青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< September 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 第13回「秘蔵の名品アートコレクション展」 | main | 特別陳列「仏像の道」 >>

「モーリス・ユトリロ展」

千葉県立美術館で開催中の
「モーリス・ユトリロ展 −モンマルトルの詩情−」に行って来ました。



千葉市美術館へ行ったついでに立寄ってみました。
県立美術館のお粗末さは「言葉にできない」ほど。
まともな展覧会すら開催できません。情けない。
文化や教育にお金をかけない千葉県。情けない。

今回の展覧会で掲示されていた各章の説明書きが
機知に富んでいて、今までのユトリロのイメージを
少なからず変えてくれる大変優れ文章でした。

「あの文章はどなたがお書きになられたのですか?」と伺うと
「当館の者が書いたかと。。。」との返事。

おいおい真夏にそんな嘘ついちゃ〜いけないでしょ。

「それは違うと思います。きちんと調べて下さい」と念押し。
渋々電話で確認し返答「フランスの方が書かれたものを翻訳したそうです」

こんな具合の美術館です。教育と文化にはお金をかけて損ありません。

美術館は駄目駄目でも展覧会の内容は反比例し中々良かったです。
ユトリロ=パリの街並みの白い壁。

モンマルトルのノルヴァン通り」1911年頃

ところが、これは若い時の作風で、晩年は色使いが派手になり
ユトリロに対し抱いているイメージとはかけ離れた作品がずらり。
これなどはまだ色彩が落ちついている方です。
 
サン=リュスティック通りとサクレ=クール寺院」1938年頃

それと意外だったのは、ユトリロってとても長生きした画家だったこと。(1883年12月25日 - 1955年11月5日)晩年にはパリ名誉市民賞までもらっています。(メダルが展示してありました)

10代でアルコール中毒になり、家に幽閉されていた青年ユトリロは治療の一環として絵筆を握り作品を描き始めたそうです。外出すると何かしら問題を起こし警察沙汰にまでなるので家でじっとキャンバスに向かわせるのが一番だったのかもしれません。

しかし、正統な絵画の教育を受けていないユトリロがこれだけの作品を描くことができたのはやはり母親の影響が大きかったのでしょう。母親の名はシュザンヌ・ヴァラドン(1865-1938)多くの絵描きが集うモンマルトルでモデルをつとめる傍ら自分でも絵を描いていたそうです。

↓はルノワールがヴァラドンをモデルにし描いた作品です。

Girl Braiding Her Hair (Suzanne Valadon). 1885

随分とべっぴんさんですね。
実際にモテモテだったようで多くの男性と浮名を流したそうです。ユトリロの本当のお父さんは誰だったのでしょう。あれだけの画才があるのですから…

因みにロートレックが描くとこうなります。

左はロートレック、右はルノワールが描いたヴァラドン。
目の前に置かれたお酒が将来身ごもる子供を暗示しているかのようです。

このお母さんがユトリロは大好きだったようです。
「白の時代」は母親の為に絵を描いていたようなものです。

母ヴァラドンと継父のユッテル(ユトリロの幼なじみ!)が、息子の作品が売れると知り何百枚という作品を描かせ大金を手に入れます。自分たちは贅沢三昧。そしてユトリロにはご褒美に少しのアルコールを。

解説には「貨幣製造機ユトリロ」と書かれていました。確かにそうかもしれません。かみさんはしきりにユトリロが可哀想だと帰りの車中で呟いていました。ただ、騙されていようがお金儲けの道具とされていようがユトリロ本人はきっと幸せだったと思います。社会性ゼロで表もろくに歩けない自分が与えられた絵葉書を見て絵を描けば大好きなお母さんが喜んでくれるわけです。


ラパン・アジル」1912年頃

「幸せ」は本人の依存度が最も高い主観の産物です。

またユトリロ52歳の時、リュシー・ヴァロールと結婚します。
勿論、初婚です。ヴァロールは12歳年上しかも未亡人。

母親と何故かジャンヌ・ダルクを愛したユトリロが結婚。
でも、ヴァロールは明らかにお金目当て。ユトリロに
「白の時代」のような絵を描くことを強いたそうです。
(より高値で売りさばくことができるため)
ご褒美のワインは薄めて与えたそうです。。。

これも傍から見たら不幸な人生に思えます。
かみさんの憤りも頂点に達するほど。

でもユトリロはやはり「幸せ」だったと思います。
「いとしのシェリー」なんて別荘まで建てています。


サノワの十字路」1936-37年

私生児、アル中、駄目人間「ユトリロ」を作り上げ、勝手に悲哀に満ちた作品と解釈し「かわいそうだな〜」といったおざなりで形式的な解釈を今までユトリロに対してしてきましたが、この展覧会でどうやらそれが間違いだったことに気付かされました。

