弐代目・青い日記帳 

  
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「石田徹也展」

練馬区立美術館で9日より開催される
「石田徹也―僕たちの自画像―」展の内覧会にお邪魔して来ました。



1973年6月16日生まれ。
1992年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科入学。
1995年同大学卒業。
2005年5月23日逝去。享年31歳。

夭折した石田徹也氏初の東京で開催される展覧会。
70点以上の作品が練馬区立美術館2階の展示室に。

一点、二点と単品で拝見したことはありましたが、まとめてこれだけの数を目にするのはこれが初めてのこと。この展覧会が開催されると知ってから「石田徹也遺作集」を見なおし、珍しく特集がえらく充実している「美術の窓 2008年 11月号」で石田作品を時系列的に予習。準備万端でいざ。

しかし、どうしても「心の準備」無くして石田徹也の作品と対峙することは出来ないような考えや、体調万全で臨まないとざっくり心に穴をあけられてしまいそうな思いを抱いてしまいます。テレビや本、web等で知ってしまった「石田徹也」にまつわる様々な「情報」が否が応でもそうさせるのでしょうか。

正直恐る恐る中村橋まで。(内覧会は新聞社主催の展覧会のそれとは異なり、ごくごく限られた方だけのとても静かで穏やかなものでした)

以下、会場内の様子を交えながら。
注:画像は美術館に許可を得て撮影したものです


1995年、大学4年時に「ひとつぼ展」グラフィックアート部門でグランプリを受賞した頃に描かれた作品群。(右端の作品「SLになった人」でグランプリ獲得)

この当時から既に石田自身に似た不安げな顔をした短髪の男性と「機械」が一体となった作品が描かれていたようです。しかし画面にはどことなくユーモラスな雰囲気も漂い、色彩も赤やオレンジ色が用いられ比較的華やかです。


ガラスケース内の「ビアガーデン発」と「居酒屋発」は題63回毎日広告デザイン賞優秀賞に選ばれた作品。1995年までに描かれた作品では笑い顔さえ描かれているのです。


ところが翌1996年に発表された「飛べなくなった人」からがらりとそれまでの作風が一変。今日我々が良く知るところの「石田ワールド」の萌芽です。そしてその「新芽」はすくすくと成長してゆきます。石田の魂を養分として。


1996、97年にかけて描かれた作品群。

日常当たり前過ぎて気づかない(我々が気がつかないようにふるまっているだけ)事象に対しても石田は勇猛果敢に我が身を削りながら挑んでいきます。閉塞感に満ち溢れた現代日本の様相をアイロニカルに表現。この頃まではまだ観る側もシンクロ出来る点が多くあり「うんうん」と肯ける作品も。

最初の展示室はここまで。

予想に反し、ここまでは大変穏やかな気持ちで鑑賞すること出来ました。ところが次の展示室では外に開いていた扉が突風に煽られバタンと急に閉じてしまったかのように作風が一変。内へ内へ。石田が抱える心の懊悩が展開されます。


1999年職に就くことなく画家の道を直向きに歩む石田の作品にあからさまな「死」が登場してきます。この間に一体彼に何があったのでしょう。

「美術の窓」p.34、35に↑に展示された「市場」「待機」「彼方」の三作品が同じように掲載されています。発売日に店頭でパラパラとページをめくる手が思わず止まった(止めざるを得なかった)のがこのページでした。「衝撃」と形容するに相応しい眼を反らせたくなる作品がそこに。

まさか現実の世界でもその「衝撃」を喰らうことになろうとは思いもしませんでした。最初の展示室で弛緩したした心臓に不意打ちが待っていました。


2001〜2003年頃に描かれたとされる作品群。

牛丼チェーン店で食事を「摂る」サラリーマンたち等の姿をグレイトーンで描いていた1996、97年時の作風とは明らかな違いが。「分かりやすかった」主題が一見したところでは分からない、また様々な解釈が出来るような作品へと変貌。


2004年頃の作品には明らかに観る者に恐怖心を植え付けるそんな作品も。

石田の作品にはよくベンチやベットにちょこんと腰掛けた人物が登場しますが、↑の作品では身体が溶解し既に座っていることも困難な状態になってしまったかのようです。左手がかろうじて握っているのは誰の手なのでしょう。

2005年5月23日逝去。享年31歳。

最後の最後まで首尾一貫して緻密に念入りに(例えばフローリングの床板)徹底して描いています。今回初めて生で多くの石田作品に触れまず感じたことは作品の濃さ。それと画集では分からなかったスケール感(意外と大きな作品が多くあります)

石田徹也の遺した作品に関しては様々な意見や感想があろうかと思います。が、自分もこれまでそうだったのですが、決して根暗で観る者を鬱にさせるようなそんな作品ではないことだけは確かです。

