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「牧島如鳩展」

三鷹市美術ギャラリーで8月23日まで開催されていた
「牧島如鳩展 〜神と仏の場所〜」展に行って来ました。



足利市立美術館で昨年から今年1月まで開催していた展覧会。北海道へ巡回の後、三鷹へ。牧島如鳩(まきしま・にょきゅう)という名前からしてインパクトのある作家さん。足利市立美術館のサイトで目にした時は「河野通勢展」の再来、否それ以上のものを感じました。

牧島如鳩(1892〜1975)
河野通勢(1895〜1950)

偶然かはたまた必然なのか二人ともハリストス正教を信奉者という、強力な共通項が。(河野がハリストス正教の信者であったのに対し、牧島はハリストス正教会の伝道者。)

謂わば筋金入りのキリスト教信者である牧島。
ところが、展示されている作品はというと……


誕生釈迦像」昭和戦前期-1960年


誕図」1961年

観てはいけないものを真正面から観てしまった感覚を受けます。「仏誕図」などボッティチェリの「ビーナスの誕生」のようです。

牧島がハリストス正教会の伝道者であったということを知らなければ、まぁ普通に(それでも普通には見えなかな〜)鑑賞できるはずですが、どうしても知識が邪魔をします。

制作年代順に展示されているので、初めのうちはこうした作品が主なのです。

イコン」 「祈祷の天使

フツーにキリスト教の作品も初めの頃はこうして描いているのです。

またこの他にも足利展終了後に発見された1910年に描かれた「天使図」(現在確認されている牧島の作品の中では最も古いものだそうです)や、牧師さんのような格好をした牧島自身の写真も展示されているのです。

既に、この時点で「何だこれは〜」とお思いになられるでしょう。実際展示室ではもっともっと「変」です。例えば急に「達磨図」が展示されていたりと…頭の中の必死にまとめようとしても、一般的な演算能力を遥かに超越してしまっています。

途中で諦めました。
そして牧島ワールドにどっぷり浸かって身を委ねてみるとにしました。
それしか鑑賞する方法はありません。


一人だに亡ぶるを許さず」下絵 1959年頃

千手観音+キリスト←これをどう解釈せよと!

もし江戸幕府が鎖国政策をとらず、キリスト教が日本に入って来ていたなら、江戸時代にきっと同じような仏教とキリスト教が融合した牧島のような作品が沢山描かれたであろうと。とても示唆に富んだ興味深いことがキャプションの何処かにさらりと書かれてありました。

なるほどもっともだな〜と感心。そしてちょっと想像してみました。キリスト教okな江戸時代を。どんな江戸絵画が発生したでしょう。牧島ひとりでもこの様子です。大変なことになっていたでしょうね。それは観たくもあり、観たくなくもあり。

こんな絵とかね。

慈母観音像」1948年

展示室内に正教会聖歌が流されているという、ミラクルな演出も。

しかし、牧島如鳩が本当の力を発揮するのはこれとは別の世界。
何でも彼は神的なものからダイレクトに「お示し」を受けることが出来たそうで!その「お示し」に則って描かれた作品がこれまたきわきわで凄い!
クリックで拡大↓

龍ヶ澤大辯財天像」1965年

派手な弁天様に目が行ってしまいますが、左下に啓示を受けている作者自身であろう人物の姿が印象的。屋敷神のような小さな祠に向かい正坐しお示しを。神道、仏教、キリスト教と何でもありの世界です。

次第に弁天様や周りの「天使」が手にしている物がキリスト教絵画に描かれる聖者のアトリビュートにすら見えてきてしまいます。そういえば、「大自在千手観音菩薩」1964年や「一人だに亡ぶるを許さず」の手にしているものもやはり「アトリビュート」のようです。

そして霊験あらたかな牧島は各地に「伝説」をも残します。
魚籃観音像」1952年 クリックで拡大↓
戦後如鳩は福島県いわき市の小名浜で、日本古来の神道を背景にキリスト教と仏教を習合した代表作を生み出します。不漁に悩む地元漁師の依頼により描かれた《魚籃観音像》は、鰯の稚魚が入った器を手にした魚籃観音が小名浜港上空に飛来した様が描かれ、画面左側に天使とマリア、右側には菩薩と天女が配置されています。完成したこの絵を人々はトラックの荷台にのせて町を練り歩き、以後港では大漁が続いたと言われています。
様々な神を描くことにより、自分自身も神的な力を。
色んな意味で美術史から無視されていたこと分かります。

