青い日記帳 

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「japan 蒔絵」

ントリー美術館で開催中の
「japan 蒔絵―宮殿を飾る 東洋の燦めき―」展に行って来ました。



「japan」と英和辞書を引けば「漆」「漆器」の意味で載っている通り、
漆器は西洋では日本を代表する工芸品として知られています。

が、しかし、更谷富造氏がこちらの著書で嘆いていらっしゃる通り、「漆」=「japan」というイメージは少なくとも明治まで。近代化の名のものとに急激な欧米化を図った日本には、もう良質の漆さえも採取できなくなったばかりか、海外に流出した蒔絵を修復できるプロも限りなくゼロに近いという惨憺たる状況。

漆芸―日本が捨てた宝物 (光文社新書)
「漆芸―日本が捨てた宝物」 (光文社新書) 更谷 富造
こちらの記事に詳しい内容が)

それでも、中には2006年度「第46回日本クラフト展」で大賞を受賞された生田真弓さんの「漆ポシェット」など、若い人の間では日本古来の漆芸に新たな光を当ててくれる方もいることは喜ばしいこと。でも、自分を含め大半は、漆芸は既に滅んでしまった「過去のもの」という認識が強いのではないでしょうか。

中でも「蒔絵」(まきえ)は日本独自の漆芸でありながら、その衰微の度合いは顕著。元来高額なものゆえ、一般的な日用品として用いられてこられなかった側面はありますが、それにしても…

さて、そんな憂いてばかりいても仕方ありません。歴史の針をぐーんと巻き戻し、漆器が“japan”と呼ばれ最も輝いていた時代の作品を展覧会で是非。前回の「ピカソ展」がサントリー美術館らしからぬ展覧会でガッカリでしたが、今回はちゃんといつも通りの空間と作品が共鳴し合う素晴らしい展覧会となっています。


ファン・ディーメンの箱」ヴィクトリア&アルバート美術館

桃山時代以降多くのヨーロッパ人(とりわけ王侯貴族)を魅了した「蒔絵」を海外に渡った品々を里帰りさせ展示すると共に、日本国内に残る国宝級の蒔絵作品を煌びやかに紹介する展覧会。構成は以下の通りです。

第1章 中世までの日本の蒔絵
第2章 西洋人が出会った蒔絵 ―高台寺蒔絵―
第3章 大航海時代が生み出した蒔絵 ―南蛮漆器―
第4章 絶対王政の宮殿を飾った蒔絵 ―紅毛漆器―
第5章 蒔絵の流行と東洋趣味
第6章 王侯のコレクションと京の店先
第7章 そして万国博覧会


サントリー美術館へ来る前に京都国立博物館でも開催していたこの展覧会。1〜3章までの展示作品の所蔵先が京博とサントリーが多いのも納得。

第3章「大航海時代が生み出した蒔絵」は一見地味ながら見ごたえあるセクション。大航海時代ヨーロッパ以外の国々へもキリスト教の布教活動を熱心に行っていたイエズス会の宣教師たちのリクエストに応じ、様々な品が蒔絵で作られたそうです。


左:「IHS花入籠目文蒔絵螺鈿書見台」京都国立博物館
右:「IHS彫木箔押書見台」九州国立博物館

同じ書見台でも日本で拵えると蒔絵に。インドだと右のように木箔となっています。これは日本で作られた蒔絵の書見台をインドでアレンジされたもの。このようにアジア諸国にも宣教師がまさに「伝道師」となり蒔絵を世界中に広めていったことになります。ヨーロッパで宗教改革起こっていなければ、南蛮人によって蒔絵も世界中に広まらなかったかもしれません。歴史って面白いです。


伝狩野山楽「重要文化財 南蛮屏風」サントリー美術館

この屏風絵は期間限定で展示されます。
1月7日から12日まで!(短っ)
観に行かねば!自分が行った時(12月)は個人蔵の「南蛮屏風」が展示されていました。現在国内に90作品くらいあるそうです。南蛮屏風絵。

でも、本当の見どころは4章以下。かつて日本から船で運ばれていった「蒔絵」が、ざっと列挙しただけでもヨーロッパ中から号令がかかったかのように再集結。

ヴィクトリア&アルバート美術館、フリース美術館、ギメ東洋美術館、ドレスデン工芸美術館、ゴータ・フリーデンシュタイン城美術館(ここから来ているドールハウスは必見!)、ヴェルサイユ宮殿美術館、スウェーデン王室、バーリーハウス、ロスチャイルド・ファミリー・トラストワデスドン・マナーetc…


