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メモ:「朝鮮王朝の絵画と日本」

栃木県立美術館で開催中の「朝鮮王朝の絵画と日本」展に関するメモ。
昨日の記事と合わせてお読み頂ければと。

読売新聞(2008年11月20日)朝刊
宗達に見る朝鮮の画風(「ころころ」子犬に類似点。地方画壇にも影響か。)
 展示は15〜16世紀ころの山水画に始まる。古い絹に目をこらすと、墨の陰影を生かした岩山やとげとげしい樹木が見えてくる。北宋や元の山水画家が好んだ描法だ。日本で言えば室町時代ころだが、同じく中国絵画を源泉としながら、日本では室町時代以来、瀟洒な南宋絵画が珍重された。しかも筆墨を簡略化させながら学び取った感がある。地続きの朝鮮王朝では、中国北方の様式が生き続けたようだ。このほか花烏画などもじっくり見せている。
 そんな朝鮮王朝の絵画が実は、日本絵画にかなり影饗を与えていたのではないかというのが後半の見どころだ。一つは地方画壇の水墨画。南宋的な様式を重んじた室町幕府周辺でなく、むしろ地方で受容された司能性があるという。あるいは犬の絵。俵屋宗達の水墨画をはじめ、江戸時代にはころころした子犬がよく描かれたが、16世紀に活躍した李巌から広がったのではないかと示唆する。なるほど体の丸みを面的にとらえていく感じは相通じる。
 むろん地方画壇の水墨画にせよ宗達の犬にせよ、源流はやはり中国にあり、それが別々に、日本・朝鮮王朝双方に影響を与えた可能性は否定できない。だが、江戸時代に訪れた朝鮮通信使に関する作品も出品されており、関係がなかったと考えるのは無理があると分かる。
 まずは朝鮮王朝の絵画史をしっかり受け止め、日本との違いや影響関係を通じて、広く東アジアの絵画史を望ませる展覧会と言えそうだ。見ていると逆に、今一つ朝鮮絵画が理解されてこなかった理由も気になる。
 一つには室町時代以来の鑑定で、時に中国や日本の絵と誤認された経緯があるようだ。例えば伊藤若冲が模写の手本にした16世紀の虎図も出品されるが、若冲自身は中国絵画と思っていた。近代になると、民芸運動を唱道した柳宗悦が深い共感を寄せた。1919年、民族運動の高まりの中で読売新聞に寄稿、「日本の古芸術は朝鮮に恩を受けた」と断言しているが、総じて陶磁器や民衆的な絵画に力点を置いている。
 最近では名品の紹介や、日中との比較を試みる展覧会が開かれているが、絵画史への理解は今後、さらに深めていくべき段階にあるようだ。企画に加わった板倉聖哲・東大准教授は「東アジアの絵を見る際、朝鮮絵画という目のフィルターを持つと、より豊かな見方ができる。ただし絵が似ているという単線的な理解を超えて、当時の絵画観が反映された鑑定システムなど複雑な様相を見ていく必要がある」と話している。
 12月14日まで。会期中、展示替えがある。来年、静岡県立美術館、仙台市博物館、岡山県立美術館に巡回する。

毎日新聞(2008年12月3日)東京夕刊
「朝鮮王朝の絵画と日本」展:栃木で開催 日本美術に新たな視点
 14世紀末に創始されて以来、500年余の長きにわたって続いた朝鮮王朝。その美術を通覧する展覧会「朝鮮王朝の絵画と日本」が、宇都宮市の栃木県立美術館で開催されている。日韓両国に所蔵される絵画作品総数320点が一堂に会す、貴重な展覧会となった。
 前半部には、山水画をはじめ、花鳥画、仏画、“李朝の美”として一般になじみの深い陶磁器や民画など多様な作品が並ぶ。中国からの影響を受けつつ、独自の展開を遂げた朝鮮王朝美術の変遷をじっくりとたどる構成だ。そこからさらに踏み込み、日本美術との影響関係に迫るのが後半部。雪舟、雪村ら室町時代の水墨画のほか、俵屋宗達、池大雅、伊藤若冲らの近世絵画を取り上げ、そのイメージソースとして朝鮮絵画の存在が示唆される。
 中国美術との関係においてのみ捉(とら)えられてきた従来の日本絵画史に、新たな視点を提供する朝鮮美術。同館特別研究員で、本展の企画を担当した橋本慎司氏は「今後も日朝両者間の影響関係についての検討を続けつつ、中国を含めた東アジア的視点による絵画史を構築することが必要」と話している。
 14日まで。会期中展示替えがある。詳細は同館(電話028・621・3566)へ。来年、静岡県立美術館、仙台市博物館、岡山県立美術館に巡回する。

朝日新聞(2008年12月6日)朝刊
東アジアの共同体を確認
 14世紀末に成立し、約500年続いた朝鮮王朝。その絵画の流れを通観し、室町・江戸絵画との影響関係を探る「朝鮮王朝の絵画と日本宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美」展が、栃木県立美術館で開かれている。総数約230点(展示替えあり)。韓国生まれで、日欧を拠点に活動する美術家の李禹煥(リ・ウーファン)さん(72)が、展示と向き合った。

