弐代目・青い日記帳 

  
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「命の認識」展
東京大学総合研究博物館で開催中の
「命の認識」展に行って来ました。



上野国立博物館で開催中の「大哺乳類展」と対極に位置する展覧会。東大博物館サイト内に掲げられた「命の認識」展総指揮・監督である遠藤秀紀氏のこの言葉からもそれは明らか。

あなたを苦悩のどん底に陥れる空間を東大の博物館に創ってみたいと思っていた。「命の認識」は、博物館を快楽やサービス提供の場などと称した昨今の悪しき意思を根本から破壊して、そこに個人が命を認識するまでの根源的苦悩の場を広げることを、私が試みたものである。

東京大学総合研究博物館ニュース「Ouroboros」にも。

私の展示場は、来館者にとって苦悩の場であることを企図したものである。展示場で快適な時を過ごそうと思うなら、都内にそれこそ日本中の自治体に、ただ楽しいだけの展示場から丁寧に自然科学や美術を説明してくれる親切な部屋などは無数にあるから、そういうものが好きならばそこを訪ねるのがよい。だが、一たび私の「命の認識」に入ったならば、あなたも苦悩する一人の小さな人間に過ぎない。

これだけ行く前に期待感高まる展覧会もまずなかろうかと。そして実際に足を運ぶと遠藤教授の思惑通り、絶望に似た苦悩をこれでもか〜と味わうはめになります。

言葉で語ってしまうと実につまらないのですが、東大博物館奥にある特別展示室内にひとつの大きな「舞台」のような展示スペースが設けられています。そこに数千もの様々な動物の亡骸が理路整然とある種パラノイア的な要素を内包しつつ。



能舞台にはしばしば怨霊、死霊が登場しますが、東大博物館に今回設置された「舞台」にはそれらの登場する余地は全くありません。そこにはかつて大草原を闊歩していたであろう動物から海中の小さな魚の骨まで、ありとあらゆる生命体の遺骸があるだけです。

ゆっくりと時にしばしば立ち止りつつ会場を一周し終えた頃には何とも言えない倦怠感が身体にまとわりついてきます。少々絶望的なまでの。無料で気軽に観られると勘違いしこの部屋を訪れたカップルがいたならそれはあまりにも、いたましいことです。楽しむにはお金が要ります。「大哺乳類展」金曜限定ペア得ナイト券なら二人で2000円です。

また、展覧会慣れした人ほどこの「命の認識」展は戸惑いを覚えることでしょう。何せキャプションや説明書きが一切ないのですから。目の前に展示されている骨は何て名前の動物なのかしら?と疑問に思っても説明はありません。目の前の数千もの骨が嘗て何と呼ばれていた動物だったのかはここではあまり重要なことではないようです。

そしてこれも監修者、遠藤教授の企みでもあります。(以下、東京大学総合研究博物館ニュース「Ouroboros」より)

文字をもって説明すべきでないものを受け止めてもらうべく、私は文字列の排除に腐心した。学術と称して展示物に文字が付帯する空間を、忘れることにしよう。物を見て認識に真に苦悩するのは、来館者が当然背負うべき運命である。この展示場は、その運命を喜んで受け入れる来館者に対して無限に開かれ、同時に、その苦悩を好奇心でもって受け入れようとする人間を増やすことを、私の楽しみとして作られたものである。

幾重にも「苦悩」が張り巡らされた部屋です。

しかし、一枚の小パンフレットだけは用意されています。本当はこれすら置きたくなかったそうですが…それにより入ってすぐに出迎えてくれるダミアン・ハーストの作品を連想してしまう死産したゾウの胎児や、絞められた直後のような、ニワトリの遠い祖先に当たるラオスに生息するセキショクヤケイの仮剥製などのことが文字情報としてインプットされます。



如何に普段、自分が文字情報に頼って観ているか、そして感化されているか数多の動物の屍の前で深く反省した次第。そうそう壁にそってモノクロの写真が貼られていましたが、あれが与える印象もまた強烈でした。とんちんかんな感想で申し訳ないですが、荘厳なカトリック教会の内部に今自分が立たされているような気分に。

