青い日記帳 

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「BIOMBO/屏風 日本の美」展

サントリー美術館で21日まで開催されていた
開館記念特別展「BIOMBO(ビオンボ)/屏風 日本の美」展に行って来ました。



屏風は日本美術の展覧会には欠かせないアイテムでありながら、屏風だけの展覧会というものに一度も行ったことがないことに展示室へ向かうエレベーターの中でふと気付きました。

これは心して観ないといけないと変に身構えつつ展示室へ。「屏風って何なのだろう?」などと考えても自分では答えの出ない疑問が終始頭の中を過る羽目に。

普段であれば、狩野元信の「四季花鳥図屏風」(白鶴美術館所蔵)など目にすれば「おーー」と声上げながら舐めるように観尽くすのに、今回はそれほど熱が入りません。記事を書くのが遅くなった訳もまた同じ。

当時の中国、明の皇帝に日本を代表する品として献上された屏風だそうです。
黄金の国ジパングの「金屏風」。

無い頭をいくら絞りに絞ってみても、何にも出てきません。「屏風、びょうぶ、BIOMBO…」と、うわ言のように呟きながら過ごしていると、たまたまこんな文章が目に留まりました。

李 御寧氏の「ふろしき文化のポスト・モダン」に「屏風とは壁の記号なのだ」とあり、その「壁のもっている不変不動の概念を可変可能なものにし」たのがまさに屏風であると述べられています。

【以下引用】
 一般的に屏風はその名称どおり、風を防ぐ調度と認識されてきた。菅原道真の「屈曲初知用施来不畏風」(屈曲して初めて用を知り、もちいれば風を畏れず)の詩にも現われているように、屏風を用いることを知れば、風なんか怖くないのだ。日本の屏風の裏側に描かれている雀も、風を食う伝説の鳥から由来したものといわれている。しかしほんとうに屏風が風ふさぎだけの道具であったとすれば、とっくの昔に消えたはずである。それよりももっと機能的で安い風ふさぎはいくらでもあったからだ。屏風の名称を文字どおり読むと、その本質をつかまえることは難しい。風を防ぐというのは、壁の一種の提喩であるからだ。韓国では普通、壁をパラム・ビョク(風壁)ともいうから、屏風と壁は同姓のものと見られる。「風ふせぐ外に役あり金屏風」(明和)の句に見えるように、屏風は実用的、儀礼的、装飾的の各レベルで多機能的に用いられるのが特色であるが、それはみな壁の機能に還元されるものである。〈防ぐ〉〈もたれる〉〈遮る〉〈囲う〉〈仕切る〉〈飾る〉−壁にかかわる触媒語は、そのまま屏風にも使うことができる。
 すなわち、屏風とは壁の記号なのだ。その構造を屈折させ、自由に変換したものである。だから屏風の機能と特色は、壁を建物から切り離したところにある。つまり壁のもっている不変不動の概念を可変可動なものにし、それに独立した自由を与えたということである。欧米人が個人の自由のために壁を厚くし細分化していったときに、東洋三国の人たちは、壁を自由にするために、それを軽く薄くした。そして壁が人間を拘束するのではなく、人間が壁を自由にコントロールする。それを実現したのが、他ならないあの屏風であったのだ。それによって、硬い壁は軟らかい風呂敷に変換して、人間を包むことが可能になったのだ。

「ふろしき文化のポスト・モダン―日本・韓国の文物から未来を読む」李 御寧

「しかしほんとうに屏風が風ふさぎだけの道具であったとすれば、とっくの昔に消えたはずである。それよりももっと機能的で安い風ふさぎはいくらでもあったからだ。屏風の名称を文字どおり読むと、その本質をつかまえることは難しい。」なるほど!「屏風」という名称に拘泥していては本質が見えてこないわけか〜

ひとつ解決の糸口が見つかると、今までかかっていた霞が一気に雲散霧消。スッキリと晴れやかに。例えば今回の展覧会でひと際目を惹いたこちらの屏風。

伝原在中「白絵屏風
解説によると「白絵屏風」はお産の時に用いた屏風で現存するものがたった二つしかない貴重な屏風だそうです。鶴、松、亀など吉祥を表すアイテムが胡粉でしょうか、一種幻想的な雰囲気を漂わせ描かれています。

