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「浮世絵−ベルギーロイヤルコレクション展」

太田記念美術館で開催中の
ベルギー王立美術歴史博物館・ベルギー王立図書館所蔵「浮世絵 −ベルギーロイヤルコレクション展」に行って来ました。



9月は何かと「行事」の多い月。そんな時に限って観ておかなくてはいけない「会期限定」展覧会が。「浮世絵−ベルギーロイヤルコレクション展」はその最たるもの。9月2日〜28日までの一ヶ月足らずの僅かな会期。しかもその間、前期・後期に分かれ大量の展示替えがある何とも忙しない展覧会。

【前期】9月2日〜15日  【後期】9月17日〜28日

ただそれにも理由があり、ベルギーロイヤルコレクションの誇る数より質に勝る保存状態の良い浮世絵にそう長い間ライトを照射させておくこと出来ません。一旦色あせてしまった浮世絵は油彩画のように元通りになりません。


鈴木春信「五常 義」1767年

江戸時代に刷り上がったばかりのような春信の錦絵。

「参照」として褪色してしまった作品を並べてみれば、如何にこの発色、色合いが素晴らしいことか一目瞭然のはず。そもそも浮世絵は手に取って楽しむもの。色あせてしまって当然。しかし幸運にも状態の良い作品が江戸末期から明治期に遠く海の向こうの国に渡ってくれたことで、抜群の保存状態を保ってくれることに。


鈴木春信「めだかすくい」1767-68年頃

幕末に良質の浮世絵が海外に渡ったことを「流出」と捉え、嘆くきらいがありますが、どうもこういった作品を見せて頂くとそれはとても「良い事」であったのではないかと最近とみに思います。

日本に残されていても高温多湿の版画にとって良好とは決していえぬ環境下、退色余儀なくされてしまったかもしれませんし、何より関東大震災や東京大空襲で灰燼と化してしまったかもしれません。

それを思えばベルギーやボストンで浮世絵の有する価値を高く評価し「非公開」に近い状態で保存されていたことは逆に喜ばしいことではないでしょうか。

何てことを「めだかすくい」している女性の透けた足をマジマジと観ながらふと考えたりもしました。

ボストン美術館 浮世絵名品展
江戸東京博物館 10月7日〜11月30日

美人画を描かせたら右に出る者はいない歌麿の作品。

喜多川歌麿 「見越入道」1785-93年
(この作品は後期にも展示されています)

美人画も勿論多く出展されていますが、その中にあって3点だけお化けを描いた珍しい作品が混じっています。これは必見かも。葛飾北斎の『百物語』シリーズとは全く雰囲気の違う妖怪絵。実に愉快です。

東洲斎写楽も9点ほど出展されています。その中には世界に一枚しか残っていないとされる作品が3点含まれます。

左:東洲斎写楽 「四代目岩井半四郎の鎌倉稲村が崎のおひな娘おとま実は楠政成女房菊水」(ベルギー王立図書館蔵)
右:東洲斎写楽 「三代目市川高麗蔵の廻国の修行者西方の弥陀次郎実は相模次郎時行」 (ベルギー王立美術歴史博物館蔵)共に1794年
(この二作品は後期にも展示されています)

写楽の得意とした「大首絵」ではありませんが、共に身体全体に動きが感じられる作品。歌舞伎のここぞ!というワンシーンを見事に表現。緊張感すら漂う作品です。

残りの一枚「「二代目嵐龍蔵の奴なみ平 とら屋虎丸」(ベルギー王立美術歴史博物館蔵)1794年は前期のみの展示。この方がきっと手を叩いて喜んであろう一枚。

この他にも、鳥文斎栄之、磯田湖龍斎、勝川春章、春英、春好、歌川広重、鳥橋斎栄里、一筆斎文調、北尾重政、魚屋北渓、岳亭春信、鳥居清長などなど。「浮世絵」と一言では括りきれない多種多様な絵師が勢ぞろい。(清長の「女三の宮」なんて良かったな〜)

で、もって忘れてはいけないのが歌川国芳!!
金魚や蛙(オタマジャクシ)たちを擬人化したシリーズ「金魚づくし」
前期は4点の展示が。説明不要。国芳の戯画をとくとお楽しみあれ。


