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「清方/Kiyokata ノスタルジア」

サントリー美術館で開催中の
「清方/Kiyokata ノスタルジア―名品でたどる 鏑木清方の美の世界―」展に行って来ました。



とても楽しみにしていた展覧会。早々に観に出かけ、先日もまた再び。それなのに感想がいつまでも書けません。理由は分かっています。

人魚を観てしまったからです。

清方が大正9年(1920)に描き、第2回帝展出展作品でもある「妖魚」。


鏑木清方「妖魚

手に小魚を掴んだ妖艶な人魚が岩の上で身を休めています。これが屏風絵だということにまず衝撃を受けます。今回の展覧会会場内でもひと際異彩を放っています。

当然、発表した当時も評判は散々、本人ですら失敗作と言っていたそうです。キャプションには清方が好きだった泉鏡花の文学作品からこの人魚という人魚という当時としては奇抜なモチーフを選んだとありました。さて真相やいかに。それだけではなさそうな妖気漂う蠱惑的的な作品です。

一度目は完全にこの「妖魚」一枚にやられてしまい、折角の美人画もすっかり雲散霧消。帰りの電車の中でもこの人魚が頭の中から離れず。

二度目は「妖魚」を観ないように、前をスルー。
したと思った瞬間、身体が勝手に振り向いてしまい、人魚と眼が合ったが刹那、掌中の小魚の如く身動き取れない状態に。



屏風絵ですから実際はもっともっとこの冷淡な目(好きなんだこういう目)が際立ちます。正面から拝見した後は向かって左手から↑の写真のような角度で是非。

但し、夢に出ます。

妖魚」は12月14日(火)までの展示作品です。自分も小魚になりたいという方急いで!逆に清方の心惑わされることなく清方の美人画だけを堪能したい方は、後期展示(12月16日〜)へ。

展覧会とは関係ないですが、人魚繋がりでジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(John William Waterhouse, 1849年4月6日 - 1917年2月10日)のこちらを。

※クリックで拡大
ウォーターハウス「人魚」1900年

ついでに、妖艶な「横目」繋がりで、フランツ・フォン・シュトゥック(Franz von Stuck、1863年2月23日 - 1928年8月30日)のこの作品も。

※クリックで拡大
フランツ・フォン・シュトゥック「罪」1893年

さて、展覧会の内容はタイトル「清方/Kiyokata ノスタルジア」が示す通り、明治、大正、昭和と激動の時代を生きた清方が最も愛した江戸時代からヒントを得て描いた作品(美人画、風俗画)をメインに、サントリー美術館他が所蔵する江戸時代の浮世絵や生活小物も交え展示するもの。

展覧会の構成は以下の通り。

第一章 近代日本画家としての足跡
第二章 近世から近代へ−人物画の継承者としての清方
第三章 「市民の風懐に遊ぶ」−清方が生み出す回顧的風俗画
第四章 清方が親しんだ日本美術
第五章 清方の仕事−スケッチ、デザイン


上品な日本美術の展示をさせたら右に出る者はいないサントリー美術館での待ちに待った清方展。人魚の誘惑に完敗してしまいましたが、心を鍛え直し(無理だと思うけど)再び伺うことにします!

注目すべき点は清方の描く「線」にあると山下裕二先生は仰っています。

“筆ネイティヴ”(山下先生の造語)
生まれながらに日本語を喋るネイティブ・スピーカーのごとく、物心つくかつかないうちから筆を握り、筆と墨、紙や絹という素材を自在に扱える人。自分の思うままに筆を操り、ほれぼれするような線をひく。

シュトゥックやウォーターハウスが油彩で表わした妖女とはまた違った 妖美でなまめかしい趣が。それは「妖魚」だけではなく、美人画にも伺い知ることが出来ます。

クリスマスとお正月をまたいでこんな艶っぽい展覧会開催しちゃうなんて、サントリーさんたら。まったくもぅ!!

