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「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」

府中市美術館で開催中の
「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」展に行って来ました。



3月20日から始まった展覧会。府中市美術館で開催する日本画の展覧会は毎回毎回他とは違う楽しみがあります。自宅から府中までは約1時間ほどかかりますが、多少の労力かけようとも行く価値大いにある展覧会を独自の企画力を発揮し開催してくれます。

美術館は府中駅からバス(ちゅうバス)も運行されていますが、ひとつ手前の東府中駅で下車しテクテク歩いても15分もかからずに美術館まで行けます。しかも今の時季、美術館のある府中の森公園は桜をはじめ花々がまさに今を盛りに競うように咲き誇っています。



この桜並木を通り抜け一路美術館へ。因みに今回の展覧会のタイトルにある「山水」とは所謂「山水画」だけを示す言葉ではなく、広義に「風景」「景色」などの意味を備えた言葉だそうです。(庭園などで用いる「枯山水」などで使用)

絵画だけでなく、一緒に風景も楽しめたらまさに一石二鳥。
タイミング見計らったわけではありませんが、満開の桜がお出迎え。


こんな「景色」目にしたら展覧会観る前からテンションあがること間違いなし。

更に丁度この日(4月5日)から展覧会を企画された金子信久学芸員によるスライドトークが開催。金子氏曰く「江戸時代の絵師たちが『山水』をどう描いていたか、どう楽しんでいたかを観て欲しい」とのこと。

今回はモノクロ「山水画」ではなく江戸時代の日本人が描いた「風景画」を4つのセクションからたっぷり、幅広く楽しんでもらおう(学んでもらおう)という企画者の意図が鮮明に分かる構成に。

1:山水に暮らす
2:絵をつくること
3:奇のかたち
4:ロマンティシズムの風景


スライドレクチャーで伺ったお話をまじえご紹介。


熊谷直彦「騰竜隠雲之図

江戸時代末期に実際にあった天災(突風)の様子を描いた作品。
左幅に描かれている人物の傘が突風で吹き飛ばされ右幅で宙に待っている様子が滑稽。強風の影響で電車の運行に影響が出ただけでも目くじら立て立腹する現代人とは根本的に自然との対峙の仕方が違うことこの作品から読み取れます。

西洋から文明開化と共にやってきた「合理主義」にがちがちに縛られ生活している現代人がすっかり忘れてしまった何かをこの絵が思い起こさせてくれます。

しかし、それにしても「見事」な風ですね。


野崎真一「富士・三保松原図

今も昔も富士山は日本のシンボル。
江戸時代にも数多くの富士山が描かれ、今回の展覧会でもダントツでナンバーワンの現出率を誇っています。国学者たちが日本を神の国と奉る為に用いたのも見目麗しき富士の山。威厳と品格を備えた理想の姿として描かれています。

でも、そういった作品は面白味に欠けます。
↑にアップした野崎真一の「富士・三保松原図」の作品あたりが、自分的にはストライク。野崎真一は酒井抱一門下の石垣抱真の子供で、鈴木其一の門人にあたり琳派の継承を受けた絵師だそうです。

暑くて溶けてしまったソフトクリームのような雪と三保松原のへなちょこな松の木が何とも言えません。目に見えるものをそのままリアルに描き取ろうとする西洋の風景画とはまるで別物です。



実際の風景とは違う(実際にはあり得ない)風景がこの展覧会の大半を占めています。西洋画を学び写実を大事にしていた亜欧堂田善でさえ「甲州猿橋之眺望」などでは実際にある橋とは随分と違った風景を描いていることが分かります。


亜欧堂田善「甲州猿橋之眺望」と山梨県大月市の桂川に掛る実際の猿橋。

絵師(画家)の個性を如何に出すかに精力注いでいたとの観点からあらためて展覧会を見渡すと、確かに奇を衒った作品ばかりであること分かります。

オランダ・フランドル絵画に観られる風景画とは根本的に発想が違います。


安田雷洲「山水図

蘭学者としても活躍した安田雷洲が描いた西洋画風景画。

遠近法や正確な立体像などリアリズムに徹して描かれているにも関わらず、どう見ても実際にある風景には見えないから愉快。真面目に描けば描くほど現実世界から遠ざかってしまう。。。だいたい西洋画風に景色描こうとするならこんな縦長の画面では描きませんよね。

