弐代目・青い日記帳 

  
TB&リンク大歓迎です!
「芳年・芳幾の錦絵新聞」展
千葉市美術館で開催中の
「芳年・芳幾の錦絵新聞−東京日々新聞・郵便報知新聞全作品−」展に行って来ました。



昨年の今頃、講談社現代新書から出された石原千秋氏の『百年前の私たち――雑書から見る男と女』には目を通されましたでしょうか?

テクスト論の立場から夏目漱石研究をなさっている第一人者である石原千秋氏がある時「漱石の書き込んだ風俗は、当時どんな意味を持っていたのか」また「漱石の時代の読者は、漱石の小説をどんな風に読んだのだろうか」などが気になり漱石が生きた時代の雑書2000冊を集め、その当時の「常識」と現在の「常識」との違いなどを丹念に浮き彫りにした一冊です。

しかも「男と女」にテーマを限定して書かれているので読みやすい事は自明。

 この連載は近代文学や近代史に興味を持つ人に読んでもらいたいと願って書いていた。
 近代文学は「大衆」を好んで書いてきたし、「大衆」によって読まれてきたから、「大衆」の心性や「大衆」が社会から求められていた規範を知っておくことは、近代文学を読むために大いに役立つだろうと思ったからだ。しかし、書いているうちに、近代史は「大衆」を、「大文字の歴史」と「民衆史」との間に置き去りにしてきたのではないだろうかと思うようになってきた。「大衆」を書いた歴史はあまり多くはない。少しばかり大風呂敷を広げれば、近代史の空白を少しでも埋められればとも願って書くようになっていたわけだ。
 しかし、もっと読んでほしい人がいる。僕はこの本を、自分が「大衆」だとほんの少しでも自覚している人に届いてほしいと願っている。あるいは、「大衆」とはどんな言説によって語りかけられる存在なのかを知りたい人にも届いてほしいと願っている。僕たち「大衆」はこんなふうに語りかけられながら、そしてこんなことを考えながら「近代」を懸命に歩んできたのだ。その歩みを知ってほしいと思う。いや、思い出してほしいと思う。
百年前の私たち――雑書から見る男と女
「百年前の私たち――雑書から見る男と女」 石原 千秋

新書本は一読するとすぐさま、本棚へ押し込んでしまうのですが、石原千秋氏のこの本と福岡伸一氏の「生物と無生物のあいだ」だけは昨年、二度読み返した数少ない本のうちの二冊。どちらも講談社現代新書だったのは偶然。珍しいことかと。
フェルメールの「合奏」が出てくるのには驚きました…
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書 1891) 福岡 伸一

前置きが長くなりました。「百年前の私たち」が「雑書から覗く明治・大正時代」だとするならば、今回観てきた「芳年・芳幾の錦絵新聞」展は「錦絵から覗く明治時代」

さて、錦絵とは何か?チラシの裏面にこう書かれていました。
錦絵とは、江戸時代中期に完成された多色摺り浮世絵版画のことです。したがって江戸時代中・後期の浮世絵版画はほとんどすべてが錦絵ということになります。錦絵新聞とは、錦絵の形態で出された新聞のことですが、見方を変えれば、ひとつの新聞記事を取り上げて、錦絵に仕立てたものということもできます。錦絵の判型である大判・中判といった形で、絵草紙屋から刊行されました。

てっとり早く例えるなら現在の写真週刊誌のようなものかと。
無駄に裸のお姉さんのグラビアとかはありません。
でもその代わりに2,3枚に1枚は血が飛び散っているスプラッター系ネタ.

「こんな残忍な事件があったとさ」と解説は至って淡白。
事件の内容と語り口のギャップからどうしても笑いが。。。

今回の展覧会には錦絵新聞でも当時の人気を二分した「東京日々新聞」と「郵便報知新聞」。二紙を合わせると発行部数の約7割にあたるそうです。ほとんどこの二紙の寡占状態。

一時はあまりの人気で摺りが間に合わないこともあったとか。今の時代考えたらこれだけ多くの人に読まれ、影響力のある紙メディアって存在しません。

それにしても、この展覧会は見応え、読み応えがあります。
何せ「東京日々新聞」だけでも114枚も展示されているのです。
錦絵を見ながらそこに書かれた記事(文字)まで全部読むと
そうだな〜軽く二時間は時間を要するでしょうか。

