青い日記帳 

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水曜講演会:「伊勢物語絵を楽しむ」

出光美術館で開催された
水曜講演会:「伊勢物語絵を楽しむ」に行って来ました。
講師は実践女子大学教授の仲町啓子先生。



今年は源氏物語が書かれて丁度1000年目に当たる年。その源氏物語よりも前の時代に成立した伊勢物語は源氏物語のみならず多方面に大きな影響を与えている作品です。

今回はその伊勢物語が「絵」を通してどのように表現され受容されてきたかというお話。歴史的に多くの人々が楽しんだ伊勢物語絵を現代の我々も楽しもうといった試み。

まず最初に「伊勢物語絵の流れ」が紹介。
因みに仲町先生のご専門は琳派だそうですが、近年は浮世絵にも興味関心を寄せていらっしゃるとのこと。パワーポイントで示された「伊勢物語絵の流れ」を再現。

【伊勢物語絵の流れ】


成立から100年後には「源氏物語」内で伊勢物語絵が登場しているのが分ります。現代とは情報の伝播する速度が著しく遅かった時代にあって100年で既に取り入れられてとは驚きです。

そして鎌倉時代に入ると和泉市久保惣美術館所蔵の現存する最古の「伊勢物語絵巻」が出来上がっています。それを追うように東博にある「異本伊勢物語絵巻」も完成。現在まで残されているのは僅か一点に過ぎませんが当時既に伊勢物語絵が絵巻物に描かれていたことが分ります。


和泉市久保惣美術館所蔵の「伊勢物語絵巻」(重文)の公開はこれから。2月5日〜17日の間です。全部一度に公開できないので半分ずつ見せて下さるそうです。

東博所蔵の「異本伊勢物語絵巻(模本)」と和泉市久保惣美術館所蔵の「伊勢物語絵巻」との違いは聞いてなるほどと納得。前者はストーリーを絵解きしているのに対し、後者は一場面だけを情緒的な演出によって表現しているとのこと。

こちらは「異本伊勢物語絵巻(模本)」の「芥川」の一場面です。


同じ伊勢物語を扱っても、双方では何を描くかがはっきりと違います。
因みに手元にある至文堂『日本の美術301 伊勢物語絵』千野香織著を読み返すと以下のように違いが記されています。参考までに一部引用。
久保惣本は、ほぼ一定の幅の紙料を用い、一画面内に主人公の姿を一回しか描かない。主人公たちの姿も静止したように表され、画面内のその位置から動き出すことはないように見える。(中略)一方の異本は、画面をゆっくり鑑賞することが不可能なほどに、物語を次々と展開させていく。同じ画面に主人公の姿を何回も描き、鑑賞者がその主人公の姿を眼で追っておくと、ひとりでに画面が左へ展開してしまうような構成となっている。


そして室町時代に入ると絵巻だけでなく、屏風などに伊勢物語が登場。源氏物語図屏風と同じように、一枚の屏風に複数段の場面を散りばめて描く手法が採られています。この当時の注文主は公家社会に憧れを抱いた武士などだったことも興味深い点です。

そして、いよいよ俵屋宗達の「伊勢物語絵色紙」の登場となります。
このあまりに有名なそして今回の展覧会では現存する49点の色紙のうち実に29点が公開される宗達の「伊勢物語絵色紙」。その大半は元々益田家が所有していたものです。その益田本36帖の謎として以下のことが示されました。

【益田孝氏旧蔵画帖(36枚)の謎?】


謎だらけです。答出そうにありません。
仲町氏は情報量の圧倒的に少なかった時代にどうしてこれが後世まで伝わったのかが最も謎だと仰っていました。また伊勢物語の中では全く有名でない第88段「月もめでじ」をどうして宗達は選んで描いたのかもやはり謎だと。(因みに第88段はあの嵯峨本にも絵は描かれていないそうです)

参考:「伊勢物語」第八十八段(月をもめでじ)全文&現代語訳

昔、いと若きにはあらぬこれかれ友だちどもあつまりて月を見て、それが中に一人、
 おほかたは月もをもめでじこれぞこのつもれば人の老いとなるもの

〈口語訳〉
昔、ぐっと若いというほどではない誰彼友人たちが集まって、月を見て、その中の一人がこう詠んだ。
 月は美しいが、よほどのことがなければたいていは特に賞美すまいと思う。この月が、眺めつもり重なれば年となり人は老いてゆくのだなあ。

(参考文献・小学館「日本古典文学全集」及び講談社「伊勢物語(下)」)


いずれにしても、嵯峨本や宗達の「伊勢物語絵色紙」が江戸時代に入ってから光琳や浮世絵にまで伝播し受容され広く知られるようになっていったのは紛れもない事実。それは江戸庶民の「王朝の恋」への強い憧憬の表れでもあります。