石田の中に芽生えた「芽」が彼自身を養分としながらすくすくと成長した作品。それを「人身御供」として「お守り」として我々が礼讃し誹る。安全地帯はどこにもないことを知りながらも。

ストイックに絵画の道だけを恋人も遊びとも自ら決別し直向きに歩んだ、たぐい稀なる人物。ルネサンス華やかなりしイタリアの地にもし彼が生まれたら違った生涯が待っていたはずです。

安易に過去の芸術家(たとえば似たような境遇のゴッホ)と比べてしまうのは性急な感否めません。石田は石田であって他の誰とも違うということはっきりと分かりました。臆することなくこれから彼の作品と向かい合っていけそうに思えます。

最後に「今日の一枚


腕の血管が異常なまでに浮かび上がってはいるものの目は虚ろ。机上には何も描かれていない真っ白な紙が。後方で「待っている」二人は誰だったのでしょう。
(手前のケースには「アイデア帳」が。こちらも必見です)

石田氏の生れ故郷静岡からお父様とお母様も会場におみえになられていらっしゃいました。ご挨拶したあと一言二言。「手がかからないしっかりとした子でした」と。

「部屋を片付けに行ったとき、この作品が床に置いてありました。これが最期の作品です」とわざわざ展示場所まで案内して下さった作品。

以下は石田徹也氏のお父様の言葉。
「石田徹也―僕たちの自画像―」展開催にあたって
徹也が亡くなって、残された膨大な作品の数と大きさに途方にくれ、『絵そのものは、全て捨ててしまおう』と決心し、作品の写真をとり、遺作集を発行させて頂きました。その後、皆様方から作品に関してのありがたい評価を伺い、東京でも、このような大きな展覧会ができることになりました。
私どもは絵に関しては、まったくの素人でありまして、展覧会で皆様方に観て頂き、評価して頂けるのが、とても励みになっております。決して、心が落ち着くとか結麗な作品ではありませんが、徹也の作品を見たことにより、何かしら皆様方に感じ取って頂ければ、幸いです。


石田徹也の世界−飛べなくなった人−石田徹也公式ホームページ

「石田徹也―僕たちの自画像―」展は12月28日までです。


美術の窓 2008年 11月号 [雑誌]
【特集】石田徹也―「僕らの現実」を描き続けて去った人

石田徹也遺作集
石田徹也遺作集

それでは最後に「今日の美味


練馬区立美術館の喫茶室で頂いた「コーヒーとミックスクッキー
クッキーは社会福祉法人・花水木の会が作ったもの。ご馳走さまでした。

【関連エントリー】
- 弐代目・青い日記帳 | 山口晃トークショーin練馬区立美術館
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鋭敏な感性で自己と社会を描き出し、将来を嘱望されながら惜しくも31歳で死去した画家・石田徹也(いしだてつや) (1973〜2005)の作品は、見るものすべてに衝撃を与えます。多くの作品に登場するうつろな目をした人物は、彼の分身であるとともに、現代に生きる若者たちの自画像でもあります。また、それは現代社会の中で生きる私たちが日頃は心の奥底に押し隠してしまっている精神のドラマを表現したものとして、世代を超えた共感を呼んでいます。あるときは哀しく、あるときは悲痛であり、また、滑稽な現代人の姿を、石田徹也は精密に観察しながら丹念に描き出しました。
 この若き画家の作品は、NHK新日曜美術館をはじめとする各種のテレビ番組で紹介されたほか、没後刊行された『石田徹也遺作集』が版を重ねるなど、現在多くの人びとに支持されています。東京で開催するはじめての大規模な個展となる今回の展覧会では、主要作品約70点を展示することによって、驚くべき集中力で現代人の内面を描ききった石田徹也の画業を振り返りたいと思います。
 私たちの心の奥に直接訴えかけてくる石田作品を直接見ることのできる機会です。是非ご覧下さい。


| 展覧会 | 23:56 | comments(15) | trackbacks(6) |
好きとか嫌いとかを越えて、ともかく気になってしまう強烈な存在感のある作品ですね。画集とかで見ても、インパクトがあるのだから、実物はさらに迫力があるんでしょうね。観に行ってみたくなりました。
| えび | 2008/11/09 7:52 PM |

こんばんは。

静岡県立美術館に特集展を息子と見に行った時の衝撃を思い出します。
今生きている身の回りの環境と自分を、これだけ理不尽に描ける作家さんは珍しいと思います。
見る側も心して行かねばならない、特異な作家ですね。
痛々しくて、孤独で、理不尽で、ニヒルで、えぐくて、
切なくて、フッと笑えます。
この東京で、ガツンとノックアウトされる人ますます増殖されることでしょうね。
会期末までに、対面できる余裕が生まれたらいいのですが。
| あべまつ | 2008/11/09 9:34 PM |