7月にこの展覧会観ておきながら、今の今まで中々記事書けませんでした。丁度今日は二十四節気の「処暑」に当たる日。そろそろ夏の片付けもしなくてはと思い何とか書いてみました。でもメモしてきたことの半分も表現できず。。。今年の夏一番衝撃を受けた展覧会であったことは間違いありません。

最後に「今日の一枚


極楽鳥」1960年

文京区にある願行寺所蔵の一枚。牧島如齢70歳の時、鳥が飛び去り、如と改名した時に描いた作品。

極楽鳥が「神」を表し、並んで飛ぶ鳩が如鳩自身の姿なのでしょうか。いずれにせよ、絹本油彩とは思えない、またこれまで観て来た作品とは違うとても清々しい一枚です。

三鷹市美術ギャラリー次回企画展
THE YOSHIDA FAMILY 世界をめぐる吉田家4代の画家たち
〜吉田嘉三郎・博・ふじを・遠志・穂高・千鶴子・亜世美〜」
2009年8月29日(土)〜10月12日(月・祝)
【開館時間】 10:00〜20:00(入館は19:30まで)
【休館日】 月曜日(但し9/21、10/12は開館)、9月24日(木)


【関連エントリー】
- 「ラウル・デュフィ展」 | 弐代目・青い日記帳
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- 「大河原邦男のメカデザイン」 | 弐代目・青い日記帳
- 「動物画の奇才・薮内正幸の世界展」 | 弐代目・青い日記帳
- 「メアリー・ブレア展」 | 弐代目・青い日記帳


それでは最後に「今日の美味


Snyder's of Hanover」の「ピーナッツバタープレッツェルサンドイッチ」かみさんの大好物。箱買いするほど美味しいものかな〜


この記事のURL
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ラフマニノフ,コルニエフ(ニコライ)
ユニバーサル ミュージック クラシック

今回の展覧会チラシの表面に掲載されている《大自在千手観世音菩薩》の異様な迫力には驚かれたかもしれません。この鮮やかな色彩と洋画的な立体感を持つ不可思議な仏画の作者牧島如鳩(1892-1975)は、現在の栃木県足利市に生まれました。父の閑雲はハリストス正教を信奉し日本画家でもあった教養人で、幼児洗礼を受けた如鳩は父から絵の手ほどきを受け幼い頃からその画才を現しました。16才で御茶ノ水にあるニコライ堂の神学校に入学。そこで日本最初のイコン画家である山下りん(1857-1939)よりイコンを学んだとされています。卒業後は伝教者として各地のハリストス正教会に赴任してイコンを制作しました。

それと並行し、如鳩は早い時期から仏教の勉強や仏僧との交流を通じ仏画を描いていました。自らの私的な経験による死者とのかかわりによって彼独自の特異な宗教画が生み出されてゆくことになります。最初の油彩による仏画《涅槃図》が描かれた契機となったのは妻静子の死でした。結核のため27才でこの世を去った妻の供養のために如鳩は10年をかけてこの画を描き、伊東の朝光寺に奉納したのです。

また、1945年東京大空襲の際にニコライ堂は遺体の安置場所となりましたが、その悲惨な状況のなか世界平和を希求して《誕生釈迦像》は描かれました。イコンの画法を応用し描かれたその仏画には、仏画でなくては託し切れなかった如鳩の悲痛な思いが表れています。

戦後如鳩は福島県いわき市の小名浜で、日本古来の神道を背景にキリスト教と仏教を習合した代表作を生み出します。不漁に悩む地元漁師の依頼により描かれた《魚籃観音像》は、鰯の稚魚が入った器を手にした魚籃観音が小名浜港上空に飛来した様が描かれ、画面左側に天使とマリア、右側には菩薩と天女が配置されています。完成したこの絵を人々はトラックの荷台にのせて町を練り歩き、以後港では大漁が続いたと言われています。

