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「かたちは、うつる」

国立西洋美術館で開催中の
開館50周年記念事業「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」に行って来ました。


↑クリックで拡大。

熟考された完成度の高い展覧会。
それはチラシをご覧になっても良く分かります。
(クリックすると拡大するようにしてあります。)

チラシに用いらている作品に全て共通すること。それは今まさに目の前の相手を殴り倒そうとする、鬼気迫るポーズ。

これらの作品は「暴力の身振り」と題されたセクションにまとめて展示してあります。展覧会のカタログの解説にはこんなことが。
 興奮と怒り、あるいは狂気の淵で、さまざまに武器を振り上げ、凶器を突きつけようとする人々。西洋の芸術家の多くは、こうした暴力の身振りを描こうとする際、それが振るわれる直前の瞬間を捉えることで、ひとつの「かたち」をとり出してきた。それは、一連の運動と激情の頂点にあって、直後に生じるであろう打撃の力すべてを自身のうちに潜勢させているような身体像である。
そう、この展覧会、ただ単に西洋美術館が所蔵している版画を見せるだけの展覧会ではありません。考えるに長いこと時間をかけ作りあげられた展覧会かと。

それなのに常設展と同じ扱いで420円で拝見することが出来てしまいます。つい先月まで「ルーヴル美術館展」を開催していたあの特別展示室にモノトーンの版画がずらり。127点も!!

しかも、大展覧会よりも遥かに練りに練られた構成。
西洋美術館の底力を垣間見ることできる展覧会です。

きちんと紹介するの遅くなってしまいました。この展覧会8月16日(日)までです。お見逃しの無きように!!

東京国立博物館の独自企画展「染付」同様、優れた美術館、博物館の開催するこうした企画展、下手な特別展よりも遥かに充実していて、見応えがあります。

さて、「かたちは、うつる」展の構成は以下の通り。

序 うつろー憂鬱・思惟・夢

第1部 現出するイメージ
うつしの誘惑I一顔・投影・転写
うつしの誘惑II一横顔・影・他者
うつしだす顔一肖像と性格
うつる世界I一原初の景色
うつる世界II一視線と光景
うつせみI一虚と実のあいだの身体
うつせみII一身体の内と外

第2部 回帰するイメージ
落ちる肉体
受苦の肢体
暴力の身振り
人間≒動物の情念
踊る身体
輪舞



アルブレヒト・デューラー「メランコリアI

「序 うつろー憂鬱・思惟・夢」の初っ端にいきなりアルブレヒト・デューラーの「メランコリアI」が展示され、まずびっくり。続けざまにレンブラント、ゴヤ、ドーミエと。全てに共通するテーマが「メランコリー」

クリンガー、ピカソ、ルオーらの作品がそれに続きます。ゴヤの作品を除き「メランコリー」に共通する「かたち」は頬杖をつくポーズ。

こうして時代は異なるものの、同じポーズの作品をまとめて見せてくれると、なるほど納得。イメージはこうして共有反復されるのだと。


左:オノレ・ドーミエ「空想の妄想 神様!もし私の赤ちゃんが洋ナシ頭だったりしたら・・・それともロボ・・・アルグー・・・スールト・・・デュパン・・・ああ!神様!!ケラトリ!!!!
右:マックス・クリンガー「

メモを取るつもりもなかったのですが、どうやら想像していた「版画展」とは大きく違う様子。ロッカーまで引き返し慌てて鉛筆を!!

紹介しているときりがないので、印象に残ったものだけを。

ハンス・ラウテンザック「風景」1554年

「第1部 うつる世界I一原初の景色」に展示されていた作品。

解説によると、16世紀初頭に活躍したルーカス・クラーナハやドナウ派が、はじめて「風景画」を描いたそうです。ただ、19世紀末にモネらが描いた我々が良く知るところの風景画とは、かなり趣が違います。

版画だから。といこともありそうですが、この時代の風景画はどれも「森」を描いたものばかり。ピラネージが古代ローマの遺跡を描いたのと同様に、彼等は「森」を古代のシンボルとして描いた。(こんな解釈でいいのかな?)


ロドルフ・ブレタン「死の喜劇」1861年

この時代になると風景画の中に聖書の一部ではなく、ダイレクトに死を表すガイコツの描写が。これ画像では全然分かりません。この世界観はどこか日本画にも通底するものが感じ取れます。

そして「風景画」の枠組みを取り払えば、もっと直接的に画面上に跋扈し始めます。骸骨たちが。。。(小池寿子先生の出番!!)


