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「源氏物語の1000年」展

横浜美術館で明日から開催される
特別展「源氏物語の1000年 あこがれの王朝ロマン」のプレスプレビューにお邪魔して来ました。



世の中には「源氏物語」で生業を立てている方、沢山いらっしゃいます。そのような方にとっては、また所謂「源氏物語ファン」にとっては関東では唯一最大の「源氏千年紀のイベント」黙っていても横浜まで足を運ばれることでしょう。

ところが、一般の美術愛好家にとってはどうでしょう?

今年の5月にこの展覧会の記者発表会にお邪魔させて頂き、展覧会の内容について担当者から伺った際には、正直盛り上がりに欠ける展覧会との印象を受けました。それはきっとチラシや公式サイトをご覧になられた方も多かれ少なかれ同じような感触を持たれたはずです。

でも、展覧会はいつもそうであるように、実際に出向いてみないとその良さ(悪さ)を感じ取ることがまず出来ません。半ば駄目もとで、当たって砕けろ的なノリで横浜まで。(雨が降っていたら行かなかったかも…)

で、結果はどうだったのかと言うと。。。

(いつものパターン通り)これが大正解。大当りの展覧会でした。
しかしてその訳は…

この特別展は、全体を通し「源氏物語」にまつわる古美術品がメインであるかのような印象を抱いていましたが、それはあくまでイントロ部分だけで、大半は「源氏絵」と呼ばれる源氏物語の内容や場面を絵画化した屏風絵や浮世絵そして近世の日本画まで、これでもか〜と展示されている点です。

以下掲載している写真は主催者の許可を得て撮影したものです。

展覧会に出かける前のイメージ

国宝「金剛藤原道長経筒」他


賀茂御祖神社古神宝」(御装束)他

中宮彰子に仕えた紫式部が生きた時代のお宝の数々。
当時信仰を集めていた浄土教にまつわる品々や貴族たちが纏っていた装束や「白氏文集」「和漢抄」を始めとした文字もの。確かに歴史的価値のある品々ですが、ダイレクトに「源氏物語」とは結びつけにくいものばかり。

でも、これらは20数点にとどまり、残りの大半は「源氏絵
これがとてつもなく凄い!質、量とも申し分なし!!

あれこれ語らずに展示されている現物を。
因みにここ東博ではありません、横浜美術館です。

まずは、鎌倉時代に作られた現存する最古の絵巻。

国宝「紫式部日記絵巻」(9月6日まで公開)


扇面流貼付屏風」海北友松 室町時代 


第三十四番 若菜上」西村重長「八景 石山秋月」鈴木春信 江戸時代


絵入源氏物語」他 江戸時代


左から「田舎源氏」月岡芳年 「雪月花之内石山寺秋之月」水野年方 
古代模様紫式部」小林清親 全て明治時代


左より「待月」伊藤小坡「紫式部図」上村松園 
紫式部図」菊池契月「紫式部」梥本一洋 大正〜昭和期


源氏物語絵詞」石踊達哉 平成9年

これらは、展示されているものの、ほんの一部に過ぎません。鎌倉時代から平成の世まで綿々と受け継がれてきた源氏絵を横浜美術館で目の当たりに出来るのです。日本美術史を「源氏絵」から読み解くことも可能かと。

これまでは、せいぜい浮世絵止まりだった「源氏絵」の流れを近世絵画まで含めて一挙に公開できるのはコレクションを多く有する横浜美術館ならではの発想。今までになかった源氏展に見事仕上がっています。

今回の展覧会担当学芸員の柏木智雄氏が、以前仰っていたこと思い浮かべました。曰く。1000年もの永きに渡り伝わってきたということは、その時代時代の人々が「残そう」という意識がないと到底無理な話。「源氏物語」にはそれぞれの時代に様々な受け入れられ方をしこの2008年まで残り、今でも尚読まれ続けられているのだと。

時代によって様々な受容があったことは、例えば明治時代以降、特に戦前を顧みるだけでも明らかなこと。天皇を極端に祭り上げていた時代「源氏物語」は異端の書でもあったわけです(天皇家の不義を描いているわけですからね。。。)

