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「フェルメール展」のピーテル・デ・ホーホ

東京都美術館で開催中の「フェルメール展〜光の天才画家とデルフトの巨匠たち〜」に展示されてある30数点の作品のうち、その中で最多の8作品がピーテル・デ・ホーホによるものです。

ヤン・ファン・デル・ヘイデン、ヘラルト・ハウクヘースト、カレル・ファブリティウス、そしてフェルメールを抑え堂々今展覧会では出展作品ナンバー1に輝いている画家さんが、ホーホです。

ピーテル・デ・ホーホ(Pieter de Hooch)1629年〜1684年(Wikipedia)

「The Courtyard of a House in Delft」1658
(この作品は今回展示されていません。ロンドンで観て来ました)

ここ数年、国内でフェルメール作品を展示した展覧会は勿論、メトロポリタン美術館での「Vermeer & the Delft School」展、プラド美術館での「Vermeer and the Dutch Interior」展、シュテーデル美術館研究所での「Senses and Sins」展等でも常にホーホは、フェルメールとの恰好の比較対照作品として出展されていたようです。

とりわけ、プラド美術館での「Vermeer and the Dutch Interior」展でのホーホの扱いは、「同じ時代同じデルフトで活躍し、同じテーマを描いた画家でもこれほど作品の出来に違いがある」とフェルメールの秀でていることを際立たせる為の、あて馬的存在として扱われていた感がありました。

左:フェルメール「天秤を持つ女」 右:ホーホ「Woman weighing Coins」

フェルメールにしか興味がなかった自分にはこの展示から短絡的に「フェルメール上手い画家さん、ホーホ下手な画家さん。」と思い込んでいました。しばらく。

しかし、フェルメールだけがキラ星の如く突如この時代に出現し、誰の影響も受けずに突出した作品を描いたのではないことはほんの少し冷静になって考えてみれば簡単に答えの出ること。それでもフェルメール熱に魘されているとそういった目も失ってしまうものです。

自戒の念をたっぷり込め、ホーホに深謝する意味を含め、今回の「フェルメール展」に出展されている8作品を観て行きたいと思います。(ゴメンねホーホ)


幼児に授乳する女性と子供と犬」1658-66年

後に紹介する「女と子供と召使い」同様、高い位置にレーマー杯が置かれています。右から差し込む光が反射しているのが分かります。また単眼鏡がないと辛いかもしれませんが、窓の近くに掛けてある鳥かごの水差しにも実は光のハイライトが描かれています。これはちょっと見つけた時、感動しました。


他にも光のグラデーションが見事に表現されていたり、暖炉の中の残り火が「レースを編む女」の赤い糸のようであったりと見どころ満載。ロッテルダム出身のホーホがデルフトに移りかの地で円熟期を迎えたことを如実に示す優品。貸してくれたサンフランシスコ美術館に感謝。


食糧貯蔵庫の女と子供」1658年頃

キャプションには赤ん坊の離乳の為に当時、ビールを飲ませていたとありました。(どうして?)そんなシーンを描いた作品なのでしょうか。それよりも子供(男の子だそうです!)のかぶり物に施された刺繍の描写にビックリです。



そんなことよりも右奥の小部屋の窓ガラスがとてもリアルに描かれています。現代の窓ガラスと違い光の反射がランダム。窓の外には「小路」に描かれているのと同じ壁が見えたりもします。


訪問」1657-58年

フェルメールがホーホの作品を実際に観ていた確率は高いはずです。1657-58年という制作年がほぼ間違いないとすると、窓から室内に差し込む光の描写にホーホはフェルメールよりも早い段階で関心を抱きトライしていたことが分かります。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーにあるこちらの作品もホーホによるものです。様々なバリエーションを試みていたことが伺えます。


訪問」はフェルメール作品と並べてみたい作品の筆頭です。


アムステルダム市庁舎、市長室の内部」1663-65年

今回出展が取りやめとなったウィーン美術史美術館の「絵画芸術」と是非比べてみたい一枚です。配置された人物の大きさに矛盾があります。透視図法の歪みを手前の大きな幕(カーテン)で隠そうとしているのですが、イマイチ成功していないようです。その点「絵画芸術」は見事に鑑賞者の目を騙しています。

