青い日記帳 

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「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」展

国立新美術館で開催中の
「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」展に行って来ました。
(「巨匠ピカソ 魂のポートレート」展の感想はこちらです)



これまでも「ピカソ展」と銘打つ展覧会星の数ほど開催されてきましたが、きっと今回の展覧会がその中でも最大規模のものにあたるはず。2009年から2011年にかけて大規模な改修工事を行うパリ国立ピカソ美術館。その工事期間中にまとめてごっそりと貸出。

スペイン、マドリード国立ソフィア王妃芸術センターやアブダビのエミレーツ・パレスギャラリー・ワンで開催されいよいよ日本に上陸。

国立新美術館では約170点の作品があのだだっ広い空間に引けを取らない迫力をもって展示。ピカソ初期の青の時代の作品から時系列的に展示。ピカソ作品の多様な変遷ぶりを目で追って実際に確かめられる絶好のチャンス。しかも一級品揃い!

取り立ててピカソが好きなわけでも嫌いなわけでもありませんが、「パリ国立ピカソ美術館」の作品がやって来るとなると観に行かずにはいきません。

それは、かつてピカソ美術館を訪ねてから自分の中での「ピカソ観」を激変させた、あの衝動が今でも心に焼き付いているからです。

Musee Picasso
パリの歴史保存地区、マレ地区にある美術館。地下鉄の駅(サン・ポール駅もしくはセバスチャン・フロワサール駅)から歩いて10分程かかる。その昔、王様の私邸もあったこの高級住宅街の中にある美術館は、初めて訪れるにはちょっと道に迷う可能性が高い。(実際、私も地図があったにもかかわらず見事迷った)
元々、1659年に塩税徴収官ピエール・オーベールの為に建てられたお館。「オテル・サレ(塩の館)」と呼ばれたこの邸宅は、300年という長い歴史の中、主をかえ、一時はすむ人もなく荒れ果てていたという。
1983年、当時パリ市所有となっていたこの「塩の館」をピカソ美術館にしようという案が採用されローランド・シムネの設計によってピカソ美術館として生まれ変わった。
203点に絵画、191点の彫刻、3000点ものデッサンと版画等など所蔵作品は半端な数ではない。
1973年に91歳でこの世を去ったピカソは「自分が世界一のピカソコレクター」と言う通り、一個人としては膨大なコレクションをパリに残した。
(1968年に遺産相続税を芸術作品で物納してもよいという、新しい相続税法が成立。ピカソが亡くなったのが、新法成立施行の5年前。ピカソの作品の海外などへの流出や散逸を見事に防いだ「絶妙」のタイミングの税法であった。)
1996年3月25日・訪館


日本での展覧会はどのような構成になるのか?それだけが不安でしたが、それは杞憂に。展示室を8つに区切り時代順に構成され作品の変遷のみならず、ピカソと関係のあった女性たちを諦観することができます。

西洋美術館で公開されている、ハンマースホイが徹頭徹尾自分の絵画スタイルを貫き通したのとはとても対照的にピカソはその都度作品のスタイルを自ら果敢に変えてゆきます。「合う」(好き)作風もあれば「合わない」(嫌い)なスタイルも当然判然としてきます。これだけの作品があれば。

さぁ、どの時代のピカソがお好きですか?
自分はやはり「青の時代」かな〜


ラ・セレスティーナ」1904年

厳かな青です。そしてそれは人間の魂の色に近い色かもしれません。
展覧会入口にこの作品がまず設置され「出迎え」てくれます。
外の喧噪をこの作品が遮断。神社にある「手水」の役割もまた。
ここで穢れを落としてから展示室へ。深い透明感のあるブルーです。


座る裸婦」(「アヴィニョンの娘たち」のための習作)1906-07年

セクション2にある作品。青の時代の別れを告げ、一転バラ色の時代へ。当時パリの若き画家たちが多く参考としたアフリカ芸術の影響が色濃く観られる作品。モディリアーニ風の顔した作品が数点。黒人芸術の時代と称するそうです。


バイオリンと楽譜」1912年

セクション3は分析的キュビズムの時代へ突入。「マンドリンを持つ男」1911年など数点。昔好きだったけど今はさほど食指が動かないのは年をとったせいかな〜それよりパピエ・コレちっくな「バイオリンと楽譜」に萌え萌え。


座る女」1920年

世間がやっとキュビズムの理論に追いついてきたと思うと、ピカソはそれをスパッと捨て去り「新古典主義」へ。「どうだい、俺に付いてこれるかい?!」と周囲を嘲笑するかのような身の翻しっぷり。ピカソが何歳になっても女性にもてた理由もこんなところにあるのかもしれません。


画家とモデル」1926年

前年に描かれた「接吻」という作品も同セクション5に展示されていましたが、自主規制。男女が激しく絡み合っている作品が数点。「画家とモデル」はアクロバティック過ぎてどこがどうなっているのか定かではありませんが、パレットだけは比較的はっきりしっかり描かれています。この絵好きかも。


海辺の人物たち」1931年

写真よりも映像よりもはるかにセクシャルな作品。裸で絡み合いディープキスをする男女をこれだけ赤裸々に描きながらもいやらしさどころか健康的に見えるから不思議。病院の廊下とか飾っておくと患者さん元気になるかも。

当時大流行していたシュールレアリスムに影響を受けつつも自分なりに咀嚼して表現したところがピカソの凄いところかも。シュールの流れにも結局乗らなかったし。


庭の中の裸婦」1934年

ピカソのミューズのひとりマリー=テレーズを描いた作品。植物に囲まれ無防備な姿で眠るマリー。大好きな作品のひとつ。最も惹かれるのは閉じた目。このライン描けそうで描けないはず。滅茶苦茶な絵のように見えても内に秘めたるポテンシャルはやっぱ伊達じゃありません。