最後に「今日の一枚


鏑木清方「朝夕安居」(前後期で場面替えあり)

描かれているのは明治期の東京下町に住む人々の暮らしのひとコマ。この作品を清方が描いたのは昭和23年(1948)のことだそうです。太平洋戦争で灰燼に帰してしまった東京の町。時間を遡り平和で江戸情緒の残る時代の人々の暮らしを描いた清方お得意の回顧的風俗画。

キーワードは「卓上芸術」

後期を観に行く前に、清方の書いた随筆集を読んでみることにします。

『随筆集 明治の東京』(岩波文庫)
代表作「築地明石町」などにみられるように、鏑木清方(1878‐1972)の画は、明治の東京の庶民生活を描いて他に類がないといわれるが、彼のエッセイもまた、江戸や明治への郷愁を誘う美しい小品として忘れられない。「銀座回想」「明治の東京語」など38篇を精選。


「清方/Kiyokata ノスタルジア」展は2010年1月11日までです。


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1969

JUGEMテーマ:アート・デザイン


近代日本画に大いなる足跡を残した巨匠、鏑木清方(1878〜1972)。彼の目は、明治から昭和という激動の時代にあって、なお人々の暮らしに残る、あるいは消えつつあるものを捉え、特に人物画において独自の画境を開いてきました。また、清方は伝統的な日本美術から多くのことを学んでおり、自身の画風にも色濃く反映されています。
本展は、近代に残る江戸情緒、そして自身が学んだ古きよき日本美術という、清方にとっての2つのノスタルジアに焦点をあて、清方芸術の魅力を探ろうとするものです。清方の代表的な名作はもちろん、初公開となる清方作品、清方旧蔵の肉筆浮世絵など、これまでの清方展では紹介されることのなかった作品も出品されます。本展を通じて、近代の日本画家という枠組みを越え、近世以前からの連続的な歴史の中で浮かび上がる、鏑木清方の美の世界をお楽しみください。


展覧会 | permalink | comments(16) | trackbacks(7)

この記事に対するコメント

この人魚の顔・・・妖艶!!!
Takさんが視線に絡め取られてしまったのも納得です。
失敗作・・・というのは時代背景の問題でしょうか。
それともあまりに リアルな魔物だから??・
OZ | 2009/12/10 6:36 AM
この展覧会は行く時間ないな…と思ってたけど、
「妖魚」、見たくなってしまいました。
ハプスブルク展のクラナッハといい、Takさんこういう目がお好きなんですね。
よめこ | 2009/12/10 6:38 AM
>自分も小魚になりたい方
大ウケしました〜(笑)私もウオーターハウスを思い出してました。ほんとあの一画だけ空気が違いますよね。
ハプスブルグのクラナッハと似たような妖気というか...
他が「清くあれ」だから余計にめだつんですよね(笑)
noel | 2009/12/10 7:36 AM
 清方を「妖魚」から語るとは...
Takさん まさに掌中の「にじいろのさかな」ですね。
 泉鏡花の世界を描く清方は、 
江戸の残り香と市井の健気さを伝える絵師。
panda | 2009/12/10 12:37 PM
確かに「妖魚」は際だっていましたよね。
私達も釘付けになりました。
せいな | 2009/12/10 9:49 PM
こんばんは。
今回の目当ては妖魚だったので満足です。

あの表情は清方ではあり得ない感じだと思いました。
あおひー | 2009/12/10 11:21 PM
@OZさん
こんにちは。

清方の一連の作品から見ると
この絵がいかに「変」か分かります。
失敗作と言いながらも本当は
一番気にいっていたのかもしれません。
だってこんなに艶めかしいのですから。

@よめこさん
こんにちは。

行かねばなりません!
サントリー美術館で開催する展覧会は
「ピカソ展」以外全て観に行くだけの価値ありです。

>Takさんこういう目がお好きなんですね。
ばれました。。(汗

@noelさん
こんにちは。

ここだけ異様な空間でしたよね。
正面から右から左からと
夜のサントリー美術館な内を
怪しげな行動とりながら拝見しました。
何かに憑依されたかのように。

@pandaさん
こんにちは。

この展覧会紹介するにあたり
これしかない!と思ったので。
明日で展示替えとなってしまいます。
土偶展の後に寄り道しないといけません。

@せいなさん
こんにちは。

後期、この妖しげな絵が無くなってから
他の美人画を楽しもうかと。
見方変わってしまいますよね。

@あおひーさん
こんにちは。

今、横浜美術館の常設に
一点清方出ているのですが
これもまたちょっと怪しげです。
ご覧になりました?
Tak管理人 | 2009/12/13 10:53 AM
こんばんは。