マザラン公爵家の櫃」江戸時代

輸出漆器の最高峰に位置する名品だそうです。絢爛豪華な装飾はこんなちっぽけな画像では百分の一もその魅力を伝えられません。目がテンになります。


楼閣山水蒔絵コモド」江戸時代

昨年2月東京都美術館で開催された、「ルーブル美術館展」でもこういった類の品々結構ありました。日本の蒔絵のパネルだけを使用しヨーロッパの家具と合体させたもの。

当時のこんな賑やかなお店の様子を描いた絵も展示されています。

東洋の貿易商店内の図」オランダ、1600-1700年頃

愉快だったのは日本からの供給が不足されると、蒔絵モドキを勝手にヨーロッパで作ったりしていること!どれだけ人気があったのか我々の想像の域をはるかに超えているようです。

唐子ジャパニング書き物机」フランス、1749-50年

あの、おフランスが日本の蒔絵に憧れ所望し、叶わないとなるとこんなぱっちものまがいのものを作っていたなんて!現在では到底信じられません。アホな番組ばかり垂れ流していないで、こういった点をきちんと紹介する番組とか作れないのかな〜テレビ。日本人に勇気や誇り与えると思うけどなーー

深く濃く輝くような漆黒に、燦めく黄金で描かれた優美な文様。多彩な表現、緻密な手技、絢爛豪華な作品群にうっとり見惚れる……だけでは収まらないのが、この展覧会。それらの蒔絵が、海を越え国を越え時代を越え、人の手から人の手へと渡っていった壮大な物語こそが、今展の主役です。」と語るのはこの展覧会を企画された京都国立博物館主任研究員の永島明子氏。

かつて世界中のセレブ達をとりこにした“japan”=蒔絵の世界を、たっぷりため息つきながら堪能できる素晴らしい展覧会です。サントリー美術館さんは平日水曜〜土曜は20時まで開館しています。(日・月・祝日は18時まで)仕事ちょっと早めに終わったら迷わずgo!!

最後に「今日の一品


花鳥蒔絵螺鈿聖龕(三位一体像)」桃山時代

これ拝見した時、なんて素敵な取り合わせと思わずリストに○印を。
いやーー予想以上に宗教画と蒔絵合いますね〜
これは宣教師(南蛮人)の心を捉えてやまないのも頷けます。

そうそう、「山水花鳥蒔絵螺鈿箱(トイレット・ボックス)」なんて珍品もかのヴェルサイユ宮殿からやってきています。マリーアントワネットが使用した「おまる」!!なんでも140年ぶりの公開だそうです。

サントリー美術館
「japan 蒔絵 ―宮殿を飾る 東洋の燦めき―」
2008年12月23日(火・祝)〜2009年1月26日(月)


漆とジャパン―美の謎を追う
漆とジャパン―美の謎を追う
三田村 有純

【関連エントリー】
- 弐代目・青い日記帳 | サントリー美術館開館記念展I 「日本を祝う」
- 弐代目・青い日記帳 | 「水と生きる展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「水と生きる」展(後期)
- 弐代目・青い日記帳 | 開館記念特別展「鳥獣戯画がやってきた!」
- 弐代目・青い日記帳 | 「BIOMBO/屏風 日本の美」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「ガレとジャポニズム」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「ロートレック展」
- 弐代目・青い日記帳 | 「小袖 江戸のオートクチュール」展
- 弐代目・青い日記帳 | 「KAZARI-日本美の情熱-」展


それでは最後に「今日の美味


栃木県佐野市に住む友人に強力プッシュされた「いもフライ
何でもこの地域の名物とか。一口サイズの蒸かしたジャガイモをからりと揚げ、特製ソースをたっぷり塗ってもらいました。騙された気分で食してみるとこれが旨い!揚げてあるのに一本軽く食べられてしまう。100円は格安。
何でも佐野市はラーメンに続いてこのいもフライを名物として売り出そうとしているとか、市内には専門店が何十軒もあるそうです。
Wikiにもあった!