描かれた「源氏物語」を会場で読み解く。

こんな知的な楽しみが思う存分楽しめる展覧会なのです。
雨が降ったら行かないつもりでいた自分が愚かでした…反省。

え?それでも、まだ「横浜まではな〜遠いし…」何て思っていらっしゃる方、これなら如何ですか?絶対に見逃せいない作品ですよ。ただし期間限定ですが。


岩佐又兵衛「和漢故事説話図」須磨、浮舟

文春新書から今年発売され売れに売れている辻惟雄先生の「岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎」にも当然取り上げられている作品。

須磨
雨風だけでなく、庭の木々や生垣までもが変形し源氏に襲い掛かりそうなオドロオドロシイ様子を描いています。

浮舟
言葉ではとても表せない心の内をそれぞれ抱えた二人。その心情が見事に表現された妖艶な顔。そして黒い月に触手のような木々。

この二枚、会場内でもひと際異彩を放っています。どろり、でろりとした全体の雰囲気。最も妖しい源氏絵ではないでしょうか。でももしかして最も「源氏物語」と目睫の間にある作品かもしれません。

こんな凄い作品まで出ているとは努々考えもしませんでした。
これチラシに使ったら集客力上がると思いますよ〜

ただ、この二点、展示期間が9月6日まで!(これだけの短期間でも、所蔵先の福井県立美術館に懇願しやっと借りることができたそうです。)

急がなくちゃジョギング

それでは最後に「今日の一枚

 
」(大下絵)上村松園

東京国立博物館所蔵の上村松園の名画。
謡曲「葵の上」に想を得て源氏物語に登場する六条御息所の生霊を描く。美人画作家といわれる松園の作品の中では異色の主題。

行かないとまずいでしょ!「源氏物語ファン」ならずとも。

「源氏物語の1000年展」は11月3日までです。

おまけ


「源氏物語絵巻」復元模写として以前テレビでも取り上げられ、展覧会も開催されました。現物見逃した方、ちゃーーんと展示されていますよ。最後の部屋に。

よみがえる源氏物語絵巻 DVD-BOX
よみがえる源氏物語絵巻 DVD-BOX

それでは最後に「今日の美味


横浜ロイヤルパークホテル68階日本料理レストラン四季亭の横浜美術館「源氏物語1000年展」開催記念特別ランチメニュー「源氏遊膳
源氏物語をイメージした焼物八寸、お造りから果物まで、さまざまなお料理を少しずつ楽しめるお膳を特別にご用意いたしました。平安貴族も好んで食したといわれる日本古来の乳製品「蘇」など、平安王朝の雅やかな世界を表現した、繊細で美しいお料理をお楽しみください。
早速食べに行こうと思ったらこれ、明日からの特別メニュー。。。土日も食べられるそうなので次回必ず!

【関連エントリー】
- 弐代目・青い日記帳 | 特別展「源氏物語の1000年」記者発表会
- 弐代目・青い日記帳 | 「源氏物語と和菓子」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「よみがえる源氏物語絵巻展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「源氏絵―華やかなる王朝の世界―」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「王朝の恋―描かれた伊勢物語―」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「石山寺と紫式部展」


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日本はもとより世界の文学史における名作の一つ「源氏物語」は、「紫式部日記」の記述から、寛弘5年(1008)には宮中で読まれていたことが確認され、物語としてある程度まとまった部分が成立していたと考えられています。したがって、2008年源氏物語が歴史上に登場してちょうど1000年の節目にあたります。その「源氏物語千年紀」を記念し、特別展を開催いたします。

本展では、「源氏物語千年紀」に関連する東日本最大の企画展として、現代にまで至るその「源氏絵」、および源氏物語や紫式部にまつわる絵画を中心に、国宝・重要文化財・重要美術品約20数件を含む豪華絢爛な作品を展観いたします。
展覧会 | permalink | comments(18) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

