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「一蝶リターンズ」

板橋区立美術館で開催中の
「御赦免300年記念 一蝶リターンズ〜元禄風流子 英一蝶の画業〜」展に行って来ました。



愚にもつかないお笑い芸人を面白い面白いと囃し立てるテレビにうんざりしていらっしゃる方、「英一蝶展」で、軽妙且つ味わいのある痛快な真の面白さを教えてもらいに板橋まで!

「板橋区立美術館」+「英一蝶」=面白くないはずがありません。
こんな幟を立てちゃう美術館そうはないかと。

拡大→
不動図

お不動さまが滝に打たれ修行中。真剣な顔のはずなのにどこか滑稽感すら漂うお顔。「チョー冷っ!」とか言っていそうですよね。

また一蝶らしいユーモアが表現されているのが画面左下。持物の剣だけでなく、背負っていた「炎」まで火が消えたら商売あがったりとばかりに背中から外され(これって着脱出来るの?そもそも)丁寧に脇に置かれています。几帳面に着替えを用意してあるかのように。

ついついこうして不動とその周辺ばかり見入ってしまいますが、墨の塗り残しで描かれた滝が流れ落ちる様などテクニック的にも見応え充分の作品。ただ単に面白いだけではない点が一蝶の凄いところ。

古典の面白話からも題材を得て多く作品を残している中、今回出展されている「徒然草 御室法師図」はその最たるもののひとつ。

高校時代に古典の授業で習った『徒然草』の中にあるこの話。仁和寺の坊さんが酔いにまかせ鼎を頭からすっぽりかぶり余興を。ところがそれが抜けなくなりおおごとに。町医者に診せても「こんな病人見たことない」と。

徒然草 御室法師図」部分

そうするうちに息も苦しくなりいよいよ命も危なくなる。死んでしまうよりはましだと、坊さんの身体を抑え鼎を強制的にひっぱり外すことに。耳や鼻はもげてしまったが、何とか一命は取り留めたという話。バカげた話ですが、兼好法師は仁和寺の近くに居を構えていたので実際耳にしたのかもしれません。

こんな「美味しい話」を一蝶が逃すはずありません(「御室法師図」の御室とは仁和寺のことです)西川祐信の「絵本 徒然草」などには、酔いにまかせ鼎をかぶり踊っている場面を描かれています。



でも一蝶のそれは町医者に診てもらっているシーン。鼎が取れずに苦しんでいるのに、お医者さん何故か脈を取っていたりと、更にユーモラスな場面を選んで描いているのです。より、おつで粋な笑いを一蝶自身が好んだからに他なりません。

因みに高校時代この話で「鼎」という言葉初めて覚えました。

さて、展覧会会場は第1室と第2室の二部屋に分かれ、最初に江戸で好き放題に暮らしていた一蝶が、幕府の怒りを買い三宅島へ流罪になる前、多賀朝湖(たがちょうこ)と名乗っていた時代の作品と、「島一蝶」と呼ばれる三宅島時代に描いた作品が展示。第2室では恩赦により江戸に帰り英一蝶と名乗ってから描いた作品が。

一貫しユーモア心あふれる作品を分かりやすく噛み砕いてナビゲートしてくれるのが、こちらの「一休さん」


一休和尚酔臥図

板橋区立美術館の独自キャプション今回も健在です!「○○図」とかでは面白味ないので、美術館の方がそれぞれの作品に現代風のタイトルを付けてくれてます。

更に加えて酔っ払って寝てしまった一休さんの寝言として簡潔な解説も。(解説ではなくて「コメント」ですねあれは)例えば…


朝暾曳馬図

板橋区立美術館が付けたタイトルは「今日も元気に働こう
なるほど、これならタイトルと作品がぴたり符合します。

そして一休さんの寝言は…「影の表現に注目じゃ

確かに!展示室内は照明を落としてある関係で画面よりも影の部分がかかり見えにくくなっています。下手すると見落としてしまいかねません。そこを泥酔一休和尚が見事に指摘してくれるのです。

本題の「朝暾曳馬図」よりも大きく「今日も元気に働こう」とキャプションに書かれ更に「影の表現に注目じゃ」の見事な酔眼でナビゲート。日本画、江戸絵画の面白さ分からないんだよな〜って方もこれならすんなりと。