浮世絵には「見立」として多く描かれているとのこと。鈴木春信「見立芥川図」や「お仙の駆け落ち」また鳥居清廣「恋の重荷」、西村重長「娘を背負う布袋」etc…これらすべて伊勢物語「芥川」のこのシーンをインスパイアしたもの。
俵屋宗達「伊勢物語図色紙 芥川
おんぶしている絵があったらそれはきっとこの伊勢物語絵の亜流と考えて間違いないようです。当時誰しもそういった作品を目にし「芥川」のことを想起できたのでしょう。そう考えると現代って…

「芥川」絵については以前書いたこちらの記事も。
Run away to the left

また杉村治兵衛の「立美人図」に描かれた遊女の小袖の柄にやはり伊勢物語絵がさりげなく描き込まれています。遊女故に多様な恋物語を綴った伊勢物語を着物の絵柄として積極的に取り入れたのでしょうか。


駆け足でざっと講演会の様子ご紹介しました。「王朝の恋―描かれた伊勢物語―」展は出光美術館にて2月17日まで開催されています。まだ行かれていない方是非!それと前期に行かれた方、展示替えされ色紙も違う場面のものとなっています。これまた是非!

「王朝の恋―描かれた伊勢物語―」展、前期の感想はこちら

【関連エントリー】
- 弐代目・青い日記帳 | 「嫉妬」
- 弐代目・青い日記帳 | Run away to the left
- 弐代目・青い日記帳 | 井戸辺の恋
- 弐代目・青い日記帳 | 「近代日本画 美の系譜」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「ロートレック展」


伊勢物語
「伊勢物語」 中村 真一郎

それと、今日出来たばかりの「展覧会案内」を頂戴しました。
2008年4月5日(土)〜6月1日(日)
柿右衛門と鍋島 ―肥前磁器の精華―
2008年6月14日(土)〜8月17日(日)
没後50年 ルオー大回顧展
2008年9月6日(土)〜10月26日(日)
出光コレクションによる 近代日本の巨匠たち
―上村松園・東山魁夷・佐伯祐三・板谷波山・富本憲吉・平櫛田中―

2008年11月1日(土)〜12月23日(火・祝)
やきものに親しむVI 陶磁の東西交流
―景徳鎮・柿右衛門・古伊万里からデルフト・マイセン―

2009年1月10日(土)〜2月15日(日)
文字の力・書のチカラ―古典と現代の対話
2009年2月21日(土)〜3月22日(日)
近代日本画のロマン 小杉放菴と大観
―響きあう技とこころ―


注目はすべきは「出光コレクションによる 近代日本の巨匠たち―上村松園・東山魁夷・佐伯祐三・板谷波山・富本憲吉・平櫛田中―」展。持っているのですね、出光さん、近代絵画も…
上村松園「

小杉放菴も要チェックですね。

【関連エントリー】
- 弐代目・青い日記帳 | 「出光美術館名品展 II」(後期)
- 弐代目・青い日記帳 | 「出光美術館名品展 機
- 弐代目・青い日記帳 | 「出光美術館名品展 II」
- 弐代目・青い日記帳 | 出光美術館フリーパス
- 弐代目・青い日記帳 | 「国宝 風神雷神図屏風展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「ルオー展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「青磁の美展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「仙僉Ε札鵐イ・SENGAI 」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「肉筆浮世絵のすべて展」(後期)
- 弐代目・青い日記帳 | 「国宝 伴大納言絵巻展」


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1278

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この記事に対するコメント

 Tak先生のblog講義 第二段
水曜講座の内容解説を パワポも画面に取り入れ
とてもわかりやすいです。
よく予習して5日楽しみに後半行ってきます♪
講義第三段を期待しています。
panda | 2008/01/31 12:52 PM
私は朝から講演会に行く気満々で準備していたのに急に行けなくなり、
「きっとTakさんがレポを書いて下さる!」と祈るような気持で頁を
開くと…ありました〜素晴らしい! ありがとうございます、ううっ(゜―Å)

次年度のラインナップにも心躍ります。 会員更新します♪
山桜 | 2008/01/31 6:55 PM
@pandaさん
こんばんは。

ここのところ、出かけた講演会の記事
書かずに流してしまうこと多いので
これは帰宅してすぐ取りかかりました。

私もあと二回は行きます。
こういう時、ここの会員になっていて
良かったと思います。

pandaさんの感想楽しみにしています。

@山桜さん
こんばんは。

講師の先生のお話の半分も
伝えられていないかと思いますが
ご勘弁下さい。日本画は画像が
少なく苦慮します。

会員更新しました!
こことサントリーさんは会員になる価値
大いにあると思います。
Tak管理人 | 2008/02/01 10:17 PM
こんばんは。伊勢物語の世界、こんなに奥が深いとは知りませんでした。レポートありがとうございます!
別無工夫 | 2008/02/03 10:59 PM
@別無工夫さん
こんばんは。

源氏物語にも直接影響与えている作品ですからね。
さてそろそろ真打登場ですね。
出光美術館に。
Tak管理人 | 2008/02/04 12:17 AM
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