青い日記帳 

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「フランスが夢見た日本」

東京国立博物館表慶館で開催中の
日仏交流150 周年記念 オルセー美術館コレクション特別展「フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」に行って来ました。



来週火曜日から同じ東博で始まる特別展「対決−巨匠たちの日本美術」と開催時期が重なる為、どうしても日陰の展覧会といった印象を持っていましたが、豈図らんや、新鮮な感動を必ずや与えてくれる好企画展。


平成館だけでなく表慶館へも立ち寄らないと勿体ないお化け出ます。

浮世絵がヨーロッパ絵画やガレなどのガラス工芸品に与えた影響は、これまで数多く紹介されて来ましたが、より身近な存在であった食器にまでジャポニズムが深く関わっていたことを、まざまざと一目で納得させられます。

しかし、日用品であった所為か「美術品」として扱われることがフランスはもとより日本でもほとんどなかったようです。家中探してもセルヴィス・ルソーのテーブルウェアについて紹介している本はこれ一冊のみ。

週刊 朝日百科 世界の美術 浮世絵と西洋近代美術」(昭和53年)
“ルソーのセット”は大いに売れ、1867年のパリ万国博にも番外として出品された。発売後5年間でルソーのあげた利益は5万5000フラン、ただしプラックモンの受け取った謝礼はわずか600フランで、それもたまたま彼の母の葬式の費用となって消えてしまったと、ゴンクールがその日記に記している。これらの陶器はパリ装飾美術館やリモージュのアドリァン・デュブッシェ美術館などにあるが、今日必ずしも著名な存在とはなっていないらしい。幕末以来パリを訪れた日本人は大変な数にのぼるので、こうした絵皿の何枚かが明治初年ころ日本に入ってきていても不思議はないのだが、まだ日本における有無は確認されていない。

↑オルセー美術館に所蔵されているとは書かれていません。
それもそのはず、オルセー自身もこれらをコレクションに加えたのがごく最近のことなのだそうです。当然ながらオルセー美術館でもまとめて展示されたこと一度もまだ無いそうです。

一世紀半以上の長い歳月を経てやっと「セルヴィス・ルソー(ルソー・セット)」と「セルヴィス・ランベール(ランベール・セット)」の絵柄に使われている本絵となった浮世絵が何であったかの研究がスタートしたそうです。その第一次報告となるオルセー美術館と東京国立博物館の共同企画が「フランスが夢見た日本」展なのです。

因みに東博での展示が終わるとオルセー美術館に巡回するそうです。
「対決展」のおまけ。なんて揶揄したら罰あたります。

展覧会は表慶館一階のフロアを使い、向かって左側に「第1章 セルヴィス・ルソー」右側に「第二章 セルヴィス・ランベール」と展示されています。

ブルー(左)がルソー、ピンク(右)がランベール。
会場内のディスプレイもこの淡い色によって区別されています。

平成館での「対決展」は日本美術ですが、表慶館ではフランスのテーブルウェア(ファイアンス陶器)による対決を期せずして堪能すること出来る仕掛けとなっています。

では、まず「セルヴィス・ルソー」から。

チラシにも使われているこちらのお皿。

丸皿 伊勢海老に茄子図

元絵も判明しています。

歌川広重「魚づくし」 伊勢海老と芝蝦、「魚づくし」 こちに茄子

興味深いのは伊勢海老だけをそのままお皿に写し取っただけでなく、もう片方の浮世絵から茄子だけ拝借して勝手に組み合わせている点です。

ルソーの下絵を担当していたのが前述のブラックモン。
彼の残した下絵も今回展示されています。

向きが反対なのはセルヴィス・ルソーの陶器は、絵付けを銅板転写で行っていたからです。その為大量生産も可能。片やセルヴィス・ランベールは一枚一枚手描きによる絵付けの為、現存している数も非常に少ないそうです。

もう一枚ルソーのお皿を。


因みに下絵となったのはかの「北斎漫画
さて、どの部分が使われたか分かります?
 