超個性的な作品。こちらは前期後期通して展示されているので必見です。

奇抜と言えば曾我蕭白。彼の萌え萌え作品もあったことはあったのですが、他の絵師の毒が思った以上に強くて今回ばかりはさほど目立ちませんでした。


山本探川「宇津の山図屏風

大好きな「伊勢物語」の有名な東下りのワンシーンを描いた作品。以前こちらの記事でご紹介した東博所蔵のこの作品と同じ場面を描いたもの。

深江芦舟「蔦の細道図屏風」江戸時代・18世紀

昨年「対決展」で拝見したこの作品も「仲間」です。

俵屋宗達「蔦の細道図屏風

確かに江戸時代の絵師、滅茶苦茶ロマンティストですね。

そうそうスライドレクチャーではこんな作品も紹介されていました。


左:土井有隣「西洋海浜風俗図屏風
右:フランス人ジョゼフ・ヴェネルの絵をもとにして銅版画。

出島からもたらされた小さな銅版画に感化され描いた「西洋海浜風俗図屏風」実は六曲一双の屏風絵です!しかも水墨画!!30cmの版画を元に3mの屏風絵かせたその原動力は単なる西洋への憧憬では言い表せない何か別のものが確実に存在していたであろうこと伺い知ること出来ます。

最後の最後に伊東若冲のこの作品が待ち受けています。

伊藤若冲「石峰寺図

京博所蔵のこの作品、実際に目にしたのはこれが初めて。
印刷物で観ただけでも異様な世界。それが実物はもっと…

京都、石峰寺「石仏五百羅漢」の設計図のように思えました。
若冲がプロデュースした石峰寺「石仏五百羅漢」を撮影してきた拙い写真がこちらにあります。石峰寺の雰囲気理解していると「石峰寺図」もなるほど合点がいくかと。

2006年5月に石峰寺を訪問した際の記事。
石峰寺の伊藤若冲「五百羅漢石像」

最後に「今日の一枚


谷文晁「白河楽翁下屋敷真景図

現実の世界と非現実の世界がこれまた入り混じっている作品。小品ながらも優品。嬉しいことに全期間展示されています。

大変お世話になっている、東京純心女子大学教授の井出洋一郎先生が今月1日から府中市美術館の館長に就任なされたそうです。(おめでとうございます!)美術館入口でお会いしビックリ。新館長もお勧めの一枚です。

これからも益々素晴らしい個性豊かな展覧会期待しています!

「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」展は5月10まで。
(若冲の「石灯籠図屏風」「石峰寺図」の展示は4月12日までです)

これだけ楽しめて入場料たったの600円は価格破壊並みの安さ。
さらに嬉しいことに2回目はチケット半券で半額300円に!

前期・後期観てもたったの900円。1000円以下とは驚き。
オーディオガイドも200円。これは行かずにはいられません。是非!!


府中市美術館
〒183-0001 東京都府中市浅間町1丁目3番地(都立府中の森公園内)
Tel:042-336-3371
府中駅から「ちゅうバス」もしくは東府中駅から徒歩。交通案内

もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品
もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品
狩野 博幸

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それでは最後に「今日の美味


府中駅京王府中ショッピングセンター1階にある「武蔵野茶房」の「特製 焼チーズケーキ」とってもコクのあるチーズケーキ。チーズ丸ごと食べてるよう。2種類のチーズを使用した濃厚な味はやみつきになりそう。

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JUGEMテーマ:アート・デザイン


美しい山や川、湖、そして海。自然の風景は、日本美術の大きなテーマのひとつでした。やまと絵の優美な景色、あるいは、文化の源として憧れてきた中国の絵にならった、日本人にとっては空想的とも言えるような風景が、長く描かれてきました。そして江戸時代、そうした伝統が根づいていたことは言うまでもありませんが、同時に、新たな外来文化や人々の生活・思想の変化が、風景を描くことに広がりをもたらしたのです。
 例えば、江戸時代中期になると、身の回りの景色が絵として楽しまれるようになりました。風景の絵に新鮮みを求める動きのひとつと言えますが、伝統的な美のかたちと融合させるための工夫は、近代の風景画とは違った魅力を生んでいます。個性を自覚し表現しようとする動きからは、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)や曾我蕭白(そがしょうはく)らのような、風景の描写に個性を託す画家が登場しました。また、作品が描かれた動機も実に色々です。自然の中での暮らしを歌い上げた絵、神仏への祈りから生まれた絵、旅の叙情や物語の情緒を味わう絵、あるいは、渡ることの叶わない異国への憧れを形にした絵。作品のひとつひとつから、「江戸時代びと」たちが風景に対して抱いた気持ちがいかに多様であったかが伝わってきます。
 この展覧会では、江戸時代のさまざまな画家たちが描いた風景の絵をご覧いただきます。その表現の多彩さは、例えば、百人の画家がいれば百通りだと言ってもよいでしょう。曾我蕭白(そがしょうはく)の山水画の傑作として知られる重要文化財「月夜山水図屏風」や、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)の稀少な風景画「石灯籠図屏風」をはじめ、狩野(かのう)派、やまと絵、円山四条(まるやましじょう)派、文人画、洋風画、浮世絵など、江戸絵画を代表する画家、画派の作品の勢揃いです。江戸時代の奇と迫力、そして清々しさにみちた光と空気を、ぜひ会場で体感してください。


展覧会 | permalink | comments(12) | trackbacks(8)

この記事に対するコメント

こんばんは。
「山水に遊ぶ」すばらしかったです。2度目行ってきました。後期も2回行くつもり、何しろ近いし安いし、京王カード2割引、さくらも満開でした。
でも同じもの見ても、わかってないなあと思ってしまいました。江戸時代の雰囲気に浸ってきただけみたいです。
すぴか | 2009/04/10 12:04 AM
@すぴかさん
こんばんは。

ちょっと自宅から遠いのですが
それでも十分行く価値ある展覧会ですし
美術館だと思います。
お近くなんて羨ましいです!

