青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< April 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(MMF)5周年 | main | 『東京人』江戸のダンディズム >>

「熊谷守一展」

埼玉県立近代美術館で開催中の
「没後30年 熊谷守一展― 天与の色彩究極のかたち ―」展に行って来ました。



待ちに待った熊谷守一の回顧展。
昨年秋から萬鉄五郎記念美術館、高梁市成羽美術館、天童市美術館を巡回しやっと関東までやって来ました!(埼玉が最後の巡回地)

2月2日から始まったこの展覧会、行かねば行かねばと思いつつひと月過ぎてしまいました。今日(5日)「よし!行こう!」と思い立たせてくれたのは他ならぬウィッキーさん。そう昔「ズームイン朝」の名物コーナー「ウィッキーさんのワンポイント英会話」を担当していたあのウィッキーさんです。

今朝普段通り、出勤の支度をしているとテレビからあの懐かしい声がするではありませんか。何でも今日、日テレ系朝の情報番組「ズームイン!SUPER」は放送開始30年目を迎えたとのこと。そのお祝いに一日限定で「ウィッキーさんのワンポイント英会話」が復活したのでした。

普段テンション低い朝も今日だけは、かみさんとテレビの前で「懐かし〜」の連呼。小さい頃、いつ街角でウィッキーさんに話しかけられてもいいように「マイネームイズTak」だけは言えるように心の準備していたことや、遅刻すると「ウィッキーさんにインタビューされていたから」と言い訳していたことなどが洪水のように頭の中駆け巡り興奮状態。

その懐かしのウィッキーさんと「熊谷守一展」がどう関係あるかというと。。。何と今日一日限定で復活した「ウィッキーさんのワンポイント英会話」でウィッキーさんが“出没”したのが他ならぬ北浦和駅西口だったのです。


北浦和西口この場所で今朝インタビュー受けていました。
この先にある北浦和公園内に埼玉県立近代美術館があるのです。

これも何かのご縁?お導きかと勝手に思い込み、午後から仕事抜け出し行って来た次第。ウィッキーさんありがとう〜?!

前説長くなり過ぎました。。。展覧会の感想をば。

今回の展覧会の構成は以下の通り。
第1章 形をつかむ
第2章 色をとらえる
第3章 天与の色彩
第4章 守一の日本画
第5章 変幻自在の書




「第1章 形をつかむ」「第2章 色をとらえる」そして第3章のはじめまでは我々がよく知るところの熊谷守一(くまがい もりかず1880年4月2日 - 1977年8月1日)風の作品を観ることはできません。まだその独特の画風を確立する以前の作品が40点ほど展示されています。

東京美術学校在籍時代に描いた自画像。
1904年(明治37)

青木繁と同窓だったこと今日初めて知りました。作風似ているように思えてきます。外光派の黒田清輝、藤島武二らの指導を受けたとは思えない作品が数点まず出迎えてくれます。所謂「熊谷守一」風の作品を期待してきた自分にとってまずここで軽いショックを受けました。

ランプ」(1910)という作品などタイトルを見ないと何が描かれているのか判別できないほど、極弱い光の下で描かれた作品です。「わずかな光に浮かび上がる対象を正確に写し取ろうとした」と解説にありました。

ラファエル・コランから学びとったやわらかな光り降り注ぐ草原の上に寝転ぶ女性像を描いた黒田清輝を師に持ちながら、まるで外に出ることを一切拒むかのように暗い室内に閉じ籠りひたすら「ランプ」を凝視した鋭い目つきが「自画像」にもよく表れています。そして光に頼らない対象の形態をしかと見極める「眼」が齢60を過ぎあの独特なスタイルの確立に結びつくのかと。

「自画像」の隣に展示されていた「蝋燭」(1909)という作品もまた自身を描いた作品でしたが、そこには蝋燭のかすかな光に照らし出された熊谷の「自分は自分の道を歩むのだ」という強い意志が全面にみなぎっているようでした。

一つだけ苦言を呈するとするなら、照明が明るすぎたこと。
普段はあまり気にしないのですが今回は作品が作品だけに勿体無いなーと。
第1章だけでも少し照度落としてくれれば作品の良さよく分かるかと思います。


熊谷が一時帰省していた現在の中津川市が所蔵する「」(1910-15)という作品は、行きとし生けるものへの惜しみない愛情と畏敬の念すら感じさせる晩年の生き物を描いた作品と是非並べてみたい一品でした。

