弐代目・青い日記帳 

  
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「安田靫彦展」
ニューオータニ美術館で開催中の
「安田靫彦展−花を愛でる心」に行って来ました。



ホテルの中にある小さな美術館でありながら、日本画と西洋画の学芸員さんがいらっしゃるので、毎回安定した高レベルの展覧会を開催してくれます。交通の便もよく駅からも近く、午後6時まで開館しているといったイイことずくめ。

文化勲章を受章し、日本美術院の初代理事を務め94歳まで活躍した安田靫彦ですが、身体が弱く大きな作品はほとんど描くことがなかったそうです。海外渡航歴も無し。それだからこそ、安田は身の回りの小さな命に目を向けそれを描き上げることに専念できたのでしょう。

派手さはありませんが拝見していてとても心が落ち着きます。

展覧会には自宅周辺で目にした草花を描いたデッサンが多く出展されています。安田靫彦が対象を的確に捉え、そして実に写実的に描いていたことが分かります。


安田靭彦「チューリップ(花弁)」1949年5月9日
川崎市市民ミュージアム蔵

チューリップの花を解体し描いたのではありません。同じ花を描いたデッサンが他に2点(5月1日と5月7日にそれぞれ描いたもの)出展されていました。

凛とした一本立ちしたチューリップ(5月1日)が、次第に頭を垂れうなだれた様子に(5月7日)。その2日後の姿が↑の画像です。

円山応挙もびっくりなくらい微細に目を遣り一本のチューリップを写生しています。5月9日の花弁だけ描かれたデッサンには花弁一枚一枚に「甲・乙・丙。。。」と書き込まていました。

こうした写生重視のデッサンが約30枚ほど出ています。でもそれは展覧会の流れとしては一番最後のセクション。いわば種明かし的なテイストとして展示されているのです。

これほどまでに緻密な目でデッサンを行った靫彦です、さぞかし本画も写実的であろうと思いますがどうもそうではありません。ここが靫彦の靫彦たる所以。

デッサンを元に下図を経て本図を描く途中で、何か見えない力が働き絵を靫彦的に変えてしまうかのようです。ただし大きく変えるのではありません。「らしさ」を与える程度。


安田靫彦「刷毛目壺に百合」1965年

とても写実的な山百合のデッサンがありました。それらを元に描いた作品でしょう。デッサンがしっかりしているだけあって花も大変リアルでこちらまで香りが届きそうです。

でも壺にどう収まっているのか謎です。あり得ない姿です。開花した百合とつぼみの重さは相当なもの。この体勢では壺には収まりません。不思議な作品です。

実はそのことを指摘して頂くまでまったく気になりませんでした。ごく自然に見えていたのです。言われてみれば確かにおかしな作品です。その実際にあり得ない姿で描きながらもそれに気が付かせない点。これが「靫彦らしさ」だとしたら、とんでもない画家さんです。


安田靫彦「春暁」1935年
ニューオータニ美術館蔵 大谷コレクション

靫彦が何度も何度も描いた梅の木。今回の展覧会で来館者を最初に迎えてくれる作品がこちらです。幹に垂らし込みが用いられ可憐な梅の花と絶妙のコントラストを織り成しています。そして乱舞するかのような梅の枝。完成度の高い作品です。

初めは気が付かず帰り際に再度拝見し「やはりこれもか!」と。この作品にも不思議な点が紛れ込んでいます。それは画面右下から中央に向かって伸びる枝。最も前景に描かれています。この右隣りにも大きな梅の木があるのでしょうか。

どこからやって来た枝なのでしょうか?


安田靫彦「初日の出」1972年

この作品はもっと顕著に闖入者が描かれています。画面下左よりから中央に向け伸びる2本の緑の枝先。これは一体全体??