後期の蕭白狙って再度伺います。
Tak管理人 | 2009/04/10 12:07 AM
こんにちは。
若冲の石峰寺図目当てでまた、週末に行ってしまうかもしれません。

前回行ったときには桜はまだだったので、まわりの雰囲気はだいぶ違ってるのでしょうね。
あおひー | 2009/04/10 6:53 AM
こんにちは。
桜の府中公園は良いですね。
オーディオガイドが200円とは知りませんでした。今度使ってみます。
mizdesign | 2009/04/10 8:25 AM
9日朝イチで行ってきましたよ。
本当に府中美術館は良心的な価格設定で助かってます〜
今回も見応えありましたね〜
その後世田美の平泉に移動したんですが、オーディオガイド入れて1800円・・・
ワタシは府中に軍配をあげます。
さてと後期も期待!
サノア | 2009/04/10 11:18 AM
こんばんは。桜満開で良いですね。東府中からのお散歩でしょうか。あのアプローチ、意外と私は好きです。

>京博所蔵のこの作品、実際に目にしたのはこれが初めて。

てっきりTAkさんは現地で拝見されたものかと…。
こういうお宝を隠しているのはいけませんよね。(?)

>亜欧堂田善「甲州猿橋之眺望」と山梨県大月市の桂川に掛る実際の猿橋

スライドトークの様子もありがとうございます。
こうして画像を挙げていただけると一目瞭然です。

そろそろ後期です。また行きます!
はろるど | 2009/04/10 10:23 PM
とても魅力的な展覧会ですね!
(あ、ごぶさたです)
「石峰寺図」は・・・明日までですか〜。
tsukinoha | 2009/04/11 7:12 AM
@あおひーさん
こんにちは。

先日はどうもありがとうございました。

桜があんなに見事に咲いているとはビックリ!
何だか得した気分になりました。

@mizdesignさん
こんにちは。

すごろくも買ってしまいました。
山口晃、若冲双六は買えないので…

@サノアさん
こんにちは。

価格設定ほんと良心的ですよねー
展示されている作品は御苦労して
集めたであろうものばかりなのに。

世田谷美術館の平泉展と比べてしまうと
もうにべもないですね。。。
府中の圧勝です。後期も楽しみ楽しみ。

@はろるどさん
こんにちは。

東府中からてくてくと歩いて美術館まで。
意外と近く楽勝でした。
帰りは電車の都合もあり府中までちゅうバスで。

あの石峰寺の作品は京博の展示でも
出ていませんでした。灯籠は拝見しましたが。
いやーーキテレツな絵ですね。

スライドトーク、20分の中にギュッと中身が
詰まっており大変勉強になりました。

@tsukinohaさん
こんにちは。

ご無沙汰しております。
ブログはちゃんと拝見していますよ〜

石峰寺にまた行ってみたくなりました。
笑っちゃうほどあのまんまです。
Tak管理人 | 2009/04/11 11:25 AM
こんばんは、そろそろ後期ですね。
とても楽しみにしています。
この美術館へは、行きは東府中から歩き、帰りは、最近は軟弱になって、ちゅーバスで府中に出ています。
とら | 2009/04/11 7:46 PM
@とらさん
こんにちは。

私もとらさんと同じルートで美術館訪問。
東府中→美術館→府中。
ちゅーバス勿論利用しています!帰りは。
井出先生が館長になられより身近な存在の
美術館となりました。
Tak管理人 | 2009/04/12 4:05 PM
こんばんは。

蕭白の『月夜山水図屏風』が見たくて
後期に行ってきたのですが、
前期に若冲の『石峰寺図』が出ていたことを知って
後悔しているところです。
もっとよく情報を把握しておけばよかった。。。

ところで、石峰寺には今年の1月に行ってきたので
TBさせていただきました。
私は「ご朱印集め」も趣味にしているんですが、
石峰寺では、若冲の石仏のご朱印(?)をいただけます。かわいいです。

jchz | 2009/04/29 10:19 PM
@jchzさん
こんばんは。

私も先日蕭白観に
再度伺ってきました。
圧倒されました。
やはり蕭白凄いや。

「石峰寺図」は初めて観ました。
またどこかで公開されるの待ちましょう。

>石峰寺では、若冲の石仏のご朱印(?)をいただけます
そうなのですか。
それは知りませんでした。
また京都へ行く楽しみ増えました。
Tak管理人 | 2009/04/30 6:33 PM
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