弐代目・青い日記帳 

  
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講演会「フェルメールとオランダの風俗画」
区立日本橋公会堂で開催された
フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展関連
文化講演会「フェルメールとオランダの風俗画」に参加して来ました。


講師は小林頼子先生(目白大学社会学科メディア表現学科教授)

講演内容は以下の通り
1.風俗画とは
2.その始まりと展開
3.風俗画家ヨハネス・フェルメール
4.「牛乳を注ぐ女」と厨房の女たち
5.17世紀リヴァイバル


ただ、この講演会が開催されたのが9月6日の午後6時半から。
折りしも台風9号が関東地方をまさに直撃せんとしている最中。
講演会も予定していた時間を短縮し開催されました。

9月26日から国立新美術館で開催さるフェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展関連と銘うっているだけあり、お話の中にも今回来日するアムステルダム国立美術館の作品も多く取り上げられており、贅沢な予習が出来ました。

基本的には昨年ブリヂストン美術館の土曜講座で拝聴した内容と重複したものでしたが、小林先生のお話は何度聴いても新鮮さをどこかしら有していらっしゃいます。
土曜講座「レンブラント、フェルメールの時代─オランダの光を訪ねて」

講演会で拝聴したお話と「フェルメール『牛乳を注ぐ女』とオランダ風俗画展」の見所なども勝手に加えつつご紹介。主に「風俗画」についての説明を中心に書きます。

風俗画とは簡単に言えば、人々の日常生活のひとコマを描いた作品と定義できます。よって風俗画に描かれる対象は「身支度」「仕事をしている」「勉強している」「買い物」「読書」「書き物」「音楽」「家事」「食事」「母と子」など等。

例えばこんな作品。

テル・ボルフ「身支度」1660年頃

テル・ボルフ(1617-1681)はフェルメール(1631-1675)に大きな影響を与えた画家のひとりです。「身支度」に描かれているのは上流階級の女性ですが、オランダの風俗画は専ら一般市民の姿を描いたものが主流です。今回の展覧会に出展されるこの作品などまさに庶民の日常のひとコマを描いています。

キリング・ファン・ブレーケレンカム「魚売り」1650-70年
(作品名が赤字になっている作品は今回のフェルメール展に出展されます)

↑の作品について小林先生が当時流行していたことを教えて下さいました。それは買い物をしている女性のこめかみについている大きな付けボクロです。これは当時肌を白く見せる為にこうしてホクロをこの辺りに付けたそうです。今も昔も美白命。

またフェルメール「牛乳を注ぐ女」との関連性をあげるとすると女性が買い物をするのに用いている金属製のバケツのような買い物かご。「牛乳を注ぐ女」の左奥に金属製のカゴが描かれています。主に魚やお肉といった生ものを買いに行く時に使用したそうです。

ところで、どうしてオランダだけこうした庶民の生活を描いた風俗画が生まれ好まれたのでしょう?一般的に西洋絵画といえばキリスト教の主題が描かれた宗教画がメインです。現代人の我々の目からは風俗画は珍しいものではありませんが、当時のヨーロッパに於いては大変異質なものだったはずです。

こうした風俗画が好まれた背景にはオランダという国の成り立ちが大きく影響しています。まだオランダとベルギーに分かれていないネーデルランドと呼ばれていた頃、1477年にハプスブルグ家の領土となりスペインの支配下におかれます。しかし1568年にオランダ独立戦争が勃発しその結果、ネーデルランド北部7州が1581年に独立を宣言し現在のオランダが誕生しました。

北部10州はそのままスペイン領南ネーデルランドに。これがのちのベルギーです。
さて、スペインから独立を勝ち取ったオランダですが、折りしも宗教改革の嵐が吹き荒れる真っ最中。憎きスペイン(旧教・カトリック)への反発が宗教にも波及しオランダは新教・プロテスタント(カルヴァン派)を選択します。