@えびさん
こんばんは。

そうなんですよね。
まずちょと引き気味に思っていて
実際に目の当たりにするとその
卓越した技法に目を奪われます。
色んな意味で凄い展覧会です。

@あべまつさん
こんばんは。

静岡へ寄贈した作品が大半でした。
身構えて出かけたのですが
実物はある種美しさや優しさまで
感じ取ることできました。
ただし、一枚の作品を観るのに
大変時間を要する作家さんです。
魅入ってしまいます。

美術館を出た後ぐったり。
家路がいつもより遠く感じました。
| Tak管理人 | 2008/11/10 12:54 AM |

本当に印象深い絵が多かったです。
ひとつひとつが心にズシンときました。
壁にもたれかかっている登場人物。
私も、左手が握っている手は誰なのか、
絵の前でしばらく考えてしまいました。
| リュカ | 2008/12/09 11:10 PM |

@リュカさん
こんばんは。

実物を美術館で拝見し
やっと石田の良さ
凄さを実感すること出来ました。

あれこれ噂や与太話付きまとうの
仕方ないことでしょうが
絵自体と向き合ってもらいたいものです。
| Tak管理人 | 2008/12/10 12:10 AM |

Takさん、こんばんは。
お久しぶりです。
TBを頂さ有難うございます。
この展覧会ずっと楽しみに待っていました。
石田徹也の心象風景を想像しながら、興味心身で鑑賞してきました。

忘れられない画家、そして作品群ですよね。
| mako(雑感ノート) | 2008/12/10 9:51 PM |

@makoさん
こんにちは。
コメントありがとうございます。

初めてまとめて美術館で
石田の作品を目にし、
それまで抱いていた印象が
大きく変化しました。

画集ではごく一部しか
石田のメッセージ伝わらないようです。
| Tak管理人 | 2008/12/12 9:52 AM |

こんばんは。初めてコメントさせて頂きます。
12/19に「石田徹也―僕たちの自画像―」展を鑑賞してきました。ずっと待ち焦がれていたので、まるで「一年ぶりに会う恋人」のように楽しみにしてました(笑)が、やはり、重かったです。私は、とてもストイックな画家が好きなのですが、こんなに’痛み’を感じるのは久々です。ひと言では、語れません。決して、万人には薦められませんが、貴重なひと時でした。
| KAZU | 2008/12/21 12:06 AM |

@KAZUさん
こんにちは。
はじめまして。コメントありがとうございます。

確かに万人受けしない作品ですね。
実際に多くの作品を初めて目にして
絵の持つ雰囲気よりも画力のほうに
魅力を感じてしまいました。
ここまで自分を追いつめられるものなのでしょうか。
やはり色々と考えさせられます。

今後とも宜しくお願い致します。
| Tak管理人 | 2008/12/22 12:38 PM |

こんにちわ。
どうしても行きたかったこの展示にようやく行ってこれて感無量です。
石田さんの作品というと遺作集が有名ですが、あれはどうもオリジナルのヘビーな部分とにごりが強く出てしまってるように思います。

実物はもっと透明感があって繊細な印象が浮き立っていますよね。

とにかく多くのひとに見て頂きたいですね、石田さんの作品は。
| あおひー | 2008/12/23 9:06 AM |

@あおひーさん
こんにちは。

あおひーさん、石田さんのような作品
お好きですか?どっちかだろうなーと
勝手に想像していました。

まとめて実物を拝見できるチャンスが
都内では滅多にないので(これが初)
今回の展覧会は大変貴重だと思います。

時代が追いついてきたかもしれません。
| Tak管理人 | 2008/12/25 10:32 AM |

こんばんは。
私も先日心の準備をして行って来ました。
印刷物などで見た印象と全く違って驚きました。
鑑賞しながら、自分と向き合ったひと時でした。
| palpal | 2008/12/28 8:26 PM |

@palpalさん
こんばんは。

そうなんですよね。
印刷物とこれほどまでに
違うのか〜とまず驚かされました。
何周も何周もして拝見してきた展覧会でした。
| Tak管理人 | 2008/12/29 12:14 AM |

すみません、かれの作品を見ていると秋葉原の殺傷事件の犯人を思い出してしまいました。
| リン | 2009/06/10 10:01 AM |

@リンさん
こんばんは。
初めまして。

石田氏は貴殿同様静岡県出身の方です。
| Tak管理人 | 2009/06/10 11:33 PM |










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練馬区立美術館で「石田徹也―僕たちの自画像―展」を観た!
石田徹也の父親が、「石田徹也―僕たちの自画像―展」開催に当たって、として、次のように書いています。「徹也が亡くなって、残された膨大な作品の数と大きさに途方にくれ、『絵そのものは、全て捨ててしまおう』と決心し、作品の写真をとり、遺作集を発行させて頂きま
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