五道中図屏風」観れば観るほど悠久の旅を展覧会会場で夢見心地で続けていた自分を現実の世界に引き戻してくれます。おどろきです。
古語で「おどろく」は「はっと気づく」「目が覚める」の意。現代語、古語双方の意味を有する「おどろき」を体験できる作品です。

Google Earthも真っ青。

因みに時刻表に載っている日本地図(路線図や航路図が記されている地図)に雰囲気とても似ていると思ったのは私だけでしょうか。


東京を江戸の古地図で歩く本
東京を江戸の古地図で歩く本

タイトルはですが時間をかけてゆっくり観たい良質な展覧会です。
日本橋へ行かれた際は是非。

ミュージアムショップで販売されていた「ティーセット」
「茶箱」に惚れた勢いでついつい買いそうに。。。
旅に出る予定もないくせに。

あっっ松尾芭蕉の「旅路の画巻」について書くの忘れました。
旅人と言ったら芭蕉無しには語れないのに(しまった!)

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1079
 昨夏に続き「美術の遊びとこころ」シリーズの第2回は、「旅」をテーマに、先人が「旅」のなかで培ってきた日本の文化と「旅」に寄せてきた様々な思いを、「小さな旅」、「霊場と名所への旅」、「イメージへの旅−詩歌と文芸−」、「鳥の目の旅−上空からの視点−」、「大日本五道中図から海外へ」の5つの小テーマに分け、絵画・書跡・工芸品の名品・優品約60点で紹介いたします。
 みどころは、時宗開祖一遍上人の生涯を描いた絵巻、国宝「一遍聖絵」、藤原定家が後鳥羽上皇の熊野詣に随行した際の記録、国宝「熊野御幸記」をはじめ、中世の富士参詣を描く重要文化財「富士曼荼羅図」や伊勢神宮への参詣を描いた「伊勢参詣曼荼羅」、歌僧西行の行状を描いた狩野晴川院養信筆「西行物語絵巻」、俳人松尾芭蕉筆の「旅路の画巻」、江戸から長崎までの街道と航路を描いた金屏風「大日本五道中図」、羊皮紙に描かれた重要文化財「日本航海図」など貴重な作品の数々です。
 身近な小さな旅から世界の旅まで、7つの展示室を通し、三井記念美術館所蔵の絵画、書跡、茶道具、工芸品のほか、館外の所蔵者から貴重な作品をお借りし、約60点で展観いたします。


展覧会 | permalink | comments(5) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

私も行ってきました。
Takさん同様、三井当主の茶道具一式にため息をつき、
歌川広重の浮世絵に微笑んでしまいました。

これらの画像は一体どこから?
聞いてはならない質問でしたでしょうか。。。

TBさせて下さいね。
meme | 2007/07/20 9:19 PM
@memeさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

三井記念美術館は伺うと
なんだかホッと安心できる美術館です。
都会の喧騒を避ける隠れ家的な美術館。
通いやすいのでふらりと出かけるにも便利です。

画像はチラシや美術館のサイトからです。
ミュージアムショップにあった夏茶碗も
とっても惹かれました。欲しい・・・
Tak管理人 | 2007/07/21 10:52 PM
Takさん、お疲れ様です。
最後の部屋の「大日本五道中図屏風」は途中から、見てて怖くなってしまいました。
琵琶湖から瀬戸内海等の西日本の海の表現がすごく大胆になっていくような気がしまして。あのサイズのスケールの大きさに参ってしまったのかもしれませんが。

「熊野御幸記」は展示の仕方が面白かったですね。熱心に読んでいる方が多かったです。
アイレ | 2007/07/27 10:11 PM
こんにちは。
旅好きの日本人、旅の道具にもこだわりがあるのかもしれませんね。
展示品そのものより、なんかそれにまつわるいろいろなことが楽しめたような企画でした。
それにしても巨大な屏風があるものです。
キリル | 2007/07/29 4:01 PM
@アイレさん
こんばんは。

>「大日本五道中図屏風」は途中から、見てて怖くなってしまいました。
正直「吐きそう」になりますよね。
威圧感というかなんていうか・・・
複雑な感覚にあの部屋捉えられます。

>「熊野御幸記」は展示の仕方が面白かったですね。
これは最高!!
一緒に旅した気分にさせてくれます。
展示方法一つで随分と興味関心の度合いも違いますね。

@キリルさん
こんばんは。

自分は「形から入る」タイプなので
旅行鞄や小物など結構凝ったりします。
それと似たような感覚を時空を超えて
感じることできました。

巨大屏風はかなり反則ものですよね。。。
Tak管理人 | 2007/07/30 11:18 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
この記事に対するトラックバック
日本橋の「三井記念美術館」は初めて訪れました。 噂の名ホテル「マンダリンオリエンタル東京ホテル」のある日本橋三井タワーに隣接した三井本館7階にありますが、アプローチからして高級感、重厚感が溢れていました
美術の遊びとこころ『旅』展  三井記念美術館 | あるYoginiの日常 | 2007/07/20 9:25 PM
三井記念美術館で開催されている“美術の遊びとこころ 旅展”(7/14〜9/30
三井記念美術館の旅展 | いづつやの文化記号 | 2007/07/25 6:47 PM
美術の遊びとこころ「旅」(前期)7月14日 三井記念美術館(〜8月19日、後期8月23日〜9月30日)  旅という日常とはちょっと違う時間・空間をテーマとした展覧会に行ってきました。 さて、私が行ったのは前期の展示ですが、展示作品によっては前期の展示期間内でも
美術の遊びとこころ「旅」 | 青色通信 | 2007/07/27 9:50 PM
三井記念美術館で「美術の遊びとこころ「旅」―国宝「一遍聖絵」から参詣図・名所絵、西行・芭蕉の旅まで―」をみた。 この美術館には正月に出かけるつもりだったけど行きそびれていたので、ようやく訪ねることができた。外観も内装も重みがあっていい雰囲気なので、展
「美術の遊びとこころ「旅」」をみて | アトリエ・リュス | 2007/07/29 3:33 PM