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新山種美術館開館記念特別展「速水御舟」

山種美術館で開催中の
新山種美術館開館記念特別展「速水御舟ー日本画への挑戦ー」のプレス内覧会にお邪魔して来ました。



10月1日に新しく広尾の地にオープンした山種美術館のこけら落としは「速水御舟展」!“御舟美術館”との呼び声も高い山種美術館です。当然のことながらスタートは御舟から。

新「山種美術館」館内見学会

お世辞抜きにこの展覧会の素晴らしい点として、山種美術館のオープニング展であり、この美術館の顔でもある御舟作品を全て一堂に公開する展覧会でありながらも、決して御舟を単に神格化し祀り奉るだけの展覧会になっていない事を初めに強調しておきたいと思います。


左から二代目館長・山崎富治氏。現山種美術館館長・山崎妙子。そして明治学院大学教授でもあり、山種美術館顧問を務める山下裕二氏。

1894年、明治27年にこの世に生を受け、1935年、昭和10年に腸チフスに罹患し僅か40歳という短い人生に幕を下ろした速水御舟。遺した作品におよそ700点。しかし太平洋戦争を隔て作品は散逸。その多くが所蔵家に秘蔵されたため「幻の画家」と称されていたそうです。

そんな夭折の画家であり「幻の画家」でもある速水御舟の作品を120点も山種美術館は所蔵しています。「御舟の美術館」と呼ばれる由縁です。

これに加え個人蔵で今回初公開となる未完の大作「婦女群像」やこれを描く契機ともなったヨーロッパ旅行の日記や現地で買い求めた西洋絵画の写真なども展示。


御舟がヨーロッパで購入した西洋絵画の写真。
現在でもそうですが、エル・グレコとかまさに衝撃的だったのでしょうね。

日本画壇におけるある種「神」のような扱いを問い直し、新たな御舟像を探り出そうとする、新美術館のこけら落としとして守りに入るどころか、逆に大変意欲的なアグレッシブな展覧会なのです。

ただし、そうは言っても見せ方はいたってオーソドックスに、基本的には制作年代順に展示されています。それが実は新たな御舟像を再構築するための最良の手段でもあるのです。

展覧会の構成は以下のようになっています。

第1章:画壇からの出発
第2章:古典への挑戦
第3章:渡欧から人物画へ
第4章:挑戦者の葛藤


因みに今年7月に新山種美術館の館内見学会にお邪魔した時の記事をまずはじめにご覧ください。新しい美術館の特徴など画像付きでまとめてあります。→こちら。7月の段階と今回と見比べてみるのも一興かと。



注、会場内の写真は内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

第1章:画壇からの出発

速水御舟19歳の時の作品です。


錦木」1913年

そう聞くと描かれているのは御舟その人なのではと思ってしまえるほど(世阿弥の能『錦木』を題材とした作品)。

画面中央の男の着物の透き通るような白さにハッと驚かされたのも束の間。目を上に転じるとそれ以上にススキの穂先に心持っていかれてしまいます。

胡粉の白とはこんなにも美しいものなのかと再認識。

最初のセクションは展示作品こそ少ないものの、御舟が初めから、ずば抜けた画力を有した画家だったことを知るには十分。


比叡山」「山科秋」1917年「「富士(小下図)」1916年

また「瘤取之巻」は平安時代の絵巻からの転用が確認できるとのこと。図録に絵入りで詳しく館長自ら文章をお書きになっています。

第2章:古典への挑戦

「何度も見ている山種美術館の御舟作品だからあらためて見ることもない」とお思いの方も少なからずいるかもしれませんが、残念ながらその考えは改めなくてはなりません。

「見たことあるのに、初めて見た感動」に出会えます。絶対。
自分を含め3人でお邪魔しましたが、これは揺るぐこと無き一致した意見。


「重要文化財 炎舞」1925年、「翠苔緑芝」1928年

御舟をして「もう一度描けといわれても、二度とは出せない色」と言わしめる「炎舞」の背景の深い深い闇。

山下裕二先生も毎回見る毎に違った色に見えるとか。単なる黒のベタ塗りではなく、微妙に朱色を混ぜているそうです。近くに寄ると確かに黒の中に赤が。そして青色まで確認できます。「色彩豊かな黒」そんな形容矛盾な表現をさせてしまうほど巧みなそれこそ「二度と出せない色」です。

