青い日記帳 

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「能の雅 狂言の妙」

サントリー美術館で開催中の
開場25周年記念 国立能楽堂コレクション展「能の雅 狂言の妙」に行って来ました。



「能の雅(エレガンス) 狂言の妙(エスプリ)」と読むそうです。能と狂言その対極に位置する古典芸能を美術館の構造を生かし4階と3階に峻別しての展示。

各地を巡回してきたこの展覧会。最後となる東京会場、お能の世界を全く存じ上げていない自分が拝見しても、非常に高い満足度得られたのですから、僅かでも能に触れたことのある方がご覧になったらさぞかし満足度の高いことでしょう。

展覧会会場内の様子は「フクヘン。」さんのこちらの記事にアップされてます。


紅萌黄茶段青梅波洲浜模様唐織」江戸時代

先日、根津美術館で開催中の「能面の心・装束の華」で拝見した時も感じたことですが、室町期に発生し諸大名の庇護のもと煌びやかでゴージャスな装束が、江戸期に入っても尚、トーンダウンすることなく絢爛豪華さを保った理由はどこにあるのかと。

室町・桃山期に大名の御前で舞った演者が、その場で大名が羽織っていた衣裳を褒美に頂戴し次第に装束も豪華になって行ったと音声ガイドで紹介されていました。

ある意味この派手な装束が非現実的で幽玄な能の世界を象徴していると言っても過言でないとするならば、時代が江戸にうつろうとも、室町・桃山時代に成立したスタイル(織物や刺繍による浮世離れしたまばゆいばかりの装束)をそのまま受け継いだとしたら、逆に何の不思議もありません。

なんて下種の勘ぐりせずともまた予習などしなくても十分愉しめますからご安心を。壮観ですよ〜あの照度を抑えた展示空間にぱっ、ぱっ!とこの世のものとは思えないゴージャスな大輪の華が咲き誇っているよう。かみさんも思わず「これはいい!」と諸手をあげて称賛。

「オルセー美術館展」の混雑回避してここをデートコースに組み込むのいいかもしれません。絢爛豪華な衣裳と微細な変化で魅了する能面のコラボレーション。


紅萌黄茶段青梅波洲浜模様唐織」部分

ところで、この展覧会始まって早々に出かけました。ただし何度も書くように能を観たことない自分にとっては絵画、陶芸以上に未知の世界。すぐでもお能拝見しに行きたいのは山々ですがその前に能について言及されている文章を読み予習予習。
明治以降の能は、実はどこにも仕えず、どこからの庇護も受けず、謡の師匠という杖に身をもたせながらも、独りで歩いてきた。(中略)外国の国立劇場に見るような本当の意味で国家の保護を受けることもなく、伝統という、実は漠然とした名のもとに、それぞれの様式が、それぞれの立場で温存されている。
増田正造『能の表現―その逆説の美学
「近代化」を推し進めた明治以降、これが最良の道だったように思えてきます。薩長の田舎下級武士の元下手にコントロールされるよりはるかに幸運なことです。財政面での苦労は推して知るべしではありますが…


紺地立浪水犀桶模様縫箔」江戸時代

因みに、根津美術館で開催中の「能面の心・装束の華」では演目ごとに使用された装束や能面がセットで展示されていましたが、サントリーでは完全に分けての展示となっています。

そうそう、前田家伝来の能装束11領を初公開。それに加え重要文化財に指定されている室町時代の能装束6領も展示されています。アゲハ蝶を意匠に取り込んだちょっと滑稽味のある能装束など、どれもこれもまるで「絵」を観ているよう。

同じ能の展覧会でも展示方法によってこんなにも表情、そして印象が変わるものなのかという新たな発見もあります。根津とサントリーのセット券とかあればいいのに。

小面」江戸時代

さて能面は装束よりはるかに「見方」の分からないものではありますが、多和田葉子氏が仰る通り能の中心であり、無くてなならぬ大きな大きな存在。
能は、過去というものを風景として再現しようとしていないだけでなく、役者の動きを通して再現しようともしていない。能の中心にあるのは、能面であり、話の筋や役者ではないようだ。
多和田葉子『カタコトのうわごと
能面に関してはまだまだお手上げ状態。読み物もさほどまだ読めていません。後期展示が始まる7月7日までには何とかしたいのですが。。。無理だよな〜W杯の誘惑に勝てるわけなし。Twitterも。。。
般若」江戸時代
世阿弥は〈鬼の能〉にふれて、「形は鬼なれども、心は人なるがゆへに」という一風を想定している。私が〈鬼〉とよばれたものの無残について述べようと思うのも、このような人間的な心を捨てかねて持つ鬼にたいする心寄せからである。
馬場あき子『鬼の研究

ひとまずこの本に巡り合えたのは幸運でした。
多和田葉子『カタコトのうわごと
 夢幻能で死者として現れる主役(シテ)はいつも仮面を付けており、生者を演じる脇役(ワキ)は仮面なしで演じる。つまり、シテは男なのに女の役を演ずると同時に、生きているのに死んだ者の役を演じる。役者とその役の間のこのふたつの大きな対比は、能舞台では、隠されているのではなく、むしろそれがよく見える仕組みになっている。能面は、いわゆる〈本当の顔〉を隠す〈道具〉として使われているのではない。また、カーニバルやある種の現代演劇のように、顔を隠すことで身体の残りの部分を活性化しようとしているわけでもない。能面は、切り落とされた死者の首のようなものではないかと思う。その首が、失われた身体を取り戻そうとして、役者に取り憑く。身体のない死んだ女が、言葉を発するために、生きた男の肉体に取り憑いて、それを使用する。
 シテが面を付ける楽屋は、鏡の間と呼ばれる。面を付けるという作業は、死者に一時的に身体を与えるという儀式的な性格を帯びてくる。面を付けたシテは、橋掛りを通って舞台に至るが、夢幻能のシテに踏みしめられる時、この橋掛りはあの世とこの世を結ぶ橋のようにも見える。