第2章にはのちの熊谷夫人を描いた「某婦人像」(1918)やゴッホのひまわりを斜め下から見上げ大胆にトリミングを施したような「ひまわり」(1928)などが印象的でした。

ただし、このセクションで最も目を惹いたのは「大島」(1935)という作品。
白い波が打ちつける海岸線を描いた風景画ですが、手前の陸地には判別不能な色とりどりの丸い模様が描かれています。家の屋根なのか、はたまた畑なのか。解説には「作品はしだいに対象の形態を失い、輝く色の塊として表現されていきましたが、こうした作品は仲間たちに失望を与えるばかりでした。」とありました。

産みの苦しみとでもいいましょうか。こういった時期を経てこそ守一様式の確立があったと今になって考えれば理解も出来ましょうが、当時昭和10年ではあまりに前衛過ぎ周りの理解を得るのは確かに困難だったと思います。それでもこの作品は一見の価値ありです。「大島」要チェックです。

ふと、福田平八郎の作品群が頭に浮かんできました。
熊谷と福田の関係はどのようなものがあったのでしょうか。
とても気になります。

第3章 天与の色彩 究極のかたち

お待たせいたしました。
ここから熊谷守一ワールド突入です。


」1938年

熊谷の描く風景画が何点かまず展示されていました。
一通り眺めているとある点に気がつきました。
キャンバスの縦横比率が他の画家さんが描く風景画と若干違うように感じます。

50mmの標準レンズが人間の肉眼に近い45度前後の画角を持つと言われていますが、どうも熊谷の目は視野角がもう少し狭かったのではないかと思わせる作品ばかり。初期の頃薄暗い光の元対象を凝視し姿を映し取っていたその「なごり」なのでしょうか。

さて熊谷は76歳の時、軽い脳卒中の発作を起こしたそうです。それ以降、自宅の敷地内の草花や昆虫たちを来る日も来る日も観察し見つめ続けそれを「単純化」しキャンバスに写し取っていたそうです。

 
かまきりとひがん花」「豆に蟻」共に1958年

 
ほたるぶくろ」「」共に1961年

熊谷曰く「大好きなもの。特に小さな子供と鳥と虫には目がありません。

古来、日本人は小さきものに対し無条件に愛情を注いできた民族です。
1000年前の清少納言も『枕草子』の中で「うつくしきもの」(かわいらしいもの)と題しこう述べています。

 うつくしきもの瓜にかきたるちごの顔。雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひ来る道に、いとちひさき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなるおよびにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。頭は尼そぎなるちごの、目に髪のおほえるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見たるも、うつくし。

この小さき命へに対する無類の愛が熊谷の描く作品全体から滲み出ています。
徹底的に平面化された作品はまるで清少納言の書いた文の生まれ変わりのようですらあります。もうある種の文学作品とでも言えましょうか。

そして注目すべきは背景色です。
↑にあげた4作品もすべて背景の色が違っています。
基本的には茶色系の色(=地面の色)が多いのですが、時としてそれは葉っぱの色にもなり、時としてそれは季節を表す色ともなっています。

時に目の前に存在する「大気」までをも平面化してしまっているのです。

これらに加え「第4章 守一の日本画」「第5章 変幻自在の書」と合計200点もの作品が一堂に会し熊谷の足跡を見渡すことのできる素晴らしい展覧会です。

「没後30年 熊谷守一展― 天与の色彩究極のかたち ―」展は23日まで。

それでは「今日の一枚


冬の夜」1964年

震えがきます、身震いしてしまいます。思わず。
この絵のあまりの無駄のなさとそして的確に表現した冬の夜の寒さに。


まだまだ紹介したい作品たーーくさんあります。
見ごたえ、物語性ともに十分満足できる展覧会です。
ちょっと北浦和までは遠いかもしれませんが、お時間あれば是非。

北浦和西口で突然「グッモーニン! マイネームイズウィッキー。メアイアスク ユアネイムプリーズ?」なんて声かけられるかもしれませんよ!