見所は…中央にある画中画の窓側のフレームに窓から差し込む光が粒状に表現されています。「デルフトの眺望」のごとく。


女と子供と召使い」1663-65年

マイ・バックならぬマイ・バケツを手に掛け買い物に出かける召使い。暗い室内から明るい戸外へ一刻も早く出たがっているかのように子供が急かしているようです。

前述した通り、暖炉の上に置かれたレーマー杯にキラリと光が。


窓辺で手紙を読む女」1664年頃

現存しているフェルメール作品には、光が画面奥から手前にかけて差し込む室内を描いた作品はありません。ただし、書かれているモチーフ(手紙を読む)はフェルメールもしばしば描いたもの。当時の流行りの画題だったそうです。

室内に置かれた椅子も、テーブルクロスもフェルメール作品にこれまたよく登場するものと似ています。これだけ似通ったモチーフ、部屋を描きながらも画家により差が出るところが愉快。


女主人への支払い」1658年頃

最後に同じ主題を描いた作品が二枚続けて展示されています。こちらの方が自分としては好み。二つの場面を一枚の中で描くことをフェルメールはしていませんが、こういった作品から影響を受けていることは間違いないのではないでしょうか。


奥のシーンだけトリミングして観るとフェルメールと言われても違和感なくなります。実際に角度を変えるとフリック・コレクションの「兵士と笑う女」に大変似て来ます。


女主人への支払い」1674年頃

奥の部屋の壁に窓の影が映っているのが分かります。でも、これキャプションないとホーホだと言い当てることできなそう…描かれた年代によって画風が随分と変化しているのが分かります。ホーホ程長生きしなかったフェルメール。もし80過ぎまで生きていたら、フェルメールの画風も大きく変化したことでしょう。時代の要請を受け。

そうそう、手前の藁がとても綺麗に描かれていましたよ。

ホーホが展示してあるスペースの床の模様にも注目して下さいね。

以上、展示されていた順番にだらだら書いてみました。
今回来日している8点のホーホ、どれも素晴らしい作品ばかり。ある意味、フェルメール集めるよりもこっちの方が大変だったのではと思うほど。

因みにこちらは1968年に国立西洋美術館と京都市美術館で開催された「レンブラントとオランダ絵画巨匠展」の図録の表紙。

レンブラントは勿論、フェルメール「ディアナとニンフたち」もこの展覧会に出展されていますが表紙はホーホでした。

ホーホ、今まで観る目無くてゴメン(今でもたいしたことないけど)やっと君の魅力、偉大さ、そしてフェルメールに与えた計り知れない大きさに気が付いたよ。
ゴメンねホーホ。

日常礼讃―フェルメールの時代のオランダ風俗画
日常礼讃―フェルメールの時代のオランダ風俗画 ツヴェタン トドロフ

今年の秋、一番の注目はこちら。

「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 Vilhelm Hammershøi」

19世紀末デンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの日本初となる大規模回顧展(会期は2008年9月30日から12月7日まで)ハンマースホイの作品は17世紀オランダ絵画の強い影響を受け、フェルメールを思わせる静謐な室内表現を特徴としています。

ハンマースホイ展 公式サイト

フェルメールとデルフトの巨匠たち
フェルメールとデルフトの巨匠たち
フェルメール作品、今世紀最多の来日を記念した特装大型本
光の天才画家フェルメールと、オランダ絵画の黄金期を代表するデルフトの巨匠たちの作品を一堂に集めた展覧会にともない、フェルメール初来日作品を含む、来日する作品を大判図版で収録。作品解説付き。

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この記事に対するコメント

こんばんは。
今週はまた行く予定なので、ホーホの作品も
よくみてきたいと思っています。
すごい見どころがあるのですね。
ありがとうございました。
すぴか | 2008/08/18 12:16 AM
興味深いですね〜
ホーホとフェルメール、並べてみたくなります。
12月まで開催してるんですよね。
もう一度、
今度はフェルメール以外の作品もじっくりと見てきたいです。
サッチャン | 2008/08/18 3:06 PM
こんばんは
ホーホの展示の床模様!
わたしも思わず喜んでしまいました。