左からは「河骨」(植物)をチョイス、右からはカエルを。
因みに鶏はまだどこから選んで用いたのか不明だそうです。

面白い事にそれぞれ、大きさは自由闊達に伸縮自在。
しかもどうしてこの三者の組み合わせなのでしょう。可笑しいですよね。

ルソーの陶器を観る楽しみはここにあるかと。

また実際に食器として使われたそうです。それなのにお皿の縁に虫が描かれていたりするのは、これまたどうして?ジャポニズムは一種の熱病のようなものだったと捉えています。盲目的なまでの。

さて、ルソー食器で「ウォーリーを探」し楽しんだ後は、第二章「セルヴィス・ランベール」が展示されている右側の展示室へ。

ランベールはすべて手描き。また実用的なルソーのお皿と違い、こちらは部屋に飾ったりするためのお皿。浮世絵の美味しいとこだけを選んで好みの絵皿に仕上げています。


平皿 浜松図

この風景画の元絵は何かと言うと…こちら。

歌川広重・三代歌川豊国「双筆五十三次」浜松

広重が描いた風景画のみを用いて丸皿に合うようトリミングしています。
よく比べてみると細部(たとえば松の葉)など違いがありますが、上手いこと元絵から切り取り立派な?絵皿に仕上げています。

ルソーが取り合わせの妙であるなら、ランベールはトリミングの妙が見どころ。


平皿 兎図

こちらのお皿など元絵では三羽いたウサギを一羽消し去りアベックのように見立て、仕上げています。ちゃっかり“枝垂れモティーフ”は残しているところがニクイ。センスあるトリミングです。

こちらが元絵。

河鍋暁斎「暁斎楽画

因みに今回ご紹介した元絵はすべて会場内に展示されています。
北斎、広重から河鍋暁斎、そしてブラックモンまで。

オルセー美術館からの依頼で歴博の大久保純一氏が一枚一枚それぞれ描かれているモチーフが浮世絵のどこの箇所なのかを同定して下さったご努力のお陰で今回の展覧会が開催される運びとなったそうです。

約100点のうち、7割方元絵が判明しているそうです。

それでもこちらのお皿などまだ元絵が同定できないものも何点かあります。
浮世絵だけでなく、伊藤若冲や酒井抱一の作品が描かれている可能性もまだまだあります。研究はまだ始まったばかり、これからの成果が楽しみな分野でもあります。

贅沢な展覧会です。
来日したオルセー美術館館長コジュヴァル氏曰く「幸福感を与えてくれる展示」

「対決展」観て、くたくたになった身体にも優しい展覧会です。
見逃すと10月にパリまで行く羽目になります。東博表慶館で是非。

「フランスが夢見た日本」は8月3日までです。

それでは「今日の一枚
主催者の許可を得て撮影させて頂きました。


本野千代子氏監修「昼食会のデザート・シーン

セルヴィス・ルソーのテーブルフェアを用いたテーブル・セッティングが表慶館奥の部屋で公開されています。こうして見るとルソーの食器も悪くないかも。

ジャポニスム入門
ジャポニスム入門

それでは、最後に「今日の美味


初台にあるフレンチ・レストラン「ラ・カスケット(La Casquette)」のデザート
ここ、Nikkiさんもお勧めのお店です。

【関連エントリー】
- 弐代目・青い日記帳 | 「ガレとジャポニズム」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「香りと恋心」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「柴川敏之展」と映画『ちゃんこ』
- 弐代目・青い日記帳 | 「オルセー美術館展」
- 弐代目・青い日記帳 | トリロジー:オルセー美術館展
- 弐代目・青い日記帳 | 「芸術都市パリの100年展」
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- 弐代目・青い日記帳 | 「MONET 大回顧展モネ」


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 パリ・オルセー美術館と東京国立博物館の共同企画により、ヨーロッパのジャポニスムに日本の浮世絵が与えた影響について、テーブルウェアに焦点をあてて紹介します。北斎や広重などの浮世絵の題材に着想を得て作られ、1866年から1930年代まで人気を博したテーブルウェアである「セルヴィス・ルソー(ルソー・セット)」と「セルヴィス・ランベール(ランベール・セット)」を、元絵に使われた浮世絵の日本の版画や版本と対比して展示いたします。手描きで現存する数が少ない「セルヴィス・ランベール」の作品は、日本初公開になります。

展覧会 | permalink | comments(13) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

