2009.04.30 Thursday
「岸田劉生展」
損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の
「没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて」展に行って来ました。 ![]() 言葉は汚いが「ヤバイ展覧会」というのがあるとするなら、まさにこの「特別展 没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて」はそれに該当することでしょう。 一体何がヤバイって、岸田劉生の作品だけ約80点集めた時点で沸点突破するほどなのに、出展作品全てが肖像画というのですから、そりゃ〜もう、素人がヤバイ、ヤバイと騒ぎ立てずともお分かりになろうかと。 岸田劉生の肖像画と言えばまず真っ先に頭に浮かぶのが「麗子像」 ![]() 岸田劉生「麗子(れいこ)」重要文化財 東京国立博物館所蔵 今回の展覧会では東博の↑「麗子」は展示されていませんが、日本各地の美術館から劉生の愛娘・麗子を描いた約20点の作品が集結しています。(東博の「麗子」は2009年9月8日〜11月29日まで本館で展示予定) 因みにチラシに用いられている「麗子肖像」は劉生が初めて娘・麗子を描いた肖像画。この時、麗子5歳。これから16歳になるまで数多くの「麗子像」を残すことに。 肖像画だけ約80点の展覧会だけあって構成もいたってシンプル。 1:自画像 2:友人・知人 3:家族・親族 ほとんどの作品がいつ描かれたのかが劉生が画面上に残したサインや日記から判明。制作年だけではなく月日まではっきりと分かるもの多数。←ここがポイント。例えば自画像でも1912年3月14日に描かれたものと、1920年10月17日に描かれたものでは大きな違いがあります。 制作年代による画風の変遷は何も自画像だけではなく、友人・知人の肖像画でも容易に見て取ること可能。そして中でもその変遷の過程を最も顕著に示すのが家族・親族、とりわけ「麗子像」なのです。 だから約20点の麗子像に囲まれても麗子の成長の変化以上にそれぞれ画風が違うので「みんな同じでつまらないね」何てこと絶対起こりえません。逆に一人の人物を描くのに同じ作家でもこれだけ表現の差があるのかと思うと驚きを禁じ得ません。 ヤバイです。 これだって「麗子像」です! ![]() 「野童女」1922年5月20日 東博の「麗子」(重要文化財)は劉生がレオナルド・ダ・ビンチの名作「モナ・リザ」からインスピレーションを受け制作されたもの。そう言えば微笑みが「モナ・リザ」ことジョコンダにそっくり。 で、この「野童女」はと言うと… ![]() 伝 顔輝「寒山拾得図」の「寒山」元時代 レオナルドやデューラーに強く影響を受けていた時期から次第に「東洋の美」に劉生自身目覚め出した頃に描かれた作品だけあって、「寒山拾得図」の不気味でグロテスクな笑いがそのまま麗子にも憑依してしまいました。 並べてみればこの通り。 ![]() かみさんはしきりと「麗子さんが可哀そう」と。 確かに写真で拝見する麗子さんはとは似ても似つかぬお顔。 いくら劉生が中国の絵に倣い「グロテスクの味」(見れば見るほど味が出る)を追求したとしてもやっぱりこれじゃ〜ねー芸術の道とはいえ。。。 展示室内所々にパネルで紹介された麗子さんのお写真。 まるで「本物は違うのよ!」と訴えかけているようにも見えました。 劉生曰く。 「麗子の絵は、私の美術鑑賞上の変遷とかなり歩を同じくしている」 ところで、現在発売中の「美術の窓」は岸田劉生特集。内容も超充実。文句なしの一冊。石田徹也の特集以上に今月号は力が入っています。 ![]() 美術の窓 2009年 05月号 [雑誌] 【特集】岸田劉生 もう一つの真実ーその写実技法と知られざる日本画 中身をちょっとだけ。 ![]() おおーー「麗子」反転させ「モナ・リザ」に重ねると確かに!! 左のページも気になりますよね〜 こちらです。 ![]() 左:岸田劉生「高須光治君之肖像」1915年12月22日 右:アルブレヒト・デューラー「自画像、もしくはあざみを持った自画像(22歳の自画像)」 勿論この「高須光治君之肖像」も今回の展覧会に出展されています。この時期は北方のデューラーやファン・エイク(アイク)に傾倒していた頃。 こちらの作品だって「そっくり」です。ファン・エイクに。 ![]() 「古屋君の肖像(草持てる男の肖像)」1916年9月10日 チラシの「麗子肖像」が1918年に描かれたもの。今回の展覧会ではセクションが違っているので離れて展示されていますが、制作年代順に並べて観たらきっと面白いはず。数々の共通項すぐ発見できます。 岸田劉生の美術鑑賞の変遷は、我々日本人の一般的なそれとほとんど同じ道を辿っているように思えます。ルノワール、ゴッホからセザンヌ、マティスに感動し次第に、北方ルネサンス(デューラー、ファン・エイク)へ。しばらく西洋絵画を貪った後辿りついたのが中国の古典画、そして肉筆浮世絵(岩佐又兵衛)の世界にどっぷり。 又兵衛の「彦根屏風」を頭に於いて描いたとされる「麗子弾弦図」1923年1月28日はまさに「ヌルリ」「デロリ」の世界。知人もこうして「デロリの美」の餌食に… ![]() 「岡崎義郎氏之肖像」1928年5月11日 唇の「赤」が何とも言えません。 