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シリーズ『美術史家に聞く』第一回:小池寿子先生

星の数ほどあるブログの中から折角ご覧になられても、毎日毎日素人の感想だけでは、申し訳がないので専門家のお話も記事にしたいな〜と前々から考えていました。そして思いついたのが“シリーズ『美術史家に聞く』

私が美術史家の先生方の処へお邪魔し、素人代表としてお話を伺ってくる形式に。幸い展覧会や講演会等を通じてお近づきになれた先生が何名かいらっしゃったので、直接お会いしてお願いしたり、メールでお願いするなどしやっと実現。

ご多忙の中、スケジュールを何とか都合付けて頂き、まず最初に実現したのが、國學院大學文学部教授であり中世美術(「死の舞踏」)をご専門としご活躍なされていらっしゃる小池寿子先生。大ファンでもあるので緊張しながら國學院へ。


小池寿子 美術史家・國學院大學文学部教授
1956年群馬県生れ。お茶の水女子大学文学部哲学科卒業、同大学院人問文化研究科博士課程退学。ネーデルラント・中世美術を専攻し、カッパドキア、インドの遺跡調査などに参加する。恩師のアドヴァイスもあって中世末期ヨーロッパで流行した「死の舞踏」の図像をテーマに据え、美術作品から死生観・身体観を読み解く研究を続ける。プールとサウナと蕎麦屋をこよなく愛し、身長170センチのスラリとしたプロポーションを保つ。著書に『屍体狩り』『死者のいる中世』『描かれた身体』など。

(『芸術新潮』2008年4月号より)


小池先生の研究室がある國學院大學若木タワー及び研究室

小池先生には以前ブリヂストン美術館での講演会の際や「モディリアーニ展」「静物画の秘密」「コロー展」など展覧会会場でもお会いしにお話を伺わせて頂いたりしておったので比較的スムーズに話をお聴きすることできました。

以下、今回「美術史家・小池寿子」氏と対談(なんて大仰なものではないけど)したものをまとめたものです。「ハッ」とさせられる言葉も。また驚きの真実も。編集下手で申し訳ないですが、是非とも最後までお読み下さい。


綺麗に整理整頓された研究室。

最初は惚れる。大仰な言い方をすれば「愛」。つまり理屈の世界ではなく、感覚的に揺さぶられる魂の在り方。そういったものが自分の美術史家としての出発点にあるのだと思う。

だから他の学問よりも長く続けられる。というのは好きであるという感情はそうそう消えるものではない。勉強していて飽きるということが皆さんないと言っている。旅行しても作品を観て新たな感激を受けるし、そういった精神や感情の在り方が美術史学に向かわせるのだと思う。

美術史家の中には、目に見える対象を学問に選んで良かったという言い方をする人もいる。だから建築などをやる人も同じで、現地に行ってものを見て、実際にそこに住んでいる人々と同じその空間に身を置くことなどと一緒。

ところが文献学等は文字だけを見ていき、解釈したり それはイマジネーションの介在する余地が少ないし、時代が違えば違うほど、実際に今の自分の生活と乖離している。だから美術史の人たちがこれだけ楽しんで学問できるのは、割と日常生活とリンクした感情で作品に接しているからだと思う。

その感情というのは、「きれい〜」とか「カワイイ」とか「何で何だろう?」「怖い」とか、犬や猫を見て思う同じ感情と一緒。皆作品に対しても思う。だから美術館へ行って素直にそう思うことはとても大切なこと。

だんだん美術史学をやっていくと、そこが出発点ではあるけど、何でそれが面白いんだろうとか、何で綺麗なんだろうといったところから学問が始まって行く。(要するに好みの問題から出発していく)

ところが次第に画家の生涯が分かってきて、当時の様式が分かってきたりすると「知識」が増えてくる。その「知識」が絵画鑑賞の邪魔をしてくる。理性が感性を邪魔するかのように。そうなると展覧会に行ってもキャプションばかり見て、「何年に描かれた作品だからこうなんだ」と決め込んでしまう。


学生さんからの頂いた髑髏Tシャツを着こなす小池先生。
窓からは六本木ヒルズや東京タワーが!


美術史仲間と、キャプションを見ないで、まずその絵がどういった感覚を私たちに呼び覚ますか、絵と向かい合った時の本当に純な感情を大切にしていかなくちゃいけないと、よく話している。そうじゃないと絵の前ですぐ解釈をしたがる(笑)解釈は必要だけど、まず作品と向かい合った時のファースト・インプレッションを大切にいつまでも持ち続けていくことが重要だと思う。

やはり長年こういった仕事に携わっていると、なるべく良い作品に多く触れることが大事だと思う。良い作品というのは、どうして人々がそう認識しているのかといったことも含めて作品と対峙していくことが。例えば映画でA級、B級、C級映画なんてあるけど、そんなの誰が区分したか分からない。でも誰か仰っていたけど「結局良い映画は、良い映画なんだよ」と。