Takさんの記事は面白く、実物も拝んでみたい気もするのですが、こういうの見るといつも思うんです。
「これってパクリってやつだよね?!」
影響とパクリの境目が時々わからない素人発言です。
OZ | 2008/07/04 4:45 AM
先日のガレもそうでしたけど
フランスの方は日本に憧れてたんですね。
それだけ日本の美の感覚が衝撃だったんでしょうね。
こういうの見ると
自分の国の文化を改めて知りたいと思うし
また、誇りに感じます。
サッチャン | 2008/07/04 2:47 PM
@OZさん
こんばんは。

パクリというか、単なる
「凄い!」という気持ちから
使ってみたくなったのかと。
とにかく愉快なんです。
お皿一枚一枚が。

@サッチャンさん
こんばんは。

驚いたのでしょうね、
自分たちの考えの枠外の
絵画が急に目の前に現れて。
そして無我夢中で吸収した。

海外の作品を観ていると
自然と日本に目が向いてきますよね。
Tak管理人 | 2008/07/04 9:27 PM
こんばんは
明日再度ガレとジャポニズム見てくるんですが、Takさんのおかげでジャポニズムのお皿を見る楽しみが深まりそうです。

えび皿にソースだけ掛けて出したら、お客さん怒るでしょうね。
遊行七恵 | 2008/07/04 11:24 PM
なるほど〜。
そうですね、ワタクシたちも単純に楽しめばいいのかな。
OZ | 2008/07/06 5:19 AM
しかしもとになる絵を特定する作業はさぞ大変だったろうなー。
僕は幸野媒嶺という明治の浮世絵師を初めて知りました。
浮世絵も鑑賞できて、テーブルセットも鑑賞できる、本当に「対決」展のおまけみたいにみたらもったいないですね。
Takさんは東博のパスポート会員なのかな。
oki | 2008/07/06 11:41 AM
@遊行七恵さん
こんばんは。

>えび皿にソースだけ掛けて出したら
これは思いつきませんでした!
うんうん。楽しそう〜

それとお皿の縁に描かれた昆虫を
無心に追い払うとかも。

@OZさん
こんばんは。

自分は難しいことわかりませんので。
家にある食器も見返したくなります。

@okiさん
こんばんは。

大変だったようですよ。
北斎漫画といっても
あれだけの量ありますし、
描かれた動植物は角度も
大きさも違いますので。

対決展と対決できるます。
パスポート会員ではありませんよ。
Tak管理人 | 2008/07/06 11:13 PM
こんばんわ。
北斎も広重もよかったのですが、「暁斎楽画」に目が行ってしまいました。
もぐら、かわいかったなあ〜。あとそのもぐらをみてあわててるスズメもいいですね。

しかし、あのお皿たち、やたらと虫の絵柄が多かったように思います。あまり虫の食器ってみかけないですよね〜。
蝶とかならありそうですが。
あおひー | 2008/07/08 1:14 AM
@あおひーさん
こんばんは。

暁斎があれほど出ているとは思いませんでした。
ランベールの趣味いいですよね。選択眼。

ルソーのお皿の虫たちは
どうも理解できませんよね。
観る分には面白いのですが
実際あれでサーブされたら
ぎょっとしてしまいます。
Tak管理人 | 2008/07/08 9:00 PM
こんばんは。これは良い展示でしたね。それにあの再現展示がまた臨場感があって見応え満点でした。意外と違和感がないものです。

それにしても暁斎の蛙あたりは完全に観賞用だったのでしょうか。
仰るようにあんな器にデザートがのってきたら…。食欲がなくなってしまいそうです。
はろるど | 2008/07/17 10:48 PM
@はろるどさん
こんばんは。

再現展示を観ると確かに
これならokかなと思えます。
不思議なものです。

感覚が違うのでカエルも
結構大丈夫だったのかもしれませんよ!
Tak管理人 | 2008/07/19 12:27 AM
TB有難うございました。
遅ればせながら、TB(リンク)させて頂きました。

会場での展示風景が写真で残ってるなんて、とても嬉しいです。
載せて下さって有難うございます。
m25 | 2008/07/23 1:24 AM
@m25さん
こんばんは。

ディスプレイされているのを観て
初めて、こうして使われたのか〜と
想像力のない自分はやっと納得しました。

終わってしまいましたがいい展覧会でしたね〜
Tak管理人 | 2008/08/05 11:53 PM
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