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「巨匠ピカソ 魂のポートレート」展

サントリー美術館で開催中の
「巨匠ピカソ 魂のポートレート」展に行って来ました。



国立新美術館で開催中の「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」展とサントリー美術館での展示を果たして分ける必要性がどれだけあったのか、はなはだ疑問。

サントリー美術館での展示作品数は僅か58点。これだけなら、あのだだっ広い国立新美術館に余裕で収まったはず。

2007年に六本木の地に新たにオープンして以来、一貫して日本美術を軸に据え展覧会を展開してきたサントリー美術館がその「魂」を売り払ってまでピカソ展を開催する意義があったとはとても思えません。(過去の展覧会

ロートレックにしてもガレにしても日本美術との関わりをきちんと丁寧に取り上げていたからこそあの空間に適合したはず。大好きなサントリー美術館故に今回の展覧会はとりわけ残念で仕方ありません。

尤も欲を張って国立新美術館でたっぷりピカソ作品を堪能した後休みもせずに、こちらの美術館へ来た為かなり不利な状況であったことは確か。もしこれがサントリー美術館一館だけの展覧会であるなら絶対に違った印象を抱いていたはず。そう日本美術がどうだこうだなど文句も言わなかったでしょう。

つまるところ、結局2会場に分けて展覧会をしたことが失敗の要因。

入館料だって単純に倍かかるわけです。
二つに会場を分けることによって一体誰が喜ぶのでしょうか?

さてさて、苦言はこれくらいにしておいて展覧会を簡単に。

58作品を5つのセクションに分け展示。
1:初期〜青の時代
2:キュビズム時代の周辺
3:新古典主義時代からシュルレアリズムへ
4:ミノタウロスと牡牛
5:戦中から戦後、そして晩年


ポスターに使用されている「自画像」はピカソがまだ20歳の頃。随分とハタチにしては疲れた顔していますし、目も何から虚空を彷徨っている様子です。

その原因がまず展示室最初に展示されていました。

カザジュマスの死」1901年

バルセロナの画家カザジュマスはピカソが初めてパリを旅行した時に一緒に行った親友。その親友がこの年自殺をしてしまいます。失恋を理由に。これが契機となりピカソは青の時代へ突入。曰く「カザジュマスが死んでしまったかと思うと、私は青を使って描くようになったのだった」

カザジュマスの死」は1901年の夏に描かれた作品です。ゴッホのひまわりを連想させるような筆致に色合い。やがてヒマワリも枯れ冬の訪れとともに「青の時代」へ一直線に。そして同年の冬に描いた作品が先ほどの自画像。


自画像」1901年末


男の肖像」1902-03年冬

1:初期〜青の時代ではこれらを含め6点しか展示されていませんが、最も見所のあるセクションではないでしょうか。それはサントリー美術館の薄暗いライティングにも大変マッチしており、ピカソの深い悲しみから絞り出されたような青い作品たちの雰囲気に自らの心も馴致されてゆきます。

サントリー美術館の館員になっているので、ここだけでも日を改めて今一度是非観に行きたいと思っています。

ただしどういう訳か次の3つの連続するセクションの印象がパッとしません。ピカソ美術館を代表するメジャーな作品が来ていることは来ているのですが…
2:キュビズム時代の周辺
3:新古典主義時代からシュルレアリズムへ
4:ミノタウロスと牡牛

国立新美術館でほとんどの力使い果たしてしまったせいもあるかと。二つのピカソ展、掛け持ちしてご覧になられるようでしたら、必ず「サントリー美術館→国立新美術館」の順番で観るのが宜しいかと。

最後の「5:戦中から戦後、そして晩年」は逆にどれも新鮮な驚きとある種感動を持って鑑賞すること出来ました。

まずは驚き系から。

イセエビを持つ少年」1941年

問答無用に観る者に驚きと不可思議な印象を与える作品です。ピカソの作品を観てその形や容姿の異様さに驚きを感じることまずありません。それが当然だと思って観ているので。しかしこの作品には予想を上回るぎくりとさせる何かがあります。

手元にある本によると年代的に戦争の傷痕を描いた作品ではないかと説明がなされています。この時代を「灰色の時代」と呼ぶこともあるそうです。戦争で親を失ったストリート・チルドレンを描いた作品なのでしょうか。

