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もっと知りたい曾我蕭白

変わったもの、奇想天外、空前絶後、白痴的、キテレツ、水死体、怪獣、変態、超現実、江戸版グリューネワルト、人間離れ、香具師etc…

今日、↑にピップアックした妖しげな言葉の数々は、現在の江戸絵画ブームの火付け役ともなった辻惟雄先生の名著『奇想の系譜』。伊藤若冲と長沢蘆雪に挟まれるようにし、紹介されているある絵師の冒頭たった2ページの間に登場するもの。

その奇妙奇天烈、他に類を見ない毒々しいまでの表現ゆえ、絵画史の闇にしばらく葬り去られてしまっていた絵師、曾我蕭白。

若冲や芦雪とはまた一味も二味も違った蠱惑的な作品で観る者を圧倒させ、強力な磁場のように惹き付けて止まない今や江戸時代を語る上で欠くことのできない絵師、曾我蕭白を紹介するお手軽な一冊が発売になりました。


もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
狩野 博幸

〜目次〜
【はじめに】 蕭白、没後約200年にしてようやく京都の市民権を得る
【第1章】 生い立ちと動物描写―17歳、画才だけを頼りに旅立つ
【第2章】 群仙図屏風と人物描写―日本美術史上の鬼っ子画の誕生
【第3章】 京都定着以降と風景描写―名声を得るも孤独からは逃れられず
【総論】 十八世紀、蕭白を受け入れた美しい時代


100ページ近いボリュームでありながら、テキスト、カラー図説共に定評のある“もっと知りたいシリーズ”から、心待ちにしていた一冊がいよいよ店頭に!

一足お先に刊行となった同じく狩野博幸氏による「曾我蕭白―荒ぶる京の絵師」も素晴らしい一冊ですが、私のような素人江戸絵画ファンにとっては、長々とした解説文よりもまず先にビジュアルが大切。

その点、今月発売になったばかりの「もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品 」はまさにストライクど真ん中。これこそまさに待望の一冊です。

この屏風絵など今回この本で初めて目にしました。

富士・三保松原図屏風

それこそ、伝統的な「大和絵」に登場しそうな富士の姿。きっとわざと描いたのでしょう。それよりも何よりも三保松原には虹の架け橋が描かれています!雨上がりの澄んだ清々しい空気が時空を超えてこちらまで漂ってくるかのようです。

この作品はアメリカ、デンバーのパワーズ・コレクションが有しているそうです。出来ることなら一度里帰りさせてこの目で実物を拝んでみたいものです。

狩野氏はこう述べています。蕭白の絵は「粗放さと繊細さの二重構造」を成しているので、鑑賞者も心してかからねばならないと。

蕭白の名は知らずともこの強烈なインパクトのある屏風絵はどこか図版で一度や二度はお目にかかったことがあるはずです。【第2章】群仙図屏風と人物描写




実物と対峙するとまず、溢れんばかりの極彩色に目をやられます。
この「群仙図屏風」は東京国立博物館で今年7月より開催される特別展「対決−巨匠たちの日本美術」にも伊藤若冲の対決相手として出展されるそうです。

それまでに、この本で見どころチェック!


Bunkamuraの「薔薇空間」でも思ったことですが、知っているようで知らないこと山のようにあります。知っていることの方がごく僅かです。曾我蕭白も名前や「奇想の画家」といった漠然とした知識しか持ち合わせていなかったことに気付かされます。

そもそも、蕭白が京都で生まれ亡くなった絵師であることも辻先生の行った調査(昭和42年)で初めて確定したことだそうです。そうした近代化によって邪魔者扱いされ故意に忘れ去られた18世紀の絵師が今の世になって再度スポットライトを浴びるのも感慨深いものがあるとともに、幾許かの恐怖も感じます。


山水図押絵貼屏風

蕭白の超絶技法が全開し山水図の到達点をなした作品だそうです。こちらは京都国立博物館所蔵ですので機会があればきっと観られるはずです。

最後のページに「曾我蕭白の作品を所蔵する主な施設」と共に「蕭白と18世紀の京都文化を知るための推薦文献」が5冊ほど紹介されています。その中で最も読んでみたい一冊がこちら。表紙からしてそそります。

「江戸狂者伝」 中野 三敏

「江戸狂者伝」読売新聞書評

以前「芸術新潮」で曾我蕭白の特集組んだ時の表紙に使われていたのが先ほど紹介した「群仙図屏風」のひとコマ。鳥好きの私も一瞬この鳥にはたじろぎました。。。


因みに蕭白特集号の「芸術新潮」には山口晃さんによる「ひみつの蕭白 お騒がせ行状記」が3ページに渡り掲載されています。新潮社さん、タイミングよく「とんぼの本」にしたりして。対決展にぶつけて。

