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「河野道勢」展

足利市立美術館で開催中の
「大正の鬼才 河野道勢」展に行って来ました。



土曜日の夜遅く東京近郊の美術館のサイトを順繰りに眺めていたところ、ハッとさせるような強烈で独特な一目で何かが違うと悟らせる作品が目に飛び込んで来ました。こちらのサイト

日曜日、どの展覧会に行こうか当日起きてから決めている自分が、珍しく前日から「明日はこの展覧会を観に行く!」とかみさんに明言。

河野通勢(こうのみちせい)という名の大正時代を中心に活躍した作家さん。恥ずかしながらお名前存じ上げておりませんでした。作品も近美の常設でもしかしたら目にしていたかもしれませんが、記憶に残っていません。

河野についてチラシの裏面にはこのような解説が。
自画像」1918、大正7年
河野通勢(1895-1950)は大正期を代表する画家です。二十歳ですでに天賦の才能を顕し、岸田劉生に一目置かれました。劉生率いる草土社へ参加し、武者小路実篤をはじめとする白樺派とも交流しました。また、関根正二に与えた影響も見逃せません。

これを読むと決して異端でも、決して名も無き画家でもなかったことが分かります。河野道勢の父次郎(足利藩出身)も絵描きだったそうで「田崎草雲に南画を師事し、のち高橋由一から洋画を学んだ」そうです。

その父親の影響を若いうちから受け作品を描いたそうです。

セクション別に簡単にご紹介。
1:「初期風景画と裾花川」

二十歳を迎えたばかりの道勢ですが、作品はすでに完成度の高いものとなっていました。幼い頃からダ・ヴィンチやデューラー、レンブラント、ミケランジェロ、コローなど西洋絵画の巨匠達の模写を繰り返していた道勢は作品にもそれが色濃く反映されているのが分かります。

左:河野道勢「崖と人」1916年 
右:ダ・ヴィンチ「アルノ川渓谷の風景描写」1473年

まぁ、この程度の類似でしたら確かに影響を受けたのだな〜で終わってしまいますが、河野が鬼才、奇想と呼ばれる所以は彼が熱心なハリストス正教の信者であったことに起因します。

彼が暮らしていた長野市を流れる裾花川を描いた作品に、神話の登場人物が描き込まれていたりするのもそれゆえ。

アダムとイブ」1914年

向こう岸にはキリストの姿も見えます。ただそれだけではありません。視線を木々の描写に転じると、うねりを上げながら何か獲物を捕えんとするかのような生々しさが感じられます。近くで観てみると決して厚塗りなわけではありません。卓越した描写力によってなせる技かと。


長野風景」(長野の近郊)1915年

ゴッホが何度も描いた曲がりくねった糸杉を更に強力にしたような木々が前景に配置され、その自然に怖れを抱き細々と生活しているような人間がちらほらと。画面の中では人以外全てアメーバーの如く畝り、撓っています。

この他にも「おおっ!」と思わず声を出したくなる作品がポツリポツリ。

三人の乞食」1916年

西洋画に似せてアーチ状の枠を自ら描いています。全て裾花川付近の景色を描いたものですが、それぞれ違った見どころがあることがお分かりになるかと。最初の展示室からして「足利まで車飛ばして来た甲斐あった〜」と思わせるとても濃い内容でした。

2:「自画像と様々な展開」


好子像」1916年

奥様の妹さんを描いた作品。一目見て「モナリザ」を描こうとしたことが分かります。これまたアーチ状の枠が誂えてあります。手には葡萄をその下には洋書が描かれています。背景から顔の肌に至るまで大変写実的に描かれている作品です。

二階の展示室入ってすぐの場所にこの作品がありましたが、一階で観た風景画とはまた別の強烈な印象を放っていました。

肖像画だけでなく、バラエティーに富んだ作品が展示してありました。タイトルだけでもそれがお分かりになれるかと。「ロココ風俗婦人閑遊之図」「虞美人化粧之図」「ロミオとジュリエット」「鎧を着た男」「海神とその子」「佐久間象山像」「林檎」等など。

