2008.07.04 Friday
「静物画の秘密展」
国立新美術館で開催中の
「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」に行って来ました。 ![]() (ウィーン美術史美術館所蔵静物画の秘密展公式サイト) 西洋の静物画だけをまとめて展示する展覧会は今まで開催されたことあったのでしょうか?私の乏しい記憶の中には見当たりません。逆にウィーン美術史美術館の名品を紹介する展覧会は今までにも何度か開催されています。(芸大美術館で2002年に開催された「ウィーン美術史美術館名品展」等など) 静物画だけの展覧会…想像がつかないというか、面白味を感じられず「さて!行くぞ!!」と張り切って出掛けることに躊躇いさえ覚えた展覧会だったので、拝見する前に『西洋美術解読事典』で静物画の予習を。 静物画…静物画は17世紀のオランダおよびフランドル絵画において成立した。この時期の静物画のモティーフには現世の無常や死の不可避性(「ヴァニタス」すなわち「人生の虚しさ」の主題)、またはこれをさらに展開して、キリスト教的な受難と復活についての寓意が秘められていることがしばしばある。こうした意味は、象徴的意味を付与された、大半は馴染み深い日常の品々によって伝えられる。(以下略) その甲斐あってか例えばこちらの絵など大変興味深く観ることできました。 ![]() アントニオ・デ・ペレダ「静物:虚栄(ヴァニタス)」1634年 ヴァニタス画の大変分かりやすい一枚。消えた蝋燭、地球儀の上のカルロス5世のカメオ、トランプ、お金、若く美しい女性の肖像画、拳銃、砂時計、そして髑髏。いずれも皆「現世の無常や死の不可避性」を象徴するものばかり。 画面左右に置かれてたものの対比も見どころのひとつかと。 因みにこちらの作品、ウィーン美術史美術館所蔵の絵画の中でも名品中の名品。ガイドブック(絵画編)にも掲載されています。そこには「人間はいくら権力があっても一歩一歩確実に死へと近づいていることを教えている」と記されています。 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅雙樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。おごれる人も久しからず、只春の夜の夢のごとし。たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。 「平家物語」は悲しげな音色を奏でる琵琶法師の弾き語りにより世に広まりました。静物画の世界でもやはりどこか寂しげな雰囲気を湛え多く描かれたようです。 ![]() エヴァリスト・バスケニス「静物:楽器、地球儀、天球儀」17世紀 17世紀も半ばを過ぎるとこうした楽器もまた儚さの象徴として好んで描かれたそうです。どんな美しい音色を奏でていてもいつかは止む時が来ます。 同行した方々が気が付かれましたが、中央のリュートは薄っすらと埃をかぶっています。(指の跡が残っています)しばらく奏者が手にしていないのでしょう。 学芸員の方の説明によると、この展覧会は17世紀オランダ・フランドル地方で誕生した生物画というジャンルの「発生」→「発展」→「意味」を堪能できるようレイアウトされているとか。 構成は以下の通り。 第1章 市場・台所・虚栄(ヴァニタス)の静物 ![]() ファルケンボルフ一世の工房「花市場(春)」1610年頃 第2章 狩猟・果実・豪華な品々・花の静物 ![]() コルネーリス・デ・ヘーム「朝食図」1660−69年頃 第3章 宗教・季節・自然と静物 ![]() ネーデルラントの画家に帰属「春(愛)」1600年頃 第4章 風俗・肖像と静物 ![]() ヤン・ステーン「逆さまの世界」1663年 テーマを静物画に絞って鑑賞すると、普段なら見落としがちな部分にも目が行き新たな発見があるものです。展示作品数は75点ですが、かなり観るのに時間を要したのはその所為かと。 また、トロンプ・ルイユ(騙し絵)など現在のトリック・アートの先駆けともいえる作品(ヨーハネス・レーマンス周辺の画家による作品)なども織り交ぜられている展示構成は観る者を飽きさせないません。 例えばこちらのルーベンスの作品。 ![]() ぺーテル・パウル・ルーベンス「チモーネとエフィジェニア」1617年頃 これのどこが静物画?物語画では??と思ったのですが、人物はルーベンスが描き、手前にある果物等はフランス・スネイデルが手がけたのだそうです。比べてみると分かります。違いが。かみさん曰く「ルーベンスこんなに美味しそうに葡萄描けない」だそうです。 静物画だけ並べて展示しても、どうしても地味だし、日本人受け芳しくないのでこうした「サービス」もなされているのでしょう。監修者の木島俊介先生のご尽力の賜物。木島先生曰く。「ウィーンの館長さんを口説いて開催にこぎ着けた、8年越しの展覧会」だそうです。こんな名品も。 ![]() ヤン・ブリューゲル(父)「青い花瓶の花束」1608年頃 美しき花もやはりはかなさの象徴。 死を急いだ花が、テーブルの上にこぼれ落ちているのが余計に虚しい… 中国製の青い花瓶が印象的なこの作品は2002年のウィーン美術史美術館名品展の際も来日しています。 ![]() 展示室の様子。(主催者に許可を得て撮影しています) 静物画メインの変わった趣向でかなりマニア心くすぐる展覧会です。観に行かれる価値は十分にあります。まぁ敢えて欲を言うなら、作品解説がもう少しあっても良かったかと。ヴァニタス画にしても描かれたモノがどんな意味をそれぞれ持っているかなど知りたくなるのが人情。 尤もあまり細かな解説文あっても「渋滞」を招くだけなので、あのくらいが適量なのかもしれません。その分、公式サイトが頑張っているので、予習には欠かせません。とりわけ公式サイト内の「静物画の秘密を読み解く」は必読。 この展覧会を楽しむ秘訣。それは何人かで一緒に鑑賞すること。 絵の中に隠された思いがけない発見があるはずです。(エビが空を飛んでいたり…) 最後に「今日の一枚」 ![]() オットマー・エリガー(子)「高杯を持つ窓辺の女」1714年 ついつい中央の女性に目が行ってしまいますが、静物画を得意とした父の跡を継いだ作家だけあり、手にした杯や手前に描かれたモノの質感が優れもの。 先のルーベンスもそうでしたが、通常なら脇役である周辺に描かれたモノに目を遣ることができ、新たな発見ができる好機である「静物画の秘密展」は、9月15日までの開催です。7月19日と8月16日は、高校生無料招待日だそうです。(いいな〜) 巡回先 宮城県美術館 2008年10月7日−12月14日 兵庫県立美術館 2009年1月6日−3月29日 青森県立美術館 2009年4月−6月 ![]() 静物画 エリカ ラングミュア おまけ ![]() ディエゴ・ベラスケス「薔薇色の衣裳のマルガリータ王女」について熱く語るウィーン美術史美術館副館長・絵画部長のカール・シュッツ氏。明日(7月5日)午後2時から国立新美術館で講演会があります。 そういえばシュッツ氏興味深いお話されていました。静物画を英語で言うと「still-life(painting)」ですが、これは元々発祥の地であるオランダ語が語源。オランダ、ドイツとわたり英語で「still life」と。ところが、南ヨーロッパ(フランスやイタリア)では「life」ではなく「死」に相当する言葉で表現するそうです。同じヨーロッパでも捉え方が180度まるで違うわけです。 「静物画」奥が深い。。。まだまだ全然勉強不足です。 おまけその2:こんな記事ありました。 海外旅行、行って良かったのは「ウィーン」 リクルート調べ リクルートは海外の旅行先69都市を対象にした満足度調査をまとめた。それによると、最も満足度が高かったのはオーストリアのウィーンだった。これに米国のラスベガスやイタリアのローマが続いた。高評価の都市は総じて街並みに対する評価が高く、古い建造物や整備された都市景観にあこがれを抱く人が多いようだ。 満足度は「とても満足」なら5、「どちらともいえない」は3、「不満」は1といった具合にポイントを与え、加重平均した。総合満足度で首位のウィーンは街並みや音楽鑑賞に対する評価が高く4.49ポイントとなり、続くラスベガスは4.45、ローマは4.36だった。 薄く暗いイメージの街、ウィーン。 でも街の人はとても親切だし観るモノ圧倒されるし確かに満足度は高いかも。 何年前になるかな〜ウィーン行ったの。。。 あの時はフェルメールの「絵画芸術」が修復中で泣いた泣いた。。。 それでは最後に「今日の美味」 ![]() ![]() ショップで販売されいる「グーゲルフプフ(クグロフ)」右の画像はパッケージ。かのハプスブルク家に愛されたお菓子として有名。 【関連エントリー】 - 弐代目・青い日記帳 | 「ウィーン美術アカデミー名品展」 - 弐代目・青い日記帳 | もう逢えない?「金色のアデーレ」 - 弐代目・青い日記帳 | 万国博覧会の美術 - 弐代目・青い日記帳 | Christie's Will Seek ... - 弐代目・青い日記帳 | この秋公開映画「クリムト」 - 弐代目・青い日記帳 | 二つの「バベルの塔」と... - 弐代目・青い日記帳 | 磯崎新受難 この記事のURL http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1440 JUGEMテーマ:アート・デザイン 今回の展覧会では、ウィーンの美術史美術館が所蔵する豊富な作品群のなかから、『静物画の秘密』の主題のもとに75点の秀作を選び出し、これらの「静物画」が、広くヨーロッパ各地に展開したその隠れた理由、そしてさらに、個々の作品が秘めている深い意味内容を探る試みがなされます。ベラスケス作《薔薇色の衣裳のマルガリータ王女》のピンクの薔薇、アントニオ・デ・ペレダ作《静物:虚栄(ヴァニタス)》の不気味な頭蓋骨、ヤン・ブリューゲル(父)作《青い花瓶の花束》の華麗な花々、コルネーリス・デ・ヘーム作《静物:朝食卓》の瑞々しい果実と食器。その他さまざまな「静物」が秘密の意味を問うことになります。 |





















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