青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< November 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< ホキ美術館オープン | main | 「村山槐多展」 >>

「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」

東京都庭園美術館で開催中の
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ〜光を描いた近代画家たち」展に行って来ました。



「マッキアイオーリ」(macchiaioli)この耳慣れない言葉を初めて知ったのは昨年の6月。イタリア大使館で行われた「日本におけるイタリア2009・秋」主軸イベントの発表会の席。

「マッキアイオーリ」(macchiaioli)は画家の名前ではありません。

19世紀のイタリアで若い画家たちが、新しい芸術表現を模索した末に得た描写方法。名前の由来は、大胆な斑点=「マッキア」(macchia)。マッキアという呼称は「元は、イタリア語で<染み>や<汚れ>を意味する「macchia」を語源」(via@Nikki)としていることからも分かるように、彼ら新しい画家たちを蔑む意味を込めて呼んだのが始まり。

1856年頃、フィレンツェに集まった若い画家たちは、アカデミズムからの脱却と新しい芸術の創生を目指しました。大胆な斑点(マッキア)を用いた描法から、「マッキアイオーリ」と呼ばれるようになった彼らは、フランス印象派に先駆け、自然における光の描写を追及し、日常生活やイタリア統一運動など同時代の歴史的事件、そして雄大な祖国の自然をいきいきと描いていきました。
「macchiaioli」=「染み野郎」そんな感覚の言葉。
しかし彼らこそイタリアにおける反アカデミズム的絵画運動の先鋒。

フランスの「印象派」も発生当初は散々な悪評にさらされたもの。曰くモップで描いた絵のようだ等など。そもそも「印象派」という呼称も線や輪郭がはっきり描かれていないことに対する揶揄、皮肉を込めた言葉だったのと同じです。


注:館内の写真は内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

昨年ふくやま美術館で開催された「マッキアイオーリ展」がいよいよ東京に巡回して来ました。会場は庭園美術館!作品が1.5割増しで良く見えると評判の高い美術館。今回もまたご多分に洩れず「染み野郎」たちの作品が大変華やかに。

展覧会観終えた後、会場に居合わせた、とに〜さんと展示されている作家一人も名前しらないけれど、何だかしらないけど感動しましたねーと。展示されている作品も所謂「印象派」風の作品ですので宗教画と違い、日本人にとってとても受けがいいのも確か。

たまたま同じ日に上野、東京都美術館でスタートした「ボルゲーゼ美術館展」では、15世紀から17世紀まで約250年に渡るイタリア絵画の中核を成す作品(こてこての宗教画)が展示されているのとは対照的です。

上野で濃厚なルネサンス〜バロック絵画を観賞後、白金台でお口直しのデザートを楽しむかのようにマッキアイオーリ派を楽しんでみるなんて如何でしょう?上野駅から山手線で目黒駅に着くまでの間イタリア絵画の歴史300年が経過。

さて、さてくだらぬご託を並べるのはこの辺までにして、お待ちかね。マッキアイオーリ(染み野郎)in庭園美術館(朝香宮邸)の会場内の様子をご紹介しましょう。


大客室(内装:アンリ・ラパン)

付きあたりに見えるが、クリスティアーノ・バンティ「宗教裁判の前のガリレオ」1857年 マッキアイオーリ派は当初こうした歴史画を主題にする者も存在していたそうです。

マッキアイオーリ派の若き画家たちはフィレンツェのカフェ・ミケランジェロに集い熱い議論を交わしながら自らが信じる新しい絵画表現の道を突き進んでいったのでしょう。それは国自体が近代化に遅れをとり右往左往しているのをまるで尻目に見るかのように。。。

いよいよマッキア(斑点)の本領発揮です。


ヴィンチェンツォ・ビアンカ「糸つむぐ人」1862年

戸外に一歩出ればそこはイタリア。陽光が強く照りつけます。同じような場面を描いたフランドル絵画と比べてみても明るさの違いは歴然。描かれた人たちは決して裕福そうではありませんが、明るいトスカーナ地方の日差しがそれをつゆ感じさせないほどの幸福感で包み込んでくれています。

「糸つむぐ人」はこちらの部屋にあります。

大食堂(内装:アンリ・ラパン)

