弐代目・青い日記帳 

  
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「柴田是真の漆×絵」(絵画・漆絵)
三井記念美術館で開催中の特別展「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」。内覧会の様子と共にこちらの記事でこの展覧会に出品されている是真が手がけた漆芸品を主に紹介しました。

しかし、柴田是真を語るにはそれでは片手落ち。すぐれた「蒔絵師」の顔と共に、「絵師」としてもその技量いかんなく発揮し、誰も成し得なかった作品を描いた人物でもあるからです。


柴田是真(1807−1891)
柴田是真は江戸末期から明治初期に活躍した蒔絵師で、画家である。文明開化のうちに、西洋文明の積極的な導入が行われる世情のなか、是真は伝統的な蒔絵技法に基づきながら新時代にふさわしい意匠や造形を工夫し、独自の芸術を確立した。帝室技芸員。


「柴田是真の漆×絵」展の構成をおさらい。

展示室1・2・3  エドソンコレクションー漆工
展示室4     エドソンコレクションー絵画・漆絵
展示室5     エドソンコレクションー漆絵・漆工
展示室6     エドソンコレクションー漆工(印籠・根付)
展示室7     国内所蔵作品ー漆工・絵画・漆絵

青字で示した展示室に是真の手掛けた絵画作品が展示されています。

展示室4

注:画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

まずはアメリカテキサス州在住の是真コレクターであるエドソン夫妻のコレクションの中から一般的な日本画が紹介されています。どれもどこか駄洒落がきいていて、観ていても肩の凝らない作品ばかり。

昨年Bunkamuraで開催された「だまし絵展」にも是真の作品何点か出ていた通り、観るものを煙に巻くようなトリッキーでユーモアあふれる作品が待ち構えています。


右:「瀑布に鷹図」 左:「瀑布図」エドソンコレクション

テキサス州サンアントニオ在住のエドソン夫妻が是真の魅力に惹かれた理由として、豪快に水しぶきをあげ落ちる瀑布を是真が数多く手掛けたこともあげられるのではないでしょうか。

しかも是真は滝をフツーに描くことありません。小さな雀を対照的に配置し繊細さを際立たせてみたり、周りの風景は一切描かずただ瀑布のみを画面いっぱいにダイナミックに描いたりと、何らかの仕掛けを含ませ粋に仕上げています。

憎らしいほどの粋な計らいがそれぞれの作品に埋め込まれています。


↑の「瀑布に鷹図」部分。

親鷹の顔がもう一幅の滝に映っています。自分が映っていると分からず睨みあいをしているのでしょうか、それとも「俺っていい顔してるな〜」と惚れ惚れしているのでしょうか。そして足元にいる子供の鷹の目からは、さてどう見えているのでしょう。

粋な江戸っ子の心意気がそのまま絵となっているような、是真の日本画。観ていて飽きることありません。が、是真を是真たらしめる由縁は他にあります。それこそが「漆絵

「漆絵」とは、柴田是真が創案した特殊な手法。透漆(すきうるし)に顔料を混ぜた彩漆(いろうるし)をもって描く。彩漆をもって紙や絹の上に描くことは、油絵のように濃く厚い色彩感や光沢に乏しい日本画のかわりに、伝統の材料で油絵の色彩感を表現しようとした意図によるものとされる。(参考:山種美術館所蔵名品展図録)

展示室4

日本画とは異なり、その色調は濃厚でつやがあるのが特徴。ただし色漆の色数に限りがあります。しかし是真の描き出す漆絵は、そのような制約を全く感じさせません。

「漆絵」と言われなければ気が付かないかもしれません。因みに是真の頃、使える色は、黒・朱・黄・緑・茶のたった5色だけだったそうです。


漆絵画帖「墨林筆哥」 山種美術館蔵

漆で絵を描くことは想像以上に困難を要するそうです。それは漆の特性である、ねばねば。絵具としてはどう考えても不向きです。しかも色に制約があります。しかしそこは漆の特性を知り尽くした男、是真ならではの技法によりクリア。↑のような画帖に漆でもって様々なモチーフを描いていきました。

