青い日記帳 

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「セザンヌ主義」

横浜美術館で開催中の
「セザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃」に行って来ました。


公式サイト

セザンヌについては一家言を持っている。

なんて初っ端から大上段に振りかざすほど深く理解しているわけではありませんが、セザンヌと聞くと黙っていられなくなるのは事実。

絵を観始めしばらく経つと必ず「セザンヌという名の大きな山」が目の前に現れます。それを自覚するかしないかは別として、避けて通れないのが「セザンヌ山」。

ところが、「近代絵画の父」と称賛されるほどの画家でありながら、日本ではセザンヌ人気はイマイチ。展覧会会場でモネやルノワール、ゴッホの絵の前には黒山の人だかりが出来ていても、セザンヌの前はガラガラ。

分からなくもありません。モネやルノワールのような美しい風景画や人物画、ゴッホのような魂を揺さぶる作品いづれもセザンヌは残していません。それどころか、塗り残しのある人物画やゴツゴツした風景画、テーブルにのっているのが不思議なほどアンバランスな静物画、何を描きたいのか理解不能な水浴図等など。セザンヌの作品を前にして腕組みしていくら考えても「答え」が中々出て来ません。

仕舞にはしびれを切らせて「どうしてこんな変な作品が凄いの?」と。(まぁ、聞けばまだいい方でたいていは無視されスルー。そして絵の前には誰も居なくなる)

因みにこちらの作品。横浜美術館所蔵品の中で最もお高い作品。

ポール・セザンヌ「ガルダンヌから見たサント=ヴィクトワール山」1892-95年 横浜美術館

「こんな絵に何千万も出して!」と「市民」の怒りの声聞こえてきそう。。。

そんな怒りの声を抑えるべく?いやいや、「セザンヌすげーーー」と言わせしめるべく開催されたのが、この展覧会(多分)

あくまでも想像ですが、「セザンヌの凄さ」を知ってもらう為にはどうすれば良いか?考えた方がいらっしゃるのでしょう。一般的に考えればセザンヌの名品と呼ばれる作品を多く集めて見せるのが筋。しかし、前述した通りセザンヌの作品を目の前にしても、どこがどう凄いのか、上手く伝えられません。

過去に横浜美術館では「セザンヌ展」(1999年)を開催しました。オルセー美術館はじめ国内外の美術館からセザンヌ作品が一堂に集結。今では信じられない夢のような「セザンヌ展」でした。(愛知県美術館へも巡回)


1996年にロンドン、テイト・ギャラリーで開催された世紀の「大セザンヌ回顧展」にわざわざ行ってしまうほどのセザンヌ・ラヴな自分にとっては、国内でこれだけのセザンヌが観られ夢のような展覧会であっても、多分一般的な評判はそれほどでもなかったはず。(「えーーセザンヌ観に横浜まで〜それなら西洋美術館のオルセー美術館展が観たい」)

で、熟考に熟考を重ねた挙句導き出された結論が
セザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃

「セザンヌすげーーー」と言わせしめる為には、どれだけ多くの後世の画家に大きな影響を与えたかを示せばいい!ピカソやモーリス・ドニなど西洋の画家さんだけでなく、幸い日本画壇にもセザンヌに影響を受けた画家さん沢山いるし。(レンタル料もお安く済みますからね)

ということで?セザンヌ自身の作品はあまり展示されていません。いづつやさんがご立腹されるのもごもっとも。「セザンヌを観に行く」と肩透かし喰らいます。逆にセザンヌの影響を受けた画家がこれほどいたのか(特に国内)ということを知る良い機会。ogawamaさんが満足されているのもその点。

以下、展覧会の構成です。
プロローグ
1:人物画
・セザンヌとエコール・ド・パリ
・セザンヌと日本の近代絵画(1)
・セザンヌとフォーヴィスム
2:風景画
・セザンヌとキュビスム
・セザンヌと日本の近代絵画(2)
3:静物画
エピローグ