「埼玉までは無理!」という方は別冊太陽が超お勧めです。
図版や写真も沢山掲載されています!
熊谷守一―気ままに絵のみち (別冊太陽)熊谷守一―気ままに絵のみち (別冊太陽)へたも絵のうち (平凡社ライブラリー) ひとりたのしむ―熊谷守一画文集 熊谷守一の猫 蒼蝿 独楽―熊谷守一の世界 by G-Tools

最後に「今日の美味


MOCHI CREAM
熊谷見習ってシンプルなデザート選んでみました。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1314

JUGEMテーマ:アート・デザイン


「いま何をしたいか、何が望みか」とよく聞かれますが、別に望みというようなものはありません。だがしいて言えば、「いのち」でしょうか。もっと生きたいことは生きたい。− 熊谷守一がこう語ったのは91歳のときです。
1880年岐阜県に生まれた熊谷守一(くまがい・もりかず)は、その後97歳まで作品を描き続け、1977年にこの世を去りました。この画家は、身の回りにあるあたりまえのものを厳しく、また、いとおしむような優しいまなざしで観察しながら日々を送りました。
見つめ続けることから創り出された単純かつ絶対的な「かたち」と、持って生まれたまなざしが決定する「いろ」。このふたつを駆使し、守一は折々の風景や花や小さな生き物たちを描いたのです。こうして生まれた熊谷守一の世界は、今日もなお、みずみずしい生命のよろこびを私たちに伝えます。
この展覧会では、熊谷守一の没後30年を記念し、初期から晩年にいたる124点の油彩画に、日本画33点、書16点をあわせてご紹介いたします。

展覧会 | permalink | comments(11) | trackbacks(5)

この記事に対するコメント

こんばんは。本当に良い展覧会でしたね。
「大島」は後の守一様式へ進む、一つのターニングポイントだと思いました。あのタッチと色遣い、試行錯誤のどこか苦しみのようなものも感じます。

>この絵のあまりの無駄のなさとそして的確に表現した冬の夜の寒さに。

同感です。空に突き刺さるような枯木の寂寞感が何とも素晴らしいですね。

>マイネームイズTak」だけは言えるように心の準備

やはりそうですよね。突如、出没されたらどうしようかと、ありもしないことを色々と考えていました。
しかし何故に北浦和…。
はろるど | 2008/03/06 12:43 AM
こんにちは、
つい最近ポーラ美術館で熊谷守一のことを知って、
もっと見たいとは思ったのですが、
北浦和の遠さに諦めてしまいました。
見ごたえがありそうですね。

「別冊太陽」で特集が出ているのですね、早速買いたいと思います。
教えてくださってありがとうございます。
よめこ | 2008/03/06 12:46 PM
@はろるどさん
こんばんは。
TBありがとうございました。

大島の手前にある丸は何なのでしょうね。
ああいった絵を経て「守一」らしい作品が
生まれたとなると欠かすことのできない
一品だと思います。

「宵月」と「冬の夜」どちら一目観ては
夜の闇を描いているように思えませんが
観ているとすぐさま、ああこういった表現も
できるのだ〜とただただ感心するばかり。

ウィッキーさんの自宅の近くなのでしょうか?
何故北浦和??

@よめこさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

揺らぐ近代という展覧会で以前
守一の鯉の絵を観て衝撃受けました。
こんなのありかと。

晩年暮らしていた豊島区に
熊谷守一美術館があるそうです。
今度はそちらへも出かけてみようかと思います。
Tak管理人 | 2008/03/06 5:06 PM
お久しぶりです。
熊谷守一が大好きで日本にいるこる展覧会を見ています。
どこでだったか忘れましたが、もうふた昔以上前の話です。
『へたも絵のうち』と言う本を読んでさらに好きになった記憶があります。
毎日奥様に学校に行ってくるとアトリエに行く話があったようだった。
彼の絵にはいつも心打たれます。
seedsbook | 2008/03/06 10:58 PM
ウィッキーさん、懐かしい!
コンドルもいつも、ウィッキーさんが最寄駅にいないか
キョロキョロしていたものです。
ズームイン朝から、もう30年が経つのですね!!
熊谷守一展。ウィッキーさんのお導きだったのかもですね。
コンドル | 2008/03/06 11:18 PM
熊谷守一の魅力全開の展覧会でしたね。
それにしても若い頃の作品は別人のようでした。
あれはあれで魅力的ですが。
写真も良かったですよね。あの長ーい髭・・。
ogawama | 2008/03/06 11:43 PM
こんばんわ。
まさかウィッキーさんに導かれて行かれてるとは。。。