本物はもっともっと際立つ赤色しています。血のような。 しかし10年ちょっとでこの激変ぶりには戸惑いさえ覚えます。 岡崎氏ってこんな官能的な紳士ではなかったはずです。多分。 片っぱしから友人・知人たちをモデルに肖像画を描いた劉生は「岸田の首狩り」「千人斬り」と揶揄されたとか。多い日には一日で二人の肖像画描いていたそうです。 そこまで劉生を肖像画を描くことに駆り立てたのは、自画像を描くだけでは自己の内面を模索しきれず、他者を通し「自己」を見出そうとしていた劉生の飽くなき探求心の現われでもあったようです。 最後に「今日の一枚」 ![]() 「自画像」1912年3月14日 最初の展示室には自画像だけ、12点が展示されています。 その中でも最も若い時に描かれたのがこの作品。 誰が見てもゴッホの影響すぐ分かります。こんな初な時もあったのですね。 ね、とにかく「ヤバイ」でしょ。 岸田劉生(1891年6月23日〜1929年12月20日)という短命な絵描きが遺した肖像画約80点。そこに見えるのはゴッホでありデューラーであり岩佐又兵衛に様式を借りた紛れもない岸田劉生の強烈な自己表現。 もしや「80点」という出展数、没後80年に掛けたわけじゃーないですよね。 上野もいいけど、新宿もね。 これから先あり得ない展覧会ばかりですが、これなどまさにその筆頭。 「特別展 没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて」は7月5日までです。 「美術の窓 2009年 05月号」に掲載されている中島啓子氏(損保ジャパン東郷青児美術館学芸員)「描き続けた肖像画」も必読です! ![]() 損保ジャパン東郷青児美術館 〒160-8338 東京都新宿区西新宿1−26−1 損保ジャパン本社ビル42階 Tel:03-3349-3081 (画像はモード学園コクーンタワーから見た損保ジャパンビル) ![]() 岸田劉生 内なる美―在るということの神秘 (Art & words) 岸田 劉生 おまけ: 岸田劉生:油彩画1億3500万円で落札 「麗子像」で知られる洋画家、岸田劉生の油彩画が21日夜、東京都内のオークションに出品され、1億3500万円で落札された。「静物(砂糖壺(つぼ)・リーチの茶碗(ちゃわん)と湯呑(ゆのみ)・林檎(りんご))」(1919年)で、縦45.3センチ、横52.8センチ。多くの画集に収録されている静物画だが、66年以降は公の場に出ていなかった。出品者、落札者については、当事者の意向で明らかにされていない。劉生の油彩画は2000年に都内のオークションで「毛糸肩掛せる麗子肖像」が3億6000万円で落札されている。 主催したシンワアートオークションの倉田陽一郎社長は「世界同時不況以前ならば、もっと高値が付いた。厳しい経済状況でも質の高い作品はきちんと売れることが証明できた」と話した。同社のオークションで世界同時不況以後、1億円を超える落札額は初めて。(毎日新聞 2009年3月21日) それでは最後に「今日の美味」 ![]() ![]() コクーンタワー1Fのカフェ&ギャラリー「BLUE SQUARE CAFE」の「塩フロマージュ・ロール」美術館から新宿駅までの間の絶好のロケーションに登場したカフェは使い勝手最高。ネットや音楽も無料で楽しめます。勿論本も沢山!あの「奥沢ロール」も食べられます。 【関連エントリー】 - 「ジョットとその遺産展」 | 弐代目・青い日記帳 - 「丸紅コレクション展」 | 弐代目・青い日記帳 - 「ベルト・モリゾ展」 | 弐代目・青い日記帳 - 「プラート美術の至宝展」 | 弐代目・青い日記帳 - 「ウィーン美術アカデミー名品展」 | 弐代目・青い日記帳 - 「魅惑の17-19世紀フランス絵画展」 | 弐代目・青い日記帳 - 「ポップアート1960's2000's 展」 | 弐代目・青い日記帳 この記事のURL http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1741 JUGEMテーマ:アート・デザイン 岸田劉生(1891-1929年)は、ゴッホやセザンヌらの感化をうけて自己表現としての絵画をめざしました。しかし、じきに古典的な写実に変わり、風景、静物、肖像に忘れがたい作品をのこしました。写実への移行は、自画像とならんで手当たりしだいに友人を描いた時期におきています。自己表現のために「自分」を見つめれば見つめるほど、逆に「他人」も気になってくる・・・劉生の写実は、近代的な自己の意識に支えられていました。 |













「麗子像」で知られる洋画家、岸田劉生の油彩画が21日夜、東京都内のオークションに出品され、1億3500万円で落札された。「静物(砂糖壺(つぼ)・リーチの茶碗(ちゃわん)と湯呑(ゆのみ)・林檎(りんご))」(1919年)で、縦45.3センチ、横52.8センチ。多くの画集に収録されている静物画だが、66年以降は公の場に出ていなかった。







![消えたフェルメールを探して/絵画探偵ハロルド・スミス [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51RWb%2BELgML._SL160_.jpg)