ギリギリ間に合って、良かったでした。
妖魚、ずっと見たかったのでした。

虹鱒だったのかしら。
私は鯉だとばっかり。
でも、魚の色も赤を含んでいたような。
頭のところで屏風が折れる仕組みも
かなり確信的な気配。
高野聖を思い出したのでした。

いい時代を感じました。
抱一や一蝶、国吉や芳年、春信・・
好きな絵師の残り香が満載充満。
やられてしまいました〜
また展示換えしたら行きます。
かなり、キマシタ。
あべまつ | 2009/12/14 11:22 PM
こんばんわ。
清方展は 日本画家の中で今 一番好きといえる画家の個展のため とても 楽しみにしていました。
実際 行ってみると takさんの感想と違って 正直 良品が多いなという印象でした。東京大丸で 観た清方作品は 釘付けになるもので そこで清方ファンになりました。 
唯 今回の清方展を通して 日本の伝統色が多く使われているこで 日本の色は 西洋にはない 味わい 趣 魅力があると発見でき その日本伝統色が 今の社会で さまざまなところで 使われていないことは もったいないことだと思いました。
takさん 今日の一枚で 妖魚を選ばれたと知って 意外でしたが もしかして なぞめいた人がお好きかな??
hidamari | 2009/12/17 1:01 AM
@あべまつさん
こんばんは。

展示替えとなる最終日に同じく
再訪しましたサントリー美術館。

そうそう、屏風が丁度折れているんですよね。
だからぱっと見だと魚を手にしているの
判別しにくく描かれています。
当然、確信犯でしょう〜

三井の是真、
サントリーの清方、
そして埼玉の雪岱。

この3人の展覧会が
同時に開催されている奇蹟。
ひとつたりとも見逃せませんよね!

@hidamariさん
こんばんは。

>takさんの感想と違って 正直 良品が多いなという印象でした。

どこをどうお読みになればそのように読めるのでしょうか。
自分は清方の作品についてマイナスなことどこにも
書いたつもりはありません。
大変心外です。
Tak管理人 | 2009/12/17 4:59 PM
こんばんわ。
takさんが 清方作品について マイナスなことなど どこにも書かれたと少しも思っておりません。
私の言葉足らずの文章で 不快な思いをされたとしたら ごめんなさい。
カイコミのみで 真意を伝えることは難しく 誤解を招くことがありますね。会話なら すぐ誤解がとけますが 書き込みはそうはいきません。あまり 書くとまた誤解されそうなので この辺でやめときます。
hidamari | 2009/12/18 2:18 AM
@hidamariさん
こんばんは。

ご心配には及びません。
しかし会話をすれば真意が伝わると思われるのは大間違いです。そこに根本的なズレがあるのだと推察されます。

石原千秋先生の文章です。
言語論的転回は「世界は言語である」というテーゼによって示される。言語論的転回においては、言葉の先にただモノとして存在しうるような世界は想定されていない。それどころか、僕たちはモノそのものに触れることさえできないと考える。言葉がすべてだからだ。妙な言い方をするなら、僕たちが生きている世界はすべて言葉で「汚染されている」。つまり、言葉で意味づけられてしまっている。言葉が意味するようにしか、世界は存在しない。だから、言葉の外に世界はない。僕たちはまるで言葉の世界に閉じ込められているようなものだ。
Tak管理人 | 2009/12/21 7:07 PM
こんばんは。先日は妖魚をありがとうございました。(?)あの一点、文句なしの作品でしたね。しかし当時は失敗作と評価されていたとは…。本当に美術の世評など当てにならな…(自粛)

抱一関連の絵もあるそうなので、後期も何とかして行きたいです!
はろるど | 2009/12/21 10:07 PM
@はろるどさん
こんばんは。

先日はどうも。
土偶の後に人魚。
良く考えればすごいコースでしたね。

イルミネーション綺麗なうちに
もう一度!!
Tak管理人 | 2009/12/22 12:02 AM
ご返信ありがとうございます。
やめましょう。これ以上 書き込みはしないと思います。
hidamari | 2009/12/23 12:07 AM
@hidamariさん
こんばんは。

「やめましょう。」って…

>takさんの感想と違って 正直 良品が多いなという印象でした。

↑この説明をきちんとして下さい。

Tak管理人 | 2009/12/24 4:58 PM
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