「そんなの飛ばし読みしちゃえば、いいじゃん」と思いきや
これが、一枚一枚の話が完成度高く?ついつい読んでしまいます。
「そんな話ねーよ!」と展示室で突っ込み入れている自分に出会えるはず。


志摩の国は甲賀の浦に、全身海草と牡蠣の付いた「鰐」が棲み、船を転覆させては人を襲っていた。ある時、沖合で火事に見舞われた船の乗組員全員がこの化物に呑まれてしまったというもの。本物の鰐なのかどうかは不明らしい。

最後の一文がいいでしょ「不明らしい。」
文末がいい加減な伝聞推定で終わっていること多々。
こんなことで突っ込み入れていると身が持ちません。

「昔の人は呑気でよかったな〜」などと語ること勿れ。
現代の我々が得ている「情報」だって実は大差ないですから。
100年やそこらじゃ人間変われるものではないことよく分ります。

不倫や怨恨はたまた殺人などを伝える錦絵も多数ありました。
突っ込み入れながら笑っている自分の顔が錦絵の中の人物と
入れ替わっていても何らおかしくありません。

約100年前の錦絵に描かれた人たちと現代の我々の違いって一体何なのでしょう。



「東京日々新聞」の展示が終わると間髪入れずにすぐさま「郵便報知新聞」の展示が同じが待ち構えています。分量は若干少なめですが、それでも60枚以上はあります。美術館の閉館時間午後6時ですが、少なくともその二時間前には展示室入っていないと観きれません。ご注意を。

そして、実は更に…(明日、書きますね)

それでは、「今日の一枚



病気の老母の望みで、深い谷底へ氷を求め、
険しい谷を下る孝行息子の行いを伝える錦絵。

あまりにも美談過ぎて穿った見方しちゃいます。
裏がありそうでコワイ.

「芳年・芳幾の錦絵新聞−東京日々新聞・郵便報知新聞全作品−」展は千葉市美術館で3月2日まで開催されています。

千葉市まで遠くて行けない!という方に朗報。
千葉市美術館さんからこんな本が発売になっています。
文明開化の錦絵新聞―東京日々新聞・郵便報知新聞全作品
文明開化の錦絵新聞―東京日々新聞・郵便報知新聞全作品
 錦絵新聞は明治初期、新聞記事から殺人、珍事件、美談などを拾った錦絵の一種だ。好奇心に満ち、時には猟奇に至るほど血なまぐさい。幕末の動乱が記憶に新しかったからか。だが全国の出来事を臨場感たっぷりに伝えており、日本や世界の広がりを読者に実感させたはず。開化の時代を体現するメディアなのだ。
 千葉市美術館(同市中央区)への寄託品を中心に、錦絵版「東京日々新聞」と同「郵便報知新聞」の現在知られる全点を収録し、本文を翻刻する。それぞれ絵を担当したのは浮世絵師の芳幾(よしいく)と芳年。


おまけ
明治はちょっと古すぎるな〜という方。こちらは如何>
戦後少女マンガ史 (ちくま文庫 よ 19-1)
戦後少女マンガ史 (ちくま文庫 よ 19-1) 米沢 嘉博

カルチュラル・スタディーズのテキストとしてもどうかな〜

それでは最後に「今日の美味


蜂の巣入りの蜂蜜
倫敦帰りの知人から頂いたお土産。
蜂の巣も食べられるとか。
次の休日パディントンと一緒に紅茶でも飲みながら。
thank for your kindness.

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1297

JUGEMテーマ:アート・デザイン


明治7年に創刊された錦絵新聞「東京日々新聞」と翌8年に創刊された錦絵新聞「郵便報知新聞」は明治期の錦絵新聞の双璧として名高いものです。
千葉市美術館には、リッケンコレクションという、幕末から昭和にいたる版画作品2000点余が寄託されており、中でも明治期の錦絵新聞は非常に充実しています。
本展は、東京日々新聞と郵便報知新聞の大判作品を一堂に展示し、錦絵新聞が流行した時代を考えるとともに、二つの錦絵新聞を担当した浮世絵師、大蘇芳年(たいそ よしとし)と一澪慄Т(いっけいさい よしいく)の絵を比較鑑賞してみようというものです。
新発見の「郵便報知新聞」第614号、第1272号のほか、「東京日々新聞」の錦絵114点(1点はパネル展示)、「郵便報知新聞」の錦絵62点(2点はパネル展示)の計176点を、一堂にご覧いただける初めての稀少な機会となります。