再度。「板橋区立美術館」+「英一蝶」=面白くないはずがありません。

展覧会には初期の浮世絵そのものの作品(菱川師宣そっくり)から「島一蝶」そして今回初公開となる極彩色の珍しい仏画も展示されています。


阿弥陀来迎図

尾形光琳とたった6歳違いの一蝶。同じ時を共に生きたにも関わらず、一蝶単独の展覧会はほとんど開催されていません。「面白い」ことを軸に書いてきましたが、単に愉快なだけでなく、洒脱で実は教養ある深い趣きある作品ばかりです。

1709年。島流しの地、三宅島から江戸に戻ってから今年で丁度300年ということで、展覧会のタイトルに「一蝶リターンズ」と名付けられていますが、光琳以上に江戸で絶大な人気を誇った英一蝶が、平成の世に再び脚光を浴びるといった裏の意味もありそうなタイトルです。

感興そそられる一蝶ワールドへ是非是非。

最後に「今日の一枚

社人図

鳥居に願いを書いてやれ!」ってそんな無理な体勢で、、、
ちゃんと書けるのかな〜無理だろうなーー

英一蝶展「一蝶リターンズ」は10月12日までです。


板橋区立美術館
〒175-0092 東京都板橋区赤塚5-34-27
TEL: 03-3979-3251 

アクセス

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それでは最後に「今日の美味


かおり」梨の種類も数多くあれど、この「かおり」に勝るもの他になし。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1877

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英一蝶の予習は↓の「美術の窓」9月号で。また前田恭二氏の「やさしく読み解く日本絵画―雪舟から広重まで」(とんぼの本)がお勧め。この本は日本絵画を鑑賞するにあたり是非読んでおきたい一冊です。

 多賀朝湖(たがちょうこ)は、都市の人間模様を生き生きと描いた元禄期の江戸を代表する画家です。しかし、幕府の怒りを買って流罪となり、足かけ12年を三宅島で過ごします。

 宝永6年(1709)将軍代替の大赦によって江戸へ帰ることができ、そのおりに英一蝶(はなぶさいっちょう)と画名を改めました。2009年は、その一蝶御赦免より300年目にあたります。

 当館では既に1984年に英一蝶展を開催しましたが、その後、一蝶の作品は配流以前の作品をはじめ、多くの作品が発見されています。そこで御赦免300年を記念し、重要文化財2点を含む名品や、配流中に描いた「島一蝶」と呼ばれる作品、新出作品を一堂に集め、元禄風流子英一蝶の画業を改めて回顧します。


展覧会 | permalink | comments(13) | trackbacks(7)

この記事に対するコメント

個人的にここの美術館好きで何度か足を運んだり。
(某公募に入選した時作品を展示していただきました!^^)
でもちょっとうちから遠いのが難点。。。><
しかし!
そんな難点を気に留めさせないくらい、この展示、行って見たいです。
ひと段落したら是非いきたいなあ。。。
たけさんのこの記事も読んでて楽しい気分になりました♪
ai | 2009/09/12 12:40 AM
遠山美術館の布晒舞図を見ることができたのがうれしいです。
ユーモアたっぷりの一蝶、素晴らしい画家ですね。
一村雨 | 2009/09/13 7:57 AM
はじめまして、以前から愛読させて頂いていました。
英一蝶は、先日はじめてホテルオークラで「牡丹図」を見て、繊細な美しさに心奪われてきた所ですが、まさかこんなズッコケなユーモアがお好きな絵師だったとは、びっくりです。才能ある方は色々な引き出しを持っているんですね。
らびっと | 2009/09/13 10:42 PM
アメーバで「ふふみの札幌名店ぐーぐるめ」を書かせていただいているものです。
ぜひお気に入りのブログに登録させてください。
ふふみ | 2009/09/14 3:10 AM
@aiさん
こんにちは。