自分でもやはり何年も観ているうちに、「やっぱりラファエロは良いわ〜」とか「ミケランジェロは凄い!」とかいったものが出来てくる。徹底的に嫌と言うほどまで作品を観た方がいいと思う。(し、観なくてはダメ)作品を観ることが何よりの第一歩。

徹底的に旅行して美術館に行くなり、教会に足を運び、「現物を観る」ことが何よりも大切。(Webや印刷物で簡単に観られますが?)芸術作品は現地の空気に触れることが大事。特に教会内に置かれた作品など何処に置かれているかや、光の入り方、蝋燭の臭いを嗅ぎながら観るだけでも全然イメージが違うのは明白。だから最も大切なことは現場に行って「体感」すること

自分は旅行好きなのもあってそういった方法論が合っている。所謂机上の空論ではなくて、現地に足を運び、そこの大地に立った時に沸き起こってくる感覚を文章化したいと思っている。全くそうじゃない人もいるけど、私は旅をしながら得た感覚を文字化していく方が好きなので、そういった面からも美術史といのは合っていると思う。突き詰めて言うと(なるべくなら)自分が実際に行って観て感じたことしか書きたくない。


小池先生が監修された展覧会「死の舞踏−中世末期から現代まで」展
2000年10月11日〜12月3日 国立西洋美術館


(美術史家への道、また現在の研究テーマである「死の舞踏」についてどのような経緯で決めていかれたのですか?)

元々私は美術史家ではなく、スポーツ選手を目指していた。

私が専門としている屍体などの研究は、元々スポーツをやっていたことに起因する。
小学生の時は、陸上・水泳。中学の時はバレーボール。その時はオリンピック選手を目指し本格的にやっていた。でも自分のサービスミスで県大会出場を逃したことがショックでチームプレーから足を洗う。高校では陸上でハイジャンプをやっていた。

ところが、中学の時に痛めた腰が悪化し、他の悪い要因も加わり40歳過ぎまで腰がまったく駄目に。(ご本人曰く「地を這うような生活をしていた」)大学からサバティカルをもらいベルギーに行き唯一許されていた運動である水泳をし、身体を立て直すことに成功した。

哲学か美術史(中世美術)を学ぶべくお茶の水女子大学へ。(哲学科に美術史学科がある)マスターへ進む時に柳宗玄先生から「小池さん『死の舞踏』というのもあるよ」と勧められ現在の研究の道へ。

先生方(柳先生や坂本満先生)の勧めはあったが、自分自身でそういった系譜を持っていた。だから逆に身体を壊さなければ自分は完全に運動選手になっていたと断言できるほど体育会系。だからオリンピックは、もう…特に陸上、水泳、バレーは自分がやっていたのでつい見てしまう。

(今も仕事の合間を縫って、週に二回はプールで泳いでいらっしゃるそうです)

描かれた身体
「描かれた身体」 小池 寿子

↑こちらの著書の中表紙にはこんな絵を選ばれていらっしゃいます。



(國學院に赴任される前に教鞭をとっておられた文化女子大では授業中何度か倒れたこともあったそうです。)私の場合『死の舞踏』というテーマは研究対象というより、自分の生き方そのもの。絵を観ると運動していたこともあり、骨格、体型、筋肉とかに興味がいく。だから「色彩の画家」よりも「線描の画家」の方が好き。だから人と会うとまず骨格に興味がいく(笑)

だいたいこのあたりで時間切れに。(次にお会いする約束の方がお待ちでした)

最後に小池先生のお好きな美術館と画家をお聞きして終了。

美術館
クリュニー中世美術館(パリ)
・ルーブル美術館の中世ルネッサンスのあるリシュリューのコーナー
アカデミア美術館(フィレンツェ)

画家
サセッティ、ショバンニ ディ パオロ、マルカントニオ ライモンディ、ヒューホ ファン デル フースなどだそうです。またペルジーノ、ジョルジョーネのいくつかの作品もお好きだそうです。


来年(2009年6月13日−8月16日)Bunkamuraで開催予定の「だまし絵」展−イリュージョンを楽しむ− (仮称)に関連したイベントを企画されていらっしゃるそうです。こちらは情報入り次第またこちらでアナウンスさせて頂きます。

また現在講談社から創刊中の「週刊 世界の美術館」も監修をお務めになっていらっしゃる為、超が付くほど多忙な毎日。まさに分刻みのスケジュール。実際この日も私がお話を伺っている間にも電話や来客が。近いうちに国外逃亡はかるそうです。

他にもお聴きしたこといくつもありますが、とりあえずこの辺で。最初から飛ばし過ぎて後が続かなくなってはいけませんので。

因みに研究室でこんな貴重な本も見せて頂きました。



ベリー公のいとも豪華なる時祷書

最後に再度。
お忙しい中、ご丁寧に対応して頂きありがとうございました。
また次は「ミレイ展」で。

死を見つめる美術史 (ちくま学芸文庫)
「死を見つめる美術史」(ちくま学芸文庫) 小池 寿子

おまけ
学生さんたちからのプレゼントはやっぱり骸骨グッズが多いとか…


フランス語の本に混じってなぜか「セーラームーン」や「やさぐれぱんだ」が。しゃれこうべの上のカエルもキュート?!

