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「雪舟と水墨画」

千葉市美術館で開催中の
岡山県立美術館所蔵「雪舟と水墨画」展に行って来ました。



浮世絵コレクションで名を馳せる千葉市美術館
雪舟始め水墨画の優品を有する岡山県立美術館


千葉市美術館所蔵「浮世絵の美展」2008年7月18日〜8月24日

昨年夏に千葉市美術館から岡山県立美術館へ浮世絵を貸したお返しに、冬に水墨画を貸してもらい成立。こういった「交換展覧会」は大変有難いもの。お互いの美術館のみならず、それぞれの地域に住む人にとっても有意義なこと。是非とも他の美術館同士もこういった類の「コレクション交換展覧会」開催して欲しい。

詳しいことは分かりませんが、こうした展覧会ならお金もさほどかからずに済むのでは?何もリニューアル中の海外の美術館から借りてくるだけが能ではないかと。

第1章 中国絵画−憧憬の中国−
第2章 日本の水墨画家たち−雪舟から武蔵まで−
第3章 岡山出身の四条派画家ー柴田義董と岡本豊彦−
第4章 江戸時代の唐画と富岡鉄斎−中国愛好の系譜−


この展覧会を訪れたのは1月4日(日)の午後。川村記念美術館の帰りに立ち寄り、展示室内へ入ると奥の方から聞き覚えのある声が…そうラッキーなことにこの日は「担当学芸員によるギャラリートーク」が開催されていたのでした。

声の主は面識のある伊藤紫織氏。最初にご紹介を受けたのが確か「ミラノ展」の時。一昨年ここの美術館で開催された市民講座「伊藤若冲-若冲とその時代-」でお話を拝聴。また昨年、京都国立博物館「若冲を愉しむ」の展示室でばったりお会いしたのも記憶に新しいところ。伊藤さんとは新年早々お会いする機会が多い。これは今年も良い一年になりそうな予感です。

でも、ギャラリートークは既に始まっており途中からの参加。苦手な中国絵画を拝聴出来なかったのは悔やまれますが、それでも新年早々運気は良さ気。


牧谿(もっけい)「老子図」13世紀

どうして「憧憬の中国絵画」がこんな鼻毛ぼうぼうのむさくるしいおじいさんの絵なのかはさておき、この辺の知識に乏しい自分でも牧谿や玉澗などパッと見て名前の分かる絵師の作品がまずお出迎え。(因みにこの「老子図」、足利義満の印が押してあるそうです)


玉澗(ぎょっかん)「重要文化財 廬山図」13世紀

今でこそ、欧米諸国の文化を礼賛してやまない日本人ですが、有史以来(とりわけこの室町時代)ずーーとお隣、中国の文化を真摯に学んできたことは紛れもない事実。この展覧会のメインである雪舟その人も自ら中国に実際に渡り学んできたほど。こんな近くに多くのものを学ぶべき大国がありながら、明治期以降は盛んに何ヶ月もかけ船旅で「パリ」を目指すのですから何とも滑稽なことです。


雪舟等楊「重要文化財 山水図(倣玉澗)」

宇都宮で拝見した「朝鮮王朝の絵画と日本」では見出しにくかった「つながり」がこの展覧会では不思議と手に取るように分かる気になります。これも岡山県立美術館の優れたコレクション故なのでしょうか。普段、水墨画(ましてや中国との関わり)に興味のない方でも楽しめる展覧会です。

「第2章 日本の水墨画家たち」にある作品で作者名は誰だか分かっていないものの思わず足を止めてしまう作品が。作品名「芦鷺柳燕図屏風」(16世紀)六曲一双の水墨画による水墨画なのですが、モノクロであるはずの画面に「緑」や「赤」などの色がさされているように見えるのです。

画素数を競うデジカメやフルハイビジョンを謳うテレビなど、当然なかった時代の人々がこの屏風絵を目にした時、今の我々には見えないより多くの「色」がきっと視えたことでしょう。今回の展覧会で水墨画とは単にモノクロームの作品ではないということ学びました。同時に豊かな精神性が観る側に必要なことも。

