青い日記帳 

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「山川惣治展」少年王者・少年ケニヤのいた昭和

佐倉市立美術館山で開催中の
「生誕100年 山川惣治展−少年王者・少年ケニヤのいた昭和−」に行って来ました。



川村の「マーク・ロスコ展」に行くついでに立ち寄った展覧会。
ロスコ展同様この展覧会も今の閉塞状況にある現代社会を生きる我々にとってある種見逃せない展覧会かもしれません。

チラシの裏面より。
晩年を佐倉ですごした希代のクリエーター、山川惣治(1908〜1992)を紹介します。
山川惣治の名前は知らなくても「ウ〜ウウウ〜♪ウ〜ウウウウ〜♪アフリカだ!ジャングルだ♪」の歌や「少年ケニヤ」の名前を知っている人は多いでしょう。山川の代表作「少年王者」や「少年ケニヤ」は、昭和20〜30年代に大ブームを引き起こしました。
猛獣や巨大生物の闊歩する密林やサバンナで、少年が親と離ればなれになりながらも、強いからだと正しい行いで動物たちを従えて大活躍するこれらの作品は、戦争の傷の癒え切らぬさなかにあって、子供たちに勇気をあたえました。
山川は作品をはじめは街頭紙芝居、後に「絵物語」という形式で発表しました。手数の込んだペン画、映画のワンカットを思わせる構図と場面転換、恐竜などの古代生物を登場させるSF的手法など、山川の描き出した世界は、世界的に評価の高いジャパニーズ・カルチャーのひとつである「劇画」や特撮映画「ゴジラ」などの誕生にも影響を与えたといわれています。しかし、皮肉なことに山川がこだわりを持って描き続けた「絵物語」は「劇画」や「SF映画」の隆盛にともない、急激にその人気に衰えがみえはじめ、現在ではほぼ忘れ去られてしまっています。
平成に改元して20年が過ぎ、昭和を回顧するうごきがここ数年見られます。山川の活動時期は昭和6年頃から平成4年までで、昭和時代とほぼ重なります。本展は、山川の絵物語の原画、肉筆画を中心に、初版本、資料などにより、昭和とともに歩み、平成20年に生誕100年を迎えた山川惣治の活動を見直そうとするものです。


展覧会の構成に沿ってご案内。

第1章 漫画家を志して(大正末から昭和初期)


婦人像

明治41年(1908)福島県安積郡山町字大町に駄菓子屋の五男坊として生まれた山川惣治。その後上京し仕事の傍ら漫画家になることを志したものの「漫画家の気取った雰囲気」に馴染めず逆に距離を置くことに。

後に「漫画」に対して一種異様なまでの対抗心を募らせるのはこの事が大きく起因しているのは間違いないかと思われます。

第2章 「紙芝居」から「絵物語」へ(昭和6年から昭和20年)


密林の少年ターザン

日本で大正8年に公開されたエルモ・リンカーン主演の「ターザン」を実際に山川は観たそうです。その時受けた衝撃が後の山川の代名詞ともなる「少年王者」をはじめとする作品に大きく影響を与えていることは間違いないこと。

これと同じ「衝撃」を受けることは、今の時代では不可能。何でもすぐ手に入り視聴することのできる「便利な」現代が、多くの人を魅了するような作品を創造するには、いかに不向きな時代であるのかを痛感させられるエピソード。

過ぎ去った旧き良き時代を「懐かしむ」ことは二度と手にすることのできない可能性への叶わぬ願いであるかのようです。

第3章 「少年王者」「少年ケニア」の誕生(昭和20年)


少年王者 おいたち編」1947年

昭和22年(1947年)集英社から出版された「少年王者」は30万部を超える大ヒットとなり、続いて昭和26年に産業経済新聞(現・産経新聞)に連載された「少年ケニア」が爆発的な人気を博しそれまで5万部しか無かった新聞の発行部数がたった2年の間に120万部までの発行部数を伸ばしたという伝説的な作品を世に放ち山川の名を世間に知らしめることに。

これもまた今ではあり得ない現象。皆がひとつのものをこぞって読み熱中する様。「多様化」「個性化」という美名の下でひとつの大きな物語を共有できなくなってしまった現代人にとっては、まさに夢物語のような話です。

第4章 絵物語衰退の予兆(昭和30年代)


サンケイ児童文庫「少年エース」第1巻表紙原画1961年

「少年ケニア」の成功により子供たちのみならず、大人にも山川人気が広まりをみせたものの、急激な進歩を遂げる「時代」から徐々に取り残されることに。かつて山川が決別を告げた「漫画」や新たなメディア「テレビ」が台頭してきた時代です。

