青い日記帳 

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「河口龍夫展」

東京国立近代美術館で開催中の
「河口龍夫展 言葉・時間・生命」に行って来ました。



現代アートの、しかも日本人の作家さんの展覧会となると、中々足が美術館へ向かないものです。ましてやどのような作品をこれまで世に送り出してきたのか全く分からない作家さんとなると更にその傾向は顕著なものに。

通常であれば、かみさんは絶対こうした展覧会に付いて来ることはありません。が、しかし自分が展覧会前に河口氏にインタビューした際の記事を読み(かみさんも大事な読者のひとり)「この人の作品なら観てみたい」と。乗り気に。

もしかして河口氏の作品よりも担当学芸員の大谷省吾氏が目的だったのかも?大谷氏は髭を剃った山口晃氏風。

河口龍夫氏と大谷省吾(主任研究員)

当初の目的はかなりの割合を大谷さんを見る(山口さんとどれだけ似ているかを確認する)ことに力点が置かれていたはずですが、いざ展覧会会場に入り作品を拝見しているうちに、どんどん「河口ワールド」へ引き込まれすっかり虜に。

これは間違いなく言えます。現代アート展に行って(または行かずに諦めている人)ちんぷんかんぷんで何が何だかさっぱり分からなかったという苦い経験のある方、この展覧会は違います!太鼓判押しちゃいます。

注:写真は主催者の許可を得て内覧会時に撮影したものです。

ポスターやチラシに使われているこちらの作品

睡眠からの発芽」2009年
木製のベットから銅線が延びその先端には蓮の種子が付いています。

今回の展覧会用に制作された新作。「お値段以上ニトリ」で自ら購入してきたベットに作家自身が寝そべりその輪郭を種子で表わそう!としたものの、ベットが小さく足が出てしまうことが判明。すぐさま奥様に代わりを務めてもらうことに。

これが逆に良かったと河口氏は笑顔で話して下さいました。「生命の誕生」を表現しようとした作品ではありますが、観方によってはまるで逆のことも考えられます。現代日本ではほとんどの方が「ベット」の上で息を引き取るわけで、そう言った意味ではまさに「死」を強く象徴する作品とも見て取れます。


手前:「ラベンダーのプール」2009年
奥:「関係-無関係・立ち枯れのひまわり」1998年

3つにセクション分けされている内の最後にあたる「生命」に先ほどのベットの作品「睡眠からの発芽」やこちらが同居しています。

立ち枯れのひまわり単体で観るとやはり「死」を想起するでしょうが、「ラベンダーのプール」(ほのかにラベンダーの香りが漂います。毎朝エキスを補充するそうです。午前中と夕方では香度もかなり違うそうです)があるおかげでその死を連想させる対象も影を潜めます。

河口氏が淡路島で食べたラベンダーのアイスクリームがこの作品の原点。それにマイブームの種を乗せぷかぷか浮かべた河口氏にしては珍しい乙女ちっくな作品でもあります。

因みに自分は、軽井沢のセゾン現代美術館に展示されているアムンゼン・キーファーの「革命の女たち」という作品がまっ先に頭に浮かんできました。あちらもベットとひまわりが用いられています。但し死の側面がとにかく強烈。「革命の女たち」の画像入りの記事はこちら

これまた同じ部屋にはこんな目まい起こしそうなものも。

7000粒の命」2009年
毎日「写経」のつもりで7000粒の種にコーティング施したそうです。

拡大

一粒一粒鉛でコーティングした蓮の種子が理路整然と7000個並べられています。

人は生きている間にどれくらいの他者と関係を持つのでしょう。7000人の他者と関係性を持つには普通の生活を営んでいると一体何歳くらいでその時が訪れるのでしょう。一番端っこ、もしくは中心にある小さな一粒の種子を自分に見立てると、あらためて自分ひとりでは数十分も生活できないことに気付かされます。

ケータイ片手に必死に希薄な関係性維持している若者に見てもらいたいな〜是非。

河口龍夫曰く「徒労かもしれないが7000粒の「命」の固有性に視線を注ぎ、眼で触れ、また、耳を傾けてみよう。」先達の言うことは理屈こねずにまず従ってみるべきです。

因みに、この作品。展示するだけでゆうに3日もかかったそうです。アシスタント3人で3日。でもひとりでコツコツと造られた河口氏には何も言えません。。。

最後の部屋には、これまた1800個という膨大な数の蓮の種子が胞子のように生えた最も注目すべき作品「時の航路」2009年が「木馬から天馬へ」2009年を乗船させどかんと展示。


