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「日本彫刻の近代展」

東京国立近代美術館で開催中の
「日本彫刻の近代」展に行って来ました。



夏の終わりに観た「日展の100年」展に数点の彫刻が展示されていました。絵の良さも観方もろくすっぽ分からない自分です、どうして目の前にある彫刻作品の良さを理解することができるでしょうか。

どうせ観に行っても何一つ得られるものなどないと思われましたが、「まとめて見る機会のなかなか少ない日本の近代彫刻。本展では高村光雲の代表作《老猿》(重要文化財)をはじめ、貴重な作品を数多く各地から集め、明治からの日本近代彫刻100年間の歩みを、100点の作品でたどります。」サイトにこうある通り、確かに言われてみると、彫刻作品をまとめて観た機会まずないかと。

日本の近代彫刻は確かに積極的に感受しようとアクション起こしたことありませんでした。旅行がてら箱根彫刻の森美術館へ何度か行ったことはありますが…

そう考えるとこれはもしかして千載一遇のチャンスなのかもしれない…と思い、竹橋へ。結論から先に申しますと、出かけて大正解でした。


高村光雲「老猿」(重要文化財)1893年

展覧会の構成
1:「彫刻」の夜明け
2:国家と彫刻
3:アカデミズムの形成
4・個の表現の成立
5:多様性の時代
6:新傾向の彫刻
7:昭和のリアリズム
8:抽象表現の展開


そもそも日本で「彫刻」が受容されるようになったのは思っていたよりもかなり後だということをまず入口で知らされます。「祈りのための彫像や日常の愛玩物ではなく、西洋的、近代的な意味での純然たる鑑賞の対象としての「彫刻」という考え方が本格的に移入されはじめたのは、「絵画」よりも遅く、明治30年代になってからのことでした。

明治30年は西暦で1897年。するとまだ日本の「彫刻」の歴史はたった100年ちょっとということになります。しかしこの100年の間に様々な変容を遂げてきたことが今回の展覧会をさーーと駆け足で観ただけでも理解できます。

絵画や音楽がここ100年で大きく変化したのと同じく彫刻にとっても激動の一世紀だったわけです。

手探りでギリシャ・ローマ時代の彫刻を模したのでしょうか。
このような作品が明治23年に作られています。

竹内久一「神武天皇立像」1890年
高さ約3m!!でかっ!


同じく昨年の今頃、近代美術館で開催された「揺らぐ近代日本画と洋画のはざまに」展で観た、原田直次郎の「騎龍観音」1890年を想起させるものがあります。どっと津波のように押し寄せてきた西洋文化に対し如何に「格闘」したが悲しいくらいよく分かる二つの作品です。
(現在「騎龍観音」は常設展に出ています)

とにかく、スタートからして西洋からの『輸入品』だったわけですから、作品の変遷も西洋のそれと見事にリンクします。ロダンに影響受け内的写実主義が顕著な時もあれば、モダニズム、作家の個性重視、そして戦後の抽象彫刻と綺麗にリンクしているのが見て取れます。

ヨーロッパで流行しているファッションがそのまま日本でも流行るが如く。

こんな本が売れているそうですが、タイトルからして退いてしまいます。
一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)
「一度も植民地になったことがない日本」 デュラン れい子
よくまぁこんなオメデタイ題名付けられたものです。
日本の近代化は西洋化であり、それは植民地化でもあります。

さて、さてこの作品は展示室の遠くから見ても輝きを放っていました。

舟越保武「婦人胸像」1941年
舟越保武についてはこちらのサイトが詳しいかと。「盛岡中学校で、同級の松本竣介とともに絵画クラブに所属、「ロダンの言葉」(高村光太郎訳)を読んで彫刻に興味を持つように」なったそうです。松本竣介の作品も常設展に出ていました。
また現在活躍なさっている舟越桂氏のお父様でもあります。

舟越保武・石と随想
舟越保武・石と随想
舟越 保武

それでは最後に「今日の一彫


堀内正和「表裏相入円錐」1961年

どう観ても、コンスタンチン・ブランクーシ(Constantin Brancusi)ですね。
ブランクーシの鳥

最初にも書いた通り、作品個々の良し悪しは全く分かりません。でも会場を一巡するだけで激動の100年間の日本近代彫刻の歴史が観望出来ます。まずは入門として「流れ」を知ること、捉えることは大事なことです。一つ一つの作品をバラバラで観ても見えてこなかったものが、今回は他との関連性の中から薄っすらですが「見えた」ように思えました。

明治から現代までの日本の彫刻の歴史が一望できるまたとない機会です。
歴史嫌い、彫刻嫌いの方も是非。

ご先祖様の格闘の様子に涙することもできるかもしれません。

この展覧会は12月24日までです。

師走でとてもとても忙しくて足を運べない方に朗報。
展覧会の図録が一般書籍として販売されています。
日本彫刻の近代
日本彫刻の近代
日本の近代彫刻史の教科書をめざした詳細なカタログを淡交社から一般書籍として刊行。書店でもお求めいただけます。3つの巻頭論文と時代別の8つの論考、そして個別のエピソードを紹介したコラムなど、読み応えのある一冊です。