「窓辺で手紙を読む女」はかなり好きな作品です。
細部に至るまで楽しみました。

でも「女主人への支払い」が何を意味するものなのか、よくわかりませんでした。絵画として楽しむだけでなく、背景にあるものがわかったら、もっと楽しめそうなのに、わたしはオランダのコトワザも慣習もあんまり知らないのです。
むむ残念・・・
遊行七恵 | 2008/08/18 11:33 PM
@すぴかさん
こんばんは。

ホーホに悪いこと今までしたなーーと
しきりと反省。
フェルメールが直接影響受けたことは
間違いありません。

本当に今までゴメンです。

@サッチャンさん
こんばんは。

並べてみたくなりますよね。
特に絵画芸術とアムステルダム〜は。

開催期間が長いのはありがたいことです。
少しして涼しくなったころまた出かけたいと思います。
もう少し勉強してから。

@遊行七恵さん
こんばんは。

罪滅ぼしにも何にもなりませんが
今まで何観て来たのだろうと。
フェルメールばかりに目が行っていました。
いけませんいけません。

ことわざはブリューゲルの作品にも
描かれていますよね。
日本のことわざもあやうい自分が
ネーデルランドのことわざなど…

光の描写だけ観ても十分満足。
Tak管理人 | 2008/08/18 11:58 PM
Takさ〜ん☆
予習〜〜(,(._.) φ メモメモ)いたしました☆
ありがとう☆
rossa | 2008/08/19 1:26 AM
Takさん
私の持っている「フェルメール」の画集は、大分前に「中央公論社」から出版された「井上靖・高階秀爾」編集、「高橋達史」解説のものですが、フェルメールの38枚だけでは本になりにくかったのでしょう。デ・ホーホ5枚、ファブリティウス3枚なども加えてあります。
解説の中では、「フェルメールの芸術を時空を超えた天才の所産とみなして、これを同時代の美術の動向や社会的背景から隔離してしまう傾向」を批判しています。
「同時代の一連のすぐれた風俗画家との共通点・相違点を検討してはじめてフェルメールの芸術の特質は正確に、そして具体的に理解されるのではないだろうか」ともしています。
そういう意味で、今回の展覧会はとても良い作品構成となっていました。上記の本を予習していったので、そういった目で見てきました(TBします)が、まだまだ不十分なところがあるので、再訪します。
とら | 2008/08/19 7:33 PM
@rossaさん
こんばんは。

いつごろいらっしゃるのですか〜
今の時季まだ残暑きびしいですからね。
涼しくなってからでしょうか。
お待ちしています!

@とらさん
こんばんは。

大変的を射た適切な解説ですね。
その当時すでにその指摘ができることは凄い!
今のブームを予知し警鐘を早々に鳴らしている
かのようです。私なんて10年もかかったのに。。。

そして、今回の展覧会の図録も
大変読み応えがありますよね。
あれだけテキストが多くしかも
しっかりとした文章が掲載されていると
お買い得感あります。

私など全然勉強足りませんので
少し今まで抜けていた部分を
補ってからまた出向きたいと思います。
出来ればご一緒に!
Tak管理人 | 2008/08/19 11:44 PM
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 3階に上ると、「後期デルフトスタイルの画家たち」の章である。ここ注目した画は、教会画で有名なエマヌエル・デ・ウィッテの《ヴァージナルを弾く女》である。 画面の中心から向こうに4つの部屋が見え、遠近法が巧く取り入れられている。いくつもの光と影の帯が横
東京都美術館のフェルメール展より ピーテル・デ・ホーホ について 6月20日第3水曜日、東京都美術館はシルバーデーで65歳以上無料(毎月第3水曜日) 今までこの日に行ったことはなかったのですが、今回はじめて利用してみました。証明を 見せるだけでOK、か
フェルメール展のピーテル・デ・ホーホ | すぴか逍遥 | 2008/08/23 4:18 PM
 先日行った巨匠ピカソ展(その時の記事はこちら。)に感化され、今度は東京都美術館で行われている(た)フェルメール展に行ってきました。  最終週と言うこともあってか連日80分待ちだとか。僕が行った時も60分待ちと書かれており、入るまでに50分かかりまし