3:「聖書物語」

河野ほど宗教画を描いた作家はこの当時の日本にはいなかったでしょう。自身9歳の時に洗礼を受けているそうです。


キリスト誕生礼拝の図」1916年

初めて河野が描いた宗教画だそうです。
主役のキリストは中央奥に小さく描かれているだけで祝福に訪れた人々や天使を周りを取り囲むようにねっとりと描いています。

ヨーロッパ絵画の宗教画はどちらかというと、乾いた空気を感じることができますが、河野のそれはまるで逆。日本の農村で行われる秋祭りを描いたかのようです。

たとえば「レダと白鳥」で比較してもそれは明白。

右:河野道勢「ダフネ」1918年
左:ミケランジェロ「レダと白鳥」1530年
(ミケランジェロが描いた実物は現存しません)

河野の白鳥エグイ……


日本武尊」1919年

タイトルこそ「ヤマトタケル」となっていますが、「ダヴィテとゴリアテ」と観てもおかしくありません。っというかそう見えてしまいます。ただ日本武尊が女装して描かれているのでまぁなんとか日本神話と見ることが可能ですが。。。折衷作品のようにも見えます。

これ以降のセクションは以下の通り。
4:「芝居と風俗」
5:「銅版画」
6:「挿絵と装幀」
7:「資料」

好き嫌いは別として、とにかく観に行きたくなる展覧会であることは間違いないと思います。紹介したのはほんの一部。新聞小説の挿絵やバーナード・リーチから手ほどきを受けた銅版画など見どころは実に多彩。

自分が単に知らないだけで、近代以降も心時めかせるような画家さんがまだまだいることあらためて実感させられます。土曜の夜にビビッと感じた直感はどうやら間違っていなかったとようです。「河野道勢」展是非!

どうです。足利まで行かれます?
足利市立美術館
「河野道勢 新発見作品を中心に」展は5月25日までです。

実はその後、渋谷区立松濤美術館へも巡回します。6月3日〜7月21日
渋谷に来るのを待つか、足利まで出かけるか。。。
とらさんどうされます??

渋谷の次は長野県信濃美術館へ巡回するそうです。11月22日〜1月18日

それでは「今日の一枚


私も何か御役に立つそうです」1928年

宮沢賢治の「フランドン農学校の豚」想起させる作品。
そういえば賢治も一時キリスト教にかなり興味関心を示していたとか…



「名画はあそんでくれる」 結城 昌子
(いい絵には人を励ます力があり慰める優しさがある。傑作はいろんな見方を許してくれる ほか)
(ゴッホの「教会」は、オヴェールに今も残っていた。現地でみつけたゴッホ、最後の足どり ほか)
(ゴーガンの言葉の裏にあるもの。互いにとって「いい国」であるという素敵さ ほか)
(長すぎる滞在は感動をそこねる?名画に思い出を重ねる ほか)
(名画のひとり歩きの行き先。アートと文字の深い関係 ほか)

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最後に「今日の美味


ハーゲンダッツ「カシス&オレンジ
三月に発売になってから食べた回数数知れず。。。
ハマってます。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1358

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 河野通勢(1895-1950)は大正期を代表する画家です。二十歳ですでに天賦の才能を顕し、岸田劉生に一目置かれました。劉生率いる草土社へ参加し、武者小路実篤をはじめとする白樺派とも交流しました。また、関根正二に与えた影響も見逃せません。
 通勢の父次郎は足利藩の出身であり、田崎草雲に南画を師事し、のち高橋由一から洋画を学んだとされています。少年期の通勢は父から影響を受け、西洋古典美術に関する彼の蔵書より多くのものを摂取しました。また、次郎は熱心なハリストス正教徒であり、通勢も9歳で洗礼を受けています。通勢の作品に見受けられる神的なるものへの憧れはこの頃より培われたと思われます。なお、足利出身の特異な宗教画家牧島如鳩(まきしまにょきゅう)と通勢は終生にわたって交流がありました。
 本展は、このたび新たに発見された作品を中心に、これまでにない規模で開かれる回顧展です。青年時代まで過ごした長野において執拗に描いた初期の風景画、上京したのちに手がけた自画像、聖書や神話を主題とした作品群、挿絵画家として名をはせるきっかけとなった『項羽と劉邦』の原画、関東大震災に取材した一連の銅版画、さらには日記、スケッチ帳、父次郎の作品など膨大な資料の一部も展示いたします。さまざまな視点からアプローチすることにより、通勢の全体像がひときわ異彩を放って示されることと思います。
展覧会 | permalink | comments(13) | trackbacks(2)