千鳥ヶ淵にあった山種美術館でも「翠苔緑芝」は何度となく拝見しましたが、前述した通り、はじめて対峙するような新鮮な感度を覚えました。

何色も意図的な配置で置かれている緑色。ツツジの鮮やかな赤色。紫陽花。そして戯れるウサギの白さ。今まで何を観ていたのだろうと何度も首を傾げてしまいました。今回最も感動した作品、これかもしれません。

加えて横に「翠苔緑芝(小下図)」が並べて展示されています。猫の数が違ったりと御舟の試行錯誤の一端を垣間見ること出来ます。

そして振り向くと眼の先にはあの名作が!!

「重要文化財 名樹散椿」1029年

これらの作品を20代の半ばで描いてしまったのですから、初めから完成されていた日本画家と呼ばれるのも無理はなかろうかと。

ここまでは、山種美術館さんの御舟コレクションを新しい恵まれた環境の中で再認識。この先の二つの章は、これまでにあまり知られることのなかった新たな御舟像を展開。

第3章:渡欧から人物画へ





第4章:挑戦者の葛藤



それまで「自然をいかに小さく切り取って、そのなかに真実を見出すか」ということを重視し、自然の真の姿を描き出した御舟が、ヨーロッパから帰朝後取り組んだのは、これまでとはまるで正反対の大画面による人物群像図。「婦女群像

如何にこれが異彩を放っているかは、その保存状態の悪さから出来た沁み以上に驚きをもって鑑賞者の眼前に立ちはだかります。

この章のタイトルが「挑戦者」そして「葛藤」となっているのもその前に立てば明明白白。一目瞭然。


手前のガラスケースに入った、お世辞にも上手いと言えない、御舟の人物画のスケッチと、壁際に堂々と掛けられた御舟お得意の「自然をいかに小さく切り取って、そのなかに真実を見出」した作品たちのコントラスト。

見応えありありです。


新山種美術館開館記念特別展「速水御舟展」は11月29日までです。

「夭折」という言葉を最初に使いましたが、もしかして御舟には相応しくないかもしれません。僅か40年の間に成し得たことや後世に与えた影響力は計り知れないものがあります。

人生長生きすることだけが…安泰することなく、太く短く生き抜いた御舟の全てを、新しい山種美術館で是非。

そうそう、こちらもお見逃しなく。


今後特別展を開催する際に、山種美術館の名品は観たい!という方の為に作られた「山種コレクション」、そう常設展示室。今回は山種美術館の御舟展なのでこちらの部屋にも御舟作品が。
常設展示スペースでは、当館の至宝である速水御舟の作品を中心に数点を年6〜7回展示替えして公開いたします。中でも重要文化財の《炎舞》や《名樹散椿》は、年に1回恒例の季節に定期公開を予定し、より多くの方に近代日本画に親しんでいただこうと考えております。

山種美術館 2009-2010年 展覧会予定 
新「山種美術館」館内見学会

山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36

新山種美術館開館記念特別展「速水御舟ー日本画への挑戦ー」

会期:2009年10月1日(木)〜11月29日(日)
開館時間:午前10時から午後7時 (入館は6時30分まで)
*新美術館の通常開館時間は、午前10時〜午後5時です。
*本展覧会は開館記念特別展につき、延長して開催いたします。
休館日:月曜日(10/12、11/23は開館、翌火曜日は休館)
入館料:一般1200円