庭園美術館は階段をのぼるのも楽しみのひとつ。

階段の踊り場の壁やのぼり終えた正面の壁にも作品があつらえたように展示されています。

クリックで拡大します。

左は、エジスト・フェローニ「魚釣り」1882-84年
そして右側の作品がこちら。


シルヴェストロ・レーガ「母親」1884年

母親のスカートの裾を踏んでいることに気が付かずお絵かき?に熱中する子供。そしてそれを見守る母。何故だかミケランジェロの「ピエタ」を想起してしまうのはやはりイタリア絵画という思い込みがあるから。それとも普遍的なアイコンからか。

いずれにせよ、階段をのぼり終えた正面(2階ホール)にこのほのぼのとする作品を配置したのは素晴らしい。サン・マルコ美術館の2階へあがる階段をのぼった先にフラ・アンジェリコ「受胎告知」があります。それに匹敵するナイスな配置。

以下、2階展示室。作品と共に注目すべきは各部屋で違う照明器具。これにより作品の「見え方」も変わってきます。いい意味でばらつきが生じるのです。


昨今新しい美術館ではLEDなどが照明の主流となりつつありますが、ここ庭園美術館は「邸宅の照明」でそのまま作品を拝見できるある意味稀有な場所でもあります。


マッキアイオーリとアールデコ様式の庭園美術館の見事なまでのシンクロ。最近ここでまともな絵画作品の展示拝見していなかったけど、いいですね〜やっぱり。しかも知らない画家さんの作品でもどこか懐かしくそして見覚えのある、親近感の湧く作品ばかりなのも嬉しい。

たとえマッキアオーリの語源知らずとも、彼らがどんな絵画革新運動展開していたのか深く理解せずとも、太陽の光とそれが作り出す影に魅了され戸外へ飛び出して行った彼らの作品に心動かされずにはいられません。


妃殿下居間〜ベランダ(内装:内匠寮)

アンジェロ・トンマージ「揺りかご」1882年
陽光差し込むベランダ部分にも、アドリアーノ・チェチョーニ「主人と散歩」1941年頃というブロンズの彫刻が展示されています。(トンマージやアドリアーノと聞くとまず先にサッカーを思い出してしまうけど。。。)


北の間(内装:内匠寮)

こちらが最後の展示室。フランチェスコ・ジョーリ「水運びの娘」1891年
大胆な構図。眼前の畑はそこれこそマッキ(斑点)で描かれていますが、中央には威厳すら漂う後ろ姿の女性像が。身体のラインや服の下の筋肉部まで流石ミケランジェロの末裔。巧みな表現で観る者を圧倒します。

また指先のしなやかさや風にたなびく腰巻など、やわらかな表現も混在しているのがより一層この作品の魅力を際立たせているようです。

最後に「今日の一枚


シルヴェストロ・レーガ「農民の娘」1892-93年

フランス印象派の先駆けともなったマッキアイオーリですが、確実に違う点はこうした小品に独特の憂いが潜んでいること。それは伝統という陳腐な言葉で片づけてしまっていいのか迷うところですが、アルプス山脈を挟んだ二つの国の絵画史に於ける大きな差であるように思えます。

「農民の娘」に聖母マリアを重ね合わせて観てしまうことは至極フツーのこと。

ちょっとわくわくゾクゾクする展覧会でしょ。単なる印象派の展覧会ではありません。早くも今年前半戦の見逃せない展覧会に巡り合ってしまいました。


「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」は3月14日までです。

実は本国イタリアでもマッキアイオーリに対する評価がうなぎ上りに高まり、各地で展覧会が開催されているそうです。そんな中「イタリア年」というチャンスに恵まれ実現した今回の展覧会。見逃す手はありません。
マッキアイオーリ派は、1800年代のイタリアにおける重要な絵画運動であり、19世紀のヨーロッパでもっとも独創的なアヴァンギャルドの一つとされます。イタリアルネッサンス、いわばイタリアが近代国家として生まれた時代を語る雄弁な詩的表現ともいえるマッキアイオーリ派については、ごく最近の研究成果により、そのイデオロギー的、文化的背景がようやく明らかにされました。
因みに日本でかつて一度だけ(1979年 新宿・伊勢丹美術館「イタリアの印象派(マッキアイオリ)展:近代絵画のあけぼの」)開催されてから30年ぶりとなる日本での公開だそうです。