嘗て少年時代山川の作品を無我夢中で読みふけった子供たちもいつしか大人へと成長し、ある種マンネリ化した山川作品の主人公に共感できなくなって行きます。

次第に山川の活躍の場は消えて行き学年誌のみとなってしまいます。

第5章 絵物語の落日(昭和40年代)


「ワイルド」1巻2号表紙原画(バーバリアン)1967年

「絵物語」の落日イコール山川作品の凋落とも言えます。その大きな要因として展示室に書かれていたこの説明文が正鵠を射た見解だと思われます。

絵物語衰退の原因には、毎回の連載のほかに付録をつけるなど大量のぺ一ジを短期間に消費する児童の雑誌文化に、手数を必要とする絵物語が対応できなかったなど、いろいろなことが挙げられるが、勧善懲悪を基本として「困難な状況に打ち勝つ強い日本人の子」を一貫してテーマとした山川の世界が、高度経済成長を成し遂げ物質的に何不自由ない生活を送るようになった子供たちにはすでに魅力的なものではなくなってしまったといえるだろう。

それでも山川はあくまでも「絵物語」に固執します。自らタイガー書房(出版社)を設立し、雑誌「ワイルド」を発行。漫画や雑誌に対抗し新作「バーバリアン」を発表するものの思うように発行部数は伸びず僅か10ヶ月で廃刊に追い込まれてしまいます。多額の負債と共にタイガー書房も倒産。

「美しい一枚の絵画として作品を子供たちに見せたい」という山川の願いはここで完全に潰えたかのように思われました。

第6章 再起をかけた挑戦(昭和50年代)


十三姉妹」1984年

昭和50年代になると、嘗て少年時代を「少年ケニア」や「少年王者」に熱中した世代が続々と社会で活躍するまでに成長します。今の自分があるのは少年時代に夢中になって読み耽た山川の絵物語。そういった嘗ての山川ファンによって復刻され再度山川に光が差し込むことに。

中でも角川書店の角川春樹氏の山川への傾倒は半端ではなく、「少年ケニア」を映画化したり月刊誌「月刊小説王」の主役作家として山川を起用するなどしたそうです。しかし大きな流れに抗うのは時既に遅く「月刊小説王」は通巻15号で廃刊。山川の出版関連の作品もこれをもって終止符が打たれることに。

それにしても最後にひと花咲かせてやった角川春樹氏の情熱は素晴らしい。角川出版にとっては迷惑な話かもしれませんが、自分を育ててくれた恩人にここまでしてやれるのは滅多にできることではありません。今なら即刻役員会で却下でしょう。

因みに、悲しいかな自分が知っている山川作品はこの頃のものがメイン。第一線で颯爽と活躍されていた頃の山川作品を全く知らない世代。それでもかつて皆が抱いていた「大きな物語」の一端を垣間見ることでき、追体験すること出来た意義は大きいことです。

丁度今読んでいる吉見俊哉氏の「ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉」 (岩波新書)とリンクさせながら山川作品を観てみるのも面白いかも。吉見先生ご専門は文化社会学(カルチュラル・スタディーズ)ですしね。

第7章 終焉の地・佐倉(昭和60年代から没年まで)


ホワイトバッファロー」1992年(平成4年)

1992に亡くなるまでの最後の五年間の終の棲家として山川が選んだのが佐倉市。ユーカリが丘にお住まいだったと展示室の係りの方から伺いました。晩年は子供やお孫さんに囲まれ幸せな時間を過ごされたそうです。

平成4年に開催したチャリティー展には横尾忠則も訪れ作品購入を打診。横尾もまた幼い頃、山川作品を母乳として育った人物のひとり。↑の「ホワイトバッファロー」は横尾が山川を見舞い受け取った作品。意外にも最晩年は油彩画も描いていたそうです。

時代に取り残されてしまった絶望にも似た孤独感の中にあっても、自分のスタイル、信念を頑固なまでに貫き通したひとりの作家の一大叙事詩を歴史ある佐倉市立美術館で拝見するのもとても有意義なことかと。

最後に「今日の一枚


「少年ケニア」第1巻1953年(昭和28年)

最も山川惣治が輝いていた時代の代表作を最後の一枚に。
この絵柄にピンと来た方は迷わず佐倉へ!!

「山川惣治展−少年王者・少年ケニヤのいた昭和−」は3月22日までです。


佐倉市立美術館
〒285-0023 千葉県佐倉市新町210 Tel:043-485-7851
京成本線・京成佐倉駅より徒歩8分
JR総武本線・佐倉駅より徒歩20分

美術館エントランスホールの一角に昭和30年代の街角が再現されています!