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1221

JUGEMテーマ:アート・デザイン


日本には古来、仏像、神像、建築装飾、置物など、今日「彫刻」と総称されるさまざまな表現が存在しています。しかし、祈りのための彫像や日常の愛玩物ではなく、西洋的、近代的な意味での純然たる鑑賞の対象としての「彫刻」という考え方が本格的に移入されはじめたのは、「絵画」よりも遅く、明治30年代になってからのことでした。それと前後して、象牙の置物や根付などの工芸美術品が外国向けの輸出品としてもてはやされたり、歴史的偉人や事績を顕彰するための記念碑彫刻が推奨された時代などもあり、彫刻というジャンルが、芸術家個人の自由な表現として認められるのは、ようやく明治末年から大正初めにかけて、荻原守衛や高村光太郎らの活躍をみてからでした。
その後、大正から昭和にかけての日本彫刻の歩みも、決して平坦なものではありません。ロダンの弟子のブールデルや、マイヨールらに学んだ彫刻家たちが、20世紀の思潮を持ちかえる一方、伝来の木彫界でもさまざまな変転があり、また戦後になると、多種多様な素材・技法による抽象表現が現われてきました。

この展覧会は、幕末・明治期から1960年代までの近代日本彫刻史を、68名の彫刻家の約100点の作品によって振り返りながら、この分野における「近代」とは何であったかというテーマに、さまざまな角度から光を当てようとするものです。絵画史と比較すると、日本の近代彫刻史を通覧する試み自体が少なく、また、研究成果の蓄積も、残念ながら十分とはいえません。本展が、日本彫刻における近代について改めて見直すきっかけとなり、彫刻芸術の魅力を広く紹介する機会となれば幸いです。
展覧会 | permalink | comments(7) | trackbacks(3)

この記事に対するコメント

夏に、仙台で見ました。
彫刻の素材も、時代によって違い、ブームがあって、面白いです。
鼎 | 2007/12/06 11:37 PM
こんにちは。
仏像から離れて、彫刻、彫像はこういう道のりをたどったのかと漠然とですが、流れを追っかけることができました。
塊が命を抱えているところから、
オブジェとなって、自由に心が放たれていくようでした。
光雲、光太郎親子はやっぱり凄かったです。
あべまつ | 2007/12/07 1:28 PM
@鼎さん
こんばんは。

時代によってホント様々に変化してきたのですね。
コンパクトに俯瞰できて良かったです。

@あべまつさん
こんばんは。

今まで彫刻の流れなど考えたこともなかったので
こうして時系列順に見られると大変勉強になり
整理することができます、頭の中。
地味ながら優れた展覧会だと思います。

彫刻の展覧会だと触ってみたくなりせん?
思わず手の感触を確かめたくなったりします。
Tak管理人 | 2007/12/08 9:33 PM
こんにちは、教科書的なまとまった展覧会でした。
こういう教育的な彫刻展ができるのは流石に国立ですね。
とら | 2007/12/10 9:39 AM
@とらさん
こんばんは。

儲け考えたらこんな展覧会できませんよね。
日経さんも偉いな〜と。
流れがつかめたことが一番の収穫でした。
Tak管理人 | 2007/12/10 11:42 PM
行ってきました。
日本の彫刻って、こういう流れで来ていて、
その中で更に現代美術系に行く、という
その全体像が俯瞰できたのは収穫。
そして予想以上にトキメク作品に出会えたのも収穫でした。
ああ、それにしても触りたかった。
『老猿』とか『蟹付』とか。
菊花 | 2007/12/15 11:58 PM
@菊花さん
こんばんは。

これ良い展覧会ですよね。
勉強になります。
こういうこと学べる機会って
滅多にありません。
お客さんは入らなくても
こうした展覧会を開催できる
近代美術館と主催者に感謝感謝です。

彫刻って無性に触れたくなりますね。
Tak管理人 | 2007/12/16 11:50 PM
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 この展覧会は、幕末・明治期から1960年代までの近代日本彫刻史を、68名の彫刻家の約100点の作品によって振り返るものであるが、このように日本の近代彫刻史を通覧する展覧会を観たのは今回が初めてかもしれない。  美術鑑賞の対象としての「彫刻」という考え方が
日本彫刻の近代 @東京国立近代美術館 | Art & Bell by Tora | 2007/12/10 9:36 AM
国立近代美術館(設計:谷口吉郎) 「日本彫刻の近代」、タイトルがちょっと仰々しいですね。オールスターの作品・代表作が出てくる、いわゆる「通史」ってヤツですね。あるいは「近代の超克(?)」ではなくて「近代の彫刻」、歴史の見直しですね。最近は彫刻展、
東京国立近代美術館で「日本彫刻の近代」展を観る! | とんとん・にっき | 2007/12/12 12:19 AM
東近美では現在、“日本彫刻の近代展”(11/13〜12/24)が行われている。
日本彫刻の近代展 | いづつやの文化記号 | 2007/12/12 11:50 PM