ポール・セザンヌ「縞模様の服を着たセザンヌ夫人」1883-85年 横浜美術館


安井曾太郎「婦人像」1930年 京都国立近代美術館

「セザンヌと安井曾太郎展」かと思うわせるほど安井の作品が数多く出展されていました。「影響を受けた」と一言で言ってもその幅はかなり広いものがあり一色単解釈すると危険です。「ルノワール→梅原龍三郎」のような「影響」を安井はセザンヌから受けているわけではなさそうです。

実際に安井はフランスから帰国し15年経ってから「婦人像」を描いています。ピカソやブラックがセザンヌからキュビスムの原点を見出したのに対し、安井はセザンヌから何を学んだのでしょう。

安井自身内面に噴出した格闘の跡が感じられる一枚です。明治期の日本人画家にとってセザンヌは「毒」だったのかもしれません。皆「セザンヌ風」に染まってしまい独自性が欠落している作品多く目にしました(それもまた「影響」ですが)。そんな中にあって最も「偉大なセザンヌ」に殴り合いの喧嘩を仕掛けたのが安井曾太郎だったような気がしました。

見落としあるかもしれませんが、出展作家リストです。
(国内)
有島生馬、岸田劉生、川口軌外、森田恒友、小出楢重、佐伯祐三、黒田重太郎、中村彝、前田寛治、木村荘八、林倭衛、小野竹喬、国枝金三、長谷川潔、北川民次、斎藤与里

(国外)
ポール・ゴーギャン、キース・ヴァン・ドンゲン、ケル=グザヴィエ・ルセール、エミール・ベルナール、モーリス・ドニ、アンドレ・ロート、パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、アンリ・マティス、モーリス・ド・ヴラマンク、ラウル・デュフィ、アンドレ・ドラン、アメデオ・モディリアーニ、モイーズ・キスリング、マルク・シャガール、ファン・グリス

構成も見せ方も悪くありません。ただそれぞれ軸となるセザンヌの作品にもう少し良い作品が揃えば良かったかなと。例えばこれこそセザンヌの「水浴図」や「サント=ヴィクトワール山」だ!と言える作品がありませんでした。頭の中にセザンヌの作品がある程度入っていないと他の作家と比較しようにも中々大変ではないかと。
 
これもあくまでも想像ですが、景気の影響もあるのかもしれません。1999年と今では。それに絵画の値段が世界的に急激に上昇した関係で簡単に世界の美術館からセザンヌ借りられないのでしょう。保険料だけでもバカになりません。

1999年のような「セザンヌ展」は当分開催されることないでしょう。その間、ポール・セザンヌの偉大さ学んでおくのも決して悪くないかと。

最後に「今日の一枚


ポール・セザンヌ「ガルダンヌ」1885-86年 メトロポリタン美術館
The Metropolitan Museum of Art, Gift of Dr. and Mrs. Franz H. Hirschland, 1957 (57.181) © The Metropolitan Museum of Art

ガルダンヌはセザンヌ故郷プロヴァンスの西に位置する塔のある町。
セザンヌの良い作品あまり来ていないと書きましたが、自分的にはこれ一枚観られて幸せ。これが好きか嫌いかで、セザンヌが好きか嫌いか判別できそう。「これ一枚でご飯何杯でもおかわりできる」そんな作品です。

そうそう、この絵の近くに諸橋近代美術館所蔵の「林間の空地」というセザンヌらしからぬタッチの作品が展示されていました。これもある意味見ものです。1867年セザンヌの初期の作品です。


セザンヌ主義」展は2009年1月25日までです。

巡回先:北海道立近代美術館 2009年2月7日(土)-4月12日(日)

セザンヌ主義-父と呼ばれる画家への礼讃-GUIDE BOOK (ぴあMOOK) (ぴあMOOK)
セザンヌ主義-父と呼ばれる画家への礼讃-GUIDE BOOK (ぴあMOOK)
展覧会にあわせて、ぴあから発行されたハンディなガイドブックです。特集名にもあるようにプロヴァンスのセザンヌの家やその町エクスの地図なども写真入りで載っており、このガイドブックを持って町を巡ると楽しそうです。他にもセザンヌを持っている国内の美術館が案内されています。