だからこそ剣の達人であった宮本武蔵が水墨画を手がけたのでしょう。
こころを鍛練するために。


宮本武蔵「布袋竹雀枯木翡翠図」江戸時代(17世紀)

水墨画は一旦筆を画面に置いてしまったら引き返すことできません。消すこと直すことできません。剣の道同様、間違いが許されない世界という共通項が。

「第3章 岡山出身の四条派画家ー柴田義董と岡本豊彦−」
ギャラリートークにはこの辺から参加することできました。

柴田義董(しばたぎとう)と岡本豊彦(おかもととよひこ)は共に現在の岡山県出身の絵師で京都で丸山円山応挙(丸山派円山派)に師事した呉春がたてた四条派で絵を学んだそうです。どちらの絵師の作品も岡山県立美術館にはまだまだ沢山良い絵があるそうで、選ぶのに苦労なされたとか。

丸山円山応挙に連なる呉春に学んだというお話伺う前に岡本豊彦「富士山図屏風」に描かれた波の表現が下手くそな応挙っぽいな〜なんて話、かみさんとしていました。少しは見る目が養われてきたかと新年早々いい気分。

因みに、この柴田義董と岡本豊彦それに松村景文の三人が、呉春を継ぐ四条派の中心を担った絵師だったそうです。

「第4章 江戸時代の唐画と富岡鉄斎−中国愛好の系譜−」
展示スペースの関係で富岡鉄斎は、第2章にある宮本武蔵の前に展示ケースが設けられていました。なるべく多くの作品を観てもらいたいという千葉市美術館の心意気にはいつも頭下がります。

全国の風景版画で、歌川広重のネタ本になった淵上旭江(ふちがみぎょっこう)の「山水奇観」が観られたのはラッキー。広重関連でとらさんが、対中如雲『広重「東海道五十三次」の秘密―新発見、その元絵は司馬江漢だった』を元にテレビ東京で放送された番組についてまとめられていらしゃいます。→広重《東海道五十三次》は盗作だった?

さて、第4章の見所は浦上玉堂親子の作品。


左:浦上玉堂「山澗読易図
右:浦上春琴「僊山清暁図

浦上春琴(しゅんきん)は玉堂の実子。当時は父・玉堂よりも絵の評価、価値は高かったそうです。「花卉図巻」など確かに絵に関しては父親よりも上かも。

なんでも浦上玉堂は絵よりも琴を奏でる方に興味関心が強かったそうです。もう一人の息子の名前が秋琴(しゅうきん)。二人の息子共に「琴」の字を入れるほどの入れ込みようだったのでしょう。因みに春琴は絵の道を。秋琴は琴の道を進んだそうです。(秋琴が描いた「山水図」が一枚だけ展示されていました)

そうそう、ギャラリートークの中で現在岡山県立美術館が建っている土地はかつて藩邸があった場所でそこに玉堂も出入りしていたという大変所縁のある場所だそうです。

伊藤さんのギャラリートークは、はっちゃけたところが随所にあり聞いていて楽しい。「津山三十人殺し」とか「B'zのボーカル稲葉浩志の出身地、津山」とか……津山市ってオダギリジョーの出身地でもあるのですね!帰宅後調べてびっくり。江戸時代は絵師を排出し、現在ではイケメンを。。。

最後に「今日の一枚


雪村周継「瀟湘八景図屏風」16世紀

雪村(せっそん)や長谷川等伯の優品も所蔵している岡山県立美術館。この作品は千葉市美術館でかつて開催された「雪村展」にも出展されなかったもの。この機会に是非。

岡山県立美術館所蔵「雪舟と水墨画」展は千葉市美術館で1月25日まで開催。「雪舟と水墨画展」のチケットで同時開催中の「カラーズ・色彩のよろこび」も拝見すること出来ます。

