青い日記帳 

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「建築の記憶」展

東京都庭園美術館で開催中の
「建築の記憶―写真と建築の近現代―Remembrance of Places Past Japanese」展に行って来ました。



サクマドロップスのような展覧会です。


なつかしいみんなが知っている。イチゴ、レモン、オレンジ、パイン…色々な味が楽しめる(ハッカは苦手だったけど)。一度は接したことがある。etc…そんな幾つかの類似点がこの展覧会を観終えた後に頭の中にふわふわと。

とても満足度の高い展覧会の構成は以下の通り。
1章:建築と写真との出会い
2章:近代建築へのまなざし
3章:建築史学構築のための写真
4章:写真がとらえたモダンの相貌
5章:写真家の目、建築家の仕事
6章:日本建築の美
7章:現代写真の建築


衣食住すべてにおいて、幕末後およそ150年の間にまるで別の国のように変貌を遂げてしまった日本。その変貌がめちゃめちゃ能動的であったのも他の国に類を見ない点。生活スタイルをこれだけ短期間に変えられるのはちょいと異常なこと。

その劇的な変化の中で取り壊されてしまった建物、新しく作られた建物をいい塩梅に織り交ぜて展示がなされています。明治村やたてもの園のように現物を公開することはできない代わりに「写真」でそれらを紹介。

「写真」と「 」で括ったのも意味があり、展覧会サブタイトル「―写真と建築の近現代―」にもあるように、建築だけでなく写真もまた今回の目玉のひとつ。

例えば現在ならCGを駆使し画面上でその建物の様子を伝えることできますが、それ以前は写真が長いことその重責を担ってきたわけです。またCGでは伝えることのできない建築物の魅力を最大限に引き出す新たな役割も写真は負っています。


鈴木理策「青森県立美術館」(青木淳設計)
杉本博司、畠山直哉などの写真作品も展示されています。

また「3章:建築史学構築のための写真」では、伊東忠太の仕事が紹介されています。建築史学に写真を積極的に用いた様子がうかがえるとともに伊東の驚くべき図案集などを観ることができます。メモ帳がそのまま立派なデザイン本となるくらい詳細に且つ丁寧に描き込まれているのにはこれまた驚嘆。

→参考:伊東忠太の「妖怪趣味」

順序が逆ですが、展覧会のはじめに島津斉彬が写した熊本城の写真が展示されています。正直このお城の写真には大きな衝撃を受けました。今の時代お城といえば地方都市の観光名所か市民公園の一部として残っているだけです。

要は毎日の実生活とは乖離した存在。
しかし江戸時代まではお城は町の中心であり密接に生活と結びついていた切っても切れない存在だったわけです。良くも悪くも。そんな当たり前のことを「熊本城」の古ぼけた写真はあらためて認識させてくれます。

こちらは展示されていた写真ではありませんがこんなイメージです。
江戸城
熊本城の写真はこれよりももっと衝撃的です。一般庶民の家々や畑のある「ケ」に囲まれたお城。もうこれからは今までと同じ感覚でお城を気軽に観ることできないかもしれません。

熊本城や江戸城などの褪色した写真が展示されている第一展示室

昭和8年竣工時の写真だそうです。
この展覧会の魅力の一つはやはり「場所性」
庭園美術館だからこそ生きる展覧会です。巡回はしないそうです。
もし国立新美術館で開催してたら……なん考えるだけでも野暮なこと。

6章:日本建築の美

石元泰博「桂離宮
懐かしさを一番感じたのは実はこの写真でした。
1993年に桂離宮をはじめて訪れました。
今と違いネットの予約ではなく宮内庁に往復はがきを出してお願いしていた頃。
得てして「昔」は懐かしいもの。そして「昔」を懐かしんでしまうのは
今があまりにも慌ただしいから。まさか庭園美術館で逃避できるとは。

しかし不思議なものであと10年もしなううちに今が昔となり
「昔」は良かったな〜としみじみ思うもの。
1993年当時だって実は大変だったことじわじわと思いだして来ました…

「建築の記憶」とはよく名づけたものだとひたすら感心。

お見せするのも恥ずかしいですが、当時撮影してきた桂離宮です。


因みに桂離宮をべた褒めしたドイツ人建築家ブルーノ・タウト。「東京都庭園美術館ニュース」にもその事しっかり紹介されています。

桂離宮行かれたことある方もない方も、一度、亀井勝一郎の「私の美術遍歴」をお読みになられることをお勧めします。痛快です。

「時々ボチャンという音がする。亀が水中に入る音だ。この音こそ、日本的な美だと、ブルーノ・タウトは、繰り返し書いている。異邦人の感覚は妙なものである。そんな音など全然面白くない。」「私の美術遍歴」亀井 勝一郎