プロテスタントは教会内を宗教画や偶像で飾ることを嫌悪しました。よって教会から宗教画の依頼はほとんどなくなります。画家さんピンチです。そしてまた、当時の画家のパトロンでもあった王侯貴族が市民階級が主体となり独立を果たしたオランダには存在しません。要は画家にとって依頼主、注文主が不在の国がオランダだったわけです。

教会はダメ。貴族もいない。そんな大ピンチに立たされた画家達は市民に目を向けます。市民に好まれる絵。それは教会を飾る物語画でもなく、王侯貴族のお城に飾られる巨大な肖像画でもありません。一般市民の家に飾れるサイズで生活にふさわしい画題の絵。それこそまさに「風俗画」です。


ハブリエル・メツー「鰊売りの女」1657-58年頃

鰊(ニシン)はオランダを象徴する魚です。当時のオランダに莫大な富をもたらしたのがこの魚です。そしてオランダ独立の象徴でもあります。司馬遼太郎さんは『オランダ紀行』の中でライデン開放の絵を見た感想をこのように書かれています。

 画中の一人の男は、生ニシンのシッポをつまんで、上にむけた口の中にほうりこもうとしている。この1574年のこの日こそ、世界史的な市民祉会の誕生の日だったが、オランダ人が宣伝(?)しないために、二百年のちのアメリカ独立宣言(1776年)やフランス革命(1789〜99年)のほうが有名になってしまっている。 

私もオランダに初めて行った時に名物のニシン(Haring)を屋台で買って食べました。小さなトレーに生のニシンが少しの薬味のネギと共に出されました。この尾をつまんで、天を仰ぎ、大きく口を開けて丸ごと中へ入れて食べるのがオランダ流。

閑話休題。
こうした人々の日常を描いた風俗画を市民達がこぞって購入したという他のヨーロッパ諸国には無い独特の状況がオランダに誕生しました。


ヤン・ステーン
オウムに餌をやる女、バックギャモンをする二人の男と他の人物たち」1660-70年

この作品はフェルメール 「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展公式サイトで詳しく解説がなされています。「オランダ風俗画を楽しむ第2回 風俗画って何?第3回 《オウムに餌をやる女、バックギャモンをする二人の男と他の人物たち》に込められたメッセージは必読です。

そして公式サイトでも解説されている通り、風俗画は実は単なる日常のひとコマを描くだけではなく、その絵を通して道徳的なメッセージを発信していたのです。


カスパネル・ネッチュル「子供の髪を梳く母のいる室内」1669年

対照的な二人の子供が描かれています。ひとりは母親に髪を梳いてもらっている従順な子供。もうひとりは鏡に向かいあかんベーをして悪ふざけしているやんちゃな子。母親のy教育の重要性を描いているそうです。
(他にも隠されたメッセージは多数)

こうした細かい物を多く描いた風俗画もあれば、クローズアップした人物を描いた作品もあります。フェルメールは後者に属するのでしょう。そして一般的に後者の方が描き方が丁寧になってゆき品が良くなります。


テル・ボルフ「農婦の衣装を着けた娘」1659年頃

テル・ボルフは前述した通り、フェルメールに影響を与えた画家だけあってフェルメールの作品と多くの共通点を見出すことができます。

こうした作品を見ても分かるように17世紀半ばには良い作画が登場し風俗画の評価も上がっていったそうです。こうして世界でも類を見ない「絵画の世界が近代化した国」オランダが形成されていったのです。

最後にこれまた小林先生が教えて下さった面白い点を。
風俗画は市民の生活の一場面を描いたものと説明してきましたが、よく観てみるとおかしな点に気付くはずです。それは描かれている女性がみな、若い女性だということ。ついでにいうなら美しいこと。