とにかく何か正体不明のモヤモヤした物体がこの絵から発せられていること間違いありません。「魂のポートレート展」に似つかわしい作品かもしれません。


」1953年

南フランスの町ヴァロリスで描いた作品。
手前の黒い影がピカソの作品らしからぬ様相。
向こう側に横たわっているのはフランソワ―ズ・ジロー。
ということは「影」の主はピカソ自身なのでしょうか。

「影」によるポートレート作品。ぱっと目に留まります。

なんだかんだと文句も書いてきましたが、この展覧会だけを観るならば一般的なピカソ展よりは数段レベルは上でしょう。和の空間でガラスケース越しに見る油彩画というのも乙なものです。

そしてまた最後の5作品が展覧会を巧いことまとめ上げているようです。それはピカソが最晩年を過ごした終の住み処がある町ムージャンで描かれた作品。

今日の一枚」はその中から。


若い画家」1972年4月14日

ピカソがこの世を去る前年に描いた作品。
これまで多種多様な対象や技法で数えきれないほどの作品を世に送り出したピカソが最後の最期に描いた作品の中の一枚が「若い画家」というのも何やら感慨深いものがあります。不覚にも涙しそうになりました。

親友の死から始まりこの作品で終わる展覧会。サントリー美術館単独でこれ開催していたらもっともっとお客さん入ったはずです。勿体無いな〜こんな良い展覧会なのに…

「巨匠ピカソ 魂のポートレート」展は12月14日までです。

ピカソ―天才とその世紀 (「知の再発見」双書)
ピカソ―天才とその世紀 (「知の再発見」双書)
マリ・ロール ベルナダック,ポール デュ・ブーシェ

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それでは最後に「今日の美味


ミッドタウンの対面にある「GOLDEN SPOON(ゴールデンスプーン)」の「フローズンヨーグルト」ノンファット&ローカロリーのアイス。アメリカのセレブにも大人気だそうですが、うーーん。自分にはミニストップの方がお似合いかな。。。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1556

JUGEMテーマ:アート・デザイン


パリ、マレ地区に位置し、生前のピカソが最後まで手元に残した作品を主なコレクションとするフランス国立ピカソ美術館。この美術館の改装によって空前の規模の世界巡回展が実現しました。日本では、国立新美術館、サントリー美術館の2会場を舞台に、数々の名作が展示されます。
巨匠パブロ・ピカソ(1881〜1973)は、生涯を通じて内なる心に向き合い、常に自らの人生を作品創造に反映させた画家でした。彼が残した数多くの自画像、あるいは間接的に自己を投影した作品の数々は、ピカソ芸術の本質を表していると言えます。サントリー美術館では、ピカソの魂の叫びとも言うべき自画像とその周辺の作品を、油彩画を中心とした約60点によりご紹介していきます

展覧会 | permalink | comments(11) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

初めてコメントいたします。
「What's up, Luke ?」さんのリンクから知り、拝見させてもらっています。
ピカソ展、サントリー単体でやっていたら評価できるものかもしれませんね。新美のパワフルな展示との同時開催、たしかにこちらにメリットがあるのか少し疑問…。
ガレのときのような感動がなく、ガラスケース越しの絵画にも違和感がありました。
やはりサントリー→新美の順で見るべきだというのはいろんなサイトを見ていても合致した意見なんですね。私は逆ルートだったので、感想が変わったかもしれないなぁと残念です。
これからもブログ楽しみにしています。
| 2008/10/29 8:35 AM
今回2か所でやってるピカソ展ですが
六本木を盛り上げようということなのでしょうか。
逆にぼやけた印象になってしまったのですね。
う〜ん、残念…・
両方とも見に行く時は先にサントリーを見てから行った方がいいかもですね。
参考になります。

あ、ここフローズンヨーグルトのお店だったんですか。
トッピング、これはプルーン?
サッチャン | 2008/10/29 6:33 PM
ちょうど友人とサントリー美術館から見に行く約束をしたとこです。
ご紹介して頂いたPENもしっかり読みました。かなり楽しみです。
蓮 | 2008/10/29 10:41 PM
絵を観るのって面白い、と思うようになってから初めてまとまって観たピカソだったので、もうものすごく楽しかったです。
新美術館訪問もますます楽しみになってきました。
ak | 2008/10/29 11:39 PM
@彩さん
こんにちは。初めまして。
コメントありがとうございます。