おまけ:
これがあったらな〜

モーリス・ドニ「セザンヌ礼賛」1900年 オルセー美術館

セザンヌの静物画を囲んで沢山の人達が描かれています。
静物画の右上に顔を出しているのが作者のドニ。右から2番目はボナール。中央前にいるのはセリュジェ。左端がルドン。そしてイーゼルの後ろに立つのが画商ヴォラール。因みにイーゼルに据えられた絵はゴーギャンが所有していた絵。

1985年に画商ヴォラールセザンヌの個展を開催して以来、セザンヌの評価は多くの画家たちの間で高まりました。一般からは見向きもされなかったセザンヌの価値を認めたのはこういった画家たちだったそうです。

ピカソ、シャニック、ゴーギャン、モネピ、サロなど皆セザンヌを所有していました。ブラック、マティス、ヘンリー・ムーアを開眼させたのもセザンヌでした。

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こちらも↓
ブリヂストン美術館土曜講座「プロヴァンスのセザンヌ―没後100年記念大回顧展」

それでは最後に「今日の美味


ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座の「鹿ロース肉のノワゼット 紅玉とキノコのソテー ポワヴラードソース
鹿のお肉なんて初めて食べました。こういう店食べると何でも美味しく感じてしまう情けない自分。。。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1614

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ピカソが敬愛の心を示して「父」と呼んだ画家、ポール・セザンヌ(1839−1906)。印象主義とともに出発しながらも、それを超え、伝統的な絵画の造形原理に基づきつつ独自の新しい表現を創造した画家。セザンヌの絵画は、今なお世界中から大きな関心と評価を受け続けています。
「セザンヌ主義」という言葉が存在するのは、彼の絵画が20世紀初頭のフランスにおける革命的な芸術運動に与えた影響がとりわけ顕著であるからです。ベルナール、ドニらの「象徴主義・ナビ派」、マティス、ヴラマンクらの「フォーヴィスム」、ピカソ、ブラックらの「キュビスム」、そしてモディリアーニら「エコール・ド・パリ」の画家達の絵画には、セザンヌの影響がはっきりと見て取れます。
一方、日本においても、セザンヌは大正期に『白樺』などの文芸誌に紹介され、岸田劉生ら洋画家たちに衝撃を与えました。安井曾太郎、森田恒友、佐伯祐三らは、セザンヌ熱に沸く20世紀初頭のパリへ渡り、セザンヌの作品に直に触れて大きな影響を受けました。本展では、日本近代の巨匠の絵画を「日本のセザンヌ主義」として大きく取り上げます。
本展は、セザンヌの名作約40点と、その影響を受けたと考えられる20世紀の巨匠の作品約100点を国内外から集め、それらを並置、比較して展観するという大胆な試みを行うものです。「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌの名品と、彼を起点として日仏に華開いた20世紀絵画。偉大なる表現者が次なる表現者を生むという、芸術の真髄に迫るこの貴重な機会を、どうぞお見逃しなく。


展覧会 | permalink | comments(7) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

たしかにセザンヌの良さを理解させるのは難しいですよね。
あのように展示して比較しても一般的には分かりずらいのでしょうね。
でもセザンヌの奥行き、本当に掴めそうな空間は、他の作家と比べて歴然でした。

どうしてあの時代にあのように考えて絵画をつくれたのか、驚嘆に値します。ピカソなどの天才があの凄さを認めて後のキュビズムに発展するのですが、それだけでない色彩の美しさもセザンヌにはあります。

まさに近代絵画の父と呼ばれる天才です。
しかし、横浜はあまりにもセザンヌが少なすぎで、個人的にはモノ足りませんでした。
レイ | 2008/12/26 8:29 AM
>頭の中にセザンヌの作品がある程度入っていないと他の作家と比較しようにも中々大変ではないかと。

全く同意でした。^^;


まぁ、数点いいのがあれば、ぼくもそれで満足です。
建築物としてもなかなか良い美術館でしたし。
テキィ | 2008/12/26 9:18 AM
セザンヌは美術の教科書にサント=ヴィクトワール山が載ってて
この絵のどこがいいのだろう…と思ったのを覚えてます。
でも!美術史で順番に絵を見ていくうちに
彼の登場が後世の画家に影響を与えたのがよく分かりました。
そーなんですか、日本じゃ人気があまりないんですか、
残念。