もっともっとまじめな展示内容なのですけどね。
でも当時の江戸っ子気質を垣間見ることできる
大変ユニークな作品が多いことは確かです。

電車使っていくとちょっと不便ですよね。
でもその不便さを差し引いてもおつりのくる内容です。

@一村雨さん
こんにちは。

出光美術館で拝見し、英一蝶を好きになりました。
今回も出光さんから面白い作品でていますね〜

@らびっとさん
こんにちは。はじめまして。
コメントありがとうございます・

随分と当時、江戸の町では人気があったようです。
今発売中の「美術の窓」読み、益々この作家さんに
興味関心が湧いてきました。
後期展示も行かなくては。

@ふふみさん
こんにちは。

>ぜひお気に入りのブログに登録させてください。
はい。喜んで!
うちはリンクも引用もフリーですので
どうぞご自由に!!
Tak管理人 | 2009/09/14 10:46 AM
こんばんは。
文句なしに楽しかったです。
おかしみのあるシーンが多いのがとっつきやすいのかなあと。
デフォルメされたのをずっと見てて、最後に仏画という構成は「おおっ」と唸ってしまいました。
あおひー | 2009/09/18 12:56 AM
@あおひーさん
こんにちは。

当時の江戸では大変な人気絵師だったのですね。
幕府もそれを妬んで流罪に?!

若冲とは違った愉しさありました。
図録買っておけばよかったかなーー
Tak管理人 | 2009/09/18 9:24 AM
こんばんは。本当にユーモア溢れる作品ばかりでしたね。御室法師図には笑ってしまいました。確かに一蝶の格好の画題です。

>極彩色の珍しい仏画

これまたサプライズ絵画でしたね。
全然時代は違いますが、この前三鷹で見た牧島のことを思い出しました。

それにしても美術の窓、気合が入ってます!
はろるど | 2009/09/29 10:40 PM
@はろるどさん
こんばんは。

>三鷹で見た牧島のことを思い出しました。
確かに!!
謂われてもっとも。

美術の窓の気合の入りよう異常なほど
今月号の芸術新潮と合わせると完璧。

そして新・日曜美術館でとどめ。
Tak管理人 | 2009/10/01 10:05 PM
こんばんは。

英一蝶のはばの広さに驚きました。
ほんとに面白かったです。

今日、日曜美術館みていて、Takさんの記事
思い出し、また読んでいます。

すぴか | 2009/10/04 10:44 PM
@すぴかさん
こんばんは。

ほんと驚かされますよね〜
と同時に笑わせてくれます。

新日曜美術館ではもっと
館長さんのお話を聞きたかったですね。
Tak管理人 | 2009/10/06 5:30 PM
takさんのお勧めを読み、行こうと思いつつ、ラス前に。するとたった今図録が売り切れと言われ、トホホです。再版したが、再々版の予定なしとのこと。
展覧会ですが、まず入門編というコーナーで、英一蝶の生涯と画風の予習ができるようになっているのがよかったです。
「七福神図」に「シチフク・ミュージックバンド」、
「四季日待図巻」に「遊びながらオールナイト」など、
楽しいタイトルが付き、
「絹本着色」を「絹に色づけ」、「紙本淡彩」を「紙にちょっと色づけ」と記すなど、展覧会の解説は難しいという
「常識」を破ろうとしてきた館長の安村氏色全開と
いった感じでした。

スナップのような描き方が秀逸。とても絵の上手い人なんだ。それも幇間という仕事にもついて、遊ぶ江戸の粋人を
身近に見ているからこその絵なのだ、と大いに楽しみました。
オペラグラスを持ってくればよかったと思って、会場を出るときに気づいたのですが、無料で貸してくれるんですね。

東博などの人を入れんかな主義ではなく、どうやったら分かりやすく、しかも楽しんでもらえるか智恵を絞ってつくる
板橋区立美術館の方針に脱帽でした。
blue moment | 2009/10/12 1:26 AM
@blue momentさん
こんにちは。

行かれましたか!
それにしても図録完売とは。
驚きました。確かにお洒落で
内容のしっかりとした
そして低価格の良本でしたからね。

ここの美術館はいつも
来館者をやさしく向かいいれてくれます。
交通の便は悪くとも何気ない
心遣いで癒されるものですよね。

キャプションもいつもながら
分かりやすいし!(メモとるのが
大変ですが、それもまた嬉しい)

さてお次はどんな企画展練っているのか楽しみです。
Tak管理人 | 2009/10/12 11:08 AM
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