広いセクション5が終わると…

磔刑」1930年

カラフルな画面の中にあって一か所だけ白黒の部分が。
突如キリスト教の主題を何故描いたのか分かりません。
しかし、さほど大きくない作品ながら存在感ある一枚。

セクション6にはこの二人の女性像も対で展示。

左:「ドラ・マールの肖像」1937年
右:「マリー=テレーズの肖像」1937年

一方は直線を多用し、もう一方では丸みを帯びたフォルムに。
同時期にピカソと暮らしていた二人の女性の特徴(ピカソからの視点)がよく分かる作品。昨日描いた記事にはやはり同時期に描かれた二人の肖像画を紹介しています。それにしても二人の女性と付き合い(マリーには子供まで!)それぞれの女性の肖像画を同じポーズをさせ描くのですから、何と言いますか。。。

セクション7ではドラ・マールをモデルにし描いた「泣く女」が。
ドラ・マールが撮影した「ゲルニカ」の制作風景も展示。

最期のセクション8.ピカソ最晩年の作品が。

草上の昼食」(マネに基づく)1961年

80歳の声を聞き、自分にかつて大きな影響を与えたマネの作品を繰り返し、繰り返しバージョンを変え描いたピカソ。その数約140点!

こちらの本に他の「草上の昼食」の別バージョンも解説付きで紹介。
もっと知りたいピカソ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
もっと知りたいピカソ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
松田 健児,大高 保二郎

こうしてあらためて見てみると、女性もしくは男女を描いた作品がかなりの数に。9人もの女性と付き合ったり結婚したのですから当然と言えば当然。ピカソ美術館の作品を一通り眺めて「ピカソの人生」そのものをギュッと凝縮したようだと実感。パリで観た時は感じられませんでした。若かった所為か絵を観ているようで観ていなかった所為か。

タイトルにある「愛と創造の軌跡」がまさにぴったりと当てはまる展覧会かと。ピカソの自叙伝を楽しむかのように、小難しいことは忘れて。

最後に「今日の一枚


風景」1972年

ピカソが91年の人生に幕を下ろしたのが1973年。その約一年前に描かれた風景画。二度目の正妻ジャクリーヌ・ロックとムージャンの地でひっそりと暮らしていた晩年。ちぐはぐに見える画面構成はピカソの波乱万丈の人生を現わしているかのようにも見えます。また対象的に大変穏やかな風景にも見えます。

「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」展は12月14日まで。
サントリー美術館で同時開催されている「巨匠ピカソ 魂のポートレート」展は国立新美術館とは全く違う雰囲気の展覧会となっています。

サントリー美術館の感想はまた後日。

ピカソ - マジック、セックス、デス
ピカソ - マジック、セックス、デス
ピカソ生誕125周年記念、ピカソの芸術の足跡を"魔術" "性" "死"の3つのテーマから紐解き、スペインが生んだ20世紀の最も偉大なる芸術家の作品の秘密に迫る。英チャンネル4で放映され日本語版が待望されていた本作が遂にDVD化

おまけ
今回は展示されていませんがこれもピカソ美術館所蔵作品。


それでは最後に「今日の美味


ペルノー」(仏: pernod)ピカソも愛飲したアブサン.パッケージラベルにはピカソの作品が使われています。因みに薬草大好きです!

【関連エントリー】
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女たちが変えたピカソ (中公文庫)
「女たちが変えたピカソ」(中公文庫) 木島 俊介


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生涯を通じて変貌を重ね続けたピカソの全体像に迫ります。初期の青の時代からバラ色の時代、そしてキュビスムを経て、新古典主義、さらにはシュルレアリスムと変化していく作風。パピエ・コレ、レリーフ絵画、構成的な彫刻やアサンブラージュなど、さまざまな素材と表現の可能性の追求。激動の時代であった20世紀を生きた芸術家らしく、戦争や平和をめぐって、人間性や芸術の意味を求めて、ピカソの芸術は多様な展開を見せます。それとともに忘れることができないのは、画家の生涯を彩り、その芸術に霊感を与えた、愛する女性たちの存在でした。生きること、愛することと芸術の創造とが分かちがたく結びついた、巨匠ピカソの91年の生涯を、約170点の作品によってたどる大回顧展です。
本展は、パリ・ピカソ美術館の大改修に伴って可能になった世界巡回展の一環として、国立新美術館とサントリー美術館で同時開催します。
展覧会 | permalink | comments(4) | trackbacks(10)

この記事に対するコメント

こんにちは
2館で開催と言うのも素敵ですね。
わたしもTakさんと同じく「青の時代」が好きですが、最近は晩年の版画にハマッてます。
でも行くのはたぶん終盤になります。
今月末には大阪のデパートでピカソ陶芸展があるから、まずそちらにでかけて、予習しておきます。
遊行七恵 | 2008/10/05 12:39 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。

ピカソ美術館にある代表的な
青の時代の名画二点が二つの
美術館に分散されているのは
やはり「戦略」でしょうか。

展示替えがないので
ゆっくりと見られますね。
空間美はやっぱりサントリーに軍配かな。
Tak管理人 | 2008/10/05 10:48 PM
こんばんは。
見応え充分な展示でした。
マリー・テレーズとドラ・マールが並ぶところが特に良かったです。時には二人に取っ組み合いの喧嘩までさせて眺めていたって解説には驚きました。
タイトルは「愛と憎しみの創作」で良いんじゃないかと思いました。
mizdesign | 2008/12/24 11:28 PM
@mizdesignさん
こんにちは。

見応えありましたねーー
広い会場を思う存分使っての展示。
見所も随所にあり楽しめました。

ピカソの女性に対する態度どうなの?!
Tak管理人 | 2008/12/25 10:59 AM
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