鹿のお肉ですか、これもジビエなんでしょうね。
サッチャン | 2008/12/26 11:26 AM
こんにちは
「ルノワールは一般受けして、セザンヌは玄人受けするのだ」
叔父も母も同じことをよくわたしに言います。
日本の洋画家が受けた影響の大きさと言うのは、やっぱり凄いと思います。
数年前名古屋で「日本のセザニスト」というような展覧会を見たとき、つくづく実感しました。
セザンヌは魂の父なのか、と思ったものです。

挙げられた日本人画家、大抵が好きな画家なので、やっぱり見に行きたいな、とうずうず・・・
遊行七恵 | 2008/12/26 12:48 PM
@レイさん
こんにちは。

難しいです。理解しようとしない方多すぎ。
感覚が大事とか言われておしまい。
多分一生「絵」は観られないかと。

セザンヌが他の画家とあまり交流せず
田舎にひきこもり収斂させた結果だと。
色彩の美しさについては彼の水彩画を
観れば一目瞭然ですよね。天才です。

横浜も企画としてはいいのですが
いかんせん、予算が…

@テキィさん
こんにちは。

絵画初心者にセザンヌの凄さ偉大さを
解こうとする意欲はかんじられます。
しかし如何せん肝心のセザンヌが…

教科書なしに授業を受けているような
変な感じを受けつつもまぁそれなりに満足しました。

@サッチャンさん
こんにちは。

>でも!美術史で順番に絵を見ていくうちに
>彼の登場が後世の画家に影響を与えたのがよく分かりました。
素晴らしい!!!!
そうなんですよね。
少しでも探究心あれば彼の偉大さ
すぐに分かるのですがそれすらしないで
ブーブー言っている人多すぎです。

あんな作品、あの時代に描けること自体
奇蹟のようなものなのに。。。

鹿肉クセなくて美味しかったですよ〜

@遊行七恵さん
こんにちは。

ルノワールとセザンヌ意外や意外交流が
あったのですよね。二人で同じ風景を
描いた絵もそれぞれ残っています。

しかし、ルノワールは所詮「印象派」
時計の針を先に進めることはできません。

川口軌外が魂も作風もすっかりどっぷり
セザンヌにとり付かれたような絵を描いていました。

お時間あれば是非。
Tak管理人 | 2008/12/27 11:40 AM
こんばんは。
「セザンヌ展」としては、大判の水浴図がないのが寂しかったですね。
でも「セザンヌの影響を辿る展」としては上手く出来ていたと思います。
前半で肖像画ばかりが並んだときはちょっと不安になりましたが。
mizdesign | 2008/12/28 11:49 PM
@mizdesignさん
こんばんは。

そうなんですよーー
水浴図の大判が一枚でもあれば
全然違ったのでしょうが。。。
借りるの大変なのでしょう。
不景気な時は仕方ないですね。
Tak管理人 | 2008/12/29 12:16 AM
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皆様の情報から、これはセザンヌの作品を集めた展覧会ではなく、セザンヌに影響を受けた画家の展覧会であるということが分かっていたので、過大な期待は持たずに出かけたのが正解であった。セザンヌについては、確かに一介の美術鑑賞マニアにとっては、比較的地味な存在
セザンヌ主義  横浜美術館 | つまずく石も縁の端くれ | 2008/12/28 9:49 AM
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セザンヌ主義@横浜美術館 | 柏をたのしむ | 2008/12/28 11:37 PM
年間を通してかなりの数の展覧会を見ているが、時々‘一点買い’の展覧会がある。現在
丸紅コレクション展 | いづつやの文化記号 | 2008/12/29 8:22 AM
横浜美の‘セザンヌ主義展’(11/15〜1/25)を見た。損保ジャパンのジョット
横浜美のセザンヌ主義展にガッカリ! | いづつやの文化記号 | 2008/12/29 2:16 PM