青い日記帳 

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「柴田是真展」

三井記念美術館で開催される
「柴田是真展」(特別展 江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵)に行って来ました。→「柴田是真展」絵画・漆絵編はこちら


柴田是真の洒脱なデザインと卓越した技巧は、欧米で高く評価され、多くの是真作品が海外に所蔵されています。はじめて里帰りするエドソンコレクションを中心に、是真芸術の魅力を紹介する展覧会です。

展示の構成

展示室1・2・3  エドソンコレクションー漆工
展示室4     エドソンコレクションー絵画・漆絵
展示室5     エドソンコレクションー漆絵・漆工
展示室6     エドソンコレクションー漆工(印籠・根付)
展示室7     国内所蔵作品ー漆工・絵画・漆絵


注:画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

米国テキサス在住のエドソン夫妻が収集した約71点(初里帰り)を中心に、国内の優品約30点から成る展覧会です。浮世絵に始まり、近年ではプライス氏の若冲などと同様、日本国内では極めてマイナーでありながら、欧米では非常に高い評価を受けている江戸から明治にかけ活躍した柴田是真。

因みに、皆さんのパソコン「ぜしん」で漢字変換して「是真」と出ます?新たに単語登録しないと一発変換できませんでした。かつて「若冲(じゃくちゅう)」がそうであったように。。。

まず、是真の作品を拝見してまっ先に思うこと。それは21世紀、平成の世を生きる我々が観てもその斬新で卓越した驚愕のデザインセンス。

例えばこれ。

流水蝙蝠角盆」 「青海波貝藻料紙箱」エドソンコレクション

琳派のDNAを受け継ぐ大胆な流水文に蝙蝠が2羽。江戸時代は「蝠」の音が「福」に通じる為、幸福を象徴するモチーフとして蝙蝠が用いられたそうです。後方の金色の蝙蝠君もいかしているけど、手前のお花模様の蝙蝠チャンにもうぞっこん一目惚れ。

文化4年(1807年)生まれ、62歳の時に時代は江戸から明治へ。その後明治24年(1891年)85歳で亡くなる前まで、漆と向かい合ってきた職人・柴田是真。彼が創造した、斬新でポップなそしてキュートな意匠は現在でも「現役」の最先端。

流水蝙蝠角盆」に描かれた蝙蝠をTシャツに。

真ん中のTシャツと隣のトートに使用されているのは「松鶴に鵲文正月揃」の盆。

松鶴に鵲文正月揃」は茶室「如庵」(展示室3)に展示されてました。

節分(月次十二月図のうち)」のお軸も掛けられています。

しかし、驚くのは単にデザインセンスが現代的だということだけではありません。もっともっと恐ろしいまでの技巧が是真の作品には宿しているのです。

意匠を拝見するだけなら、裸眼でも問題ありませんが、本当の柴田是真を知りたいのであるなら、必ずこの展覧会は単眼鏡が必要です。

是真は得意の変塗を駆使して、とてもユニークな作品を数多く遺しています。それらは、紫檀(したん)の木目を漆塗で忠実に再現した紫檀塗による蒔絵額や、漆工の材料を使用して金工や陶磁、墨など異なる素材の工芸品を模造したものなど、洒落と遊び心あふれる、「だまし絵」ならぬ「だまし漆器」とでも呼ぶべき作品群です。


花瓶梅図漆絵」明治14年(1881) 板橋区立美術館

是真の最高傑作の誉れ高い一点。額縁から何から何までこれ全て漆塗りだそうです。「えっ?」と思われて当然。目の前に立っても言われなければ全く分かりません。

高級輸入木材の紫檀地に、梅の折枝が活けられた花瓶を、蒔絵と漆絵で表した額に見えますが、実はこの紫檀地は、和紙に漆塗を施し、紫檀特有の木目を1筋1筋手彫りで再現した漆絵なのです。さらに原木で作ったような周囲の額も、樹皮や節の様子を筆で忠実に描いた漆絵という懲りようです。

見た目いかにも「木」らしくするために、年輪を一筆一筆、漆で描き(言うのは簡単ですが、粘性の高い漆を用いてこんなにも細い線を幾重にも描くのはまさに至難の業)、花瓶の底部の釉薬の「溜まり」をこれまた漆でもっともらしく表現。さらに背景の木目も漆で塗って表したもの。決して「木」ではありません。
 