歌川国芳「さらいとんび」1842年


歌川国芳「さけのざしき」1842年


歌川国芳「まとい」1842年


歌川国芳「にはかあめんぼう」1842年

特に最後の「にはかあめんぼう」は大ヒット!にわか雨をアメンボウで表現するとは何とも軽妙洒脱な発想。突然の驟雨さえも江戸っ子が楽しんでいた様子うかがい知ることできます。平成の世では「ゲリラ雷雨」なんて物騒なネーミングの集中豪雨に怯えているなんて思いもよらないこと。

尚、後期には「金魚づくし」の他の3点が出展されるそうです。これも観に行かねば!因みに国芳の描いた「金魚づくし」は「もっと知りたい歌川国芳―生涯と作品」によると合計8枚あるとのこと。出来ればもう一枚観てコンプリートしたかったな〜と贅沢で我がままを言ってみる。

もっと知りたい歌川国芳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
もっと知りたい歌川国芳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
悳 俊彦

最後に「今日の一枚


喜多川歌麿「錦織歌麿形新模様 浴衣

美人の条件である色白。それを際立たせようと顔の輪郭線を省いた浮世絵を残したのでも有名な歌麿ですが、この作品では着物の「衣文線」を省いてしまっています。

これにより着物が一枚の布を張り付けたような見栄えに。また帯の部分も。(スクリーントーンを貼った漫画でこんな絵見たことあります。)それでもしっかりと右足先(指)は着物の裾から顔をのぞかせているからニクイ。

また画像では潰れてしまっていますが、手に持った団扇にはエンボス加工のようなものが施され骨まで表現される手の入れよう。やっぱりお化けより美人画でしょう。どうすれば妖艶に表現できるかいつも考えていたのでしょうね。いいな〜そういう生活。

「浮世絵−ベルギーロイヤルコレクション展」は9月28日まで
その後展示作品を入れ替えて以下に巡回。

高島屋京都店 2009年1月7日〜19日
高島屋日本橋店 2009年4月29日〜5月11日


すぐわかる楽しい江戸の浮世絵―江戸の人はどう使ったか
辻 惟雄,浅野 秀剛,田辺 昌子,湯浅 淑子


ところで、この展覧会を監修されれていらっしゃる永田生慈氏の肩書に「墨田区北斎館(仮)施設整備推進監」とありました。初耳。検索してみて下さい。色々と出てきますよ。

それでは最後に「今日の美味


ベルギーが誇る世界遺産「ブリュッセルのグラン=プラス」近くのカフェで食べた「ワッフル」夜レストランで食べたムール貝も美味しかったけど「見栄え」の良さでワッフルに。

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ベルギー王立美術歴史博物館とベルギー王立図書館は、ともに世界でも屈指の浮世絵コレクションを所蔵することで知られています。ベルギー王立美術歴史博物館の浮世絵は、1905年に収蔵されたエドモン・ミショット(1831〜1913)のコレクションを中心とするものです。その後も長年にわたって収集が続けられ、現在ではその数約7500点以上におよびます。また、日本初公開となるベルギー王立図書館のコレクションは、19世紀末から収集された、500点を超す浮世絵からなります。

所蔵の点数から見れば、海外には約5万点を所蔵するアメリカのボストン美術館、約2万5000点を所蔵するイギリスのヴィクトリアアンドアルバート美術館のように、ベルギーを上回る規模のコレクションもいくつか見られます。しかし、ベルギー王立美術歴史博物館及び王立図書館のコレクションが優れている最大の特徴は、群を抜く素晴らしい保存状態にあります。浮世絵は色が劣化しやすく、江戸時代に摺られた当初の色彩を保つ作品は稀です。しかし両館の所蔵作品は、出版当初の、そして浮世絵本来の豊かな色彩をよく保ち、江戸の人々の感動を鮮やかに伝えてくれます。

本展ではコレクションの中から、日本初公開作品を数多く含む、厳選された約150点の作品を展観いたします。写楽、歌麿、春信、北斎、広重、国貞、国芳など、数多くの絵師の作品をバランスよく含み、最高のコンディションを保つ珠玉のコレクションをご堪能ください。