同時に「幸せ」についても。

それでは「今日の一枚


クリスマスのもみの木」1928年

この絵を観て確信しました。
ユトリロってお酒が好きだったのだと。それとやっぱり幸せだったのだと。

この展覧会、北海道立旭川美術館、福岡県立美術館を巡回するそうです。

おまけ:シュザンヌ・ヴァラドンが描いたユトリロ
1921年

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1111
 パリの街並みを詩情豊かに描いたモーリス・ユトリロ(1883〜1955)は、わが国で最も人気のある画家のひとりです。母である画家シュザンヌ=ヴァラドンの愛情を受けることなく、孤独とアルコールに苛まれた少年期を送り、絶望や苦悩から自らを解放するためキャンバスに向かい、静謐で哀愁の漂うパリの情景を自身の純粋な視点で描き続けました。
 本展では、ユトリロが生涯に残した膨大な作品の中から、1909年頃から15年頃の「白の時代」と呼ばれる初期から、晩年までの作品(日本初公開作品30数点を含む)と、パレット、筆、関係写真などの資料を紹介し、19世紀初頭、多くの画家が活躍した全盛期のパリで時を同じくして花咲き、孤独の中に結実したユトリロの画業を回顧します。
展覧会 | permalink | comments(12) | trackbacks(3)

この記事に対するコメント

私も今日行ってきたんですけど、着いたら4時近くて、でも1時間弱くらいあればいいかーと思ってたら、4時半閉館なんですねー。ぐったりしつつ退散しました。(^^;;
来週チャレンジしなおします。
あんどぅ | 2007/08/19 8:25 PM
この展覧会は三鷹で観たのですが、痒いところに手が届く説明で感心しました。結局、画を観にいったというよりも、ユトリロの人生を勉強に行ったことになりました。
ユトリロがダメ男だったのか、周囲の女性がやりすぎたのかという問題は一筋縄ではいきませんね。
とら | 2007/08/19 11:09 PM
わたくしも先月3日に三鷹市美術ギャラリーで見ました.
ユトリロが描いたのとおなじ場所を古い絵はがきや(現代の)写真で一緒に展示・紹介しているのを,たいそう親切でゆきとどいたことと,感心したのをおぼえています.
なお,シュザンヌ・ヴァラドンについては,若桑みどり氏の『女性画家列伝』(岩波新書,1985年10月)に記述があります.
ひでかず | 2007/08/19 11:47 PM
シュザンヌ・ヴァラドンは いったい誰の子をみごもったか?の問いに 非常に興味をもちました。

ルノワールの描く 柔らかな優しげな女性像
ロートレックの描く 荒んだ自暴自棄に見える女性像。
母親は生まれ出る子供には 選べない。

・・・・でも ユトリロはその母で幸せだったに違いない。

$あくびちゃん$ | 2007/08/20 2:42 AM
はじめまして。いつも楽しく拝読しています。
ユトリロ展は三鷹で観ましたが、とっても丁寧な解説、建物の絵が多いこと、美術館が狭いことが相まって、少し息苦しさを感じました。会場によっても、印象が変わるのでしょうね。
TBつけさせていただきました。よろしくお願いいたします。
みどり | 2007/08/20 2:12 PM
@あんどぅさん
こんばんは。

なんてことか!!!
四時半閉館って。。。
私設美術館じゃあるまいし。
でも再チャレンジする価値はあります。きっと。

@とらさん
こんばんは。

三鷹までは遠いので千葉に来るのを待っていました。
>ユトリロの人生を勉強に行ったことになりました。
全くの同感です。
キャプションをあれだけ長い時間読んだのは久々です。
あれ本にしてくれないでしょかね。
ユトリロについてはまた次の機会で!

@ひでかずさん
こんばんは。

若桑みどり氏の『女性画家列伝』
古本屋にあるでしょうか。見つけてみます。
読んでみたいです。この時代の若桑さんの文
キレキレでしたからね。

三鷹で見ておけばよかったかな〜と
少し後悔もしています。

@$あくびちゃん$さん
こんばんは。

絵描きさんが父親だと思います。きっと。

いつまでも(母親が亡くなるまで)
子供であり続けたユトリロ。
こういう人生も本人にしてみれば
決して悪いものではないと思いました。

@みどりさん
こんばんは。初めまして。
コメントありがとうございます。

三鷹は若干天井が低いですよね。
千葉はその点では問題ないのですが
如何せん・・・(以下略)

TBありがとうございました。
今後とも宜しくお願いいたします。
Tak管理人 | 2007/08/20 9:32 PM
元関係者の視点でいえば、現場は何かしなければという
あせり日常的に感じているのですが、如何せん、予算の
関係でどうしようもないというのが現状でしょう。
決して、美術館の職員の責任だけではありません。
千葉県の政治、行政、もっと突きつめれば、県民の問題
でもあるでしょう。
それでも、本当に久しぶりの特別展ということで、
感無量です。
質問に答えられなかった職員もきっと派遣かアルバイトの
方で、そういう教育を受けていなかったと思いますので
御勘弁くださいませ。