渓斎英泉「当世すかたのうつし画 茂門佳和
今年度の所蔵作品展は、同時開催の企画展と何らかのつながりのあるテーマを設定して開催してまいりました。水墨画の名品の揃う「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」と同時開催となる本展は、「カラーズ・色彩のよろこび」と題してみました。墨色の濃淡のなかに万象をとらえようとする水墨画の世界とは対照的な、色彩のよろこびに満ちた作品を集め、「彩る」という行為が見せる諸相をご覧いただきます。


すぐわかる水墨画の見かた
「すぐわかる水墨画の見かた」島尾 新

【関連エントリー】
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それでは最後に「今日の美味


珈琲問屋」の「福缶
周辺にお茶する店の少ない千葉市美術館の強い味方が「珈琲問屋」(千葉店地図)美術館の帰りには毎回寄ります。「福缶」は新春特別品。挽きたてのコーヒー豆200gで550円!

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中国大陸に起こり、日本でも発展を遂げた水墨画。モノクロームのなかに、時には色彩を超えた世界が広がります。岡山は日本における水墨画の巨匠雪舟の故郷であることから、岡山県立美術館では水墨画の展示を方針の一つとし、水墨画の名品を収集してきました。中国宋代、日本中世にまで遡る水墨画の大コレクションはとても貴重なものです。

今回は岡山県立美術館の全面的な協力を得て、中国宋代の牧谿、玉澗から、室町時代の雪舟、江戸時代の宮本武蔵、浦上玉堂、そして明治の富岡鉄斎に至るまでの名品66点をご出品いただき、600年以上にわたる水墨画の世界をお楽しみいただきます。
展覧会 | permalink | comments(14) | trackbacks(2)

この記事に対するコメント

ギャラリートークって、時間がかかるから聴かないこともあるんですけど、こういう興味深い話が聴けるなら、いいなぁと思います。
以前は「学芸員」という肩書きだけで、カタイ印象を受けてしまい、きっと学問的な難しい話をされるんだろうなぁと思っていましたが、本当はちゃんとした知識で、面白く話してくれる人が多いみたいですね。
えび | 2009/01/10 5:36 PM
文中、『岡本豊彦「富士山図屏風」に描かれた波の表現が下手くそな応挙っぽいと』とあるのは、応挙はへたという意味なのか、応挙をへたに真似ているという意味なのかよくわかりませんが、とにかく岡本豊彦を甘く見てはいけません。豊彦は粉本に頼った二流の絵師かもしれませんが、幅広い画題の作品群には見るべきものがあり、同時代の関東の絵師には手に余るような大画面(屏風や襖絵)も楽にこなしています。
それから、文中『丸山応挙』『丸山派』とあるのは、『円山応挙』『円山派』と訂正してはいかが。
青蛙 | 2009/01/10 7:10 PM
「芦鷺柳燕図屏風」、良かったですね。
あんな佳品に出会えるのだから、行かなきゃ損。
「珈琲問屋」ですかー。
こういう情報がありがたいです♪
ogawama | 2009/01/10 9:55 PM
@えびさん
こんばんは。

そうなんですよねーーわざわざ時間を合わせて
行くほど計画的に行動できないので、ときたま
今回のように偶然でくわす時だけ拝聴。
折角面白いお話されていても、聞いている方の
うけ【反応】がいまいち悪いと辛そうです。

伊藤さんのお話はいつも楽しませてもらってます。

@青蛙さん
こんばんは。
はじめまして。

間違いをご指摘していただきありがとうございます。
あってはいけない変換ミスですね。訂正しておきます。

>とにかく岡本豊彦を甘く見てはいけません。
「甘く見る」ことなど全くしていませんが?