最後に「今日の一枚


百万絵巻」一巻(十六紙)室町時代 16世紀
国立能楽堂蔵

ひとつ下の階には狂言の衣裳や面が。「立体的」な能装束に比べとても「平面的」な狂言装束。麻や平絹による質素な狂言装束はとても軽やかで自由奔放なイメージをパッと見ただけで与えます。

またこの階には能楽の絵画、文献が展示されており中でも「百万絵巻」は室町期の能の姿を知る上で大変貴重な資料だそうです。(海外に流出していたものを買い戻したとか)

「能の雅 狂言の妙」展は7月25日までです。

国立能楽堂について
1983年9月15日、東京都渋谷区に開場。世界無形遺産に指定された能・狂言を上演するほか、能狂言面・装束などの能楽資料も公開しています。能楽堂内には、能舞台や、能楽資料の展示室、図書館、食堂などを完備し、能楽の歴史を踏まえつつ現代にこれを生かす活動が積極的に行われています。また、継承者育成のための研修施設も整えられ、能楽の保存・活用・継承のための一大拠点となっています。

そうだ!サントリー美術館さん次の展覧会すっごく楽しみなんだこれがまた!!

誇り高きデザイン 鍋島
2010年8月11日(水)〜10月11日(月・祝)

17世紀後半に始まった鍋島藩窯は、江戸時代を通じて高級食器の生産を続け、製品はもっぱら徳川将軍への献上品、贈答品をはじめとする藩主御用の品になりました。そのデザインは、藩窯の名にふさわしい上品さと和様を追求したものであるといいます。本展は、鍋島の歴史を名品でたどりつつ、デザインの魅力をご紹介します。

【関連エントリー】
- サントリー美術館開館記念展I 「日本を祝う」
- 「水と生きる展」
- 「水と生きる」展(後期)
- 開館記念特別展「鳥獣戯画がやってきた!」
- 「BIOMBO/屏風 日本の美」展
- 「ガレとジャポニズム」展
- 「ロートレック展」
- 「小袖 江戸のオートクチュール」展
- 「KAZARI-日本美の情熱-」展
- 「japan 蒔絵」
- 「国宝 三井寺展」
- 「まぼろしの薩摩切子」展
- 「和ガラス」展
- 「清方/Kiyokata ノスタルジア」
- 「天地人—直江兼続とその時代—」展
- 「美しきアジアの玉手箱—シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展 ...

それでは最後に「今日の美味


株式会社 黒船」の「カステラ
しっとり系のカステラ。ぱさぱさ系とどちらがお好き?

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↓こちら大学時代の先輩から「これなら君にも読めるよ」と勧めて頂いた一冊。早速購入演目のストーリー展開を軸に確かにとてもよくまとめられています。
室町時代初期の成立より現代まで600年以上の歴史を誇る能楽(能と狂言)はわが国の貴重な伝統芸能です。2001年にはユネスコの「世界無形文化遺産」として認められその芸術性は新たな注目を集めています。
本展は、日本国内における能楽の普及と発展、演能者の育成を目的に設立された国立能楽堂が、四半世紀にわたり収集に努めてきた能楽関係資料を初めて一堂に披露するものです。能・狂言面、能・狂言装束、楽器、謡本、絵画、文献資料など約180件をはじめ、前田家伝来の能装束11領を初公開いたします。
幽玄という言葉で表現される能の雅な美と、その対極に位置する狂言のエスプリに富んだ魅力に迫り、能楽の奥深い世界に触れていただきたいと思います。


展覧会 | permalink | comments(4) | trackbacks(2)

この記事に対するコメント

東博でも、能装束を食い入るように見つめる私にはとても楽しい展覧会でした。
ただ、能の知識がないので、ご紹介の本を探してみようかと思います。根津もいってみます。
それにしても空いてました。土曜夕方だったのですが、オランダ戦に備え、皆さんお早い帰宅だったのでしょうか?
marco | 2010/06/23 11:52 PM
こんにちは。
展示品の中でも、前田家伝来の能衣装は特に素晴らしい物でした。
色々な能面も、ゆっくり観ることが出来ました。
それぞれの演目に応じて、その表情が変わるというのも能面の魅力です。
chariot | 2010/06/24 7:02 AM
サントリー会員の輪、本当にお世話になりました。
 絢爛豪華な能装束が、此の世ではない篝火燃ゆる幽玄の夢世界へ誘います。能面は表情豊かに変化するから不思議。
 階段下の舞台も粋ですね。会期中レクチャーが充実しているけど、平日午後なのが惜しい。
 
 
panda | 2010/06/24 11:46 PM
@marcoさん
こんにちは。

能と聞くと二の足踏んでしまいますよね。
ついつい。
サントリーも根津もそれぞれ違った見せ方で
能についての知識の無い自分も堪能できました。

オランダ戦の影響少なからずあったでしょうね。
普段サッカーを見ないうちの上司まで観ていたそうです。

@chariotさん
こんにちは。

いつぞやどこかで傾き加減によって
その喜怒哀楽を表現するといったこと
目にした覚えがあります。しゃがみ込んだり
背伸びしたりしながら能面と対峙して来ました。

@pandaさん
こんにちは。

サントリー美術館の会員はほんとお得ですよね!
日本美術の場合どうしても展示替えもあるし、
しかも気にいった展覧会何度でも観たいものですしね。

レクチャー確かにどれも参加出来ない時間帯で残念です。
Tak管理人 | 2010/06/27 3:55 PM
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