 私は絵を描く立揚から、自分の足元の歴史がどうなっているのかに、関心を持っている。その点で、この展覧会は貴重だ。中国の絵画を紹介する展覧会はこれまでもあったが、朝鮮と日本の絵画の関係に焦点を当てた展覧会は非常にまれだからだ。また、たいへん力がこもっている。
 展示を見て改めて、東アジアには、大きく言えば、山水画を中心にした美術言語の共同体があったと確認できた。唐代から、理想化された自然が描かれ、朝鮮や江戸まで広まった。静物画や花鳥画も多数出品されているが、李巌の温かみのある犬や烏の図なども、理想郷の一部と見える。
 そうした理想化を通して、逆に、自然や現実を見直す。それが絵の面白さだろう。
三つの国では、圧倒的に中国の影響力が大きい。朝鮮と日本には、ありがたくもあり、うつとうしくもあった。絵画のモチーフは共有しつつ、筆法や構図など、それぞれ少しずつ表現がズレてゆき、落ち着いてゆく過程が見られて面白い。
 中国の山水画は、現実風景の雄大さに対応し、非常に広大にして超絶。これに対し、朝鮮や日本のものは、それほど長大でも厳格でもなく身近だ。朝鮮の絵画はかなり古くから、和やかな空気に満ち親しみを感じさせる。日本に来ると、さらに遊戯性が増す。
 朝鮮が、日本への媒介になっている点も興味深い。日本は、中国からじかに受け取るよりも、媒介されたことで、自分の色が出しやすいという面があったのではないか。
 特に、室町時代の雪村らの穏やかな筆法や構図にみられる、覇鮮の影響は暗示的だ。雪舟のパトロンの大内氏も朝鮮と貿易をしていた。逆に、金弘道筆「金鶏図屏風」のように、朝鮮的といいにくい、大和絵風の絵画空間を持った絵がある。朝鮮と日本の間の、多様な相互交流、影響のあり方を示すものだ。
 山水画は、宇宙への憧憬として始まったのではないか。鑑賞というより、敬う絵、そこに登揚する草一本も動物も人間も、宇宙の破片。そういうアニミズム的な考えを持っている。それは東アジアの美術に通底しているのではないか。現代美術でも、例えば草間彌生の編み目の連鎖や、私の余自の絵画は、宇宙の無限性に連なる。
 いま中国、韓国、日本の人の行き来は、かつてなく激しい。美術でも、村上隆や奈良美智の影響は、韓国や中国でもすさまじい。文化は常に、経済や政治と結びつき、地域や時代を象徴するものだ。そうした状況の中で、自己確認の場としても、この展覧会の意味は大きいと思う。(談)
◇14日まで。静岡県立美術館、仙台市博物館、岡山県立美術館に巡回。

栃木県立美術館 友の会会報「すずかけの庭」vol.99

朝鮮王朝の絵画と日本 
一九九八年のことになるが、私は栃木県立博物館において「関東水墨画の200年―型とイメージの系譜」という展覧会を手がけた。栃木県博の収集活動のテーマの一つに「関東水墨画」があり、ある程度まとまったコレクションがあったことから、私が同じような収集方針をもつ神奈川県立歴史博物館の相澤正彦氏(現成城大学教授)に共同開催のオファーをしたことに端を発するものであった。その準備段階や終了後にも続いた調査活動によって400点を超える絵画を集成し、関東画壇の絵画制作の様相を考察することができたのだが、一方で、その関東画壇の啓孫や雪村などがもつ、中央でおこなわれていた中国絵画の影響だけでは説明のできない、クセが強くてやや煩雑な画風はどこから来たのかという疑問も残った。それは、朝鮮王朝の絵画からの影響ではないかという先学の指摘もあったが、何しろ朝鮮王朝絵画を見る機会は本当に少なく、日本民藝館や高麗美術館など特色あるミュージアム以外ではなかなか展覧会として見ることができないため、実感として理解したいと思っていた。
その朝鮮王朝は、太祖李成桂によって一三九二年に創始されて以来、五一八年もの間続いた。近隣の大国中国では明と清、日本では室町と江戸という二つの時代をも超える長命な王朝である。そもそも日本と朝鮮半島との文化交流の歴史は古く、弥生時代、古墳時代にまで遡る。その流れは朝鮮王朝時代になっても同様であり、日朝貿易などによる物資の往来と共に文物の交流も盛んに行なわれた。中でも、王朝から将来された多くの絵画から受けた日本画壇の影響は決して小さなものではなかったはずである。そこで本展は、日本と同様に中国絵画からの影響を強く受けた朝鮮王朝の絵画を通観し、日本の有力画家たちの制作活動を中心とした室町・江戸絵画との影響関係を探ることによって、東アジアにおける同時代絵画に対する新たな見識を得ることを目的とした。尚、本展には韓国の国立中央博物館や国立古宮博物館、三星美術館、ソウル大学博物館、高麗大学博物館、東国大学博物館、ソウル市内個人所蔵家からの出品が予定されている。朝鮮王朝の絵画をこれだけ広く紹介する展覧会は、韓国においても未だ実現されたことがなく、両国の研究者にとっても多くの知見を得る最高の場となること、また一般の方々にも日朝絵画の影響関係やそれぞれの魅力を知っていただけるものと期待している。(橋本慎司 特別研究員)

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