青い日記帳 

  
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直島の杉本博司
今年の夏、直島へ行って来ました。
この島で観られる杉本博司作品の展示方法はとても変っています。

杉本博司の「海景」と呼ばれる写真作品「タイム・エクスポーズト」たちが、雨ざらしでベネッセハウス「ミュージアム」の海に面した外壁に展示されています。


彼は時間という抽象概念を写真作品で表現しようとしています。海景(seascapes)と名づけられたモノクロ写真を見たことがある方も多いと思います。日本海、カリブ海、死海、バルト海など世界中で撮影されたモノクロームの写真です。
杉本博司の歴史の歴史」より
Hiroshi Sugimoto
Hiroshi Sugimoto
Kerry Brougher,David Elliott

目の前に広がるのは瀬戸内海。
今現在眼に映る海の姿と杉本が映し出した「海景」が水平線を同じレベルで鑑賞できるよう敢えて風雪を遮るものが無いこのような場所に展示されています。

時の経過に従い「見え方」も一変する仕組みになっています。


自然と張り合うのではなく、自然の引き立て役に徹しています。
20代から活躍の場をNYに移した杉本ですが、この辺の感性は彼の中に綿々脈々と流れる日本人のDNAそのもののように思えます。

隣接するレストランからもこの作品を観ることが出来ます。

自分はこの席に座りお食事をいただきましたが、ふと目を上げると杉本作品が飛び込んで来てしまい、肝心のお料理よりも気になって気になって仕方ありませんでした。目の前(杉本作品の手前)に座るかみさんに「レストランへ何しに来たの」と小言を。悩ましい造りのレストランです。

「タイム・エクスポーズト」は実は「ミュージアム」だけでなく、直島の数箇所でも観ることが可能です。ただし気がつけばの話です。こんな風に展示?してあります。

お分かりになりますか?「ミュージアム」やレストランで見た作品と同サイズの「タイム・エクスポーズト」が岩壁に設置されています。

遠くて間近に杉本作品を鑑賞することは出来ません。(尤も危険を冒せば何とか…)しかしこの作品が展示?設置されたことにより直島の瀬戸内海に突き出たただの岩壁が「特別な岩壁」に変容を遂げてしまいました。

時に風景さえも変えてしまいます

画像ではご覧になれないかもしれませんが、
こちらの岩壁にも杉本作品が展示してあります。

ここの上に地中美術館が建っています。
(岩壁に展示してある作品は直島に三箇所あります)

ところで、どうして杉本博司はこのような一見無謀とも思える「場所」を選び自分の作品を展示したのでしょうか?劣化は当然避けられないはずです。その答えとなるような文章を自著で以下のように著しています。

 私にとって、本当に美しいと思えるものは、時聞に耐えてあるものである。時問、その容赦なく押し寄せてくる腐食のカ、すべてを土に返そうとする意志。それに耐えて生き残った形と色。創造されたものは弱いものから順次、時間によって処刑されていく。あるものは革命の戦火により、あるものは大地震により、あるものは風化し、あるものは水没し、あるものは捕らわれの身となり美術館の倉庫に幽閉されたりする。
 それらのあらゆる災難を生きのびながら、永遠の時間の海を渡っていくのだ。河原の石が、上流から流れ下る間に丸く美しい形になるように、時間に磨かれたものは当初持っていた媚や主張、極彩色や誇張をそぎとられ、まるで、あたかも昔からそこにそのようにあったかのような美しいものになるのである。
 しかし、その美もつかの間に過ぎない。いつか色も形も消え失せる時がくる。この世とは、あることからないことへと移り行く間だ。時おりその間で、謎解きの符牒のようにものが美しく輝くのだ。
 古今集に「世の中は夢か現か現とも夢とも知らずありてなければ」とある。むろんよみ人知らずである。


苔のむすまで
苔のむすまで
杉本 博司

どうやら積極的に敢えて過酷な状況下に自分の作品を展示しその「移り変わり」を見たかったようです。元々「海景」は現在の海の姿を撮りつつ古代から絶えることなく連なってきた「時間性」を表現した作品でもあります。この「時間性」をキーワードにし直島の作品を捉え直せば、なるほどそれらの場所に設置するのも合点が行きます。



家プロジェクト「護王神社」
杉本博司「Appropriate Proportion」はまた後日。

【関連エントリ】
- 弐代目・青い日記帳 | ベネッセハウス「ミュージアム」
- 弐代目・青い日記帳 | ベネッセハウス ミュージアムレストラン
- 弐代目・青い日記帳 | 直島から戻りました。
- 弐代目・青い日記帳 | ミュージアムリンク・パス
- 弐代目・青い日記帳 | コンプリート!!「ミュージアムリンク・パス」
- 弐代目・青い日記帳 |「杉本博司展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「杉本博司展」再び
- 弐代目・青い日記帳 | 最終日の「杉本博司展」
- 弐代目・青い日記帳 | 杉本博司 「本歌取り」
- 弐代目・青い日記帳 | 「様々なる祖型 杉本博司展」


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| 直島 | 22:54 | comments(5) | trackbacks(0) |
Takさん
こんばんは

ちょっとだけ危険を冒しました。
↓名前にリンクを貼っておきます。
| lysander | 2007/10/05 1:37 AM |

いつものことですが、時間経過の写真がすばらしいですね。
杉本さんの『時間に耐えてあるもの』という考え方にとても共感があります。

妻有トリエンナーレで野外設置の作品をいろいろと観たとき、同じことを考えていました。自然の中で風化し、溶け合いながら生き続ける作品の姿を想像して歩きました。


| 白樺好 | 2007/10/05 8:54 AM |

@lysanderさん
こんばんは。

直島へ行く前に拝見して
ここまで近寄れるのか〜と
思っていたのですが・・・
全然無理でした。冒険王ですね。

@白樺好さん
こんばんは。

自然の中で風化し劣化し変容していくことを
前提にこしらえ設置されたと知りまず驚きました。

そしてそれが「そこしかない!」という絶好の
位置に設置されていることにもまた同じく。
写真は立ち位置に苦労しました。
| Tak管理人 | 2007/10/05 10:39 PM |

定点観測、素晴らしい!
どの時間もよい眺めですが、ほんと時間で空の表情が変わるのが美しいです。
コンクリート(?)の壁と写真も風景の中に溶け込んでますね。
なのに岸壁の写真、写真が遠目には白っぽく見えるせいか、
何故かちょっと浮いて見えてしまいました。
Takさんの引用された杉本さんの文章を読むと、
深く考えてらっしゃるんだと思うのに、
素直に楽しめない自分が悲しい・・・。
間近で観れば、また印象も変わるでしょうか。
| m25 | 2007/10/06 9:00 PM |

@m25さん
こんにちは。

ど素人の自分が小さなデジカメで
撮ってもこれだけ「それなりに」
撮れるのですからいかに被写体が
よいのか分かります。
定点観測は「オランダの光」を
ちょいと思い出して粘ってみました。

岩壁の写真は確かに浮いています。
唐突な印象は現地で見ても変りません。
| Tak管理人 | 2007/10/08 12:04 PM |










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