だんだんと,このいもフライの画像が蒔絵とダブってきた…

追記サントリー美術館2009年の展覧会スケジュール
智証大師帰朝1150年、狩野光信没後400年 特別展
「国宝 三井寺展」
2009年2月7日(土)〜3月15日(日)

「一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子」
2009年3月28日(土)〜5月17日(日)

「NHK大河ドラマ特別展 天地人―直江兼続とその時代―」
2009年5月30日(土)〜7月12日(日)

「シアトル美術館名品展」(仮称)
2009年7月25日(土)〜9月6日(日)

「和紙と暮らす―装飾と造形」(仮称)
2009年9月19日(土)〜11月3日(火・祝)

「清方/Kiyokata ノスタルジア」
―江戸の粋を愛した日本画家、鏑木清方のまなざし―(仮称)
2009年11月18日(水)〜2010年1月11日(月・祝)

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日本の漆工芸は世界的に名高く、陶磁器を“china”と呼ぶように漆器が“japan”と呼ばれたことが、その浸透ぶりを象徴しています。特に、金銀を用いて漆黒の地をきらびやかに飾る蒔絵(まきえ)は、桃山時代にはじめて来日したヨーロッパの人々を魅了し、特注品が作られるほどになりました。海外での蒔絵の人気はその後も途絶えることなく、遠く東洋からもたらされた贅沢な品として珍重され、フランス王妃マリー・アントワネットら王侯貴族は競って蒔絵を求め、宮殿を飾りました。
本展では、フランスのヴェルサイユ宮殿美術館などが所蔵するアントワネットのコレクションをはじめ、イギリスの貴族の館バーリーハウス、スウェーデン王室、ザクセン公アウグスト強王ゆかりの宮殿など、ヨーロッパ各地に残された貴重なコレクションに、国内で所蔵される国宝、重要文化財を含む名品の数々を加えた約240件の優品を一堂に集めて展示します。日本で生まれ、西洋人を魅了した繊細で華麗な黄金の美、蒔絵の歴史をグローバルな視点から見つめる初めての大規模な展覧会です。


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この記事に対するコメント

はじめまして。このたびはトラックバックありがとうございました。蒔絵展、本当に良かったです。お正月から豊かな気持になりました。「今日の一品」、私も同感です。宗教画と蒔絵がこんなにしっくりと合うとは、意外な驚きでした。こちらからもTBさせていただきましたが…。うまく出来ていないかもしれません(汗)またうかがわせていただきます。
★とろりん★ | 2009/01/06 8:17 AM
こんばんは。工芸の東西交流って面白いですね。
マリア・テレジアは「ダイヤより蒔絵」が好みだったそうですが、私はjapan(漆器)よりchina(磁器)かな〜なんて思ってしまいました。
jchz | 2009/01/06 10:50 PM
@★とろりん★さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

TB受け取れないようで申し訳ないです。
懲りずにチャレンジしてみて下さい。

それにしても日本の蒔絵が
これほどまでに海外のセレブ達の
心を射止めていたなんて!
もっと宣伝してもいいですよね、この展覧会。

今後とも宜しくお願い致します。

@jchzさん
こんばんは。

渋谷の戸栗美術館でオメデタイ展覧会
開催していますね。これもいいかも。

それにしてもダイヤよりも蒔絵ですか〜
はーーそうとう入れ込んでいたのですね。
Tak管理人 | 2009/01/06 11:28 PM
Takさんこんばんは。TBありがとうございました。
今回はサントリーに一本とられましたね。ピカソ展の件はもう忘れます…。

後期も始まりましたね。また行かないと!

>「いもフライ」

美味しそうですね。やはり揚げたてが美味でしょうか。
はろるど | 2009/01/18 9:26 PM
@はろるどさん
こんにちは。

ピカソの件は汚点ですね。
あれはサントリーが悪いわけではないかと。。。

こっそり、伝狩野山楽「重要文化財 南蛮屏風」
だけ観に再訪してきました。

また後期も!

いもフライは冷めたものをオーブンレンジで
温め直し頂きました。揚げたてを一度食べたい!
Tak管理人 | 2009/01/19 8:34 AM
おととい、後期を拝見してきました。
常設展にして欲しいくらいに惚れ惚れしました。

「いもフライ」、似た感じで北海道にもあるんです〜。
札幌近郊の中山峠のが有名で、「あげいも」っていいます。
衣がフランクフルトのなんです。
なでしこ | 2009/01/23 12:32 AM
TBありがとうございました。
仕組みがよくわかってなくて、すみません。
僭越ながら、こちらからもお願いいたします。
なでしこ | 2009/01/23 12:48 AM
@なでしこさん
こんにちは。

ブログ開設おめでとうございます!

何だかんだ言って結局この天覧会
既に三回も足運んでしまってます。
マリーアントワネットが憑依したかのよう。

「あげいも」も食べてみたいなー
シンプルなものって美味しいですよね。

TBはばんばん遠慮なく送って下さい。
こちらからも送らせてもらいます。
ブログの良い点ですので。
Tak管理人 | 2009/01/24 12:29 PM
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