時の航路」2009年、「木馬から天馬へ」2009年


木馬から天馬へ」2009年

船は「乗り物」の中でもちょっと別格な存在。電車や車に比べ明らかに非日常性が高い乗り物であることは間違いなし。故に時に強く心引かれる時があります。

急に思い立ち船舶免許を取ったのもそんな衝動に強く駆られたからかもしれません。そういえばここ数年船操縦していないことにハッとさせられました。

河口氏が兵庫県神戸市出身であり、現在は千葉県の房総にアトリエを構えていらっしゃるとお聞きし、船の「取り扱い」に慣れていることに納得。陸上でこれだけ美しく輝やく船そうそうお目にかかれません。

乗船者のペガサス君はお孫さんへのプレゼントだったそうですが、金属製の翼を新たに取り付けてもらい作品へと昇華。「何も乗っていないと寂しいじゃない」と。


蜂がパイロットの偵察機」2009年

八谷和彦も鴻池朋子もびっくりのこのキュートさ。

まだ決まっていないそうですが、展覧会終了後、越後妻有トリエンナーレでの公開を模索中とのこと。もしこの蜜蝋で塗られた派手な黄色の船とペガサスが、山間の古屋の部屋の中に置いてあったらさぞかしインパクトあるでしょうね〜想像しただけでも楽しみです。


関係−鉛の花時計」1992年 「関係−時のフロッタージュ」2009年

人が作りし「時間」という概念を表わす時計の周りに132個の植木鉢が。この中にはそれぞれ違った植物の種が鉛で封印されています。彼らの時よりも遥かに新しい「時間」という人間のスケールにまるで従うどころか、淡々と個々の時を静かに刻み続けている種たち。

個々の生き物が持っているそれぞれの時間の強靭さが感じられます。

河口氏の作品は近代性の矛盾に真正面から意義を唱えることはしません。その代りチャーミングハート大小な方法を使い横腹をつつくようなそんな作品により、目に見えないものを可視化してくれます。

この他にもこんなチャーミングな作品が多数。

意味の桎梏」1970年

『広辞苑』から切り抜いた「アクリル」「ちんれつ」が展示ケースに貼り付けてありました。実はこの作品?会場の外にも展示?されています。近代美術館の中を探検だ!


関係−エネルギー」1972年

所々ランダムに光を放ったり、音を鳴らしたりする作品。ただ大きさの割にはアクションはかなり控えめ。「もっと激しい動きや音は出ないのか?」と外人さんから聞かれたそうです。しかしそういった作品ではなく「原理を知ってほしいので、現象は敢えて目立たせないようにしている」とのこと。

外人さん、湯川秀樹という日本人が著した「目に見えないもの」って本があるんだ。翻訳もされているはずなので是非。折角日本来たのだから。


関係−黒板の地球儀」2000‐09年 「黒板の地図」2009年
奥の小部屋は「関係−地中からのボーダーライン」2009年

子供の時分、黒板に落書きすると先生にこっぴどく叱られたそうです。だからいつの日か思いきり書ける黒板があればなーと。それで生まれたのが越後妻有トリエンナーレにある「黒板の教室
関係−黒板の地球儀」「黒板の地図」では人間が「書き加えた」国境線を再認識させ考えさせるとともに、自ら創造主「神」となり地球に様々な線を書き込める。そんな作品。(実際には今回書き込みはできません)

きっかけや発想がとにかくユニーク。
これが河口龍夫氏の一番の売りかもしれません。
(それと茶目っ気たっぷりで、人を楽しませようという気概満々)

こりゃ、うちのかみさんでも思いきり楽しめちゃうわけだ。


(電球)」1975年、「DARK BOX」1975年〜

実際に光っている電球に鉄の覆いをしたかと思えば、鉄製の箱に暗闇を閉じ込めてみたりと「ものと言葉」の関係性を考えるきっかけの好材料をいともたやすく提示してくれます。

また、お勧めは奥の小部屋。

闇の中へ、眼をひらいて」2009年

ひとりずつこの小部屋に入り真っ暗闇の中で色鉛筆を使いドローイングを。係りのお姉さんがスイッチを切ると今まで経験したことのない真っ暗な世界に一人ぼっちで放り出されたような感覚に陥ります。

河口氏も仰っていました「これは絵が下手、苦手だと思っている人ほどいいんだ」と。視覚に全く頼らないわけですからまさに感覚だけで絵が描けます。

自分が描いた絵は…葬り去りました。。。

最後に「今日の一枚


関係−未来」1985年

木の幹に金属製の輪っかが取り付けられています。額縁の下の方にその輪っかにかかった錠前を解く鍵が。順調に木が生長しこの輪と同じくなった時に、鍵で解放。輪にはその時期を予想し年号が刻まれているそうです。

この木がもし自分自身だとしたら、一体幾つの錠前が巻き付けられています?
「未来」というタイトルもまた意味深です。

そうそう、河口氏は現代作家にありがちな「無題」ということを嫌い、極力ことばによりタイトルを付けていらっしゃいます。

出来れば是非、河口氏のお話を伺ってみて下さい。
自分も実際にお会いしてファンになったうちのひとりです。
小難しい話は一切なし。平易な言葉で作品について語ってくださいます。