この2本の緑の枝先も同じように最も前景に位置しているのが花等との重なりから見てとれます。フォトショか何かで画像処理してこの2本を取り除いてみたらどんな風に見えるでしょうかこの絵。

こうして気が付かなければ何の違和感もなく、優しいいい絵だな〜と観ていられるのですが、一度指摘され気が付いてしまうともう気になって気になって。だからと言って絵全体のバランスが崩れるとか見え方が激変するということはありません。


安田靫彦「紅梅」1948年

ここまで来ると確信犯としか言いようなくなります。

安田は好んで梅樹を描いたとされています。実際に多くの作品があります。梅を好んだわけ色々あったことでしょうが、梅の枝ぶりの特徴からこうした遊びの要素が加えやすかったからかもしれません。

写実はしっかり寸分の狂いもなく美しい線で描いた安田が、本図にちょっとした手を加え自分らしさを出していたとしたら。。。一見控えめに見えつつも、結果としてたいそう自己主張の強い表現方法を用いていたことになります。

奥が深いぞ〜安田靫彦!

最後に「今日の一枚


安田靫彦「チューリップ」1949年5月1日

我が家の狭苦しい花壇にも丁度チューリップの花が。そうそう今日はお釈迦様の誕生日「花祭り」でしたよね。「安田靫彦展−花を愛でる心」ぴったりじゃん。

「安田靫彦展−花を愛でる心」は4月18日(日)までです。

おまけ:展示室の様子(美術館さんから頂いた画像です)

今、お堀のソメイヨシノ満開です!それが散ると今度は八重桜の出番。

チラシにさり気なくあしらわれた桜花と共にお出迎えしてくれることでしょう。

今回の展覧会は川崎市市民ミュージアムとの共催です。川崎では靫彦の歴史画にスポットを当てた展覧会に。チラシに使われている「草薙の剣」日本武尊の姿を埴輪から起こしたのでは?という新説も!

安田靫彦展−歴史画誕生の軌跡
川崎市市民ミュージアム
安田靫彦は、明治から昭和にかけて、歴史画を得意とした近代日本画壇を代表する画家です。市民ミュージアムは、開館以来、安田靫彦の下絵や写生などの画稿類を収集し、500点を超えるコレクションとなりました。鍛錬をつんだ画家の画稿からは、鉛筆で描かれた正確な線をみていただけるだけでなく、写真などのない時代のイメージをどのようにつくっていくのかということが見えてきます。今回の展覧会では、「草薙の剣」や「小鏡子」といった本画20点と、画稿類を一同に展示し、なかなかみることのできない作品完成までの過程をご紹介いたします。
川崎の展覧会も同じく4月18日(日)までです!

【関連エントリ】
「近代の屏風絵」展
「大和し美し」

それでは最後に「今日の美味


Toshi Yoroizuka」の「ムラング・フレーズ」桜色していますが、乾燥苺のお菓子。@Az_Takahikoさん有難うございました!!

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| 展覧会 | 23:41 | comments(2) | trackbacks(4) |
気になっていた展示でした。
安田靫彦は多分高校生のころから好きだったかも。。。
日本画に惹かれたきっかけの人の一人ですね。。。
余談ですがニューオータニのフライヤーが素敵だと思いました!
| ai | 2010/04/09 3:08 PM |

@aiさん
こんばんは。

いいですよ〜
とても落ち着いた雰囲気の中
精密な写生画からちょいと
ひねりの加わった本画まで色々と。
川崎も行きたいのですが…
| Tak管理人 | 2010/04/10 11:58 PM |










http://bluediary2.jugem.jp/trackback/2091
ニューオータニ美術館で「安田靫彦展 花を愛でる心」を観た!
ニューオータニ美術館、入り口 ニューオータニ美術館で「安田靫彦展 花を愛でる心」を観てきました。行ったのは川崎市民ミュージアムで「安田靫彦展 歴史画誕生の軌跡」を観た次の日、3月14日の日曜日でした。ニューオータニ美術館へ行くのはこれが2度目、前に「
| とんとん・にっき | 2010/04/09 12:18 AM |
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| 猫アリーナ | 2010/04/09 9:24 PM |
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| いづつやの文化記号 | 2010/04/10 7:54 PM |
安田靫彦展ー花を愛でる心(ニューオータニ美術館)
「安田靫彦展ー花を愛でる心」をニューオータニ美術館でみた。佐伯祐三展を新宿歴史博物館をみた後なので、地下鉄で2駅と近い。近代日本画家のなかでとくに好きな作家のひとり。まずは楽しみな歴史画から。《女楽の人々》(1965)古代史好きとしてはとてもうれしい作品。
| アトリエ・リュス | 2010/04/12 9:52 PM |
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