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『カラー版 浮世絵』 (岩波新書)

国立歴史民俗博物館研究部教授の大久保純一氏の新刊『カラー版 浮世絵』が岩波新書から発売となりました。御託を並べるつもりはありません。もう即買いして下さい。内容、価格等あらゆる面でこれ以上優れた浮世絵関連の本、もうこれから先出ることないはずです。


カラー版 浮世絵 (岩波新書)
大久保 純一

満を持して登場。または、ようやく待ち望んでいたタイプの本がやっと登場した感じをまず手に取ってパラパラとページをめくっただけでも分かるはずです。

本文に入る前にイントロダクションとして、世界で最も有名な日本美術である浮世絵について触れつつも、実は「鑑賞には知識も必要」ときっぱり。ただ単にながめて江戸の昔に思いを馳せるだけの道具ではなく、美術品としての浮世絵鑑賞には知識がやはり要るのだと。

確かに知識は必要です。でもそれをきちんと素人の我々に伝授してくれる手軽な読みやすい一冊が無かったのが現実でした。真っ暗な浮世絵の世界を展覧会で得た断片的な「灯り」のみで鑑賞していたわけです。

大久保氏の『カラー版 浮世絵』 (岩波新書)はその暗闇に煌々たる光をもたらす、バルーン照明のような、まさに光明を見出す一冊。

優れた展覧会(「ハンマースホイ展」等)が優れた構成で作られているのと同様、すぐれた本も優れた構成がなされています。まずその点にきっと目を見張るはず。



各章の構成は、まず第一章で浮世絵版画に関するおおまかな歴史をつづり、第二章でジャンルごとの特質を、代表的な絵師あるいは作品をもとに考え、第三章では浮世絵版画の図像に重ねられた意味や隠されたテーマの読み解き方について述べる。第四章では浮世絵版画の制作過程と流通のあり方を概観し、最後に第五章で、浮世絵版画の彫りと摺りの技法について具体的な作例をもとに解説した。

鈴木春信「見立為朝

もしも、180ページに渡り「浮世絵の歴史」が記されていたなら、きっと飽きてしまいます。途中「コラム」として摺りや絵師に関する知識が掲載されていても散漫な印象を与えてしまうだけです。

この本では例えば第一章で「浮世絵のながれ」について書かれていますが、創始者・菱川師宣から始まり小林清親まで、テンポよく30ページにまとめられています。勿論途中にはふんだんにカラー図版が使われているので「浮世絵の歴史」を目で追うように諦観出来ちゃいます。

第二章「錦絵のジャンル」でもそのリズミカル且つ正確な筆により、浮世絵の魅力を初心者から「プロ」まで唸らせること間違いなし!(1:美人画、2:役者絵、3:名所絵(風景画)、4:花鳥画、5:戯画、6:武者絵・物語絵)

第三章「重ねられた主題と隠された主題」では主に「見立絵」と「世相諷刺」として描かれてた浮世絵を紹介。はじめて目にする作品多数。

第四章「錦絵はいかにつくられ、売られたか」ここがもしかして一番知っているようで知られていない部分かもしれません。浮世絵を買っていた購買層や値段って一体…

そして最後の第五章「錦絵の技法さまざま」はコアな浮世絵鑑賞ファンが泣いて喜ぶこと間違いなし!「紅嫌い」「藍摺」「空摺」「きめ出し・布目摺」「正面摺」「無線摺」「板ぼかし」「拭きぼかし」「あてなぼかし」等など。

これらの技法が画像と共に解説されているのですよ。信じられます?!

「正面摺」と「あてなぼかし」の解説箇所。
それぞれ左右同じ作品に見えても実は違いがあります。

これに現在入手可能な浮世絵参考文献一覧と国内外の浮世絵の観られる美術館一覧まで付いている手の凝りよう。まさに至れり尽くせり。これ以上の本ありません。それでいて、お値段たったの1000円流石岩波書店。偉過ぎ!

やっぱそんじょそこいらのポッと出たての内容の薄っぺらな出版社の新書とは違います。岩波の本気モード全開です。


三代歌川豊国「今様見立士農工商 職人

これまでの浮世絵に関する一般書は、春信や歌麿、写楽といった絵師の名品が主体で、白分の持っている江戸末期の錦絵との接点が見つからないという悩みもよく耳にする。本書はもちろん、人門書としての性格から有名絵師の名品も数多く収録しているが、意識して幕末の作品も多めに入れ、また幕末の作品を中心に実際に鑑賞する上で役.立つ情報を盛りこんだつもりである。たんに教養として浮世絵の歴史や絵師の業績を知るのではなく、実際に浮世絵版画を親しく鑑賞する上での、ささやかなきっかけになればとの思いからである。(「あとがき」より)

欲しかった待ち望んでいた本がここにあります。

カラー版 浮世絵 (岩波新書) 大久保 純一
北斎,広重,写楽──江戸の浮世絵は,日本国内のみならず,海外でも日本美術の代表として人気が高い.なぜこのように親しまれているのか.浮世絵の歴史,ジャンル(美人画,役者画,名所画など),彫り,摺りの製作技法,隠された主題の読み解き方など鑑賞のための基礎知識を紹介しながら,その魅力を探る.図版76点を収録.