マックス・クリンガー「線路の上で」1889年

「第1部 うつせみII一身体の内と外」にあった作品。先ほど同様ピネラージ作品は「通称ミネルヴァ・メディカ神殿」という、朽ち果てた建築物を描いたものがこのセクションに展示されています。まるで建物の骸骨、抜け殻のような作品。

人間と建築物との対比も織り交ぜながら見せるなんてニクイ。

こちらは一転ユーモラスな作品。

フェリシアン・ロップス「音楽的幻想

「第2部 回帰するイメージ 人間≒動物の情念」に展示されていた作品。説明不要。動物と人間の顔を比較した「人間観相学について」などという作品も。パッと見面白可笑しいのですが、じっと見ていると笑えなくなるタイプの作品です。

怪しげなmetamorphose(メタモルフォーゼ)の世界です。

最後に「今日の一枚


ジュール・シュレ「フォリー・ベルジェールのポスター:ロイ・フラー」1893年

ほぼ展覧会の最後となる「第2部 躍る身体」に展示されていた色鮮やかな作品。これまでほとんどモノクロの世界で来たのでぱっと華やかなポスターが視界に入った瞬間、そこにオアシスを見つけたような気分に。

でも、ゴヤ「お前は逃げられまい」、マックス・クリンガー「舞踏の準備」等の作品と並べて見せられると、一気にげんなりとした気分に。。。

華やかな舞台の裏には真黒な世界が渦巻いていること、今も昔も変りないようです。


開館50周年記念事業「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」は8月16日までです。常設展の料金420円でたっぷり一時間以上かけて拝見すること出来ます。是非是非。

同じ西洋美術館内でこちらもまだまだ開催しています。

「ル・コルビュジエと国立西洋美術館」展

更に上野公園周辺では、藝大美術館の「コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―」(8月16日まで)、東京国立博物館「染付展」、「伊勢神宮と神々の美術」(9月6日まで) 、東京都美術館の「トリノ・エジプト展」(10月4日まで)、国立科学博物館の「シカン展」(10月12日まで)等など観るべき展覧会盛り沢山。


さて、何から観ましょうか?考えてしまいます。

それでは最後に「今日の美味


上野の老舗洋食屋さん「黒船亭」の「チキンカレー」。このお店の名物「ハヤシライス」か「ビーフシチュー」を食べようとしたのですが、どうしても、本日のお勧め野菜たっぷりチキンカレーの誘惑に勝てず。

因みに、「シカン展」のチケット(半券)を会計時に提示すると10%オフになります。これは嬉しい。他にもシカン展のチケットは使い道豊富。↓
上野のれん会とのコラボ企画「上野で得する、食するペルーフェア」(pdf)

そういえば、だまし絵展ももうすぐ終了ですね。
まだ行かれてない方急いで!!


奇想の王国 だまし絵展・20万人突破!
Bunkamura ザ・ミュージアム 8月16日まで


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1847

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国立西洋美術館は今年、開館50周年を迎えます。この半世紀間は当館にとって、さまざまな研究活動や展覧会事業の蓄積の過程であったと同時に、なによりも作品収集、独自のコレクション形成の歴史でした。当初、フランス政府より寄贈返還された松方コレクション計370点とともに開館した当館は、それ以後の継続的な収集活動によって、今日では4,547点の所蔵作品(平成20年度時点)を抱えるに至っています。なかでも、開館当時には24点を数えるばかりであった版画のコレクションは、現在では3,747点にまで膨らみ、いまや当館の所蔵作品全体のなかにも、かなり大きな比重を占めるものへと成長しました。そこには、ルネサンス期のデューラーらにはじまり、17世紀のカロやレンブラント、18世紀のピラネージやゴヤ、19世紀のドーミエやクリンガーなどに至る、西洋版画史を語るうえで欠かすことのできない重要な芸術家たちの優品が、数多く含まれています。本展はこうした当館自身の版画コレクションを、若干の素描作例及び書籍とあわせた約130点によって、はじめてまとまった形で紹介する機会となります。


展覧会 | permalink | comments(9) | trackbacks(10)