ヤン・ステーン「金物を磨く女」1658-60年頃

当時30から40代の女中さんが主だったそうです。ところが風俗画ではこのように綺麗で若い20代の女中さんが描かれています。しかもこれ見よがしに胸元を開け「胸チラ」させています。主題としては主人をたぶらかす「悪女」として描かれているそうです。で、ここで思い出してみて下さい。フェルメールの「牛乳を注ぐ女」を。あの絵も女中さんが描かれていますがそういった悪女系の要素は全く描かれていません。3、40代のお手伝いさんが家事に勤しむ姿が描かれているだけです。それにカメラ目線ではありません。これこそまさにフェルメールの独自性のひとつ。


絵を鑑賞する者と描かれた人物の視線の先が見事に一致します。
この事に関しては展覧会が始まってからまた詳しく。

台風の接近で講演会が短縮され「5.17世紀リヴァイバル」はほとんど語られずに終了してしまいましたが、今回の展覧会ではオランダが全盛を極めた17世紀以降に描かれた作品も展示紹介されるそうです。


ヤン・エーケルス2世「ペンを削る男」1784年

フェルメールの影響が色濃く出ている作品です。窓にカーテンがかかり部屋に差し込む光りが若干弱く感じるのはオランダの凋落を感じさせもします。

さらに時代は下って、ニコラス・ファン・デル・ヴァーイ
アムステルダム孤児院の少女」1890年


こうした後世の作品も含めオランダという国が成した「風俗画」を存分に楽しみ、そしてフェルメールの傑作「牛乳を注ぐ女」もしっかり堪能して来たいと思います。

もう、今からかなり浮き足立っています。
美術館へ出かけず休日一日使ってこんな記事書いているくらいですから。


「もっと知りたいフェルメール―生涯と作品」  小林 頼子

「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―
「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―
小林頼子


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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1147
本邦初作品に力を注ぐ「フェルメール展」陳列 
2007年9月22日東京新聞


 二十六日から十二月十七日まで東京都港区六本木の国立新美術館で開催される「フェルメール《牛乳を注ぐ女》とオランダ風俗画展」(東京新聞など主催)の作品陳列作業が二十一日、同美術館で行われた。

 三便に分かれて到着した出展作品百十余点は、二十日から展示作業が始まり、この日は日本初公開となる、ヨハネス・フェルメールの「牛乳を注ぐ女」が陳列された。

 同展では、アムステルダム国立美術館の珠玉のコレクションから、オランダ風俗画の多様な展開を紹介する。
| 講演会 | 18:37 | comments(5) | trackbacks(0) |
「もっと知りたい…」買いました。
勉強させていただいてます。
木曜午前に行く予定です。
チケット、事前ネット購入しました!
便利な世の中だ〜
| さちえ | 2007/09/24 10:09 PM |

ひと足お先に、明日プレスレビューで見てくる予定でーす。お勉強もしてみましたー。
| 海 | 2007/09/24 11:18 PM |

@さちえさん
こんばんは。

もっと知りたいシリーズの中では
若冲よりも売り上げがいいそうです。
フェルメール畏るべし。
木曜日ならまだガラガラでしょう。
あのネット購入便利ですよね。
混雑状況もリアルタイム速報です。


@海さん
こんばんは。

今日はどうもありがとうございました。
思わずお会いできて嬉しかったです!
| Tak管理人 | 2007/09/26 12:37 AM |

台風の中お疲れ様でした。

早速フェルメール《牛乳を注ぐ女》を見てきました。

アドヴァイスに従って持参した単眼鏡が抜群の威力を発揮しました。

近々その時の記事を掲載したいと思っております。
| わん太夫 | 2007/09/30 11:52 PM |

@わん太夫さん
こんばんは。

台風凄かったですね、この日。
なんだもう終わりか〜と思っていたのですが
早めに帰ってよかったです。
電車止まったら帰れませんからね。

フェルメールの作品だけやはり
異質ですよね。風俗画のカテゴリーに
入らないような作品なのだと思います。
| Tak管理人 | 2007/10/02 8:50 PM |










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