こうして出来上がった「なんちゃって紫檀」本来なら重厚な木材故ずっしりと重いはずですが、この額は作品全体が400g(発泡スチロール程度)しかないそうです。

是真の漆芸作品、ただ何も知らずに拝見していると見事だまされておしまい。気付いた時は後の祭り。後悔しない為にも「だまし漆器」要チェックです。

花瓶梅図漆絵」の他にも色々なトリックがあちこちに潜んでいます。例えばこの一件何の変哲もない「紫檀塗香合」


手前「紫檀塗香合」エドソンコレクション

これも紫檀ではなく漆塗り。典型的な「だまし漆器」です。
是真の芸の細かさは、単に紫檀風に漆を塗るだけでなく、たとえば干割れをわざと彫ってみたりしている点。

誰に頼まれたわけでもなし。自ら思いついたままに作ってみたのでしょう。当然その粋な計らいを受け入れる人々がその当時の日本には沢山いたのでしょう。

そういう「遊び心」は有る程度成熟した社会で余裕のある時にしか生まれないはず。今の時代、それを望んでしまうのはちょいと酷なのかもしれません。

もう1点だけ「だまし漆器」を。

砂張塗盆」エドソンコレクション

金属製のお盆に見えますが、これもまた漆塗り。金属らしい色と質感を漆で表わしたもの。材質は紙。。。お茶の席などでこのお盆にお菓子が出され、手に取ってみると、あら不思議。ふわりと軽い!

「こりゃ〜一本取られましたよ。ところでこのお盆どちらから?」「柴田の是真さんが作ったものですよ。あの漆ばかの。」「是真さんのこしらえたものなら合点がいくわ。」「ハハハ…」何て会話がお茶の席でされたか定かではありませんが、おお受けしたこと間違いなし。

いつものことながら、楽しげな時代です。羨ましいほどに。


特別展「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆 × 絵
まだ「漆」しか紹介できていません。更にこれまた機知に富んだ絵画(とりわけ漆絵は必見!)が展示されています。くどいようですが、単眼鏡を必ず持って尚且つ時間に余裕を持って展覧会に出かけましょう。

今日の一点」はこれ。


烏鷺蒔絵菓子器」東京国立博物館

烏カラス烏カラス烏カラス烏カラス烏カラス烏カラス


ゼシン・オソルベシ!

取り敢えず、漆芸品のみ。これらと同様に絵画作品もあります!!
「柴田是真展」絵画・漆絵編はこちら

「柴田是真展」は2月7日までです。混雑する前に是非。
それと図録もとてもよく出来ています。


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1963

JUGEMテーマ:アート・デザイン


柴田是真(1807〜1891)は、幕末から明治期に活躍した漆芸家であり画家です。
江戸両国に宮彫師(社寺の欄間や柱に彫刻を施す職人)の子として生まれた是真は、11歳で名工・古満寛哉に弟子入りして蒔絵技法を習得。その後、画家の鈴木南嶺や岡本豊彦に師事し四条派の画法を学びます。

天保11年(1840)王子稲荷に奉納した大絵馬「鬼女図」の迫真的な描写が江戸中の評判となり、まず絵画の分野で才能を開花させた是真でしたが、漆工においても、各種変塗の開発・復興を行ったり、江戸っ子好みの機知に富むデザインが人気を呼び、江戸随一の蒔絵師の地位を獲得します。
さらに漆工、絵画の双方に才を発揮した是真は、和紙に色漆を用いて絵を描く「漆絵」を発展させ、掛軸や画帖、屏風、額など多くの優れた作品を残しました。

明治維新後には、欧米で開催された万国博覧会に積極的に出品して高い評価を獲得し、政府の殖産興業政策にも貢献するなど、近代美術工芸の発展に大きく寄与。明治23年(1890)にはついに帝室技芸員にも任命されました。
近年人気を博している江戸時代の画家・伊藤若冲や河鍋暁斎がそうであったように、是真の洒脱なデザインと卓越した技巧は、現在では日本よりも欧米で高く評価され、多くの是真作品が海外に所蔵されています。

本展では、アメリカ・テキサス州サンアントニオ在住のキャサリン&トーマス・エドソン夫妻が収集した是真の漆工と絵画約70点が初めて里帰りし、日本に所蔵される博覧会受賞作等の優品約30点とあわせ、計約100点の作品を通して是真芸術の魅力を紹介します。
展覧会 | permalink | comments(14) | trackbacks(8)

この記事に対するコメント

漆、
これも日本の美のひとつですよね(^-^)
美しいですよね〜
詳細、楽しみにしてまーす♪
サッチャン | 2009/12/05 11:35 AM
@サッチャンさん
こんにちは。