最後は辰野金吾が手がけた東京駅の駅舎の建築写真で。
これは大変タイムリー.なぜなら今、東京駅は大修理中なのです。


包帯を巻いた綾波レイのごとく、丸の内口はぐるりと白いフェンスで覆われています。その白いフェンスに「東京駅の歴史」が紹介されていて、ここにまさに庭園美術館で展示されているのと同じ写真が掲載されているのです。



天気の良い日であれば、途中下車して観てくるだけの価値あります。新東京ステーション・ギャラリーなどの情報もありました。改築が終了すると外観もかなり今と変わるそうです。辰野が手がけた頃のドーム屋根が復活するとか。。。東京駅の「建築の記憶」残しておくなら今です。

サクマドロップスのような「建築の記憶―写真と建築の近現代―」展は3月31日まで。「リピーター割引」(2回目以降の来館時にチケットの半券を提示)「ドレスコード割引」(「建築のある風景(建築物や町並みの模様)」が入った服装での来館)がありそれぞれ、団体料金で入館することができるそうです。

西洋館を楽しむ カラー版 (ちくまプリマー新書 68)
西洋館を楽しむ カラー版 (ちくまプリマー新書 68) 増田 彰久

それでは最後に「今日の美味


espressamente illy」の「ブラッディーオレンジ・ジュース

おまけ
お城と言えば姫路城。国宝でもあり世界遺産でもあります。
その姫路城に関してこんなニュースがありました。
姫路城に覆いすっぽり 来秋から「平成の大修理」へ

 世界文化遺産・姫路城(姫路市)で平成21年に始まる“平成の大修理”の際、高さ45メートルの見学用エレベーターを天守閣のそばに設置することが4日、決まった。めったにない工事の様子を見てもらうための措置で、文化庁は「文化財修復作業の画期的な公開手法」と評価している。

おまけその2
庭園美術館の顔?

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おまけその3
庭園美術館に咲いていたクリスマスローズ


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- 弐代目・青い日記帳 | ヘルツォーク &ド・ムーロン建築を語る
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 建てられた地から動かすことのできない建築は、実際にそこを訪れない限り見ることはできません。また様々な理由により形を変えられてしまったり、時代の変化とともに失われてしまうこともあります。したがってわたしたちの建築体験の多くは写真によるものなのです。建築家の意図を的確に反映し、表現してくれる写真により、建築は多くの人々に共有され、歴史の中で普遍化されていきます。そして写真は、時として建築家自身も気づかなかった建築の新たな魅力を引き出してくれることもあります。
 展覧会には、記録として撮影された明治期の建築写真から、建築の魅力を独自の表現で切り取った現代の写真まで、約400点を7章構成によって展示します。竣工写真のみならず、構想段階である建築の模型を撮影した写真なども展示し、建築家の構想から現実化へのプロセスも紹介します。
 本展は、近現代の日本の建築を、同時代の写真家がどのようにとらえたかを辿りながら、建築史と写真史の変遷と接点を概観する試みです。これまで語られることのなかった建築と写真の関係を見据える視点を提示し、写真をとおして、それぞれの時代の建築に対する人々のイメージを検証します。

展覧会 | permalink | comments(12) | trackbacks(6)

この記事に対するコメント

私も先週いってきました。
かなり感動!
やっぱりこの美術館はセンスがいいですよね。
わたしは最初の熊本城に感動しました。
あの時代に写真の技術があったのね。
あと、私も桂離宮感動しました。
会社に写真集があったので生をみれてよかったです。
でもまた桂離宮の生体験をしてません。
今年こそ行きたい〜〜
chie | 2008/03/16 12:58 AM
Takさん
こんばんは

桂離宮は前々から興味があって、昨年、季節はず
れに夏休みを取る際にネットでチェックしました。
数ヶ月先まで予約が埋まっていてあきらめました。

まぁ、逃げることはないでしょうから、そのうち
行ってみようと思います。
lysander | 2008/03/16 1:43 AM
>この展覧会の魅力の一つはやはり「場所性」
庭園美術館だからこそ生きる展覧会です。

おっしゃるとおりですね。
アールデコの洋館には、クラシカルな写真も、
モダンな現代建築の写真も似合います。

桂離宮、行ってみたいです。
テツ | 2008/03/16 8:25 AM
こんにちは
サクマドロップ。言い得て妙やわ〜とウケてました。
(うちの母はハッカ&ミントしか買いませんが)

やはり皆さんの仰るとおり、「場所性」がとても活きていましたね。わたしもそこに感銘受けたりしてました。

桂離宮はお友達が葉書で予約してくれて、それで出かけましたが、橋上での撮影は禁じられました。
「前年、池に落ちた方がおられるので」
おーいおーいでしたよ。

戦災で焼失した宮家や、忠太の仕事を見るのは、とても価値がありました。
わたしは字でメモとってましたが、工学部系の学生さんは図面そのものを模写してました。
なんとなくその違いが面白くも思ったりしてました。