是真の漆絵について面白いエピソードがあります。

是真ならではの新たな技法「漆絵」ですが、悪く言う人もいたようで、ある時「画帖には描けても絹本には描けないだろう、ましてや掛軸なんぞは無理だろう」と。確かに掛軸はくるくる丸めてしまっておくもの。丸めた際に漆が表面から剝落してしまう危惧があります。絹本であれば尚更。漆が上手く乗りません。

最後の江戸っ子のひとり是真はこの売られた喧嘩を買って出ます。「漆絵で絹本の掛軸描いてみせる!」と。
そして試行錯誤の後本当にやってのけてしまうのです。

こちらの作品などその極み。

霊芝に蝙蝠図漆絵」エドソンコレクション

是真にしか描くことのできない作品がこの展覧会にはぞろぞろあるのです。フツーの掛軸とはわけが違います。絵具として用いることのなかった漆で敢えて描いた作品。「なんか茶色っぽい地味な絵ね〜」なんてこと間違っても言わないで下さいね。

最後の展示室7に国内に残る是真の優品が集められています。この一部屋だけでもため息の連続です。


右:「花瓶梅図漆絵」板橋区立美術館蔵
左:「富士田子浦蒔絵額」福富太郎コレクション資料室蔵

柴田是真の最高傑作の呼び声高い「花瓶梅図漆絵」額縁から何から何まで全て漆塗り。是真の持つ全ての漆テクニックの集約。漆芸・漆絵をないまぜにした例の「だまし漆器」の一種。

頂いたプレスリリースの解説読むだけでもその凄さ分かります。
「花瓶梅図漆絵」に仕掛けられた視覚トリック
どこからみても、高級輸入木材の紫檀地に、梅の折枝が活けられた花瓶を、蒔絵と漆絵で表した額に見えますが、実はこの紫檀地は、和紙に漆塗を施し、紫檀特有の木目を1筋1筋手彫りで再現した漆絵なのです。さらに原木で作ったような周囲の額も、樹皮や節の様子を筆で忠実に描いた漆絵という懲りようです。  
紫檀は硬質で重厚な木材ですが、この額は作品全体が400gしかなく、発泡スチロール製のボードのような驚きの軽さです。
「だまし漆器」や是真の漆芸作品についてはこちらの記事で。これまた驚きの連続です。


特別展「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」は2月7日までです。
是真是非。


三井記念美術館
〒103-0022 中央区日本橋室町2 三井本館7F (日本橋三井タワー1Fから連絡)
東京メトロ銀座線「三越前」駅A7出口より徒歩1分、
東京メトロ半蔵門線「三越前」A7出口徒歩3分、
東京メトロ銀座線・東西線「日本橋」駅B11出口より徒歩4分
メトロリンク「三井記念美術館前」徒歩0分

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おまけ
東京国立博物館でも時折、柴田是真の作品常設展に出てます。


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1967

JUGEMテーマ:アート・デザイン


柴田是真(1807〜1891)は、幕末から明治期に活躍した漆芸家であり画家です。
江戸両国に宮彫師(社寺の欄間や柱に彫刻を施す職人)の子として生まれた是真は、11歳で名工・古満寛哉に弟子入りして蒔絵技法を習得。その後、画家の鈴木南嶺や岡本豊彦に師事し四条派の画法を学びます。

天保11年(1840)王子稲荷に奉納した大絵馬「鬼女図」の迫真的な描写が江戸中の評判となり、まず絵画の分野で才能を開花させた是真でしたが、漆工においても、各種変塗の開発・復興を行ったり、江戸っ子好みの機知に富むデザインが人気を呼び、江戸随一の蒔絵師の地位を獲得します。
さらに漆工、絵画の双方に才を発揮した是真は、和紙に色漆を用いて絵を描く「漆絵」を発展させ、掛軸や画帖、屏風、額など多くの優れた作品を残しました。