【関連エントリー】
- 「Stitch by Stitch ステッチ・バイ・ステッチ」
- 庭園美術館「上下」 | 弐代目・青い日記帳
- 「宇治山哲平展」 | 弐代目・青い日記帳
- 「ポワレとフォルチュニィ」展 | 弐代目・青い日記帳
- 「舟越桂 夏の邸宅」 | 弐代目・青い日記帳
- 「華麗なるマイセン磁器展」 | 弐代目・青い日記帳
- 「ティファニー展」 | 弐代目・青い日記帳
- ミュージアムショップ「Portier」 | 弐代目・青い日記帳
- Christmas in 「アール・デコの館」 | 弐代目・青い日記帳
- 「旧朝香宮邸のアール・デコ展」(夜間開館) | 弐代目・青い日記帳

それでは最後に「今日の美味」


ル・パティシエ・タカギ(Le Patisier Takagi)」の「カラフル ビスコッティ


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2011

JUGEMテーマ:アート・デザイン


 19世紀イタリア。リソルジメント(国家統一運動)の熱い機運に呼応して、自由と独立の理想を掲げた反アカデミスムの芸術運動が各地で起こっていました。そのなかのひとつ、1850年から60年頃にかけてトスカーナ地方で興ったのが、マッキアイオーリ(マッキア派の画家たち)です。
 当時フランスでは印象派の画家たちが自然主義的な新しい表現手法を模索していましたが、自然界の光や色彩、明暗が織りなす関係(=マッキア)を追求した彼らの試みはまさに「イタリアの印象派」そのものでした。
 本展では、日本初公開の作品を含む60点あまりの絵画と彫刻作品により、風景や日常生活、戦場の兵士たちの姿などを、詩情豊かな画風で描いたマッキアイオーリの活躍をご紹介します。


展覧会 | permalink | comments(7) | trackbacks(11)

この記事に対するコメント

こんばんは。
一度一回りして、気に入った絵をもう一度見に行くついでに、今度は建物や内装に注意しながら見て行く、という見方もありですね。
誰ひとりとして聞いたことのある作家はいませんでしたが、だからこそ、名前に惑わされずに自分の感性だけで絵を楽しめる展覧会でした。
>見逃す手はありません。
見逃さなくてよかった。
キリル | 2010/01/24 1:06 AM
この間はありがとうございました!お会いできてうれしかったです。またぜひお会いしたいです。
私の美術館巡りは、ここ1〜2年の趣味でなんだか浅い見方しかできず、Takさんの素晴らしいブログを拝見して、自分の記事を反省してます(笑)
これからもブログ楽しみにしています!
ノア | 2010/01/24 10:35 PM
@キリルさん
こんばんは。

そうそう、名前で観たりしない分
今回は素直に絵と対峙できました。
こうい展覧会大いにこれからも期待します。

まだ空いているうちに行かれて正解でしたね。
これ後半大変でしょうね。。。

@ノアさん
こんばんは。

先日はどうも。
また何か機会がありましたらお誘いしますね。

自分の感じるままにまずご覧になるのが一番かと。
次第に知りたいという欲が出てきます。
そうしたらもうこの道から抜け出せません?!

Twitterでも宜しくお願いします!
Tak管理人 | 2010/01/27 5:43 PM
こんばんは。この展示は予想以上に「当り」でした。庭園美でも久々の絵画展ということで盛況になるのではないでしょうか。

しかし「しみ野郎」たち、なかなかハッとさせられる美しい絵画を描きますね。
レーガの農民の娘、良い表情でした。

照明とのお写真もお見事です!
はろるど | 2010/01/27 9:23 PM
@はろるどさん
こんにちは。

話題となり多くの方に観てもらいたいですね。
印象派という言葉に引っ張られずに。

レーガの作品はルネサンス以前からの
イタリア絵画の系譜。惚れ惚れします。

写真はちょいと工夫してみました。
折角の庭園美術館なので。
Tak管理人 | 2010/01/31 9:04 AM
展覧会場の雰囲気が写真から漂ってステキです。
特に、照明器具と絵画とマッチしていて素敵な報告いつもありがとうございます。
事前勉強して、しっかりみてきました。
作者に興味を持たずに純粋に絵に対峙することになりましたが、中々楽しかったです。
KAZUPON | 2010/03/13 4:06 PM
@KAZUPONさん
こんにちは。

ここの美術館は絵を何倍も
美しく見せてくれますよね〜
部屋ごとに照明や床、ヒーターカバーも
違ったりして見どころ沢山!