守一はあの馬をかわいがっていて、本人の知らない間に売られてしまいひどく悲しんただという解説が印象的でした。

にしても、あのにゃんこってエイリアンな顔だなあって思います。
あおひー | 2008/03/07 1:21 AM
亡くなられる前のお嬢さんの肖像画やお嬢さんの字体を模した書から画家の人柄を偲ぶことができました。
とら | 2008/03/07 9:16 AM
@seedsbookさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

熊谷守一の展覧会は観たい観たいと
思っていました。今回念願かない
とっても嬉しく今でもうきうきしています。
学校に行くとの会話、ありましたね。確かに。
ほのぼのとしていていい感じです。
幸せな人生の解釈がまたひとつ増えました。

@コンドルさん
こんばんは。

コンドルさんならウィッキーさんに
負けないくらいの流暢な英会話できるのでは?
しかし30年なんてあっという間ですね。
おじさんくさいこと言っていますが
立派なおじさんですからね、もうすでに。

@ogawamaさん
こんばんは。

全快でした。
学生時代の絵と娘さんを描いた絵など
大変印象に残り心に響きました。
写真とコメントが愉快でしたね〜
仙人のようでした。まるで。

そうそう、今夜レントゲンでイイ男発見!

@あおひーさん
こんばんは。

まさかまさかです。。。
きっかけないと動かないので。
助かりました。ありがとうウィッキーさん!

お兄さん酷いことしますよね。
ドナドナ♪

猫がエイリアン顔との指摘ごもっとも!
慧眼です。髭なし猫ちゃんはエイリアンか〜

@とらさん
こんばんは。

娘さんの顔を描いたリアルな作品は
はっとさせられるものありました。
やはり何か心に持っていないと駄目ですね。
絵筆は雄弁です。
Tak管理人 | 2008/03/07 10:57 PM
こんにちは
所謂モリカズ様式の絵を見ると、安心したりしました。
初期からの変転は物凄いな、と思いました。
それにしても自宅を楽園として三十年、そのなかでの制作は本当に見事やなーとため息です。
おじいちゃんになってからの風貌の好さにも惹かれました。
遊行七恵 | 2008/03/09 12:11 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。

初期があってこそああいった作品が
描けたのだろうかと想像しました。
どうなのでしょう、つながり的には。

自宅はすごかったですね。
ゴーギャンもタヒチなんぞ行かずに
自宅で暮らせばよかったのに〜
楽園なんて意外と近くにあるものです。
Tak管理人 | 2008/03/10 9:29 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
この記事に対するトラックバック
埼玉県立近代美術館(さいたま市浦和区常盤9-30-1) 「没後30年 熊谷守一展 - 天与の色彩 究極のかたち - 」 2/2-3/23 一人の画家を回顧するのに、その『手本』ともなるような展覧会です。油彩(124点)、日本画(33点)、さらには書(16点)など計170点以上の作品に
「熊谷守一展」 埼玉県立近代美術館 | はろるど・わーど | 2008/03/06 12:38 AM
北浦和の埼玉県立近代美術館で開催中の熊谷守一展に行った。実は特に好きな画家ではな...
熊谷守一展 | confidential memorandum of ogawama | 2008/03/06 10:48 PM
熊谷守一とあっては行かない訳にはいきません。 ということで連休の最終日に北浦和にある埼玉県近代美術館へ行ってきました。 チラシもあざやかです。 チケットは白猫です。 シンプルでいいんんですよね、フォルムも色彩も。 {/star/}雨水 これ、衝撃でしたよ。
熊谷守一展(埼玉県近代美術館) | あお!ひー | 2008/03/07 1:15 AM
 独特な色面を持つこの画家の作品はどこの展覧会でも異彩を放っている。回顧展が開かれたので初日に観にいってきた。没後30年展として、昨年9月より萬鉄五郎記念美術館→成羽町美術館→天童美術館と巡回してきたものである。平成19年度公立美術館巡回展支援事業の助
熊谷守一展 @埼玉近代美術館 | Art & Bell by Tora | 2008/03/07 9:17 AM
先月、はろるどさんと埼玉県立近代美術館へご一緒した。 熊谷守一展を見た。 ご一緒する方の感性が鋭いと、こちらも良い具合に引きずられて...
熊谷守一展 | 遊行七恵の日々是遊行 | 2008/03/09 11:43 AM