明治維新後には、欧米で開催された万国博覧会に積極的に出品して高い評価を獲得し、政府の殖産興業政策にも貢献するなど、近代美術工芸の発展に大きく寄与。明治23年(1890)にはついに帝室技芸員にも任命されました。
近年人気を博している江戸時代の画家・伊藤若冲や河鍋暁斎がそうであったように、是真の洒脱なデザインと卓越した技巧は、現在では日本よりも欧米で高く評価され、多くの是真作品が海外に所蔵されています。

本展では、アメリカ・テキサス州サンアントニオ在住のキャサリン&トーマス・エドソン夫妻が収集した是真の漆工と絵画約70点が初めて里帰りし、日本に所蔵される博覧会受賞作等の優品約30点とあわせ、計約100点の作品を通して是真芸術の魅力を紹介します。
| 展覧会 | 22:37 | comments(7) | trackbacks(9) |

 はじめまして。

 いつも楽しく拝見しております。

 最近ブログを始めました。

 Takさんのように、とは言いませんが、
 たくさんの方に読んでいただける
 ブログにしたいなあ、と思ってます。

 是真さん、私も好きです。

 二種類持っておりますが、
 使うと優雅な気分になりますね。

 明日はそれらの画像をupする予定です。

 今後ともよろしくお願いいたします。


 
| 家麿 | 2010/01/10 12:01 AM |

こんばんは。親鷹とカエルくんの写真があって嬉しいです(笑)
本当にため息の出る展覧会でした。TV放映前に行けてよかったかも。

>東京国立博物館でも時折、柴田是真の作品常設展に出てます。
そうなんですか!これから意識して見てみようと思います。
| noel | 2010/01/10 1:06 AM |

@家麿さん
こんにちは。はじめまして。
メッセありがとうございます。

ブログ拝見しました。
ユニークな切り口ですね。

ブログは毎日の生活のリズムを
整える為に今ではなくてはない
ツールとなっています。
尤も最近はTwitterにかなり
ハマっていますが。。。

今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

@noelさん
こんにちは。

かみさんが、まだこの展覧会観ていなかったので
これから一緒にまた観に行ってきます!

東博から出ている是真もよかったですよね〜
いいもの持ってますよね。相変わらず。
| Tak管理人 | 2010/01/10 11:39 AM |


 Tak様にブログを見ていただけるなんて、光栄です。

 トラックバックもさせていただけたらなあ、と思ってます。

 (まだやり方がわからないのですが…)

 よろしくお願いいたします。

| 家麿 | 2010/01/11 2:11 AM |

@家麿さん
こんばんは。

初めはわからないことだらけですよね。
試行錯誤の連続です。

私なんて今でも迷いの最中にいます。
| Tak管理人 | 2010/01/13 5:44 PM |

こんばんは 
送ったつもりで送れていなかったトラックバックをお願いしました。・・・最近こんなんばっか・・・。これでようやく2009年の宿題終わりです。

是真と三井さんは本当にすてきですね。読み返したら辛口になりがちな拙ブログが最初から最後まで絶賛しています 笑。
| 花散里 | 2010/01/25 11:44 PM |

@花散里さん
こんばんは。

トラックバックありがとうございます。
何年の前の記事でも送ってもらえると嬉しいです。

あれは非の打ちどころがありません。
作品の持つ力が圧倒的でした。
| Tak管理人 | 2010/01/27 5:52 PM |










http://bluediary2.jugem.jp/trackback/1967
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Vixen 多機能単眼鏡 マルチモノキュラー4X12 1105 (JUGEMレビュー »)

掌に収まる単眼鏡は、必要なときにサッとポケットなどから取り出して使える便利な、美術館・博物館必須アイテム。
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日本美術のことば案内
日本美術のことば案内 (JUGEMレビュー »)
日高 薫
レビュー→こちら
日本美術鑑賞の際に、よく出てくる言葉を満載。絵画、彫刻、工芸品などの具体的な写真をふんだんに使い紹介
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