この記事に対するコメント

こんばんは。
足利は結構近いので、私も河野通勢展に行きました。
400点近い展示で、かなりのボリュームでしたね。
初期作品は関根正二、自画像や風景画では、岸田劉生との類似性がよくわかる展示でした。
最後の展示で、岸田劉生が最も評価していた画家という内容の武者小路実篤の直筆原稿がとくに印象に残っています。
Minnet | 2008/04/17 11:32 PM
こんにちは
河野は好きな画家です。
わたしは挿絵から入りました。
長与善郎『項羽と劉邦』とか。
(挿絵好きなのと白樺派ファンなのとが合致)
だいぶ前に東京ステーションギャラリーと弥生美術館で回顧展が開催されましたが、それ以来の大きな展覧会だと思います。
行きたいけれど足利がどこにあるのかわからない悲しい関西人です。でも松涛に来るなら来月だけでなく6月か7月にも出かけようかとフツフツと・・・
遊行七恵 | 2008/04/18 12:36 PM
Takさん
この展覧会気付いてました。
デューラー→岸田劉生→河野通勢というラインですね。
河野をまとまってみる機会は貴重なので、お見通しのように、足利までも!とちょっと考えたのですが・・・、
自宅から歩いても行けるし、60才以上無料の渋谷区立松涛美術館に巡回するまで待つことにしました。
良かったようですね。明日、詳しく聞かせてください。


とら | 2008/04/18 9:32 PM
@Minnetさん
こんばんは。
コメントありがとございます。

見ごたえありましたね〜
一枚一枚が濃いので
倍近くみたような気になります。
圧倒されてしまい他の画家との
共通項とか探る余裕ありませんでした。
渋谷に巡回してきたら今一度。

@遊行七恵さん
こんばんは。

新発見された絵があるらしく
それが今回公開されていました。
版画までじっくり見る気力が
失われていました。
毒気にあてられたそんな気分です。

世の中には知らない作家さんで
こうも凄い人がいるもんだと
驚かされっぱなしでした。

@とらさん
こんばんは。

流石ですね〜
やはり足利までお考えでしたか。
もしや、もう行かれたかと思っていました。

松濤の静かな空間で観るとまた違った
感じを受けるかもしれません。
渋谷で再会したいと思います。

明日よろしくお願いいたします。
Tak管理人 | 2008/04/18 10:56 PM
Takさん、こんにちは!
この画家さん、新日曜美術館で特集されていたのを見ました。
松濤に来るのですね。
ペーパードライバーな私は間違いなく待ちます^^;
楽しみにまとうと思います!
はな | 2008/04/19 8:07 PM
今日はお疲れ様でした.いつも絶妙のセッティングに感謝です.
 「キリスト生誕の図」は牧野邦夫に通じるものがあるようですね.
toshi | 2008/04/19 9:27 PM
@はなさん
こんばんは。

新日曜美術館見ませんでした。
特集で取り上げていましたか。
それだけの「価値」ある作家さんかと。

渋谷のチラシを片手にとらさんも
松濤に来るのを虎視眈々と待っているそうです!