因みに、解説シートはひと通り目を通した方がよろしいかと。展示室隅に置かれた巨大の冷蔵庫の中にある「展示物」を見落としたりしないためにも。

博物館入口をくぐるとまず常設展示「キュラトリアル・グラフィティ―学術標本の表現」が待ち受けています。これも相当見応えあるといいますか、ある種「苦悩」の部屋なのですが、まず先に一番奥にある「命の認識」展をご覧になることおススメします。


キュラトリアル・グラフィティ―学術標本の表現
中核テーマを人類学とし、日本における「骨」と「先史」の研究史上の「名品」「優品」を一部初公開している。我が国の先史考古学の曙期をまさに担った資料群と、当館が誇る古人骨コレクションの、近年5から10年にわたるキュラトリアル・ワークの成果発表の展覧会でもある。標本の仕事現場は、個々のキュレータならびに大学院生らアシスタントの「表現の場」であり、そのため、「キュラトリアル・グラフィティ」の展覧会名を設けた。

「命の認識」展は3月28日(日)までです。
会場:東京大学総合研究博物館
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館料:無料

会場内の展示風景はこちらにまとめてあります

東大弥生門目の前にある弥生美術館で開催中の「鰭崎英朋展」も同じく28日まで。あわせて是非是非!


生誕130年記念「鰭崎英朋展−明治・大正の挿絵界を生きる−」
 明治13年、東京に生まれた鰭崎英朋は、17歳の時、浮世絵師・月岡芳年門下の右田年英に入門しました。新進の日本画家として活動しつつ、同時に挿絵画家としても活躍した英朋は、後に挿絵に専念、生涯挿絵一筋に生きました。
 妖艶な美人画を得意とした英朋は、あらゆる雑誌や新聞を舞台に、人気挿絵画家として華やかに活躍しました。なかでも『東京朝日新聞』に掲載された相撲取組挿絵は、多くの人々に絶賛されました。
 英朋は、まだ挿絵画家という職業もその地位も確立されていなかった頃、ひとつの時代を築き上げた先駆的存在の挿絵画家として位置づけられます。しかし、多くの読者を魅了し、支持を得たにも関わらず、没後、英朋の名は少しずつ忘れられていきました。
 ところが、近年、英朋再評価の動きが見られるようになり、その名が再び輝き始めました。
 本展では、英朋が日本近代の挿絵史に遺した軌跡を、初公開作品を含めた約350点によって展覧し、英朋の魅力を再検証いたします。
 挿絵画家として強い信念と誇りを持ち続け、生涯を貫き通した英朋の、明治気質あふれる「妖・艶・粋・美」の世界をご堪能ください。

さて、「命の認識」展で展開されている「苦悩」に打ちひしがれた後は東大広報センター内に展示されている、東京大学折紙サークルOristの作品を観て心落ち着けてきました。

ジョーズうさぎ」かわいい!

彼らの折紙作品は全て「折り」だけで作られているそうです。鋏を入れたりせずに。純粋なオリガミ。アルパカも居ましたよ〜

トイレットペーパー折紙でもその筋?では有名な彼ら。トイレットペーパーの先っぽを三角形ではなくハート型に折ることを考案、奨励。

トイレットペーパー折紙ブログ
・Twitterもやっているようです。@toiletorigami

それでは最後に「今日の美味


千駄木「コシヅカハム」の「コンビーフ」ここのコンビーフ食べずしてコンビーフ語ること勿れ。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2077

JUGEMテーマ:アート・デザイン


あなたを苦悩のどん底に陥れる空間を東大の博物館に創ってみたいと思っていた。「命の認識」は、博物館を快楽やサービス提供の場などと称した昨今の悪しき意思を根本から破壊して、そこに個人が命を認識するまでの根源的苦悩の場を広げることを、私が試みたものである。

ここであなたは商業主義が唱える形式的な楽しみを得る必要など微塵もなく、ましてや科学的客観的事実や昔の学者や文化人の整った学理を受容してもらうには及ばない。何千何百の骸の形から、あなたが命を認識していく、その経過自体が私の作品である。それが、この空間が背負った、唯一の宿命である。展示場で快適な時を過ごそうと思うなら、ただ楽しいだけの催事場から丁寧に自然科学や美術を説明してくれる親切な部屋などは無数に存在するのだから、そういうものが好きならばそこを訪ねるのがよい。だが、一たび私の「命の認識」に迷い込んだならば、あなたは、苦悩する孤独な一人に過ぎない。