極めつけはこちら「髑髏半纏」

折角なので、無理言って羽織って頂きました。

何から何までホントお世話になりました。
美味いビールの店探しておきます!

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この記事に対するコメント

をっ!
新機軸ですね!
lysander | 2008/08/28 12:51 AM
@lysanderさん
こんばんは。

いいでしょ!この企画。
一本記事書くのにえらく時間かかるけど。
それに先生にもご迷惑もかけるし。。。
いつまで続くか見守ってやって下さい。
Tak管理人 | 2008/08/28 1:04 AM
 小池先生との対談を上手くまとめあげ、今後のシリーズ連載が非常に楽しみです。
 最近苦手だったSkull(髑髏)も許容範囲に。「死」ぬ前の確かに生きた証拠だから。「ホネホネたんけん隊」の影響も。
panda | 2008/08/28 1:11 AM
先日は有難うございました。
好企画ですね☆思わず、読み耽ってしまいました。
次回以降も楽しみ、その前にご紹介されている先生のご本を読んでみます。
meme | 2008/08/28 8:20 AM
小池先生大ファンです。
こんなに若々しくてかっこよい方なんですね〜。ますます好きになってしまいました。
| 2008/08/28 8:39 AM
とても面白かったです。さすがTakさん。
小池先生の魅力がたくさん伝わってきました。
「舞踏」というところにぐっと惹かれたのですが、「死」がつくんですよね(わかってない)。
まあ、広く浅くがモットーなので、「死を見つめる美術史」をAmazonのカートに入れました。
ogawama | 2008/08/28 10:35 PM
@pandaさん
こんばんは。

小池先生お話する速度はやいはやい!
上手く聞き取れているかどうか
いささか不安ですが、大筋は外していないかと。
シリーズが続くか心配です。

@memeさん
こんばんは。

いえいえ、こちらこそ。
小池先生の本はとてつもない事を
扱っていながらも読みやすく書かれています。
授業受けられる学生さんが羨ましいです。

@| | 2008/08/28 8:39 AM | さん
こんばんは。

お人柄は勿論。
お話していてもキラリと知性感じさせる
大変素敵な方です。惚れぼれ。

@ogawamaさん
こんばんは。

無理しました。また。
やはり御苦労なされて今のポジションに
いらっしゃる方の言葉には含蓄があります。
そして重みも。

新潮社から出ている
「一日で観るルーブル」に小池先生が!
Tak管理人 | 2008/08/28 11:39 PM
やはり、素敵な方が話をすると素敵な話になるんですね。
(もちろんまとめ方もうまいのだと思います)
このシリーズ、どんどん行きましょう!
対談人数3桁超えまで!
KIN | 2008/08/29 12:24 AM
@KINさん
こんばんは。

先ほど、先生にあれでよろしいですか?と
伺ったらまだご覧になられていないとか。。。
大丈夫かな〜こんなので。。。
心配心配。
Tak管理人 | 2008/08/30 12:02 AM
Takさんなら、(ご本人の意向はさておき)
美術評論で食べていけるだけの力を持ってらっしゃると
常々思ってましたが、こんな企画を立てられてたとは
流石ですね。感嘆。

美術を専門とされてる小池先生が、「知識」以前に
「観た印象」が大事だと述べられてるのが嬉しかったです。
「知識」が観る楽しさを倍増させることもありますが、
「眼福」なんて表現があるあたり、観た印象を素直に
楽しめるのにこしたことないとも思いますので。

次回も楽しみにお待ちしてます。
m25 | 2008/09/02 9:16 PM
@m25さん
こんばんは。

素人が思いついたことに
任せて好き勝手やっているから
きっと読まれていて楽しめるのかと。
それが強みです。

小池先生とは何度もお話していましたが
これだけ突っ込んだことお聞きしたの
今回が初めてでした。
アップできない内容も…

次回は多分あの人です。
Tak管理人 | 2008/09/02 11:37 PM
現在国学院の学生の者です。
たまたま通りすがったのですがこんな楽しい記事を拝見できてためになりました。
小池先生の授業は何度か受講しましたが、こんなにお忙しい方とは知りませんでした…(@_@)
はじめまして | 2008/11/03 7:51 PM
@はじめましてさん
こんばんは。

小池先生のいらっしゃる大学に在籍し
先生の講座まで拝聴できるのなんて
羨ましいかぎりです!
目の前に居る人がどれだけの人なのか
見極める力も次第に養うとよいですよ。
Tak管理人 | 2008/11/03 11:17 PM
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