![]() 2008.08.15 Friday
「小袖 江戸のオートクチュール」展
サントリー美術館で開催中の
初公開!松坂屋京都染織参考館の名品「小袖 江戸のオートクチュール」展に行って来ました。 ![]() 六本木に移ってからの「サントリー美術館無敗神話」(ここで開催される展覧会はハズレなし)も今回の「小袖」展でお終いかと正直思っていました。 ところが、ところがです。 これがまた素晴らしい展覧会! 「ただ古い着物が飾ってあるだけでしょ?」と言うこと勿れ。 しっかりアートしてます。 ![]() 「流水に菊模様小袖」 ドットが強烈な印象を与える、リキテンシュタインの作品のような「流水」応挙や若冲、蕭白らと同じDNAを持つ波は雄々しく「画面」ならぬ生地全体をうねるように蛇行していますが、それに負けないばかりか逆に波模様を逆手に取り存在感を現している菊の花々。 はじめは派手な波模様に目がいきますが、全体を見渡すとここの主役はやはり、菊花たち。江戸時代の女性たちの気強さのようなものが感じられます。 ![]() 「紅葉に舞楽模様振袖」 今回展示されていた着物の中でもかなり「余白」を生かしている一枚。 背中から腰にかけて何も意匠ない分、裾にちょこっとだけ施されています。舞楽の舞台に大太鼓、それに左側には「胡蝶」の舞が描かれています。 それにしても大胆なデザインです。この背中部分の「余白」によって背後からこの着物を纏った人を見た時、すらりとした背が高くスマートな印象を街ゆく人に与えたことでしょう。特にすれ違った時に振り向いて見た時は効果抜群だったはずです。 江戸時代の着物ですから、虫喰いがあったり、所々解れていたり、切付(アップリケ)が取れかかっていたりとマイナス面多々あるのですが、それを補うに十分の素晴らしい照明技術によって、まるで今作り上げられた着物のような生き生きとした印象を観る者に与えてくれます。 当然ながら、東京国立博物館の木下史青氏もこの展覧会をご覧になり、感心されるとともに驚いたと仰っています。曰く「照明の勝利」と。 ![]() 「西川ひな形」享保3年 1718 また、小袖など着物のデザイン画である、「雛形本」(現在のファッション雑誌のようなもの)も展示されています。刊行された年代にそって年表と共に展示されているので、当時どのような意匠が好まれたのかその推移を追うこともできます。衣装デザインなどの勉強をされている方など絶対に観に行くべきです。素人でさえもこれだけ感動しているのですから。 ![]() 「雪持ち水仙に仔犬模様振袖」 水仙の周囲に白い点々が見えますでしょうか?これ染め残しで表した雪だそうです。現物だとはっきりとそれと分かります。アトリビュートの如く水仙の根元にしっかり「雪輪模様」が描かれているのもニクイ。これによって一層リズミカルな「画面」構成となっています。 おまけに応挙、若冲顔負けの可愛らしい子犬がそこかしこに、愛くるしい姿で配されています。これはズルイ。今でも確実に売れるデザインです。 ![]() ただ、こうした着物は大事に床の間に飾っておくものではありません。実際に使用するものです。そこに用の美が生まれるわけですが、当然「寿命」もあります。何らかの事情で着ることの出来なくなった着物を、昔の人は別の用途に用いたそうです。例えばこちら。 ![]() 書の「表装」として使えなくなった着物を立派に甦らせています。 我々がとうの昔に忘れてしまった、物を大事にする心がまだあった証。 考えさせられるものありました。最近江戸時代の人から学ぶばかり。 最後に「今日の一枚」 ![]() 「網に魚介模様浴衣」 何という大胆なデザイン!フグ、カツオ、タコ、それにイセエビ! 花火大会これ羽織って行ったら間違いなくスターです。 そういえば、前回の展覧会(「KAZARI−日本美の情熱−」展)でも「伊勢海老」に度肝抜かされましたね。 「小袖 江戸のオートクチュール」展は9月21日まで。 和服で行かれると300円お安くなるそうです。 因みに会場内は女性率異常なまでに高かったです。 (それなのに、はろるどさんと男二人で行ってしまった…) それでは最後に「今日の美味」 ![]() ![]() 沖縄を代表するアイスクリーム・ブランド「BLUE SEAL(ブルーシール)」が期間限定で東京ミッドタウンにオープンしています。(9月15日まで) 写真は、ベニヤマイモを用いたアイス「ウベ」 おまけ: 着物関連で、こんな展覧会も秋に開催されるそうです。 ![]() 「古渡りの更紗−江戸を染めたインドの華−」 五島美術館 10月25日〜11月30日まで 更紗といえば、先月千葉市美術館で拝見した「インドネシア更紗のすべて」展が大倉集古館で10月18日〜12月21日に巡回し開催されます。 また、東博でも7月29日より東洋館で「東南アジア染織 ジャワ更紗(バティック)と経緯絣(グリンシン)」を展示するそうです。 ![]() 【関連エントリー】 - 弐代目・青い日記帳 | サントリー美術館開館記念展I 「日本を祝う」 - 弐代目・青い日記帳 | 「水と生きる展」 - 弐代目・青い日記帳 | 「水と生きる」展(後期) - 弐代目・青い日記帳 | 開館記念特別展「鳥獣戯画がやってきた!」 - 弐代目・青い日記帳 | 「BIOMBO/屏風 日本の美」展 - 弐代目・青い日記帳 | 「ガレとジャポニズム」展 - 弐代目・青い日記帳 | 「ロートレック展」 - 弐代目・青い日記帳 | 東京ミッドタウンの「デザイン」&「アート」 この記事のURL http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1482 JUGEMテーマ:アート・デザイン 江戸時代の服飾形式の中心であった小袖は、形がシンプルなため、模様や色などの意匠を見せることが重視された衣服です。上層階級の女性たちは、小袖の意匠に想いをめぐらし、常に新しい表現を求めました。呉服商は、注文主である女性たちへ意匠を提案し、作り手との仲介者となり、小袖が仕立てられました。小袖はまさに江戸時代の高級注文服(オートクチュール)として生み出されたのです。 ![]() |