わあ♪素晴らしい内容なのですね!
これはやはり…特別ランチとのセットで行かなくては!!!
最高のナビをどうもありがとうございます。
Ichi-N | 2008/08/30 7:36 AM
煽ってくださいますね(笑)
9月6日までは仕事で無理なのが悔しいです。
源氏物語という主題をこれだけ広いコンテンツで紹介されると
ムリヤリにも見識が広がされてしまいそうな気がします。
ちょうど父親の見舞いに行く予定があるので、そのついで(?)にぜひ観に行こうと思います。
それまでに源氏物語をざっと読んでおいた方がよいかな・・・
| 2008/08/30 9:55 AM
わっ、嬉しい!
これは間に合います。
Takさんがここまで書いていらっしゃる展覧会ですから。
是非参加します・・・・でも、やっぱり人ごみ必須ですよね?!
OZ | 2008/08/30 6:38 PM
「絵入源氏物語」
これ見てみたいですね〜
この本が出回ってた当時の様子がうかがえます。
皆さんこういうのをワクワクしながら読んでたんでしょうね。
そうそう!「あさきゆめみし」がアニメ化決定なんですよね。
なんかこの秋は源氏物語読んでみようかしら(もちろん現代語訳ですけどね)
サッチャン | 2008/08/30 7:42 PM
ご案内ありがとうございました。
さっそく出かけてきました。
須磨・浮舟は地味なので、多くのお客さんは
すっと見て通り過ぎていました。
私はずっと見とれていました。
ミレイ展にも出かけて、初日の展覧会を二つ
掛け持ちしたのは初めてのことでした。
一村雨 | 2008/08/30 8:34 PM
こんばんは。
この展覧会を見るために?初夏から源氏、頑張って読んでいるところです。色々と引っかかってきて、なかなか前に進みません。
(竹取物語やら、白居易長恨歌やら、雅楽やら・・・)
それにしても、奥深い展覧となっているようですね。
又兵衛源氏に会えるかどうか・・・

濃いレポートありがとうございます。
しかし、驚くほど良く降る雨です。
あべまつ | 2008/08/30 10:09 PM
@Ichi-Nさん
こんばんは。

メッセありがとうございます。
ブツお送りしますね。
ランチも食べたかったんですけどね〜

@| | 2008/08/30 9:55 AM | さん
こんばんは。

あまり乗り気でない時に
限り素晴らしかったりするから
困ってしまいます。
源氏物語は54帖読むとなると
大変なことですので。。。
あらすじと言ってもまた大変だし。

@OZさん
こんばんは。

それほど混雑しないのでは?
でも、どうかな〜
テレビとかで紹介すると
あっという間に混雑しますからね。

@サッチャンさん
こんばんは。

「あさきゆめにし」も少しだけ
展示されていましたよ!
友人が源氏で飯食っているので
彼にもぜひとも行ってもらいたと。
橋本治さんの源氏がお勧めです!
秋の夜長に源氏。。。

@一村雨さん
こんばんは。

いえいえ。急かしてすみません。
「被害者」多いようです。

又兵衛は確かに源氏ファンの
好みではないですよね。
スルーされても当然かな。
おかげでゆったりとご覧になれたかと。
昨日遊んでしまった分、今日辛かったです。。。

@あべまつさん
こんばんは。

そろそろ野分のシーズン到来ですね。
その前にでも。

源氏は派生的に広ーーく
様々な分野に飛び火して
困ってしまいます。
民俗学的にとか好きなんですけど
お客さんよべませんよね。。。
Tak管理人 | 2008/08/30 11:44 PM
こんにちは。
又兵衛に惹かれて行ってきました。
初日ということもあってか、けっこうな人出でしたが、又兵衛のところは反対側が大きな屏風ということもあってか空いていました。
その前でガラスにはりついて又兵衛はすごいとかつぶやく変な人になってしまいました。
それにしても1週間で展示替えは早すぎです。

冒頭の紫式部(詰め物でのしたかのようなボリューム)、又兵衛の表現力(ちょっと地味だけど)、そして松園の焔(怖い!)がトップ3でした。

若冲、蕭白ときた江戸絵画ブームを次ぐのはやはり又兵衛ですね。洛中洛外図屏風もあるし、浮世絵の始祖というフレーズもあるし。あとは地味な印象を払拭する起爆剤だけですね。
mizdesign | 2008/08/31 8:01 AM
また源氏かよー、とスルーするところでした。
情報ありがとうございます。で。
岩佐又兵衛「須磨」「浮き舟」は9月6日(土)までなんですか。
この土曜は雨に負けて家にこもり、
今日は今日とて暑さに負けて家にいて、
貴重な土日をつぶしてしまいました。不覚!
こうなったら金曜日の夜間開館を狙います。
上村松園「焰」も楽しみー。
ふふふ、待ってろ、横浜美術館。←意味なく強気。
菊花 | 2008/08/31 7:03 PM
明日お休みをいただいているのでー医者に行かねばならないのですがー時間に余裕があったら、源氏に、なかったら「ミレイ」に行ってきます。
こうやって展覧会のおおよその内容を行く前に前もって知られるのもネット時代ならではですねー。
岩佐又兵衛にも結構関心があります。
この展覧会NHKプロモーションで招待券募集していたんですよね、応募したけど外れましたがー。
oki | 2008/08/31 11:32 PM
初めてコメントさせていただきます!
源氏物語、実は卒論のテーマでした。