産母を取り囲むようにしてこういった屏風が用いられたのでしょう。生まれてきた子供がやがて成長し七五三のお祝いの席ではまた別の屏風が、成人し結婚式でもまた屏風の前で。更に齢を重ね還暦の宴の席や長寿を祝う席でも。そして死をむかえ「湯灌の儀」を行い際にも屏風を(ただしこの場合は逆さ屏風)。

人生を〈仕切る〉のが「屏風」
人生を〈飾る〉のもまた「屏風」

おめでたい席をおめでたい図柄の屏風で演出。

狩野内膳「豊国祭礼図屏風
因みにこの輪になって踊る民衆を描いた屏風で最も印象に残っているのは、奈良の大和文華館で観た屏風。四角い屏風に大きな円の図像がはめ込まれた形式は大変強い印象を与え観る者を放さない霊力さえ有しているようです。また建物の屋根を三角と捉えると、センガイ和尚の描いた作品に通ずるものさえ感じさせます。

さて、今回の展覧会の大注目したのが「祇園祭礼図屏風

左がサントリー美術館所蔵の「祇園祭礼図屏風」
右はケルン東洋美術館所蔵の「祇園祭礼図屏風」
生き別れになってしまっていた屏風がこの展覧会を機に再会。そして並べて展示されるという粋な計らい。普段は外光を取り入れ明るい寛ぎの空間である4階から3階へ降りる階段下付近に展示されてあったのもまた感慨深いものがありました。高い天井の空間で観る屏風もまた違って観えるものです。

普段はこんな様子
ここ上手いこと外光が入らないようにできるのですね。

この他にも里帰り作品である「松下麝香猫図屏風」(ボストン美術館)とサントリー美術館所蔵の「樹下麝香猫図」(じゃこうねこの雄と雌・子猫がそれぞれに描かれています)がおよそ100年ぶりの再会を果たしていたりと話題には事欠かない展覧会でした。できれば前期の作品も観たいものありましたが贅沢も言えません。

さて、11月3日からはいよいよ、開館記念特別展 「鳥獣戯画がやってきた!―国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌」展が始まります。何度か目にしてはいますが何度でも観たいユニークでこれまた謎深い作品です。次回はあまり深いこと考えないようにして気楽に観に行こうと思います。



おまけその1
「BIOMBO」をグーグル・ポルトガル語版で画像検索してみると、面白いことに「屏風」よりも所謂「パーテーション」のようなものが多く検出されます。

愉快なのは自動車多重追突事故の現場写真に「A falta que faz a porra do biombo」と解説が付せられたこちらのブログの画像。洒落にならない光景ですが、表現としては随分と洒落てます。

表装を楽しむ―掛軸、屏風をつくる
表装を楽しむ―掛軸、屏風をつくる
麻殖生 素子

おまけその2
V6じゃないけど「WAになっておどろう」
(「豊国祭礼図屏風」でもないけど)


【関連エントリー】
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この記事のURL
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BIOMBOとは、「ビオンボ」と発音し、ポルトガル語やスペイン語で「屏風」を意味します。日本の屏風が近世初期の南蛮貿易で輸出の品として盛んに海を渡り、西欧にもたらされたことを示している言葉です。開館記念特別展と題した本展では、屏風の変遷をたどるとともに《屏風の成立と展開》《儀礼の屏風》《BIOMBOの時代 屏風にみる南蛮交流》《近世屏風の百花繚乱》《異国に贈られた屏風》《海を越えた襖絵と屏風絵》という多角的なアプローチで屏風の魅力に迫り、貴重な名品をご覧いただきます。屏風がたどった歴史や、もとめられてきた機能、とくに文化交流の側面で屏風が果たした役割に光をあてつつ、グローバルな視野から屏風の再検証を試みる展覧会です。今回は、江戸幕府がオランダに贈った屏風10件が、初めて日本に里帰りするほか、現在海外の美術館に分蔵されているかつては一連の作品であった屏風の名品などを一堂に展示します。
展覧会 | permalink | comments(7) | trackbacks(3)

この記事に対するコメント

こんばんは。

「BIOMBO/屏風 日本の美」展、もちろん見ました。
屏風の姿普段見ない物なので、素敵でしたね。
「祇園祭礼図屏風」の作品は、またもや東西の再会の作品。
再会と言えば、ギメの北斎の龍虎のご対面の作品を思い出しますね。
再会の作品は、心打たれるものを感じます。


おまけの「WAになっておどろう」
V6じゃありません。
元々は、角松敏生氏が覆面バンドとして限定で結成されたAGHARTA(アガルタ)の曲でございます。
長野オリンピックの頃なんですごく懐かしいです。
You Tube何度も聞いちゃいました。
元気ない私にパワーが入りました!