展覧会 | permalink | comments(11) | trackbacks(6)

この記事に対するコメント

こんばんは。

良い展示でしたね。春信はもちろんのこと、私的ベストは歌麿でした。彼の描く女性はカッコいいですね。

>その後展示作品を入れ替えて以下に巡回。

さすがに京都までは…。
ただしこの水準なら全部見たくなってしまいますが…。
はろるど | 2008/09/15 11:53 PM
@はろるどさん
こんばんは。

三会場に分けて展示されます。
とあったのでもしや。。。と
思ったら案の定。
京都は山口さんと絡めて無理矢理という手も。

歌麿良かったです。
益々好きになりました。
後期にも期待です。
Tak管理人 | 2008/09/16 12:35 AM
最近、素晴らしい春信作品ばかり見慣れて
日本の美術館に残っている春信を見ると
悲しくなります。
一村雨 | 2008/09/16 6:38 AM
「金魚尽くし」有難うございます。
良品揃いの歌麿と写楽、春信
見初めた 画商ビング!心憎いです。
ベルギーで所蔵されて幸いだったかも。
panda | 2008/09/16 6:17 PM
こんばんは。

最近の「浮世絵ブーム」は、このような保存状態の良い実物を見る機会が多くなったことに関係しているのではないかと思っています。

後期も楽しみですが、その他にも・・・ということらしいですね。
とら | 2008/09/16 8:50 PM
@一村雨さん
こんばんは。

本当ですね。
ちょっと前まであれが「本物」だと
思っていたのですから。。。

@pandaさん
こんばんは。

金魚尽くし全部揃えたいです。
でも一枚だけ後期リストにありません。
どこかから持ってきて!!!
ベルギーって一度しか行ってませんが
大好きな国です、ビール美味いし。

@とらさん
こんばんは。

その他にもとなると京都まで、、、
ファン泣かせの展覧会です。
展示期間短いのは仕方なし。
今褪色させたら後の時代の人に
申し訳ないですからね。
Tak管理人 | 2008/09/16 10:19 PM
めだかすくい に私も立ち止まりました。
ak96 | 2008/09/18 11:46 PM
はじめまして。幸い前期、後期両方見ることができ、あまりにすばらしくて浮世絵についてネット巡りをしてこちらにたどり着きました。大した予備知識なくふらっと行ってみるとたいていものすごく感動します。江戸時代の文化の豊かさにもう感動しました。北斎さん、「百物語 お岩さん」を見たとき「この人かなりファンキーな爺さんだったんじゃないか」と思いました。冨嶽三十六景「三島越」が特に感動しました。あの色・・・何色っていうんでしょうか?深い深い緑でそれでいて明るくて・・・何度も見てしまいました。後期では歌川広重の教科書でしか見たことがない「東海道五十三次 庄野 白雨」が見られたり。ベルギーに返さないで〜と思ってしまいました。また見に行きたいなぁ。
Maya | 2008/09/19 10:05 PM
@ak96さん
こんばんは。

後期も始まりましたね!
行かねば、そしてまた立ち止まる。。。

@Mayaさん
こんばんは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

後期も既に行かれましたか!
今度の日曜日あたりに出かけようかと思っています。
江戸時代の文化に最近とみに憧れを抱いてしまいます。
当時は当時で生活は大変だったでしょうが
浮世絵などを観ていると苦しい中にも
笑いや喜びがふんだんにあった時代のように思えます。

ベルギーさんがこれだけ保存状態よく
現代まで保管していてくれたことに感謝感謝です。

今後とも宜しくお願いいたします。
Tak管理人 | 2008/09/19 11:56 PM
たいへんコメントご無沙汰です。
(そして過去記事にで、ごめんなさい。。)
先日やっと京都にも展覧会がきましたので行ってまいりました。
金魚づくしの絵葉書、たくさん買ってしまいました。
とても楽しくてうきうきしました^^
mi | 2009/01/26 9:59 AM
@miさん
こんばんは。

過去記事でも全然問題ないですよ!
どんどんTB、コメント下さい。

絵葉書ついつい手が出てしまいますよね〜
自分もたくさん買ってしまいました。。。

また観たいな〜
Tak管理人 | 2009/01/26 7:27 PM
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