@toshiさん
こんばんは。

昨日はお忙しい中ご参加いただき
ありがとうございました。

連休明けに今度はこちらから「お邪魔」します。
奥様にもよろしくお伝えください。
Tak管理人 | 2008/04/20 9:44 PM
はるばる足利まで足を運ばれたのですね。
実は一足お先に平塚で観てました。
河野氏は自分も全く知らない画家だったのですが、
こんぴらさん帰りとしては高橋由一の名に反応したり。

力のある画家、という印象を受けました。
チラシの絵は特に印象的でしたが、
普段ならさっと流しがちなデッサンの力強さに
ひきつけられました。

渋谷では展示会場が狭いので全作品を展示するのは
難しいものがあるらしいですが、
担当学芸員さんは意地でも全部展示すると仰ってたそうです。

そういえば、足利で展示されたかどうかは存じませんが、
会場最後に河野っぽいけど違うと思しき作品が
参考出品されてまして、ギャラリートークの際に
熱き議論が交わされたりして宿題が出たりして、
その答えが渋谷で聞けたらな、なんて思ったりします。

自分の国の画家に関して、まだまだ知らないことばかりだと
認識させられる展覧会でもありました。


#ブログ右側の展覧会記事リスト一覧の
 この記事のURLが違っている様です。
m25 | 2008/04/24 12:53 AM
@m25さん
こんばんは。

足利でも最後に河野っぽいけど違うと思しき作品
展示さていましたよ。
個人的にはちょっと違うような気がしましたが。
どうなんでしょうね。

>自分の国の画家に関して、まだまだ知らないことばかりだと
>認識させられる展覧会でもありました。

全く仰る通りです。
足元さえもおぼつかないで
やれイタリアだ、やれスペインだなどと
言っている自分が情けなく思います。

webでチラシにある作品を一目見て
これは観に行かねば!と思い立ちました。

それだけ人を惹きつける魅力のある作品です。
尤も当時は売れなかったでしょうけどね。
これでは。。。
Tak管理人 | 2008/04/24 11:46 PM
渋谷でもこの展覧会やるんですね。
平塚に行きそびれていたので、東京で開催されるのは
嬉しいニュースです^^

どちらかというと河野通勢は岸田劉生の陰に隠れていて、
近代美術でも目立たない画家だったのですが、
この展覧会で再評価につながるとよいなと思ってます。
実際の作品を何度か見たことがありますが、
印象に残る作品だったので。
kino | 2008/04/29 6:03 PM
@kinoさん
こんばんは。

渋谷でもやるので
また出かけようと思っています。
衝撃的でした。とにかく。

全く存じ上げていませんでしたが
まだまだこうした埋もれた画家さんて
多くいらっしゃるのでしょうね。
MOTでも現在数点展示されています。
Tak管理人 | 2008/04/30 10:33 PM
ちなみにですが、
河野作品は横浜美術館の常設でも
たびたび展示されています。
今回の展覧会で出ていたかもしれませんが。


kino | 2008/05/04 10:08 PM
@kinoさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

横浜でも展示されていましたか!
観ているようで作品を観ていない証拠ですね。。。
反省。
河野さんしかと名前覚えましたので
次行く際はしかと見て参ります。
Tak管理人 | 2008/05/05 12:22 AM
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昨日の夜に食べたんだけど更新するの忘れました^^;やっぱ季節限定には弱いですwカシスみたいな酸っぱい系はあまり強くないんだけど限定ですから一応食べておかないと(^∇^) フタを開けたらぐるぐる渦巻きがwカシスとオレンジが別々になってるのが良くわかります。ま
ハーゲンダッツ カシス&オレンジ 季節限定 | かずやんの気まぐれ日記 | 2008/04/27 2:03 PM
この画家の「好子像」は、竹橋の近代美術館で見たことがあり、「源平合戦」も「揺らぐ近代展」で眺めていたので、名前だけは昔から印象に残っていた。そんなおり、今年の春、新日曜美術館で放送されてから、「鬼才」という言葉が頭に引っかかっており、楽しみにしていた
大正の鬼才 河野通勢  松涛美術館 | つまずく石も縁の端くれ | 2008/06/16 9:31 AM