講演会
・河口龍夫×松本透(当館副館長)×大谷省吾(当館主任研究員)
日程:2009年11月14日(土)
時間:14:00-15:30
場所:講堂(地下1階)

・河口龍夫
日程:2009年11月22日(日)
時間:14:00-15:30
場所:講堂(地下1階)

・河口龍夫×谷新(宇都宮美術館館長)
日程:2009年12月5日(土)
時間:14:00-15:30
場所:講堂(地下1階)

*いずれも聴講無料・申込不要(先着150名)

ギャラリー・トーク
日程:2009年11月27日(金)
時間:18:00-19:00
担当:松本透(当館副館長)

日程:2009年12月4日(金)
時間:18:00-19:00
担当:大谷省吾(当館主任研究員)

*いずれも参加無料(要観覧券)・申込不要

尚、この展覧会ではこれまでにない取り組みがなされています。それはTwitterを使った情報の発信です。河口龍夫展 on twitter ←まだフォローされてない方、今すぐ「フォローする」をクリック!ハッシュタグは、#tatsuo

河口龍夫展 言葉・時間・生命
2009年10月14日(水)〜12月13日(日)
10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)

最後に今回の鑑賞は「ブロガー特別内覧会」に参加させて頂いたものです。この場をお借りして関係者の皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。

大谷省吾(主任研究員)

以下、参加されたブロガーの皆さんです。

はろるど・わーど
http://blog.goo.ne.jp/harold1234

二子玉川deぼちぼち絵日記
http://blog.goo.ne.jp/nikotama-life

あるYoginiの日常
http://memeyogini.blog51.fc2.com/

徒然と
http://blog.goo.ne.jp/lysander

あお!ひー
http://blog.goo.ne.jp/aohie

フリージャーナリスト林信行氏
https://twitter.com/nobi

それでは最後に「今日の美味


越後松之山温泉「まるたかまんじゅう
また越後妻有行きたい!アートと松之山温泉の最強コラボ。
「まるたか」は温泉街にあるお土産さんです。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1941

JUGEMテーマ:アート・デザイン


河口龍夫(1940年、兵庫県神戸市生まれ)は、1960年代から今日に至るまで、現代美術の最前線で活躍を続けてきている作家です。彼は、鉄・銅・鉛といった金属や、光や熱などのエネルギー、さらに化石や植物の種子など、さまざまな素材を用いながら、物質と物質、あるいは物質と人間との間の、目に見えない関係を浮かび上がらせようという一貫した姿勢で制作を続けてきました。

今回の展覧会は、40年以上にわたる河口龍夫の制作のあゆみを、「ものと言葉」「時間」「生命」というキーワードのもとに3つの章で構成し、それぞれのテーマによる過去の主要作品と、新作とをあわせて展示します。「芸術は精神の冒険」であると河口はいいます。彼の作品の前で五感を研ぎ澄ませ、想像力をひろげるとき、私たちは、ものに対する新しい認識の仕方に驚かされたり、人間のスケールを超えたはるかなる過去・現在・未来の時間の流れに思いを馳せたり、あるいは生命の不思議に触れることになるでしょう。


展覧会 | permalink | comments(3) | trackbacks(3)

この記事に対するコメント

Takさんチケプレありがとうございました♪早速展覧会行ってみましたがとても面白かったです。時間について考えさせられました。闇ドローイング最高ですね。

勝手ながらリンクさせて頂きました。
kurohani | 2009/11/18 11:27 PM
いただいたチケットで、娘を連れて見てきました。
闇のドローイングで全然描けなくて、目に頼ってるんだな…と痛感しました。
娘は「関係−エネルギー」の部屋が気に入ったようです。
私が次の部屋に行っても、ずっと残って見ていました。

そしてキーファーの「革命の女たち」が軽井沢にあるとは!
高校生の頃京都で見て、衝撃的だったので…あまりに重くて…
いい情報をありがとうございます。
キーファーに比べると河口さんの作品には「『生』の可能性」を感じました。
よめこ(nest_design) | 2009/11/23 12:00 AM
@kurohaniさん
こんにちは。

おー行かれましたか!
しかも「闇夜のドローイング」を
体験されるとは!!

リンクありがとうございました。
これからも宜しくお願い致します。

@よめこさん
こんにちは。

河口氏は目に頼り、上手い、下手とか
考えずに描ける絶好の場だと仰っていました。
下手な人ほど生き生き描けるそうです。
どうりで自分楽しかったわけです。

軽井沢のセゾンは巡礼地のような美術館です。
ここに毎年夏、行かないとなんか
落ち着きません。いいところです。
機会があれば是非。
Tak管理人 | 2009/11/23 4:40 PM
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河口龍夫展『言葉・時間・生命』(東京国立近代美術館) | 徒然と(美術と本と映画好き...) | 2009/12/23 10:40 PM