今後ともどうぞご贔屓に。
明日は雪かもしれません。
どうぞお身体ご自愛あれ。

@ogawamaさん
こんばんは。

ですよね〜
あれはお見事。
水墨画の概念変わる逸品です。

珈琲問屋さんは店内で
お茶もできますし、
色々な商品扱っています!
こんばんは。
Tak管理人 | 2009/01/11 12:19 AM
御来館・お取り上げいただきありがとうございます。後半になるとよりはっちゃけてしまう傾向があります。今日の講座でも微妙にはっちゃけてしまったような気がいたします・・・・・・。

老子は常人ではないということを姿かたちからあらわしているのでしょう。
伊藤紫織 | 2009/01/11 1:36 AM
@伊藤紫織さん
こんにちは。
コメントありがとうございます。

知らずに伺い、たまたま拝聴することができ
新年早々縁起良かったです。ついています。
はっちゃけトークが我々は大好きです。
置き去りにされている方も多数いましたが…

鼻毛ではありませんが、ひげ伸ばしてみました。
Tak管理人 | 2009/01/11 4:24 PM
Takさんこんばんは。先ほどはどうもありがとうございました。
やはり伊藤さんのトークがあると違いますね。はっちゃけたお話、拝聴したかったです!

>千葉市美術館でかつて開催された「雪村展」

このような展示があったとは…。是非もう一度お願いしたいものですね。
はろるど | 2009/01/12 12:12 AM
武蔵の絵を見ていて、私も武道家として
水墨画をたしなもうかと思いました(笑)
茶人として、書のたしなみも必要だし・・・と
思って、すべてあきらめました。
伊藤さんのギャラリートーク、楽しそうですね。
一度聞いてみたいです。
一村雨 | 2009/01/12 7:14 PM
昨日はありがとうございました。
作者不明、雪舟等楊の「渡唐天神図」が気になりました。
宮本武蔵「布袋竹雀枯木翡翠図」は、毎日眺めていれば、
いつか無我の境地に達することができそうです。
| 2009/01/12 11:01 PM
@はろるどさん
こんばんは。

こちらこそ!お誕生日席でしたね〜
伊藤さんのトークは楽しいです。
ほとんどの方ついてこれていませんが。。。

雪村展はもう驚きの連続でした。
ここの美術館はほんと侮れません。

@一村雨さん
こんばんは。

いい絵描けそうですね!
それを茶室に飾って一服。

以前、若冲の市民講座を
拝聴してからこの人は違うと!!
色々と来年企画考えていらっしゃるそうです。

@なでしこさんかな?
こんばんは。

こちらこそ。
ちゃんとお帰りになられました?
遠いところを恐縮です。
でもまだまだ旨い店あるのでまた懲りずに。
Tak管理人 | 2009/01/12 11:15 PM
こんにちは。
観てみたい展覧会です。無理なのが悲しいです。
雪舟って、お寺の柱にくくり付けられて涙でネズミの絵を描いたあの雪舟さんですよね?!
初めて水墨画みました(って、ここに載ってる一点ですが)素敵でびっくり。
和尚さんが本物のネズミと勘違いするのもむべなるかな(笑)
宮本武蔵が絵を描くというのも新鮮でした。しかも良い!
OZ | 2009/01/12 11:55 PM
@OZさん
こんばんは。

そういった言い伝え残っていますね。
岡山県立美術館さんは比較的最近になって
蒐集はじめたそうです。
それにしてはかなりいい作品が揃っています。
郷土の誇りとしての他の画家さんも
たっぷり愉しんできました。
Tak管理人 | 2009/01/13 6:16 PM
こんばんわ。
モノトーンでしたが色を感じる水墨画が多かったように思います。
初の浦上玉堂、とてもよかったです。
まだまだ知らないことがあって、日々勉強ですね〜。
あおひー | 2009/01/14 11:55 PM
@あおひーさん
こんばんは。

そうなんですよねーー
色が見えるような気がしてなりません。
昔の人はきっと豊かな想像力で
あれを天然フルカラーで観ていたのでしょうね。
Tak管理人 | 2009/01/15 10:58 PM
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千葉市美術館で開催中の「雪舟と水墨画」展に行った(1/25マデ)。徒歩も入れると...
岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画 | confidential memorandum of ogawama | 2009/01/10 8:00 AM
千葉市美術館で開催中の「 岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」に行ってきました。 タイトルにあるように岡山県立美術館の全面的な協力による企画展なのです。 冒頭の中国の水墨はいまひとつ本気モードではなかったのですが、会場を奥へ進んで行く旅にどんどんと楽