| 展覧会 | 23:10 | comments(5) | trackbacks(4) |
さすがですね。あの文章を全作品読まれるとは。
私なんぞ、すべて読んだら1日じゃ終わりません。
だから絵だけを眺めてました。当然、内容が分からない
ものも多かったです。
でも、芳年、スプラッタあり、色っぽい絵もあり、
楽しめました。
| 一村雨 | 2008/02/19 6:07 AM |

こんばんは。
私にとっては、1999年の『ニュースの誕生』(東大総合博物館)、2001年の『幕末明治ニュース事始め』(名古屋松坂屋)以来の大規模な新聞錦絵展で、時間を忘れて堪能しました。
関西の方は、伊丹市立美術館の「所蔵品展」(3/31まで)でも大阪の錦絵新聞が見られますよ!


| jchz | 2008/02/19 11:44 PM |

@一村雨さん
こんばんは。

疲れました。
へとへとです。
でも充足感あります。
lysanderさんとは比較になりませんけどね。

図録買おうか悩みました。
家で読んでも面白いかと思いとどまりました。

@jchzさん
こんばんは。

かなり早い時期からご覧になられていらしたのですね。
先見の明ありです。まさに。
「もっと知りたい国芳」が上梓されました。
江戸から明治にかけてのこの時期
すっぽり抜けているのでこれから沢山学びたいと思います。
| Tak管理人 | 2008/02/20 6:01 PM |

いつも&いつも楽しい情報有り難うございます。

芳年、好きなんですよ〜。「文明開化の錦絵新聞」も購入はしてないのですが、時々、図書館で眺めています。部屋には、新形三十六怪撰「さぎむすめ」のポスター貼ってありますし・・・(笑顔)。

なんとか、観に行きたいものです。最近、休日は食べ歩きばかりで美術館にちっとも行っておりません。困ったものです(苦笑)。寒さのせいか出不精のようです。

しかし、千葉かあ〜。今週末は梅祭りに行く予定なのですが、うまく絡めて行けるといいのですが・・・?  
| alice-room | 2008/02/20 11:14 PM |

@alice-roomさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

よい本をゲットしましたね!
それにしても中身がすごい。
ここまで描くか〜って感じですね。

「もっと知りたい」シリーズで
国芳が出版されました。
早速読ませてもらいましたが
血みどろではありませんが
流石師匠というだけの迫力はあります。

梅の花もぼちぼち咲き始めましたね。
水戸まで出かけて宮島展を観てくるのも
いいかな〜と思っています。
| Tak管理人 | 2008/02/21 11:47 PM |










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千葉市美術館で「芳年・芳幾の錦絵新聞」展を観る!
千葉市美術館は大谷幸夫の設計によるもので、ルネサンス様式の旧川崎銀行千葉支店を改修・保存し、そのまわりを建物で覆うという方式で建てられたものです。この手法は神社の本殿を包み込む形式である「鞘堂」にちなんで「鞘堂方式」と呼ばれています。そして遺されたホ
| とんとん・にっき | 2008/02/19 12:01 AM |
芳年・芳幾の錦絵新聞  千葉市美術館
明治初めの錦絵新聞。今で言えば、写真週刊誌の1ページといった感じのものでしょう。「東京日々新聞」は芳幾、そして、「郵便報知新聞」は、芳年の浮世絵。歌川国芳門下の兄弟弟子の対決です。どちらも、殺人とか強盗とかの犯罪場面が多いのは、今も昔も同じこと。いか
| つまずく石も縁の端くれ | 2008/02/19 6:04 AM |
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特集:危うい浮世絵師 血まみれ芳年、参上 もう大好きな芳年なんで迷うこと無く即、買いです(満面の笑み)。映画などはスプラッターとか大嫌いなんですが、何故か、芳年のものは好きなんですよねぇ~。画集も持っているし、展覧会に芳年があれば、まず出掛けて行っち
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編集・執筆を務めた『カフェのある美術館 素敵な時間を楽しむ』(世界文化社)が2月18日に発売になります。


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