何はともあれ、超お勧めの一冊です。毛嫌いせずに蕭白の世界へ足を踏み入れて見て下さい。「近代的自我」から解放されるかもしれません。(オーバーかな)


もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品
蕭白の生涯は謎が多く、近年まで「どこの生まれかわからない」とまで言われていました。傲岸な性格を物語るエピソードが流布していますが、本当はどんな人物だったのでしょうか。リアルさと荒唐無稽さ、皮肉とユーモアが入り交じった奇怪な作品をみればみるほど謎が深まります。本書では制作期間を三期に分けて、ある程度制作時期の特定できる作品を紹介するとともに、各章に「動物描写」「人物描写」「風景描写」の特集を設け、さまざまな角度から作品をたどりながら、蕭白の精神のありかを探ります。掲載作品73点のうち5点は近年発見された作品です。

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この記事に対するコメント

はじめまして。
いつも楽しく、ワクワクしながら読ませていただいています。
 さて、蕭白さんですが、現在 東京藝術大学美術館の芸大コレクション展で5月13日から6月15日まで「群仙図屏風」2曲1双が展示されています。京博で話題の河鍋暁斎「竜神、待者」もすばらしいものでした。
昨日、見てまいりましたが、薬師寺展が70分待ちなのに対して、ちょっと寂しい気がしました。
ちょっと足を伸ばせば、こんなにいい作品が見れるのに・・・

おまけに、8月26日から9月23日まで「狩野芳崖・悲母観音への軌跡」の予告がありました。これも、いい企画かも知れません。

あつかましくも、お知らせしてしまいました。

これからもグイグイ興味をそそるような記事をお待ちしています。

みいみい | 2008/05/22 10:02 AM
こんにちは
またまたナイスな本が刊行され、それがこうしてご紹介されて世に広まる・・・
うーん、いい流れですね。
蕭白は大好きな絵師です。しかも狩野先生・・・。
なんとなく蕭白の絵の前に立つと、アタマの中で勝手にのこぎりの楽器の音色がビヨ〜ンビヨンと流れ出します。
目つきが妖しい神仙や不気味に可愛い子供たち、職質したくなる寒山拾得など、何ともいえず好きです。
頁構成も見やすくてきれいで、いい感じですね。
置き場と経済と欲望の三者会談をします。
遊行七恵 | 2008/05/22 1:45 PM
こんばんは。
Takさんの書評いつも楽しみに拝見しています。
今、ちょうど図書館にいるので、早速ご紹介の本を
リクエストします。
meme | 2008/05/22 6:38 PM
そうそう、
『群仙図屏風』のようなエグイものから
『山水図屏押絵貼風』のような水墨まである。
簫白の、その幅のすごさに惹かれたんですよね〜(私)。
tsukinoha | 2008/05/22 7:59 PM
@みいみいさん
こんばんは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

いつも時間に追われやっつけ仕事的に
記事を何とか書いているので見直すと
赤面するほど恥ずかしいものばかりです。

芸大のコレクション展に出ているのですか!
それは観にいかねばなりません。
「バウハウス」展は行かなくても
いいかな〜と決め込んでいましたが
蕭白ついでに行かねばなりませんね。

貴重な情報教えていただきありがとうございます。
とても助かりました。必ず観に行きます!
それにしても薬師寺展の過熱ぶりは尋常ではないですね。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

@遊行七恵さん
こんばんは。

蕭白のことって知っているようで
ほとんど知らないことこれで分かりました。
18世紀の江戸文化の奥深さといいますか
今の時代にない「愉しさ」をつまみ食いできるような
気にさせてくれます。

本自体はコンパクトでお安いので
これなら「一家に一冊」あってもよいかと。
子供向けには刺激強すぎますが。

@memeさん
こんばんは。

本の内容を紹介するのは難しいですね。
美術館展とは勝手が違います。
展覧会の記事以上にへなちょこなのは
そんな理由があると温かな目で。

@tsukinohaさん
こんばんは。

そうなんですよ〜エグサもあり
さらりとした水墨画も描ける。
これが蕭白の一番の魅力かと。
それにそれぞれダブルイメージが
絵に隠されていたりします。
Tak管理人 | 2008/05/22 9:43 PM
私もこの本、国芳と一緒に買いました。
群仙図屏風、何度も見逃しているので
今度の東博は楽しみです。
一村雨 | 2008/05/25 8:56 AM
@一村雨さん
こんばんは。

琳派展に合わせて
酒井抱一、尾形光琳、俵谷宗達も
刊行されるそうです!
Tak管理人 | 2008/05/26 12:00 AM
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