 瑣末な話を棚上げすれば、空間は高さ六五〇ミリの平らな舞台からなっている。この不定形の平面上を見据えて、あなたには悩み続けてもらいたい。暗色に静かに設えられるこの平らな面こそ、あなたが命をどう感じ取り、命をどう知るかという、闘いの場に化けていくはずだ。そのために、普通に展示空間に漂っているいくつかの存在に立ち退いてもらった。その第一は、文字と、意味もなく文字を空間に配置する人の意志だ。


| 展覧会 | 22:58 | comments(5) | trackbacks(2) |
これは本当に、驚きの展示でした。
遠藤教授の企みにのせられて、会場を浮遊しました。でも苦悩と言うよりは、さかしまな快楽を感じつつですが。

Ouroborosに写っている遠藤教授が、動物の死体に接している表情は正に、愉悦のそのものに見えました。

尚、館の入り口に撮影禁止の表示が出ていましたが、これは「キュラトリアル・グラフィティ―」の方だけで、「命の認識」の方は撮影可能です。一寸案内が不親切でしたね。
| 遊戯人 | 2010/03/26 11:24 PM |

もしご興味がありましたら、日本美術解剖学会へ
   ↓
http://www.geidai.ac.jp/labs/artistic-anatomy/about2.html

まだできたてほやほやですが。。
http://shiseiology007.blog.so-net.ne.jp/2010-01-10
| SHISEI | 2010/03/27 2:53 AM |

私も行ってきました。
ついでに小石川の分館にも行って、
「驚異の部屋」も観てきました。
説明がないということでしたが、
私はもともと、説明文を読まないので^^;
それほど苦痛ではありませんでした。
知識なしに展示物と直接、対峙すると
いうのはいいですね。子ども達がたくさん
来ていたのですが、説明文がないので、
いろいろ推測しながら楽しそうに展示物を
眺めていたのが印象的でした。
| えび | 2010/03/28 4:38 PM |

最終日に行ってきました〜
俗世を楽しむアートナイトの翌日だったので、ギャップ感がけっこう凄かったです(苦笑)
| noel | 2010/03/29 1:34 PM |

@遊戯人さん
こんばんは。

撮影可能と教えていただき、最終日の前日
土曜日に再訪して参りました。

松原先生がいらしたので
あれこれ伺うこと出来ました。

それにしても土曜日大層な人出でした。
一日で約500人もの来館者あったそうです。

@SHISEIさん
こんばんは。

これですね〜例の日本美術解剖学会。
先日のシンポジウムは参加出来ませんでしたが
これからの活躍に期待大です!

またトークショーとかなさいます?

@えびさん
こんばんは。

遠藤教授は以前、科博にいらした方で
今、地球館のシンボル的な展示となっている
動物の迫力ある剥製展示を手掛けられました。
あそこにも、ほとんど文字情報ありませんよね。

大きな鯨の骨格標本に混じり、
小さな小さなカエルやフナも居ましたね。

@noelさん
こんばんは。

最終日に行かれたかた多かったようですね。
アートナイト→苦悩の部屋は確かに落差大きいですね。
| Tak管理人 | 2010/03/29 5:11 PM |










http://bluediary2.jugem.jp/trackback/2077
東京大学総合研究博物館の「命の認識」展
東京大学総合研究博物館で行われている「命の認識」。 遺体科学の教授で、年何百体もの動物をひたすら解剖する遠藤秀紀の総指揮で会場が構成されている。 遠藤は、かなり気負って次のように語り始める。 ・・・あなたを苦悩のどん底に陥れる空間を東大の博物館に創っ
| 遊戯人の自由な世界 | 2010/03/26 11:28 PM |
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命の認識@東京大学総合研究博物館 (すでに終了) http://www.um.u-tokyo.ac.jp/exhibition/2009inochi.html 六本木アートナイトの翌日、気がついたら最終日だったこちらの展示を見てきました。 Vividなアートフェスティヴァルの次に「メメント・モ
| Art and The City | 2010/03/29 1:26 PM |
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