一村雨 | 2007/08/20 9:57 PM
初めて千葉県立美術間に行ってきました。お粗末な美術館で県立美術館として恥ずかしいですよね。

展覧会のほうは反比例してものすごく充実してました。そして私もユトリロに対しての認識を改めました。
アル中のかわいそうな人かと思ってましたが、とても幸せだったんだと絵を見て思いました。しかし、本当ににすばらしい作品は初期のものだけですがね。
それでも、ユトリロは他人に必要とされてる実感を感じてたのでしょうね。社会に適応できない自分が絵を通じてだけは社会とのかかわりを持てる。もちろん本人社会とのかかわりを持とうとなんか思ってなかったんでしょうが・・・
レイ | 2007/08/21 4:06 PM
こんばんは。一村雨さんの仰るように、千葉県美の状態は我々、県民の意識にも問題があるのかもしれませんね。箱は古くとも立派なので、もう少し活動していただきたいものです。

>それでは「今日の一枚」

私もこの作品が良いなあと思いました。グワッシュが良い雰囲気ですよね。

晩年のユトリロは絵だけを見た時、どうも好きにはなれません。
ただ丁寧なキャプションで、彼に対する苦手意識は消えたかなとも思います。
はろるど | 2007/08/23 10:38 PM
@一村雨さん
こんばんは。

一村雨さんが謝らなくとも宜しいかと。
何とかせねばならぬという職場のでの
焦りは相当ぬるま湯の職場でなければ
誰しもが抱いている心情だと思います。
私など焦ってばかりで手につきません。
やるべきこと。(反省)
今日もまたミスを。。。

さて、ここの美術館での特別展
かれこれ4,5年ぶりでしょうか。
前回行ったチラシを探すだけでも一苦労です。

@レイさん
こんばんは。

美術館自体は平屋建てで空間的も余裕があり
中々宜しいかと思いますが職員がね。。。
他と比較するものではないのかもしれませんが
お金取るのですからそれなりのことは。

何かひとつのことに夢中になって打ち込んでいる時は
それがどんな影響をまわりに及ぼすかなど考えていない
かもしれません。無我夢中とはまさにそのことかと。
ユトリロの場合も同じ。結果がまぁ良かったから
後世にこうして名を残せたものの、転び方間違えていたら
ただのアル中駄目人間で終わっていたことでしょう。

@はろるどさん
こんばんは。

県民の意識。。。千葉県民として耳が痛いですね。
東京と同じ土俵でやっても無理があります。
ただ川村のようにコンスタントにお客さんが
訪れる美術館も県内にはあります。工夫次第でしょうね。

キャプションがほんと良かったですね。
あれを読みにいったようなものかと。
ちょっと他とは違う感じの展覧会でした。色々と。
Tak管理人 | 2007/08/24 9:11 PM
こんばんは。
この展示、良く出来てましたね。
分かりやすい解説、豊富な作品群。
なのに何か引っかかりました。

そこはかとなく漂う荒廃感というか、千葉県の現実というか。。。
今回の成功で、県美の運営に弾みが付くと良いですね。
mizdesign | 2007/09/01 2:44 AM
@mizdesignさん
こんばんは。

解説力といいますか
絵のボリュームもさることながら
解説の力の入りようも素晴らしかったです。

作品を「読み」に伺ったような気になりました。

千葉は…あまり期待はしていませんが
頑張って欲しいです。少しは。
Tak管理人 | 2007/09/02 12:27 AM
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://bluediary2.jugem.jp/trackback/1111
この記事に対するトラックバック
ユトリロの展覧会には何回も行った。三鷹市美術ギャラリーで開かれている今回の展覧会はパスしようかとも思っていたが、実際に行ってみると、それなりに良かった。画としては白の時代のものは少なく、ほとんどが色彩に時代のものだが、本邦初公開のものが多いため十分エ
モーリス・ユトリロ展ーモンマルトルの詩情 | Art & Bell by Tora | 2007/08/19 11:10 PM
千葉県立美術館(千葉市中央区中央港1-10-1) 「ユトリロ展 - モンマルトルの詩情 - 」 7/14-8/26 実を言えばユトリロは苦手な画家の一人ですが、千葉県立美術館の久々の大規模展とのことで行ってみました。三鷹市民ギャラリーより巡回中のユトリロの回顧展です。初
「ユトリロ展」 千葉県立美術館 | はろるど・わーど | 2007/08/23 10:30 PM
 お盆休み二日目は千葉市へ。千葉県に住みながら、千葉市に行くのは講習会と千葉市美...
ユトリロ展-モンマルトルの詩情-@千葉県立美術館 | 柏をたのしむ@水上デザインオフィス | 2007/09/01 2:33 AM