2008.06.13 Friday
「コロー展」
国立西洋美術館で明日(6月14日)より開催される
「コロー 光と追憶の変奏曲」展の内覧会に行って来ました。 ![]() 美術に興味がある方なら知らない人はいないジャン=バティスト・カミーユ・コローですが、その知名度の高さと相反しコローを中心に据えた展覧会が日本国内のみならず、海外でもほとんど開催されていないそうです。 確かに言われてみれば「コロー」単独の展覧会ってほとんど記憶にありません。 でも、大きな美術館での「コロー展」はなくとも、たとえば「コローとバルビゾン派展」といった類の展覧会はかなりの数開催されているはずです。バルビゾン派って印象派同様、日本人に受け入れやすい作品多いですからね。 ![]() 高円宮久子妃殿下によるテープカット。高階先生のお姿も。 そして、コローが描く作品のイメージといえば、グレーの靄がかかったような画面に枝や幹がリズミカルにその身をくねらせているといったものがまずあるかと。 ![]() 「モルトフォンテーヌの想い出」1864年 今回の展覧会のサブタイトルに「変奏曲」と題されているように、音楽的なイメージをコローの作品から読み解こうとする試みもキャプション等に記されていました。また画面全体に広がる木々の枝を「樹木のカーテン」と喩えてありました。 音楽には疎い自分は残念ながら「リズム」を画面から聴き取ることできませんでしたが「カーテン」だけははっきりと理解できました。悪くない比喩です。 また、同じ「森」を描いた作品でも両脇に背の高い木を配置し中央の道から奥の景色が垣間見られるといったお馴染みの縦長の構図をとる作品もコローらしい作品です。 ![]() 「ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸」1835-40年 因みに↑この作品、コロー初期の作品の中でも傑作と評判の高い一枚。 手前の道に出来た木漏れ日による影と一段奥の遮蔽物のない光に包まれる道が対象的に描かれています。正面に立って絵の中の道をあちらからこちらへ、こちらから別荘のある奥へと脳内で行き来するだけでもワクワクするものあります。 村内美術館所蔵です。 「お!これいいな」と思う作品が意外と日本国内の美術館所蔵だったりします。コローの描く抒情的な風景画が日本人の心にマッチしたかよく分かります。 ただし、逆にそれによって「コロー=風景画」という固定概念が我々の中に出来てしまったのも事実。初期イタリアでの風景画や後半にずらりと並べられた人物画によって脆くそれは打ち砕かれることとなります。 ![]() 開会式で挨拶の言葉を述べる国立西洋美術館館長、青柳正規氏。 後ろに掛っている作品はこちら。 ![]() 「青い服の婦人」1874年 「コローのモナリザ」と称されるルーヴル美術館所蔵の「真珠の女」1858-68年に描かれている女性と同じ人物だそうです。(モデルのエマ) コローの最晩年(78歳)の大傑作。閉じた扇子の先にほんのりと「赤」が加えられている所がコローらしいかと。風景画の中にもしばしば一点「赤」が登場します。 今回の目玉作品である「真珠の女」ですが、照明の関係で髪の毛の部分がキラキラとてかってしまっていたのが気になりました。 ![]() クラックに沿って光が反射するためソバージュをかけたように見えました。 普段は別段照明のこと意識しないのですが、この絵に関してはちょっと… さて、さて今回の「コロー展」開催に関し最もご尽力なされたのが、再来年オープンの三菱一号館美術館長であり国立西洋美術館客員研究員も務められる高橋明也氏。「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」や「オルセー美術館展」(東京都美術館)を監修された方でもあります。 ![]() 涼しげな色のスーツに身を包んでいらっしゃるのが高橋氏、右隣はルーヴル美術館絵画部長・統括学芸員を務めるヴァンサン・ポマレッド氏。 今回のコロー展になくてなならないお二人。 高橋明也氏に直接お話しを伺ったところ、立案企画から開催にこぎつけるまで足掛け10年もの歳月と情熱をこの「コロー展」に注いでいらしたそうです。 詳しくはこちら。 高橋明也氏(「コロー 光と追憶の変奏曲」展監修者)に伺う展覧会の見所 ひとりの男をここまで駆り立てるコローの魅力とは何か? それを探りに西洋美術館に足を運んでみるのも宜しいかと。 ![]() ヴァンサン・ポマレッド氏曰く「この展覧会はコローの回顧展的でありながらも、発展的な面を持つ、二面性を備えた内容」に仕上がっているそうです。 発展的な側面とは何か?それは会場へ足を運ばれるとお分かりになりますが、コローの作品に混じってコローの影響を受けたであろう画家たちの作品も所々同時に展示されています。 モネやルノワールといった印象派の画家からピカソ、ブラックやモンドリアンといった一見コローとは関係なさそうに思える作家の作品まで。 ![]() モンドリアン「農家の前の水辺の木々」1905年頃 この絵、「今日の一枚」にしようとも考えた作品。 コローとの関連性についてもさることながら モンドリアンのこんな作品が観られるとは思ってもいませんでした。 