この記事のURL
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大正から昭和を駆け抜けた日本画家・速水御舟。40年の短い生涯におよそ700余点の作品を残しましたが、その多くが所蔵家に秘蔵されて公開されることが少なかったため、「幻の画家」と称されていました。
 初期の南画風の作風から、細密描写、象徴的作風、写実と装飾を融合した画風、そして水墨画へと、御舟はその生涯を通じて、短いサイクルで次々と新しい試みに挑み続け、常に挑戦者であろうとしました。
 新「山種美術館」開館記念特別展では、当館所蔵の≪炎舞≫≪名樹散椿≫(重要文化財)を始めとする120点の御舟作品に加え、本邦初公開となる未完の大作≪婦女群像≫(個人蔵)および1930(昭和5)年の 渡欧日記(個人蔵)などを出展します。
 これらの新出資料を通じて、40歳の若さで急逝した御舟が新たに目指していた方向性が明らかになることでしょう。本展では、山種美術館所蔵の御舟作品をすべて展示し、皆様にいま一度、御舟作品の凄みを体感していただきたいと思っています。
展覧会 | permalink | comments(9) | trackbacks(8)

この記事に対するコメント

炎舞はまさに絵の中の蛾たちのように惹かれるものが
ありますよねえ。
下手の横好きならぬ無知の横好きなワタクシなので、作者の
名前を知りませんでしたが、この絵はかなり昔から見知っていたくらいです。
素晴しい展覧会がまた一つワタクシを誘う〜(苦笑)
OZ | 2009/10/03 4:25 PM
こんばんは。
居ても立ってもいられず、行って来ちゃいました。

炎舞はもちろんよいのですが、これまでに見たことのない婦女群像の下絵なども見られて満足でした。
あおひー | 2009/10/03 11:44 PM
@OZさん
こんにちは。

蛾が全て羽をこちらに向けていて
まるで標本のようです。
全然実はリアルではありません。
それでも飛んでいるように
見えてしまうから絵というものは不思議です。

@あおひーさん
こんにちは。

良かったでしょう〜
あの薄暗い閉鎖的な空間が雰囲気増幅。

グレコのマニエリズムの絵画が
御舟の挑戦心かき立てとは!!
Tak管理人 | 2009/10/04 11:13 AM
こんばんは。先日はお世話になりました。
それにしても名品展かと思いきや、なかなか意欲的な内容でしたよね。
人物画への認識が改まりました。

>「重要文化財 炎舞」1925年、「翠苔緑芝」1928年

このコラボは写真で見返しても感動的ですね。
近いうちにもう一回行ってきます!
はろるど | 2009/10/04 9:17 PM
@はろるどさん
こんばんは。

こちらこそご一緒でき楽しかったです。
一人で観たのではあれほど深く観られません。

しかし、ヨーロッパの旅で
受けた衝撃は想像をはるかに
上回るものだったのでしょうね。

苦手な人物画に挑戦させるのですから。

私ももう一度伺います。
Tak管理人 | 2009/10/06 5:27 PM
実物観ると「炎舞」って
ここまで深みのある作品なのかと
驚かされました。

息子は加山又造の「千羽鶴」のパズルが欲しいと
私にずっと訴えているのですが
商品化なんてされていないですよね。。。
って商品化されていても高そう。。。
せいな | 2009/10/09 10:08 PM
@せいなさん
こんにちは。

「炎舞」は実物見ないことには
何も語れません。
背景の色など肉眼で観たとしても
その時々で変化しそうです。

今回新しく販売されている
グッツはどれも洗練された
美しいものばかり。
結構散財しています!
Tak管理人 | 2009/10/10 10:00 AM
こんばんは。
やっと山種美術館行ってきました。
いろんな情報を書いていただいていたのに、
友人たちと入り口で待ち合わせるのに、最後は皆
タクシーで、笑ってしまいました。でもなんとかゆっくり
みられて、一人の画家の進んでいく歩みに、共感を覚え、
感激、とくに炎舞、今まで見ていたのと違って見え、
恐ろしいほどのきらめきを放っていました。
すぴか | 2009/10/22 11:05 PM
@すぴかさん
こんばんは。

私も二度目に伺った時は
六本木ヒルズからタクシー利用しました。
何人かで乗ればこちらの方が楽でお得。

照明であれほど作品が変わるものかと
驚きを通り越して呆けてしまうほどでした。
良い美術館となりましたね!
Tak管理人 | 2009/10/23 7:46 PM
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