この記事に対するコメント

 斜めで記事を読んだときに最初に目にはいったのが、「音楽的幻想」だったもので「かたちは移る」なのかとおもいましたが、どうやら「かたちは映る」なんですね。
あ、かけことば?
クラナッハは最初に風景画を描いた一人なんですか。
ワイマールでみたときは人物画だけでした。
10ヘェ・・・なんて、すみません(笑)ワタクシのところはまだ番組にジェットラグがあったりするのです。
OZ | 2009/08/14 5:42 PM
おっしゃる通り、並みならぬ力が入った展覧会ですよね。
私もこれほど西洋版画を真剣に観たのは久しぶりです。
版画は展示が難しいので、できるだけ沢山の方に
この機会を逃さず観て頂きたいところですが、実際の
集客はどれほどなのか、ちょっと気にかかります。

PS Takさんが少し前に紹介されていた森永のクリーム・
チーズのアイスクリーム、ウチの近所ではなかなか
見つからず(他のフレーバーはいくらでもあるのですが)
母が懇意にしている酒屋さんに取り寄せて頂きました。
美味しかったです!
YC | 2009/08/14 9:24 PM
こんばんは
想像以上に良い内容でしたね〜
わたしは西洋版画はニガテだと思っていたのですが、ちょっと変心いたしました。
クリンガー、ドラクロワ。ゴヤはそれだけでも特集をくれないかな、と願っております。
遊行七恵 | 2009/08/14 10:58 PM
@OZさん
こんにちは。

そのようですね。
仰る通り、掛けことばのように
「うつる」の語源から探っているようです。

>クラナッハは最初に風景画を描いた一人なんですか。

解説にありました。
北方絵画は秋に開催される
ハプスブルク展でいずれじっくりと。

@YCさん
こんにちは。

展覧会の中に版画があると
どうしても早足で観てしまいがちですからね。
(ゴーギャン展の版画はじっくり堪能しましたが)

集客はどうなのでしょうね。
宣伝もしてないですし。
でもこうした良質な企画展を開催するのが
本来の美術館の姿ですよね〜

あのアイスほんとヤバイでしょ!
旨過ぎですよね。
お取り寄せの価値ありありです。
アー食べたくなってきた〜

@遊行七恵さん
こんにちは。

遊行さんをしてそこまで言わしめるなら本物です!
間違いありません。

個人的にはピネラージが一番気になりました。
ピネラージ展希望!!
Tak管理人 | 2009/08/15 12:24 PM
こんばんは。この企画展は版画ファンにはたまらない内容でしたね。
あまり宣伝していないのか、
常設展からのお客さんの流れが少なかったのが気になりましたが、
質はさすがの貫禄と言うべきもので感心しました。

明日見納めにもう一度行きたいくらいです。
はろるど | 2009/08/15 11:04 PM
はじめまして。
昨日初めて、Takさんのブログを知りました。
「かたちは、うつる」展、のおすすめ度合いがスゴイので本日急遽出かけて来ました。もともと行きたいと思っていたのですが、ついつい今日まで来てしまっていました。
版画だけでこれだけ刺激を受けるのは初体験でした。良かったです。昔から人々が身体と命について強い関心を持っていたことがひしひしと感じられました。

これからもちょこちょこと拝見させて戴きますので、刺激的な展覧会のご紹介をお願い致します。
さくま | 2009/08/16 6:57 PM
@はろるどさん
こんにちは。

チラシからして良く出来ているな〜と
感心させられました。
自分も版画というとどうしても
流し気味になってしまうのですが
今回だけはしっかりとじっくり拝見しました。

キャプション、解説も良かったです。

@さくまさん
こんにちは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

星の数ほどあるブログの中から
拙ブログ見つけ出していただき
ありがとうございます。

>版画だけでこれだけ刺激を受けるのは初体験でした。
確かに。仰る通りです。
私も同じく。
作家順作品順に並んでいたのでは
気が付かない点を鋭く浮き出してくれていましたね。

こちらこそ、これからもどうぞ宜しくお願い致します。
Tak管理人 | 2009/08/17 7:45 AM
初めまして♪
TB、ありがとうございました!

版画は好きですが、あまりみる機会がないので、今回の展示はとても良かったです。

私はドーミエの版画が気に入ってしまいました。
コメディタッチの作品の前で、思わず笑ってしまいましたw

焼物も好きなので、染付展にも行きたいです。。
華宵 | 2009/08/17 2:15 PM
@華宵さん
こんばんは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

展示の仕方によって
同じ版画でもこうも
見方変わるものかと
感心しながら拝見しました。

独自企画展でこれだけのもの
出来るなんてすばらしいです。
Tak管理人 | 2009/08/17 11:03 PM
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