ダラス美術館所蔵だそうです。 風景画では第4章「樹木のカーテン、舞台の幕」で、 人物画では第5章「ミューズとニンフたち、そして音楽」のセクションで ヴァンサン・ポマレッド氏の言う「発展的な側面」に触れることができます。 ここで、コローに抱いていた一元的なイメージを見事に振り払えます。 「最後の古典主義者であり、最初の近代主義者」ともポマレッド氏はスピーチの中で話されていました。なるほどまさに言い得て妙。 今回の展覧会ではコローが手がけた人物画も数多く目にすることができます。前述した通りこれによりコローの新たな魅力を見出せます。春と夏に野外で自然をデッサンし、秋と冬にアトリエで作品を描いたコロー。人物画の多くも秋から冬の時期に描かれたものだそうです。 最も気に入った人物画を一枚。 ![]() コロー「マンドリンを手に夢想する女」1860-65年 全体的に暗い雰囲気の作品ですが女性の服や帽子(髪飾り)の淡い暖色がじっと前に立っていると浮きたってくるように感じます。 楽器に手を置いたまま微動だにせず、視線は空を切っています。 「夢想する女」とタイトルにあります。女性が思索にふける対象は果たして何なのでしょう。マンドリンの演奏についてでしょうか、それとも音楽以外のことでしょうか。 様々なインスピレーションが一枚の絵から湧き出てきます。 そしてここでも「発展的な側面」が。 今回展示されていませんが、ファン・グリスはこの作品をそのままキィビズムの技法で描いています。これ観たかったな〜並べて。 ![]() 「マンドリンを持つ女、コローに基づく」1916年 同じくジョルジュ・ブラックもこんな作品残しています。 こちらは今回展示されています。 ![]() 「マンドリンを持つ女、コローに基づく自由な習作」1922-23年 右下のサインに注目。 「G.B/COROT」と記されています。 あのブラックがコローを崇拝していたとは今の今まで全く知りませんでした。 というか、知ったあとでも未だ結びつきません。。。 最後に「今日の一枚」 ![]() コロー「山の木々」1856年 版画です。ただしとても珍しい技法の版画だそうです。 クリシュ=ヴェール(ガラス版画) 版画と写真技法の合いのこのようなもの。 伺った話をまとめると「プリントゴッコ」と同じような仕組みなのかな?? 一枚しか紹介していませんが、並べて展示されている版画作品それぞれ試行錯誤のあとが見られ普段はすーーと通り過ぎてしまう版画コーナーもじっくり拝見。油彩で表現したコロー特有のモヤモヤ感を版画で出すのはさぞかし難しかったのでは。 若い頃イタリアで描いた風景画やオランダを旅し影響を受けた作品など、これまで観たこともないコロー作品が数多く出展されています。日差しの強い夏の日、木陰で休む気持で涼を求め「コロー展」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。 「コロー 光と追憶の変奏曲」展は8月31日までです。 その後、神戸市立博物館へ巡回します。 9月13日〜12月7日 監修者の高橋氏が上梓なされた新刊です。 ![]() 「コロー名画に隠れた謎を解く!」 高橋 明也 繊細で詩的情緒を湛えた風景画家コロー。この寡黙で美しいと同時に革新に満ちた作品世界を、実際に画家が描いたフランス各地やローマを巡りながら辿り、名画に隠れた謎を解き明かす。 こちらの記事も是非! 高橋明也氏(「コロー 光と追憶の変奏曲」展監修者)に伺う展覧会の見所 それでは最後に「今日の美味」 ![]() ![]() 一つも食べられなかったケーキ。。。 【関連エントリー】 - 弐代目・青い日記帳 | 「スコットランド国立美術館展」 - 弐代目・青い日記帳 | 「花と緑の物語」展 - 弐代目・青い日記帳 | 「フランス近代絵画展」 - 弐代目・青い日記帳 | 「巨匠たちのまなざし」展 - 弐代目・青い日記帳 | 「フィリップス・コレクション展」 この記事のURL http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1419 JUGEMテーマ:アート・デザイン 19世紀フランスの画家カミーユ・コロー(1796-1875)が生み出した数々の詩情あふれる風景画や人物画は、これまで世界中の芸術家や美術愛好家たちを魅了してきました。しかし意外なことに、その名声と人気にもかかわらず、コローを中心にすえた本格的な展覧会はわが国はもちろん、海外においてもごく稀にしか開催されていません。本展は、ルーヴル美術館所蔵のコローの代表作群を中心に、初期のロマン主義的風景からイタリア留学をへて真摯なレアリスムの時代、独特の煙るような詩的表現で、しだいに思い出や夢のようなヴィジョンを語りだす後期の画面、そして折々に手がけられた繊細な人物画の数々を集大成し、コロー芸術の魅力と秘密を再検証するものです。さらに国際的にも初の試みとして、印象派からキュビストまで、コローの芸術に深い影響を受けた画家たちの作品をあわせて展示いたします。 |























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