迷わず「買い」です。書店へgo!!ジョギング
図版75点。約2ページに1枚の割合で掲載されていることになります。

因みに岩波のカラー版新書こちらもとんでもなく充実した一冊です。

西洋陶磁入門―カラー版 (岩波新書) 大平 雅巳
器ひとつにドラマあり。ヨーロッパの代表的なやきものの魅力を、背景となる歴史や生活文化とともに楽しむ。古代ギリシア饗宴の器、煌めくスペインのラスター彩陶器、イタリア・ルネサンスのマヨリカ陶器、オランダやフランスの色鮮やかな花器や食器、マイセンやセーヴルの華麗な磁器、新時代を画したウェッジウッドなどをめぐる物語。

岩波新書じゃないけど、最近出たカラー版ではこれも中々。

日本の国宝、最初はこんな色だった (光文社新書)小林泰三
実はカラフルだった大仏殿、ロウソクの下で蠢く地獄絵図...。学術的な根拠にもとづきながら、作品誕生当初の色彩に復元すると、作者の気持ちや時代の空気が見えてくる。

そして最後にご紹介する一冊はこちらの新書。
お待たせいたしました!池上先生の新刊間もなく発売でーす!

「恋する西洋美術史」 池上英洋
西洋美術は古来、様々な観点から研究されてきた。ところが、「恋愛」というテーマは学問的に一段低いと認識されてきたため、これまであまり研究されてこなかった。しかし、西洋美術では、「結婚」「夫婦生活」「離婚」「死別」「プロポーズ」「性愛」「出産」「娼婦」「同性愛」等々、「恋」あるいは「愛」をテーマにした作品は数知れない。西洋美術史のもう一つの形を描き出す。

なんて「甘い」タイトルなんでしょう〜揺れるハート

【関連エントリー】
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- 弐代目・青い日記帳 | 100円浮世絵カレンダー(2009年)
- 弐代目・青い日記帳 | 「浮世絵 品川めぐり展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「肉筆浮世絵のすべて展」(後期)
- 弐代目・青い日記帳 | 「錦絵ってなんだろう?」

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この記事に対するコメント

こんばんは。ご紹介お待ちしておりました。本当に良く出来た新書ですよね。

先日何気なく駅の本屋で手にしたのですが、図版ありの見立て解読ありで一気に読んでしました。仰るように通史をテンポよく終えて各論に入った構成が良かったのではないかと思います。

春画についての言及が殆どないのが岩波流(?)かもしれませんが、
ともかく新書として最良の入門書でしょうね。満足できました。

>「恋する西洋美術史」 池上英洋

まさに満を持しての内容になりそうですね!楽しみです!
はろるど | 2008/12/03 12:34 AM
Takさんの日記読んでると
どの本も欲しくなってしまいます(#^.^#)
この浮世絵の本、1000円ですか!?
素晴らしい☆
私のような素人にも分かりやすいのなら
即本屋へGO!ですよね。
サッチャン | 2008/12/03 11:49 AM
@はろるどさん
こんにちは。

これまでの浮世絵関連本
どれもこれもイマイチな感ありましたが
この新書本はそのイマイチ感を払拭し
余りある内容となっていますね。
しかもリーズナブル。

春画は無かったですが
枕絵なんてのはありましたね。

池上先生の本、これまた楽しみです。
12日に会うのでその時、たっぷりと。

@サッチャンさん
こんにちは。

これは何を差し置いても
ご紹介せねばならないと
変な使命感に駆られてしまいます。

立ち読みするだけでも
その充実度分かるはずです。
Tak管理人 | 2008/12/04 7:47 AM
わたしも読みました。
浮世絵ブームに合せた手ごろな「入門書」。
画像が多く、説明との関連が親切ですね。
歯切れのよい書き方にも好感が持てました。

とら | 2008/12/04 9:13 AM
こんにちは、さっそくアマゾンでポチっとしました。
「日本の国宝、・・・」もいままですごく興味のある内容
だったので、一緒に購入して送料無料にしました。
実家に一緒に持ち帰ります!!
耳寄り情報をありがとうございました!
Emmy | 2008/12/04 8:36 PM
@とらさん
こんにちは。

目で見て楽しむものですから
画像なくしては折角の文章も
台無しになってしまいます。
カラー版で出して大正解ですね!

@Emmyさん
こんにちは。

これまでだったらもう一回り
大きなサイズの本で価格も
2000円前後しちゃう本が
新書で出てくれるのは嬉しい限りです。
2冊買ってもまだ「おつり」がくる
お得感ありますよね!
Tak管理人 | 2008/12/05 7:32 AM
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新書版であるにもかかわらず、カラー写真満載の浮世絵の入門書としては、実によくできた本である。内容については、すでにこちらで、詳しく紹介されていので、参照されたい。特に興味深く読んだのは、浮世絵の購買層と値段について書かれた部分と、各種の摺りの技法の紹
カラー版 浮世絵 大久保純一 岩波新書 | つまずく石も縁の端くれ | 2009/02/21 5:32 AM