生前如鳩は「500年後の人々に自作を見てもらいたい」と語っていました。本展において(500年を待たずして)如鳩の生涯にわたる作品をご覧いただくことで、ひとつの宗教のありよう、そしてひとつの芸術のありようを通し、私たちが現に生きる今・ここに、またこれまでとは異なる視点をお持ちいただくことができれば幸いです。どうぞごゆっくりお楽しみください。
展覧会 | permalink | comments(10) | trackbacks(6)

この記事に対するコメント

こんばんは。

本当に今夏最大のショッキングな展覧会でした。
いろいろ思ったのに、記事にすると大変でした。

美術史界で置いてけぼり食った分、
500年を待たずにこれを見た人が
光を当ててくれますね。
あべまつ | 2009/08/23 11:46 PM
本当にインパクトありすぎでしたね!夢に出てきそうというか...(苦笑)
しかし会場の最後にあった「印」には心打たれました。
こういう出会いがあるから美術館巡りはやめられませんよね。

noel | 2009/08/24 12:02 AM
>今年の夏一番衝撃を受けた展覧会であったことは間違いありません。

同感です。
「500年後の人々に自作を見てもらいたい」という言葉に
時代の潮流に左右されない、如鳩の魂を感じました。
テツ | 2009/08/24 12:45 PM
昨日最終日の夕方、行ってきました。

入り口でえこうさんんとばったり。

で、二人でわいわいがやがやと。


山下りんに師事したイコン画家と言うことなので、

楽しみにして行ったら、あらびっくり \(◎o◎)/!

こんなはずじゃ〜


宗教として、キリスト教と仏教とが彼の観念の中で融合した作品でした。

えこうさんと二人あっけにとられ、口をあんぐりするばかりでした(笑)
わん太夫 | 2009/08/24 1:04 PM
@あべまつさん
こんにちは。

足利で観ようと思っていたので
ある程度は予習していたのですが
それでも、実際に目にすると
とんでもない展覧会でした。

500年とはよく言ったものだと
感心しました。

@noelさん
こんにちは。

aneexに載せた画像とか
完全に夢に出てきます。
もうたまりません。この記事も
画像だけでも十分です。

@テツさん
こんにちは。

牧島のような人になりたくもあり
そこまではいいかなーーという思いもあり。
拝見させてもらう程度が一番かもしれませんね。

@わん太夫さん
こんにちは。

知人と観たらまたさらに
話盛り上がることでしょうね。

展示室内に流れていた
聖歌もまたいい味出してました。

もともと日本人こうした
神仏習合得意中の得意ですからね。
Tak管理人 | 2009/08/24 4:17 PM
雑誌で見た時にも「なんだこりゃ?」と思いましたが、実物はさらにインパクトが強いでしょうね。
この宗教的な混沌ぶりは日本人にしか描けない絵としか
いいようがありません…
たかぴー | 2009/08/24 10:01 PM
最終日の昨日、ぎりぎりで観てきました。
仏教とキリスト教が交じり合ってましたねw 前半は、「おいおい!」と突っ込みを入れてましたが、後半は圧倒されっぱなしでした。こんな世界もあるんですね。。。
21世紀のxxx者 | 2009/08/25 12:27 AM
@たかぴーさん
こんばんは。

実物は大きさもくわわるので
のしかかられるような感じです。
こちらへ迫ってくるタイプですね。
日本人の宗教観結構いいかも。

@21世紀のxxx者さん
こんばんは。

そうなんですよね〜
どこからか急に変化するのではなく
いつの間にやら混交。
見てはいけないものだったかもしれません。
Tak管理人 | 2009/08/25 11:08 PM
こんばんは。
今年一番のインパクトのあった展示だったかもしれませんね。
少し古びた三鷹の箱との相性もばっちりでした。

それにしてもこういう画家さんは、どのようにして発掘されるのでしょうね。
まだまだ埋もれている方が多くおられるのかなと思いました。

それにしても今更ながら河野展を見逃したのが悔やまれます…。
はろるど | 2009/08/28 9:41 PM
@はろるどさん
こんばんは。

確かに、どこの誰が発掘してくるのやら
ある程度評価があった方ならいざしらず。。。

まだまだ堀返せばお宝眠っていそうです。
ハンターさんに頑張ってもらいましょう。

河野展カタログありますよ。
今度お持ちしますね!
Tak管理人 | 2009/08/28 11:13 PM
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