山川の創作活動のルーツとも言える街頭紙芝居を、
数少ない現役の紙芝居師が再現します。
日時 3月1日(日) 午前11時〜、午後2時〜、午後4時〜
場所 美術館中庭
出演 永田為春
演目 漫画 「お山の金ちゃん」
    活劇 「黄金バット」
    時代物 「変幻蛇童丸」


また同エントランスホールでは「佐倉市制50周年記念写真展 写真に見る佐倉」より昭和30年代の佐倉の街の様子を伝える貴重な写真が展示公開されています。


佐倉市立美術館は、江戸時代、文武芸術を奨励した堀田藩11万石の城下町として栄えた佐倉の中心部に位置し、周辺には武家屋敷・旧佐倉順天堂を始め数多くの史跡が点在しています。大正時代に建てられた旧川崎銀行佐倉支店(千葉県指定有形文化財)の保存と活用を考慮して建設され、芸術文化に対する理解と親しみを持っていただけるような市民に身近な施設づくりをめざして、平成(1994)6年11月にオープンしました。

エントランスホールの歴史についてはこちらを。
銀行、町役場、市役所、資料館を経て今の美術館に。

山川惣治―「少年王者」「少年ケニヤ」の絵物語作家 (らんぷの本)
山川惣治―「少年王者」「少年ケニヤ」の絵物語作家 (らんぷの本)

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それでは最後に「今日の美味


佐倉市立美術館内にある「カフェ ブォナ ジョルナータ」の「地卵プリン
長谷川養鶏園さんの美味しい卵で作りました。とあるので是非食べようと思っていたら、、、ななななんと「本日、調理器具故障によりプリンをお出しすることできません」とのお知らせが。無念。画像はメニューの写真です。次こそは食べるぞ!

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1676

JUGEMテーマ:アート・デザイン


 昭和20〜30年代に大ブームを巻き起こした、「少年王者」や「少年ケニヤ」を描いた山川惣治を紹介します。山川は作品をはじめは街頭紙芝居、後に「絵物語」という形式で発表しました。手数の込んだペン画、映画のワンカットを思わせる構図や場面転換など、山川の描いた世界は劇画などにも影響を与えたと言われています。
 本展では、横尾忠則氏所蔵の最晩年の油彩画など、弥生美術館で開催された展覧会(2008年4月〜6月)にはなかった作品も出品されます。昭和とともに歩み、晩年を佐倉で過ごした、山川惣治の初期から晩年までの作品を一望できる展覧会です。
展覧会 | permalink | comments(4) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

昨年、青山のビリケン商会ギャラリーで原画の展示即売していてビックリしました。さすがに買いませんでしたが、あまり高くなかったので、好きな人は絶対、買うだろうなぁと思いました。たしか弥生美術館でも、昨年に展覧会していましたよね。
高橋真琴さんが佐倉にお住まいなのは知っていましたが、山川氏もそうだったんですね。佐倉って、けっこう、著名な作家さんがいるんですね。
えび | 2009/02/26 9:01 PM
こんにちは
えびさんが挙げておられるように、昨春弥生美術館で山川の回顧展が開かれました。
そのときの記事をTBいたします。
わたしは叔父たちの関係で子供の頃から「少年ケニヤ」は知ってましたが、やっぱり実物を見たのは'83からです。
でも子供の頃繰り返し再放送された「荒野の少年イサム」の原作が山川だと知ってびっくりしたのは、つい近年でした。
あとユーミンの歌にも山川のレストランが出ていたり・・・

佐倉美術館はけっこう好きな美術館です♪
遊行七恵 | 2009/02/27 12:55 PM
@えびさん
こんばんは。

そんなことがあったのですか!!
何十年かすると再評価とかいって
また見直されることあるでしょうね。
それにしても原画販売とは。。。

弥生美術館の展覧会へは行けなかったので
今回の佐倉で堪能してきました。

@遊行七恵さん
こんばんは。
TBありがとうございます。

弥生美術館の展覧会もよさそうですね〜
あそこは小じんまりとしていますが
この手の展覧会やらせたら右に出るものなしです。

ユーミンの歌。。。ドルフィンかな。
息子さんが経営していたレストンランですね。
大変だったようですね。色々と。

当時少年だった「大人」にとっては
たまらない展覧会だと思います。
Tak管理人 | 2009/02/27 8:38 PM
管理者の承認待ちコメントです。
- | 2013/06/02 10:40 AM
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