朱奈 | 2007/10/25 12:49 AM
こんばんは。あまりにも頻繁な展示替えはいただけませんが、
私としては「当たり」な展覧会でした。
屏風の奥深さを見たような気がします。
白屏風も、まさに移動可能な屏風だからこそ出来る表現なのかもしれませんね。

>11月3日からはいよいよ、開館記念特別展 「鳥獣戯画がやってきた!

大変な混雑になるのでしょうか。なるべく早めに行かないと…。
はろるど | 2007/10/25 9:28 PM
こんばんは。
私も屏風の記事にはてんてこ舞いでした。
でも、日本の上層部のおうちには普通に
生活調度として置いてあったのですよねぇ。
パーテーションがぱたぱた畳めるのですから、
じゃぁ、畳は畳めるのか知らん?
と、あらぬ方向に思考回路が迷路になりました。
ご参考までに、白絵屏風に関して、
東博の近代美術の所に、安田靫彦の「お産の祷」
が展示されています。
臨場感溢れていて、そういうことだったのかと
伝わってきます。

次回の鳥獣戯画、これもまた悩ましい展覧会、
また通います。
あべまつ | 2007/10/25 9:57 PM
@朱奈さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

あれだけ一堂に会すると壮観ですよね。
見方が途中からわけわからなくなり
ちと困りましたが、インパクトありました。
サントリー美術館の真骨頂。
これからもこういった展覧会期待します。

角松さんでしたか。
それはそれは。
昔好きだったな〜齢ばれるけど。
岡村ちゃん共々。
「WAになっておどろう」名曲です。

@はろるどさん
こんばんは。

いつでも行けるからという思いと
突然の予定変更が入ったりと
どうもこの展覧会とは相性が。。。
でも間に合って良かったです。
見逃したら悔やんでいたはず。

鳥獣戯画はコンプリート目指します!

@あべまつさん
こんばんは。

書きたいことが山ほどあって
どこからどう書いたらよいのか
躊躇しているうちに会期終了。
次の展覧会までには!と思い、
慌てて仕上げました。ふ〜

安田靫彦の「お産の祷」
はい、観て参りましたよ!
迫力ありましたね。
あんなに大きい絵だとは。
緊迫した感じひしひしと
観る者に迫ってくるそんな作品でしたね。
Tak管理人 | 2007/10/25 11:01 PM
こちらの展示は拝見しておりませんが、
李さんの著書がとても興味を引きました。

屏風にしろ、風呂敷にしろ、
無だった空白を仕切り、区別し、意味を持たせて、
有にする。
そしてそれを取っ払えばまたなにもない空間になる。
それも柔らかに軽かにコントロールする・・・

おもしろそう。
ご紹介ありがとうございます♪
こちらぜひ読まねば。
きのこ | 2007/10/26 12:46 PM
こんにちは。
調度としても絵画としても屏風は面白いなぁ、と再認識できた展覧会でした。
私も「白絵屏風」がインパクトありました。
逆さ屏風は、いかに生活に根ざしたものであったかが伺われますね。
トラックバックさせていただきました。
kyou | 2007/10/26 4:43 PM
@きのこさん
こんばんは。

李さんの本は読んで納得。
元々この国では「仕切り」を
しっかりと区切らず
時と場合に応じてある場所に
突然特殊な場を作り出してきました。

堅牢な壁を用いず
いつでもフレキシブルに対応。
人間との付き合い方もまた同じ。

何かあればすぐ訴訟起こす国とは
やはり違うようですが、最近はどうも。。。

@kyouさん
こんばんは。

「白絵屏風」には驚かされました。
これから生まれてくるであろう
新しい命に対する想いが伝わってきます。
たとえ現在は用いずともこういうものが
存在したという事実は残したいものです。
Tak管理人 | 2007/10/26 11:37 PM
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