25日からは写真撮影okの
展覧会がスタートします。
Tak管理人 | 2010/03/17 5:48 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://bluediary2.jugem.jp/trackback/2011
この記事に対するトラックバック
イタリアの印象派 マッキアイオーリ@東京都庭園美術館(〜3/14) http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/macchia/index.html 1/16より庭園美術館で始まった「マッキアイオーリ展」を見てきました。(入り口の様子) 伺うまで、て
イタリアの印象派 マッキアイオーリ | Art and The City | 2010/01/21 12:20 PM
ボルゲーゼ美術館展が初日だったから見てきたんですが、この企画展が終了したら、東京都美術館を閉鎖して2年かけて改装するそうです。音声ガイドの最期にそんなナレーションがはいっていました。 http://www.borghese2010.jp/ 京都国立近代美術館で行われていたボルゲ
&nbsp;東京都庭園美術館で開催中の「イタリアの印象派 マッキアイオーリ 光を描いた近代画家たち」をみに行った。「マッキアイオーリ」とは、技法上の特徴であるマッキア(斑点)からきた造語で<マッキア派の画家たち>を意味し、揶揄するニュアンスで使われ始め
マッキアイオーリ展 | アトリエ・リュス | 2010/01/24 1:07 AM
東京都庭園美術館で開催中の「マッキアイオーリ展」に行って来ました。総じてイタリア人の名前は覚えにくい。しかもこの展覧会に出されている画家で知ってる名前は一人もなし!なのにすごく行って良かった〜と思える内容の展示でした。マッキアイオーリというのはトスカ
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ」 | What's up, Luke ? | 2010/01/24 11:37 PM
目黒・白金台 chariot 目黒の東京都庭園美術館で、3月14日まで開かれている 「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」に行ってきました。 ...
東京都庭園美術館 マッキアイオーリ展 | 猫アリーナ | 2010/01/26 10:24 PM
東京都庭園美術館(港区白金台5-21-9) 「イタリアの印象派 - マッキアイオーリ 光を描いた近代画家たち」 1/16-3/14 東京都庭園美術館で開催中の「イタリアの印象派 - マッキアイオーリ 光を描いた近代画家たち」のプレスプレビューに参加してきました。 庭園
最近忙しくてご紹介が遅れましたが、始まってすぐに東京都庭園美術館で「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」を観てきました。勿論これ...
イタリアの印象派 マッキアイオーリ展 【東京都庭園美術館】 | 関東近辺の美術館めぐり 〜美術・美景・美味を楽しむブログ〜 | 2010/01/30 11:18 PM
 イタリアの印象派「マッキアイオーリ」展チラシ左:シルヴェストロ・レーガ「庭園での散歩」右:フランチェスコ・ジョーリ「水運びの娘」1891年 東京都庭園美術館で「イタリアの印象派 マッキアイオーリ 光を描いた近代画家たち」展を観てきました。「マッキア
 英文の展覧会名は The Macchiaioli - Itarian Masters of Realismであるが、日本語の題名には「イタリアの印象派」という紛らわしいキャッチコピーが付けられている。  イタリアは15~17世紀にはルネサンス・マニエリスム・バロックと世界の美術界をリードしており
先週のことを書こうと思う。 イタリアの印象派というのも初めて聞くし、知っている画家の名前もない。 でも、何となく好きな絵があるよ...
イタリアの印象派 マッキアイオーリ展 | なつの天然生活 | 2010/02/26 9:14 AM
「マッキアイオーリ」・・・何のことか分からなかったのですが、ブロガーの皆さんのオススメのとおり久しぶりに東京都庭園美術館『イタリアの印象派ーマッキアイオーリー光を描いた近代画家たちー展』(1/16〜3/14)を訪れました。2月で数日前の残雪が残るアール・デコ