サントリー美術館は大好きな美術館ゆえ
今回のちょっと無理矢理気味の二館同時
開催には残念な気持ちです。
上手いこと成功しているならそれでいいのですが。

もう一度、単館で観に行ってこようと思っています。
このままではイメージが悪いままですので。
精神的にゆとりのある時を狙って。(あるかな〜)

今後とも宜しくお願い致します。

@サッチャンさん
こんにちは。

トッピングはプルーンです!
ローファットなだけに味に問題が。
でも休日は長蛇の列…

国立新美術館だけでどーーんと
ピカソ美術館展と称し開催したら
もっと違った印象になっていたはず。
尤も、いい作品は現在パリの
グランパレで開催中のピカソ展に
あるのですけどね。。。

@蓮さん
こんにちは。

サントリー美術館単体で行かれるなら
間違いなくレベルの高い展覧会ですので
見応えあるかと思います。半券でレストランも
割引になりますしね!

@akさん
こんにちは。

レベルは間違いなく高い展覧会です。
「名品」何点も揃っていますしね。
国立新美術館でのピカソ展はさらに
量の面でも圧倒されます。
体力ある時に是非。
Tak管理人 | 2008/10/30 4:14 PM
こんばんは。国立新美ーサントリーの順に動きました。
良い作品が両方に分かれていました。
油彩は、国立新美67+サントリー25、合計92点ですから、油彩だけなら1会場で十分でしたね。

新国立の章立ては、大体において年代別に8章に分かれていましたが、年代の重なりがあるだけでなく、正確に年代順に並べられた展示リストと比較すると、メチャクチャで、見にくい展示でした。その点、サントリーの章立ては、すっきりとした5章立てで、リストとの対応も良かったと思いました。

1995年の東武美術館・京都国立近代美術館に出ていた作品が、国立新美6点、サントリー3点、合計9点ありましたが、1995年の図録では1点1点の説明がとても詳しいのに、今回の図録にはそれぞれの説明がほとんどありませんでした。

最近、美術館の建物は良くなりましたが、学芸員のレベルは・・・という感じを強く持ちました。
とら | 2008/11/01 9:00 PM
@とらさん
こんばんは。

パリではピカソ美術館所蔵の名品と
それに関連した他の画家の作品を
並べて展示するという素晴らしい展覧会が
開催されているようです。
かなりお金と時間をかけ作り上げた展覧会のようです。
(パリのグランパレで開催中)

ピカソ美術館の隠し玉的な目玉は
何と言ってもピカソ自身が所蔵していた
セザンヌはじめとする他の作家作品。
これは一見の価値ありですよね。

ただ「ピカソ」というだけで
有り難がる時代はとうの昔に
終わっているはずなのに、まだ
こうした殿様的な展覧会が開催されてしまうのは
なめられたものだと思うばかりです。

図録は「絵本」のようでしたね。
Tak管理人 | 2008/11/02 10:47 PM
はじめまして。
TBから辿ってやってまいりました。
私はサントリー美術館を先に行ったためか、
(国立新美術館は、まだ行ってません)
かなりゆったりした空間の中で絵が観賞できて楽しかったです。

図録が2館共通で良かったと思いました。
それぞれで購入していたら、お金が続きません^^;
リュカ | 2008/11/21 10:49 AM
@リュカさん
こんばんは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

サントリー先は大正解です!
今度リベンジしに行ってきます。

でも森美術館のインド展も
はじまったのでそちらを
先に行かない様に注意しなくちゃ。

今後とも宜しくお願い致します。
Tak管理人 | 2008/11/21 11:44 PM
こんばんは。
TBを有り難う御座いました。
私は国立新美術館を先に行ったのですが、やはりサントリーに行く頃にはとても疲れてしまいました。
「若い画家」胸がいっぱいになりました。一番最後に観た作品がこれで良かったです。
palpal | 2008/12/22 6:26 PM
@palpalさん
こんにちは。

総作品数が多かったですから
ニ館一度に見ると疲れますよね。
かといって別の日にするまでもなく。。。
未だ、なぜ二つの美術館に分けたのか
しっくり来ません。

最後の「若い画家」は本当に良かったです。
Tak管理人 | 2008/12/25 10:17 AM
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国立新美&サントリー美の巨匠ピカソ展 その三 | いづつやの文化記号 | 2008/10/31 3:45 PM
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巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡 @国立新美術館 | Art & Bell by Tora | 2008/11/01 9:04 PM
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