遊行七恵 | 2008/03/16 11:56 AM
ほんと、「サクマドロップ」とはお上手です。
コーナーによって写真家のスタンスが違うので、バラエティを感じたのでしょうね。
そうそう、伊東忠太さんのスケッチは素晴らしかったです。

ogawama | 2008/03/16 10:53 PM
もうすぐ写真美術館で小川一眞の「紫禁城写真展」が開かれますね。
行こうかと思ったらこの展覧会で伊東忠太と同行して中国を撮った写真が展示されているのでまあ行かなくていいかなと/笑。
写真といえばワタリウムの流しの写真家の展覧会が話題になっていますね。
さて、「美術手帖」来月リニューアルです。
リニューアル第一弾は当然の如く会田誠さんです!
| 2008/03/16 10:55 PM
こんばんは。

>もうこれからは今までと同じ感覚でお城を気軽に観ることできないかもしれません。

熊本城は衝撃的でしたね。時代劇で城をみたらフッと浮かんできそうです。

ところでサクマ・ドロップスとサクマ式ドロップスって違ったんですね。私はサクマと聞くと、赤い缶を思い出したので、サクマ式のほうでした。
キリル | 2008/03/16 11:25 PM
@chieさん
こんばんは。

私も丁度先週に行ってきました。
混雑していましたね〜
建築展の特徴でもありますが。
熊本城の写真は言葉にできない
感動ともやもやが混在してこみあげてきました。

桂離宮はそれなりに感動しますが
写真の方が。。。

@lysanderさん
こんばんは。

ネット導入してからとれなくなりました。
以前はちょいとお願いすれば何とか
なったのですが。。。困ったものです。

もし、どうしてもという日がありましたら
おっしゃってくださいね。

@テツさん
こんばんは。

あの洋館でこそこの展覧会生きますよね。
しかも入口付近に庭園美術館の古い写真も
さり気無く展示してあったりしました。

それにしても建築写真って撮るの難しいですね。

@遊行七恵さん
こんばんは。

サクマドロップ、妹とよく
喧嘩しながらなめていました。
懐かしいな〜

国立新美術館との対比を頭の中で
しながら見ていたのですが途中で
やめました、あほらしいので。

桂離宮、ちゃっちゃかと連れられて
まわされてしまい、いまいちでした。

伊東忠太の「仕事」には畏れ入りました。
単なる妖怪好きではないのですね。

@ogawamaさん
こんばんは。

上手いこと表現できないかなーーと
散々考えた挙句がサクマドロップですから
なんだかな〜って感じです。
森美術館で蜷川さんのデザインしたもの売っていました。

@| | 2008/03/16 10:55 PM | さん
こんばんは。

>小川一眞の「紫禁城写真展」
ノーチェックでした。

ワタリウムもしかり。
写真展はどうしても後回しになってしまいます。
写美術館のシュルレアリスム展は
出来たら行きたいなと思っています。

美術手帖、会田さんの特集ですか!
それは必ず買わねば。
楽しみ楽しみ。

@キリルさん
こんばんは。

時代劇の城って嘘っぱちですね。
本当に今までのイメージなんだったのか。

>サクマ・ドロップスとサクマ式ドロップスって違ったんですね
そうなのですか。。。
すみません、全く気にせず書いていました。
赤い缶は映画にも出てきたやつかな。ジブリの。
Tak管理人 | 2008/03/17 12:11 AM
こんばんは。やはりこの展示は皆さんの仰るように、美術館の建物あってのものだったのかなと思います。ついでに、庭園美自体の記憶を伝える写真の展示があったら尚良かったかもしれませんね。

その場所へ行きたくなる理策、杉本らの写真は改めて魅力あるなと感心しました。特に杉本は演出もバッチリきまっていましたよね。本当に絵になります。
はろるど | 2008/03/17 12:38 AM
@はろるどさん
こんばんは。

>庭園美自体の記憶を伝える写真の展示
確か入口左側に。。。
ちょこっとだけですが。記憶違いかな。

今度は庭園美術館のそれぞれの部屋の写真を
その場で展示するなんて企画もいいかもしれません。

杉本さんに対する学芸員さんの思い入れ
しっかり感じ取れる展示方法でしたね。
Tak管理人 | 2008/03/17 6:41 PM
わたしも先週行ってきました〜
東京駅の骨組はかなり良かったです。
1枚しかなくて残念。。と思っていたので、東京駅行ってこようと思います♪
圭 | 2008/03/20 2:25 PM
@圭さん
こんばんは。

東京駅今が「見ごろ」ですし
「見収め」でもあります。
カメラ片手に建築の記憶を撮りに。
Tak管理人 | 2008/03/21 7:19 PM
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