結局、一回ではまとまりませんでした。
絵画や漆絵に関してはまた
別の記事で紹介したいと思います。
Tak管理人 | 2009/12/06 11:19 AM
こんにちは
楽しみにしてる展覧会です。
サントリーの清方展、埼玉の雪岱展と併せて回る予定です。清方の家と是真とは近い付き合いがあったそうで、清方の「こしかたの記」に是真の記述が色々あります。
清方を中にして、一本の線になるな、と一人でニコニコです。
遊行七恵 | 2009/12/06 5:51 PM
こんばんは。
見所満載でしたね。

だまし漆器というのがいたく気に入りました。
持ってみたら軽かった!ああ、実際に手にしてみたいです。
あおひー | 2009/12/06 10:45 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。

最高の組み合わせですね!
それ一日で観たらどんなに幸せなことか。

>清方を中にして、一本の線になるな、と一人でニコニコです。
こういう繋がりたまらないです。
サントリーもまだ記事にしていませんが
いつも以上に雰囲気出ていました。

@おあひーさん
こんばんは。

見所満載過ぎて
一本の記事に収まりませんでした。

そうそう、実際に手にしてみたいですよね。
これが東博だったらレプリカとか隣に置いてくれるのですが。。。
まぁあまり贅沢言えません。はい。
Tak管理人 | 2009/12/07 8:21 PM
こんばんは。お盆には本当に一本とられました。肉眼では全然分かりませんね。花瓶梅図漆絵は美の巨人で一応、予習しておいたので何とかついていけましたが、やはり漆とは分からないその精巧な技術には目を見張りました。

それにしても三井、大盛況のようでしたね。
展示ケースの前で人がべったりでした。
はろるど | 2010/01/24 12:10 AM
@はろるどさん
こんばんは。

だまし漆器は、半端なく凄い出来です。
意気込み?が違います。
粋な細工というより、サービス精神。
観る者使用する者をあっと言わせたいとの思いから。

私が伺った日も大盛況でした。
展示ケースにコツンとしている方多かったです。
Tak管理人 | 2010/01/27 5:38 PM
おはようございます。

大人気のようですね。
平日に観ましたが凄い混雑でびっくりしました。

>蝙蝠チャンにもうぞっこん一目惚れ。
かわいいですよねー。
私も見とれちゃいましたよ。

漆モノの職人は慣れるために漆を飲むと聞きますが、
是真もまた漆を飲んでその身に染みこませたのかもしれません。
shamon | 2010/01/30 7:10 AM
@shamonさん
こんにちは。

何せ、去年の展覧会ベスト10に
入れた展覧会ですから。
悪いはずありません。きっぱり。

「近代化」を推し進める中で
忘れ去られた作家にいま一度
価値を見出す作業これからも
専門家の方に期待したいです。
Tak管理人 | 2010/01/31 9:26 AM
会期末間近にすべりこみで出かけました。
メモを取りながら、熱心にご覧になってる方が多かったです。
「紫檀塗香合」には完全にダマされた!
あとでキャプション読んで「やられた〜」となりました。

単眼鏡、ことしは買おうと思います。
よめこ(nest_design) | 2010/02/04 1:10 PM
@よめこさん
こんばんは。

混雑していましたでしょう〜
前半と今では全然人の入りが違います。
騙し漆器分かっていても漆に見えないから
すごいです。オソロシイくらいに。

単眼鏡は必携品です。
Tak管理人 | 2010/02/05 5:14 PM
これを7日、雪岱を11日といずれもギリギリの鑑賞でした。お正月にはサントリーの清方も行ったので、おかげさまで3冠(?)達成です。しかし、江戸、明治、大正の連続ということを強く感じました。


ガーター亭亭主 | 2010/02/14 11:19 AM
みにいってから2週間以上経過しているのですがトラックバックお願いします。全く知らない人でしたが粋なデザインや漆絵という新ジャンルなど漆の技はもちろん幕末明治初期の職人としての生き方が痛快でした。もっともっと認知されてるべき人なのだと思います。そういえば泉屋博館の「春のよそおい」に一個ありましたね。
にぽぽ | 2010/02/14 10:11 PM
@ガーター亭亭主さん
こんばんは。

ギリギリでもご覧になったのと
ならなかったのでは大きな違いです。
三冠達成おめでとうございます!!
で、お次は何を狙います?

@にぽぽさん
こんばんは。

TBありがとうございます!
まさに仰る通り痛快でしたね。
江戸っ子の粋ここに極まれり!って
感じの展覧会でした。
「春のよそおい」行ってません。
泉屋博館も持っていらっしゃるのですね。
Tak管理人 | 2010/02/18 6:25 PM
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