気になっていたのですがのんびりしていたら
早くも展示品入れ替えがあるとは・・・(x_x;)

Takさんの熱いコメントよんでやはり、行かねば!!
と思います!
ありがとうございました。
ココ | 2008/09/01 7:54 PM
@mizdesignさん
こんばんは。

昨日はお疲れさまでした。

一週間でもやっと借りられたそうですよ。
福井に戻るとフツーに展示されるとのこと。
もったいないですよね〜
ある意味、これだけで目玉になるのに…
(辻先生の講演会とかも)

松園の焔の下絵はある意味
本物よりも鬼気迫るもの感じられますよね。
あれが観られたのは驚きです。

もっともっとうまく宣伝するば
源氏ファンだけでなくアートファンも
きっと大勢足を運ばれる好展覧会かと。

@菊花さん
こんばんは。

横浜美術館がいつもの横浜とは
打って変わって、さながら東博の
ような雰囲気に変身しています。
それもある意味見ものです。

金曜夜間とか確かに
狙い目かもしれませんね。
是非!!

@okiさん
こんばんは。

良い展覧会は出来るだけ多くの方に
ご覧になってもらい、感動を共有したいので
ついつい筆が。。。
チラシなどのオフィシャルなものからは
伝わってこなかった魅力をつらつら書いてみました。

必見です。(次のセザンヌも楽しみなのですが)

@ココさん
こんばんは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

卒論で扱われたとなると
テーマを何に絞ったか
どのように設定されたか
気になるところです。

展示替えは日本美術には
つきものなので仕方ないにせよ
もう少し又兵衛展示してもな〜
Tak管理人 | 2008/09/01 9:04 PM
岩佐又兵衛の《須磨》と《浮舟》観てきました。
あのように上品なタッチは、浮舟にピッタリだと思いました。須磨は、又兵衛のオドロオドロシイが似合っているかもしれません。
とら | 2008/09/01 9:10 PM
@とらさん
こんばんは。

この二枚が観られただけでも
十分に価値ある展覧会でしたね。
「須磨」の方が辻先生好みでしょうか。
Tak管理人 | 2008/09/01 9:20 PM
源氏物語の引き目、鉤鼻、この頃の美意識って…、
などど昔は思っておりましたが、
喜怒哀楽、特に恋愛の複雑な想いは、言葉でだって、
簡単にあらわせるものではなく、絵巻の絵も、
読み手に、より深く想像させる為のあえての無表情だと聞き、
日本人の行間や余白を読む心に感心した次第です。
その時代、果たして本当にそこまで狙ったかは判りませんが、
そう捉えるのも興味深いなぁと思いました。
是非、足を運びたい展覧会だと思います!
いつまでたっても色男には翻弄されちゃうのね(>_<)



nao | 2008/09/05 12:34 PM
@naoさん
こんばんは。

オダジョー結婚した今
次は誰を狙います?

源氏物語の漫画「あさきゆめみし」が
映画化されるそうです(アニメ化)
これもまた愉しみです。
顔の違いは良く分からないので
声優さんに個性持たせてほしいです。

新日曜美術館で取り上げる前に是非!
Tak管理人 | 2008/09/05 11:26 PM
こんばんは。
道長をはじめ、はじめの方は「どこかで見たことが…?」のような展示でしたが、
その後に怒濤のごとく並ぶ源氏絵はさすがに壮観でしたね。
又兵衛は福井に行けば見られるのでしょうか。
急に行きたくなってきました…。

二週目の土曜、午後はまだ余裕がありました。
これからでしょうね。
はろるど | 2008/09/11 10:01 PM
@はろるどさん
こんばんは。

この展覧会記事にも書きましたが
正直どうかな〜と思っていました。
きっと他の方々も。。。
しかし行ってみないと分からないものです。
これだけの源氏絵をずらりとそろえてもらうと
その変遷や時代のニーズのようなものも分かります。

トリエンナーレと掛けもちする方は
流石にいないでしょうね。。。
Tak管理人 | 2008/09/12 6:48 PM
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